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シャープ、欧州/韓国向けモバイルチューナ説明会を開催
-次世代ワンセグチューナは2008年出荷を目指す


次世代のワンセグチューナでは更なる小型/薄型化を予定

5月31日発表


 シャープ株式会社は、5月22日に発表された欧州/韓国のモバイルデジタル放送用チューナモジュールの製品説明会を31日に開催した。

新開発のDVB-H/T-DMB対応チューナモジュールを展示

 モバイルデジタル放送規格のうち、欧州及びアメリカで採用されている「DVB-H」と、韓国を中心に欧州などでも採用される「T-DMB」の両規格の受信に対応。出荷開始は7月初旬で、サンプル価格は20,000円。

 また、発表会では、同社では第3世代となる、次世代ワンセグチューナの開発を表明。発売時期などは未定だが、2008年頃の出荷を目指して開発中であることを明らかにした。



■ “オンリーワン”のデュアルチューナで海外市場に参入

 製品説明は、同社の高周波デバイス事業部 事業部長の江川龍太郎氏により行なわれた。

高周波デバイス事業部長江川龍太郎氏

 「モバイルデジタル放送用機器の全世界総出荷台数は2006年で970万台。そのうち半数以上が日本のワンセグ端末というのが現状で、海外市場ではモバイルデジタル放送機器は、まだあまり普及していない」と現状を説明。

 しかし、この状況も2年前後で変わっていくという。「世界での需要の活発化は2008年度と予想している。日本での普及台数も伸びるが、それ以上に世界全体の出荷台数が増加することにより、T-DMBやDVB-Hなどに対応した製品が世界市場の半数を占めるようになるはず」と予想する。

世界のモバイルデジタル放送規格分布図 各規格の違い モバイルデジタル放送機器の世界市場予測

 ヨーロッパ諸国ではDVB-Hが主流だが、ドイツやイギリスなど一部でT-DMB方式を採用している点に着目、「車の移動中などに方式の変更が原因で、テレビが見られなくなる利用者のことを考えると、DVB-HとT-DMBの2方式に対応するチューナーは利用者のニーズに応えられるのではないか」と、開発の動機を説明した。

 そのほか「すでにDVB-H方式の単体チューナは海外でも多く開発されている。今から海外の市場で戦うには、その市場で“オンリーワン”のデバイスを開発しなければ、参入しても戦えない」と、デュアルチューナ開発の背景を説明した。

 DVB-H/T-DMB対応デュアルチューナでは、OFDM復調ICも自社で開発。「ワンセグチューナでは、OFDM復調ICは他社製のものを採用していたが、今回は2種類のチューナに対応するために、復調部も自社で開発した」と説明。

 また、T-DMB方式利用時には、消費電力を43mWまで低減できるようになった点については「T-DMB方式で採用するタイムスライス技術によるところが大きい。時間で分割して、放送波を送信する技術のため、受信する時のみ通電することで、消費電力が大幅に低減できた」とした。

DVB-H/T-DMBデュアルチューナの特徴 モジュール構成。チューナとOFDM復調ICを自社開発


■ 第3世代ワンセグチューナは2008年頃出荷を検討

 新製品のほか、同社が国内で展開するワンセグチューナについても説明が行なわれた。

 「モバイル向けチューナでは、やるべきことが決まっており、“小型化”、“低電力化”、“高感度化”の3点が開発のポイントとなる。ただし、“小型化”については、最近では携帯電話に搭載するために、モジュールの薄型化も必要になっていて、携帯電話の薄型化競争に巻き込まれている」と、携帯業界の事情についても触れた。

 1月に出荷を開始したワンセグチューナモジュールは同社では第2世代のもので、入力感度が-109dBmと感度が高いほか、妨害波のフィルタや、独自開発のワンセグ用高周波ICを採用する。-1dBの感度向上については「理論値上では、受信感度が-1dB向上することで、受信可能な範囲が半径約3~5kmほど広がると考えてもらいたい」とした。

モバイルチューナの開発ポイント 受信感度の説明。-1dB受信感度が向上することで、受信可能な範囲が理論値で半径3~5km向上する 生産数は1年間で10倍の月産100万台体制に

 同社のワンセグチューナの出荷台数は、第1世代のチューナ出荷時は、月産10万台からスタートしたが、2007年3月の段階で、第2世代チューナも含めて、月産100万台まで増加しているという。

同社モバイルチューナロードマップ

 また、現在は第3世代のワンセグチューナモジュールを開発中であることも明らかにした。

 開発中のため、具体的なスケジュールや製品の詳細については説明されなかったが、「現行製品と比較し、更に小型/薄型化、低電力化を実現する。スケジュールについては、年に1度出荷している点から推測してほしい。でも2008年前には発表したい」とした。



■ 「デジタルラジオはインフラ次第」

 質疑応答では、世界のモバイル放送機器市場が盛り上がるきっかけについて、江川氏は、個人的な見解とした上で「確かに北京オリンピックの開催が2008年なので、多少は盛り上がると思うが、オリンピックで大きな動きがあるのは、おそらく中国のDMB-TH方式の端末くらいだろう。昨年のワールドカップでは、期待していたワンセグが実はあまり盛り上がらなかった。当時は、インフラの整備や製品のタイミングが間に合わなかったことが大きいと思うが、オリンピックがきっかけで世界の市場が急増するという流れではなく、自然な流れで向上していくのではないか」とした。

 今回のT-DMBとDVB-Hのデュアルチューナだけでなく、他の方式同士のデュアルチューナの開発については、「技術的には、日本と韓国で同時に利用できるISDB-T/T-DMBのデュアルチューナなどの開発は可能。だが、デュアルチューナを開発しても、機器メーカーが採用してくれなければ意味がない。そう考えると、ヨーロッパでの採用が見込めそうな、DVB-H/T-DMBのデュアルチューナが最も製品としては適している」と、技術面での問題は多くない点を語った。

 トリプルチューナについても同様で「3方式を全て盛り込んだトリプルチューナも、技術的に難しいが不可能ではない。だが、トリプルチューナを開発しても、価格が高くなってしまうのであれば、単体チューナを複数搭載する方が低価格で仕上げられるため、開発する意味がない。既存の単体チューナと比較し、サイズや消費電力、そして相応の価格とバランスよく仕上げられたのが、今回のデュアルチューナになる」と説明した。

 デジタルラジオの今後についての質問に対しても、個人的な見解としながら「普及は徐々に進んでいくと思う。日本では音質のよいラジオがFMしかなかったので、非常に期待している。モバイル環境では、テレビなど映像を見るのも楽しみだが、音楽を聴くのも楽しみの1つ。周波数割り当てがまだ完了していないが、仕組みやインフラの整備が整い次第、徐々に普及していくだろう」とした。

 また、松下製のダイバーシティアンテナ採用の、ワンセグ携帯などについても「仕組みは簡単なので、開発は容易に行なえるが、アンテナの搭載によりコストが上がってしまうため、購入する全ての利用者がそこまで必要かと考えると、そこまでは不要と考えている。より高感度化が必要であれば、検討していく部分ではある」とした。

日本のデジタル放送についても「ISDB-T規格は、同じ規格でありながら、ワンセグ/デジラジなどのモバイル向けでも利用でき、高画質のハイビジョン放送でも利用できる点が強み」と説明 各キャリア向けのワンセグ携帯や、ワンセグ搭載電子辞書などを展示していた

□シャープのホームページ
http://www.sharp.co.jp/
□ニュースリリース
http://www.sharp.co.jp/corporate/news/070522-b.html
□関連記事
【5月22日】シャープ、欧州/韓国のモバイル地デジ放送用チューナ
-DVB-H/T-DMB規格に対応
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20070522/sharp.htm
【1月23日】シャープ、業界最小のワンセグ受信フロントエンド
-従来比19%縮小。消費電力は17%低減
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20070123/sharp.htm

( 2007年5月31日 )

[AV Watch編集部/ike@impress.co.jp]


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