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市場の急拡大が一段落し、市場調査会社などの調査レポートでも、年間の伸び率がほぼ横ばいか1ケタ台と、踊り場に入ったともいえるポータブルオーディオ市場。近年発売される新製品も、新機能の提案よりは、デザインやカラーバリエーション、音質などを差別化ポイントとして、製品をアピールするものが増えているようだ。 もっとも、消費層が拡大した成熟市場で一番訴求しやすいポイントは「価格」だろう。各社とも低価格モデルのラインナップを強化しているが、そうした中でクリエイティブが発売するのが、ZENシリーズのエントリーモデルとなる「ZEN STONE」だ。
外形寸法53.7×35.3×12.8mm(幅×縦×厚み)、重量18.5gと小型の筐体が特徴のオーディオプレーヤーで、液晶ディスプレイなしで、内蔵メモリ1GB。クリエイティブのiPod shuffle対抗製品といえる仕様で、直販価格は4,980円と、iPod shuffle(AppleStore価格9,800円)のほぼ半額だ。 さらに、iPod shuffleの5色に対し、ZEN STONEでは6色のカラーバリエーションを用意するなど、価格だけでなくカラーやデザイン性でも勝負を挑んでいる。群を抜いた小ささで話題となった第二世代iPod shuffleの対抗馬となるか? ZEN STONEの実力を検証した。 なお、今回は使用した製品は、本体は製品版ながら、同梱イヤフォンなどの異なる試作機。 ■ チープさと独特の存在感が同居する小型ボディ 同梱品は、USBケーブルとイヤフォンと非常にシンプル。 外形寸法53.7×35.3×12.8mm(幅×縦×厚み)、重量18.5gと小型のボディはなかなかインパクトがある。一見するとiPod shuffle(41.2×27.3×10.5mm/幅×縦×厚み)とほぼ同じサイズと感じるが、実際に並べて比較してみると、shuffleのほうが一回り小さい。ただ、どちらも十分にサイズが小さいので、使ってみた時に大きな差があるようには感じない。 プラスチックの外装は、アルミ仕上げのiPod shuffleに比べるとやや高級感にかけるものの、ピンクなどビビットなカラーでは、そのチープさがいい意味でガジェットとしての魅力を生み出しているようにも感じる。ただ、プラスチックのボディは、若干傷が付きやすい。 本体前面には右側の円形コントローラの上下がボリューム、左右が曲スキップ/バック、中央が再生/停止に割り当てられる。また、ZENのロゴ左脇にはLEDを備えており、バッテリ残量低下時に赤く点滅するなど、動作ステータスをLED表示で確認できる。 上部にヘッドフォン出力や再生モード切替スイッチを装備。シャッフル/リピート再生が可能。下部にはUSB端子を装備する。USB端子はPCからの楽曲データ転送のほか、充電に利用する。
なお、iPod shuffleでは本体にクリップを備えており、シャツなどに装着できるが、ZEN STONEにはそうした装着機能は備えていない。そのため、クリエイティブでは専用のシリコンジャケット「ZN-STPS」を用意。直販価格は980円。 ジャケットには、5色のカラーバリエーションも用意しており、ジャケットを変えることでプレーヤーの表情を変更できる、という趣向だ。もし、クリップ留めスタイルで常用することとなれば、価格は4,980円+980円となり、iPod shuffleとの価格差も小さくなる。こうした利用スタイルの検討も重要となるだろう。
■ 転送ソフト無しで利用可能。シンプルな操作性
パソコンに接続すると、USBストレージとして認識され、そのままドラッグ&ドロップで転送できる。転送速度はやや遅く、426MBのMP3ファイルを転送したところ、10分20秒かかった。対応するファイル形式はMP3とWMAで、ビットレートは最大320kbpsまでサポートする。 iPod shuffleでは転送ソフトのiTunesの「オートフィル」機能を使って、自動的にshuffleの内蔵メモリ容量にあったプレイリストを作成し、転送してくれる機能を備えている。しかし、ZEN STONEでUSBストレージとして楽曲転送した場合は、こうした自動プレイリスト/シャッフル機能を利用できない。 ただし、Windows Media Playerに対応しており、WMPの自動プレイリスト機能を利用した楽曲転送が可能だ。なお、DRM付きのWMAファイルもWMPから転送で生きるが、WM DRMバージョン9までの対応となっており、WM DRM 10を使ったNapsterのOn the Goのようなサブスクリプション型の音楽配信には非対応となっている。また、CDリッピングやファイル転送対応のソフト「Creative Media Lite」も同社ホームページで無償提供する。対応OSはWindows XP/Vista。
USBストレージ接続時に転送した楽曲ファイルは、フォルダごとに管理される。[アーティスト]-[アルバム]という階層のフォルダをそのまま転送したところ、フォルダ名のアルファベット順に楽曲の再生を開始し、アルバム内の曲順通りに再生できた。 上部のスライド式スイッチを左側にスライドすることでフォルダスキップも可能だ。最大3階層までのフォルダを認識し、スキップが行なえる。 【訂正】 なお、WMPから転送すると、デフォルトではルートフォルダに全曲を転送し、タグ情報の数字/アルファベット順でソートされる。WMP11では[オプション]の[デバイス]からZEN STONEのプロパティを開き、[同期の設定]で、[デバイスにフォルダ階層を作成する」のチェックボックスをONにすると、フォルダを作って、転送することも可能だ。 上部のスライドスイッチでは、シャッフル/全曲リピートの再生モード選択が可能。容量1GBとはいえ、数百曲のMP3、WMAファイルが収録できるため、楽曲検索を行なうのは容易ではない。基本的には好みの楽曲を選んで転送したり、シャッフルでBGM的に活用するというスタイルで利用したほうがいいだろう。 気になったのはホールドボタンを備えていないこと。もっとも、シャッフル利用を前提と考えると、一度再生開始したら操作する必要もないので、さほど問題は無いかもしれない。なお、シャッフル再生の場合は、再生停止を操作を行なわないと延々再生を続けてバッテリが空になってしまうので、注意が必要だ。 レスポンスや操作性に大きな不満は無く、機能も多くないため、使っていて操作に戸惑うことはないだろう。 ■ 音質は良好
今回は試作機のため、本体の付属のイヤフォンが用意できなかったため、ZEN V付属のイヤフォンを利用した。音質は良好で、開放感あるクリエイティブらしいサウンド。音場の広さと再生レンジの広さが印象的で、ソースを問わずに対応できる余裕がある。イヤフォンをソニー「MDR-EX90SL」などに変更しても、傾向は変わらず、低価格プレーヤーながら音質に不満を感じる点は無い。 イヤフォンに関していえば、スポーツジムなどでの利用を前提とすれば、耳掛け型やカナル型、ネックストラップ型への変更などが必要となるだろう。利用用途に応じたイヤフォン選択も心がけたい。なお、ライブ盤などの曲間のギャップについては、若干ではあるものの知覚される。 充電はUSB経由で行ない、連続再生時間は最長10時間。iPod shuffleの12時間より若干短いが、汎用的なUSBケーブルが利用できるため、専用Dockを利用するshuffleと比べると、パソコンさえあればどこでも充電ができるという手軽さがある。もっともiPod shuffleでも別売のミニジャック-USB充電ケーブルが多数発売されてはいるが……。 ■ shuffleの半額で同等の機能を提供。最強のセカンドプレーヤー? とにかく低価格かつ気軽に扱えるサイズが魅力のプレーヤー。iPod shuffleとの約5,000円の価格差を考えるとお買い得感は高い。本体の質感はiPod shuffleに軍配が上がるとはいえ、ほぼ半額で同等の機能が得られる。他にもSDカードを利用した1,000円前後の製品もあるが、SDカードを別途用意する手間などを考えると、ZEN STONEはバランスよく低価格な製品といえる。 特に最近購入したアルバムの楽曲だけを転送したり、普段は他のプレーヤーを使いながら、スポーツ用の専用プレーヤーとして活用する場合は、ZEN STONEの安さは非常に魅力的。shuffleと真っ向から勝負できる競争力の高い製品だ。クリップやイヤフォンなど利用シーンをイメージしながら、周辺環境を整えるのが、購入時のポイントとなるだろう。
□クリエイティブメディアのホームページ (2007年5月18日) [AV Watch編集部/usuda@impress.co.jp]
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