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株式会社ソニー・コンピュータエンタテインメント(SCE)は24日、「PLAYSTATION 3」の最新システムソフトウェア、バージョン1.8を公開した。 DVDビデオとプレイステーション(PS1)/プレイステーション 2(PS2)ゲームの映像を、HDMI出力端子から最高1080pでアップスケーリング出力できるほか、DLNAクライアントとしてネットワーク経由で動画/音楽/静止画が再生できるようになるなど、広範囲に及ぶ大規模な機能強化アップデートとなっている。
■ アップコンバート出力
DVDビデオのアップコンバート出力は最高1080pで行なえる。出力モードの変更は、設定メニューの「BD/DVD設定」内にある「DVDアップコンバート」項目で行なう。選択できるモードは、アップコンバート無効の「切」、アスペクト比は変更せずに解像度を2倍にアップコンバートする「2倍」、画面サイズに合わせてコンバートする「ノーマル」、アスペクト比を無視して画面いっぱいにコンバートする「フル」の4種類。 実際に、アスペクト比4:3で収録したDVD-Rを再生し、ソニーの40型フルHD液晶テレビ「KDL-40X2500」にHDMI接続で1080p表示した。「2倍」を選択すると、640×480ドットの2倍にした1,280×960ドットで表示することになり、1,920×1,080ドットのパネルに表示すると、周囲に黒いブランクが表示された。
「ノーマル」ではアスペクト比が固定されるので、両側にのみ黒オビが入る。16:9の映像ソースを再生している場合は「ノーマル」と「フル」の差は体感できないが、ソースが4:3の場合もあるため、基本は「ノーマル」を選択すると良いだろう。
気になる画質だが、テレビ側で引き伸ばしたもの(アップコンバート「切」)と、PS3側で1080pにアップスケールしたものを比較したところ、PS3側でアップスケールした方が輪郭がよりシャープになり、映像内の文字がクッキリ識別できる。DVDビデオの映画などでも髪の毛の描写や遠景のビルの窓などで解像度向上の効果が感じられ、トータルの画質として大幅に向上していることが確認できた。
なお、市販のDVDビデオなど、著作権保護がかけられたソースのアップコンバート出力は、HDMI端子からしか出力できないので注意が必要だ。 また、PS/PS2用ゲームでのアップコンバートも可能になっている。こちらは僚誌GAME Watchの記事を参照されたい。
■ 画質関連そのほか
BDビデオの表示にも新モードが追加。「BD/DVD設定」に「BD 1080p 24Hz出力(HDMI)」が加えられている。これは、BDビデオの映像を1080/24pで出力するか否かを設定するもので、「自動」を選んでおくと、ディスプレイ側が1080/24pの表示に対応している場合、1080/24pでの表示が行なわれる。 映画などは24pで撮影されることが多いため、対応ディスプレイで1080/24pで表示を行なうと、映画フィルムの質感を最大限に引き出せるという利点がある。なお「切」を選んだ場合は映像出力設定で選ばれている最大解像度での出力となる。 「RGBフルレンジ(HDMI)」の設定項目は、HDMI出力で使用するカラーレンジを選択するもの。RGBの出力信号をテレビなどで利用されている「16-235」の範囲で出力する「リミテッド」か、PC用ディスプレイなどの「0-255」の「フル」で出力するかを選ぶ。
RGBのフルレンジに対応したテレビの場合では「フル」を選ぶと画質の向上が期待できる。接続したテレビが対応しているか否かは、両モードで表示を見比べた場合、「リミッド」モードで黒が明るく表示されたり、薄く感じた場合は「フル」を。「フル」を選んだ時に暗部が黒くつぶれ気味になった場合、「リミテッド」に設定する。
さらに、同社のビデオカメラやテレビなどで採用が進んでいる動画色空間規格「x.v.Color」にも対応した。同機能のON/OFFは、「Y Pb/Cb Pr/Crスーパーホワイト(HDMI)」の項目で行なう。表示には対応するテレビ側が必要なほか、HDMI出力信号を設定する「BD/DVD映像出力フォーマット(HDMI)」の項目で、「自動」、もしくは「Y Pb/Cb Pr/Cr」を選択しておく必要がある。
■ 音楽関係
SACDの再生機能も強化。「ミュージック設定」欄に、「ビットマッピング(Super Audio CD)」が追加された。これは「ディザリング」という手法で、データの出力時に生じたノイズや歪みを低減するもので、「タイプ1」という項目を選択しておくと、音質の向上が期待できる。
また、CD情報の編集に対応した。万が一、自動取得したCD情報に誤りがあった場合、修正した情報を、データ提供元であるオール・メディア・ガイドに送信する機能も追加されている。ただし、SACD情報変更や送信は行なえない。
■ DLNAクライアント機能の追加やリモートプレイ強化
新機能2つ目の目玉はDLNAクライアント機能をサポートしたこと。「ソニールームリンク」に加え、Windows Media Player 11など、DLNAサーバー機能を持った機器と連携できるようになっており、PCのHDD内や、対応レコーダに保存した静止画/動画/音楽ファイルがPS3で再生できる。
クロスメディアバーの「フォト」、「ミュージック」、「ビデオ」の項目に「メディアサーバー検索」というアイコンが表示されており、これを押すことで同一ネットワーク内のDLNAサーバーを検索。見つかったサーバーはクロスメディアバー上に表示される。検索には1分程度かかる場合もあった。なお、PS3起動時に発見されたサーバーは、検索を行なわなくてもあらかじめ表示されている。
ネットワーク経由で再生可能なファイルのフォーマットは、PS3本体がサポートしているフォーマットと同じで、WMVなどは対応していない。対応しているファイルであれば、1,920×1,080ドットのMPEG-4 AVC/H.264などのファイルもストレス無く再生できた。静止画/音楽ファイル/動画のいずれも、PS3のHDDにコピーすることもできる。なお、DTCP-IPには対応していないため、著作権保護がかけられたコピーワンス番組などは再生できない。 また、PSP側の対応アップデータがリリースされていないため、5月24日現在は利用することはできないが、PS3のHDD内に保存したコンテンツをPSPに配信する「リモートプレイ」も強化されている。
従来はLAN内のみの配信だったが、インターネットを経由してのアクセスに対応。自宅などに置いたPS3内の映像を、外出先のPSPから見ることもできるという。この機能に対応するPSPのファームウェア「3.50」は、5月下旬に公開予定だ。
なお、24日現在、最新であるファームウェア「3.40」のPSPでリモートプレイを行なったところ、特に強化された機能は確認できず、DVDビデオなど、ビデオ形式のディスク再生もPSPからは行なえない。
しかし、DLNAクライアントとして動作しているPS3の映像をPSPでも見られるため、PSPでPC内のHDDに保存したコンテンツを間接的に表示できる環境は実現されている。間にリモートプレイを介することで、「擬似的にPSPがDLNAクライアントになった」という使い方もできるだろう。
■ その他 システム面では、「ダウンロード管理」のオプションメニューを強化。バックグラウンドダウンロード機能を使って、多数のファイルをダウンロードしている場合などに、全てのダウンロードを一時停止/再開させたり、進行状況を表示させたり、中止するなどの管理が行なえる。 静止画表示機能も強化。スライドショーに新しいパターンが追加されたほか、ズーム表示機能や画像のトリミングも可能になった。トリミングした画像は別名で保存も可能。ただし、トリミングできるのはHDDに保存した画像のみ。 また、エプソン製プリンタでのフォト印刷にも対応している。詳細はデジカメWatchに掲載されている。 ブラウザには「i-フィルター for PS3」を追加。デジタルアーツが提供する有料のWebサイト用フィルタリング表示サービスで、悪質なサイトを表示しないよう制限をかけられる。 ほかにも、AVチャット中にカメラの映像やアバターアイコンの変わりに、保存している静止画を表示する機能なども追加している。
■ 強力なメディアプレーヤーに ライバルゲーム機と比較すると、ゲームソフトのラインナップが弱いと指摘されるPS3。BDビデオプレーヤーとして活用しているユーザーも多いと思われるが、今回のアップデートはDVDビデオのアップスケーリングやBDビデオの1080/24p出力、SACDの再生能力の強化など、AVプレーヤーとしては「新しいPS3」と言いたくなるほど、非常に魅力のある強化ばかりだ。 特にDVDビデオの画質向上は大きく、BDビデオ/SACDと合わせて、PS3をAV用メインプレーヤーとして活用するシーンが多くなりそうだ。 また、映像/音声のクオリティにそれほどこだわらないというユーザーにとっても、DLNAクライアント機能の追加は大きな魅力だろう。PS3は従来からインターネットを通じた映像コンテンツの取得に対応していたが、P-TVやPLAYSTATION Networkなどで、PS3向けに用意されたコンテンツを楽しむ程度の利用がほとんどだっただろう。PCと組み合わせることで、ユーザーが持つ様々な動画/静止画/音楽が再生できるようになり、ネットワークプレーヤーとしての使い勝手は飛躍的に向上するだろう。 今後はWMVを含めた対応フォーマットの増加に期待したい。また、5月末公開予定のPSP用新ファームにより、ロケーションフリーのベースステーションとして、さらに新たな役割を担うことになる。
□SCEのホームページ
(2007年5月24日) [AV Watch編集部/yamaza-k@impress.co.jp]
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