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【新製品レビュー】
20万以下/4系統HDMI装備の42型フルHD液晶テレビ
バイ・デザイン 「LF-4201DAB」


7月発売

標準価格:199,800円


 液晶テレビの低価格化が進む一方で、従来の電機メーカーだけでなく、さまざまな新興メーカーがテレビ市場に参入している。液晶パネルやチップセットなど汎用的な部品の組み合わせで製品を仕上げられるデジタル家電時代ならではの現象といえるが、日本国内でその代表格といえるのが「バイ・デザイン」だろう。

 なにしろ、バイ・デザインは、2007年第1四半期の日本市場における薄型テレビの台数ベースシェアで8位(ディスプレイサーチ調査)。国内の大手に迫る勢いだ。台数ベースのため15~20型前半の低価格テレビで躍進を続けるバイ・デザインに有利ではあるものの、世界的な電気メーカーが激戦を繰り広げる日本において、大手ブランドと肩を並べる出荷を続けているという事実は、テレビ市場の変化を感じさせる。

 一方、低価格テレビには、「安かろう悪かろう」というイメージも付きまとう。数年前に大手スーパーなどが、独自に液晶テレビを扱い始めた際にはかなりの不具合報告が行なわれたことも、そうした印象を強めている。

 バイ・デザインがそれらのノンブランド製品よりも一歩上の地位を築いたのは、「デザインへのこだわり」に加え、市場参入の速さや、スーパーやディスカウントストアなどの家電量販とは異なる販路を開拓してきたことなど、様々な要素が挙げられる。だが、機能や画質を前面に製品の魅力をアピールしたことは少なかった。

 そうした点では、同社が7月に出荷を開始した42型フルHD液晶テレビ「LF-4201DAB」は少々趣を異にしている。というのも、「業界初」という4系統のHDMI端子を装備し、同社初の地上/BS/110度CSデジタルチューナを搭載するなど、機能面で充実を図った製品になっているからだ。

 同社では「同じ価格で、1クラス大きい」という製品に力を入れていく製品企画に取り組んでいるが、LF-4201DABもその流れの中にあるといえる。昨年来、価格低下が一気に進んだ37型では、大手メーカーのフルHDモデルで20万円台を切る製品も出てきたが、42型フルHDにおいては20万円台前半の製品も少ない。199,800円のLF-4201DABは確かに最安クラスにあり、大手メーカーの37型の値段で42型が買えるという、「ワンサイズアップ」戦略で買い得感を演出している。今回は、その実力を試してみた。


■ ピアノフィニッシュのしっかりした外装。HDMI 4系統装備

前面パネルはピアノフィニッシュ

 液晶パネルは1,920×1,080ドットの42型フルHDパネル。コントラスト比は900:1、輝度は500cd/m2、視野角は上下/左右178度。応答速度は8ms。

 本体前面はピアノ調の仕上げを施した光沢感ある外装を採用し、スピーカーはアンダースピーカー型。デザインは奇を衒わない衒わないシンプルなもので、好感が持てる。額縁部の光沢処理のため、テレビを見る時に写り込みやすいのは若干気になるが、大手メーカーでも最近光沢処理が流行っているので、バイ・デザインだけの問題ではない。

 個人的にはマットな外装のほうが好みだが、こうしたトレンドを着実に取り入れているあたりが、人気のポイントなのかもしれない。ただし、背面の処理は鉄板むき出しの無骨なもの。業務モニターを思わせるデザインで、これはこれで悪くはないが、前面の丁寧な仕上げを考えるとデザイン上の調和が取れていないように思える。


本体前面 背面のデザインは無骨 右側面に操作ボタンを装備する

 チューナや入力端子は背面にまとめて設置している。チューナは、地上デジタルとBS/CSデジタル、地上アナログ用のF型コネクタを各1系統装備。HDMI端子は横に4つ並んでおり、なかなか壮観だ。HDMI以外にも、D5×1、S映像×2、コンポジット×2、アナログRGB(D-Sub15pin)、アナログ音声×5(ステレオミニ×1、RCA×4)を装備する。いずれも背面に横一列にレイアウトしている。

 やはり、HDMIの充実は大きなアピールポイント。PLAYSTATION 3やBD/HD DVDプレーヤー、ハイビジョンレコーダ、PC、ビデオカメラなど、さまざまなビデオ機器がHDMIに対応している現在、あればあるほどいい端子ともいえる。

 ただ、側面や前面には端子はなく、全ての端子が背面にあり、それも下から上に差し込む配置になっている。画面の大きさからいっても、一度設置すると配線の変更はかなり困難だ。ハイビジョンカメラのような、抜き差しを頻繁に行なうも機器を使用するなら、HDMIケーブルを背面に接続して、ケーブルを前に出しておくなど、設置前に、十分に配線を検討しておいた方がいいだろう。

横一列に各入出力端子を装備。HDMI入力は4系統 2つのリモコンが付属する

メインリモコン

 また、リモコンは通常のリモコンのほか、チャンネル切り替えやボリューム操作に限定した簡易リモコンも付属する。今回はメインリモコンを使用したが、国内大手メーカーのテレビに慣れていると、やや戸惑うかもしれない。

 というのも、本体の最上部に番組表ボタンがあるほか、PinP(2画面表示)だけで、5つのボタンがあるなど、かなり独特なボタン構成なのだ。もちろん、12キーやボリュームボタンの位置には違和感がないのだが、リモコンから独自の設計思想がうかがえる。



■ テレビ視聴や番組表など機能は充実。使い勝手も良好

デジタルメニューからチャンネル設定

 起動時間は約5秒。デジタルテレビとしては、まずまず高速な部類といえる。チャンネル設定などの初期設定は、カーソルキー左上の[デジタルメニュー]ボタンで、デジタルメニューを呼び出して、[機器設定]から受信設定や地域設定、チャンネルスキャンなどを実施する。

 チャンネル切り替えの時間は約3~4秒で、さほど待たされる印象は無い。初めてデジタルテレビに触れる人でも違和感なく利用できそうだ。

 チャンネルはリモコンの12キーでダイレクト選局でき、放送波切り替え用に、地上A(アナログ)、地上デジタル(D)、BS、CS1/2の各ボタンを備えている。

 外部入力の切り替えは、上部のHDMI/D5/AVの各ボタンとカーソル/決定ボタンを利用する。HDMI/D5/AVの各ボタンを押すと横長のGUIがディスプレイ上部に表示され、GUIに示された端子をカーソルキーで選択して、決定する。送り順はデジタルTV/D入力/VGA/HDMI1/HDMI2/HDMI3/HDMI4/アナログTV/AV1/AV2の順番となっている。たとえばデジタルテレビ視聴中にHDMI1ボタンを押すと、HDMI1にカーソルが合った状態でGUIが出画される。ここで決定ボタンを押せばHDMI1に切り替え、カーソルキーを右に3回押して、HDMI4の表示上で決定ボタンを押せば、HDMI4に切り替わるという仕組みだ。

 少々GUIのつくりが独特ではあるが、インターフェイスデザインはなかなか格好よく、問題なく利用できるだろう。ただし、注意したいのはHDMIやD5入力時は、リモコンのチャンネルボタンが効かなくなるということ。HDMIとD端子などの外部入力と、テレビ系の切り替えは別管理となっているため、外部入力からテレビに切り替える際には、各放送のボタンを押して機能を切り替える必要がある。入力が多いだけに、慣れるまでは少々戸惑うかもしれない。

リモコンの入力呼び出しボタン 上部のGUIを利用して入力を切り替える

デジタルメニューでお気に入りチャンネル登録

 また、地上デジタルだけでなく、BSデジタルとCSデジタル放送に対応している。番組表表示だけでなく、データ放送も表示可能だ。さらに、デジタルメニューには好みのチャンネルを登録できる「お気に入り」機能も装備。地上/BS/110度CSデジタルの各放送局から好みのチャンネルをリスト化して登録可能で、NHK BSと日本テレビとテレビ東京など、放送波をまたいだリストが作成できる。登録したお気に入りチャンネルの番組表も表示も可能となっている。

 作成したお気に入り番組表は[デジタルメニュー]の[お気に入り番組表]から呼び出せる。また、青/赤/黄/緑のボタンにお気に入りリストを割り当てられ、デジタルメニューに入り、青や赤のボタンを押せば、作成リストが表示されて、簡単に放送波をまたいだお気に入りチャンネルを呼び出せる。なかなかユニークな機能だ。

 番組表のデザインもグレーを基調とした落ち着いたデザインで、表示サイズも4時間3チャンネルと5時間6チャンネルを切り替えられる。左側にリモコンの操作ナビゲーションを表示するなど、細かいところまで配慮がなされている。番組表の起動も早く、番組の視聴予約やジャンル別検索、キーワード検索機能も装備するなど、機能面で大手メーカー製品に劣るところは見当たらない。

 ただし、番組表やGUIの解像度がフルHDには足りていないようで、若干滲んで見えてしまうのは残念なところ。


4時間3チャンネル表示の番組表 5時間6チャンネル表示の番組表 お気に入り番組表
番組表のジャンル検索も可能 チャンネル別番組表 見るだけ予約(視聴予約)


■ 画質には物足りなさが残る

 それでは、画質をチェックしてみよう。LF-4201DABは、同社のフラッグシップモデルと呼べる製品だが、率直な感想は、大手メーカー製の上位機と比較すると今一歩及ばない。大手メーカー各社が一定の水準の上で、絵作りや階調表現、色再現などの特徴で差別化しているとすると、LF-4201DABでは、その水準にまだ届いていない、といえる。

 デジタル放送を見ている限りでは、その差はさほど顕著ではないが、見慣れたBD/HD DVDタイトルを再生すると、階調表現やコントラスト、色純度、ノイズの見え方など、不満点が散見される。BDビデオ「007カジノ・ロワイヤル」や「パイレーツ・オブ・カリビアン」シリーズなどを見てみると、「このソフトもっと画質良かったはずなのに……」と思ってしまう。

映像モード[標準]。このモードでのみコントラストや明るさの調整ができる

 少し前までは、目立たなかった細かな画質面での不満が、Blu-ray DiscやHD DVDビデオタイトルが発売されたことで、顕著に確認できてしまうということもあるが、やはり画質に物足りなさは残る。

 まず、バックライトの透過光により黒が浮いてしまい、黒に締まりがない。電源を入れて信号を入力しない状態でも、かなり光漏れしており、白っぽく見えるため、暗部の階調表現はかなり厳しい。バックライトの光漏れは液晶テレビでは古くからの問題なのだが、パネルや映像エンジン、バックライトそのものなどの改善により、大手メーカーの液晶テレビでは「黒の締り」が向上している。一方、LF-4201DABは2~3年ほど前の液晶テレビを思わせる黒浮きを感じる。

 また、試用機では、バックライトの輝度ムラが感じられ、四隅が明るく、特に左下がやや緑がかって見えてしまっている。テレビ放送を見ている分にはそれほど気にならないのだが、部屋の明かりを落として、シネマスコープサイズのBDやHD DVDを鑑賞していると、明らかに画面中央下の黒と、画面下左右の黒の浮き具合が違うので、気になってしまう。

 視野角は公称値では上下/左右178度となっているが、視聴距離2m程度で正面から少しずれるとコントラストの低下を顕著に感じる。上下の視野角もあまり広くないので設置位置や視聴環境には注意が必要だ。

 デジタル放送の視聴においては、コントラスト感があってメリハリのある映像が楽しめる。2m程度の視聴距離でハイビジョン放送を楽しむのであれば、十分な画質と感じる。近づいてみると、細かなブロックノイズが散見され、全体的にざわついた印象が残るほか、I/P変換がうまくいっていないのか、輪郭部にコーミングノイズが発生し、線がきちんと表現できていない部分が見受けられる。特に、SDアップコンバートのCMに変わった時などに、輪郭が崩れが顕著で色ノイズが乗ってちらついてしまう。非常に気になるので、ぜひとも改善してほしいポイントだ。

 画質モードは、標準/ドラマ/映画/ゲーム/スポーツの5モードを用意している。リモコンの[設定メニュー]ボタンで、映像設定画面を立ち上げて選択する。ワンボタンで、画質設定を変更できないのは、少々残念なところだ。画質モードは、基本的に標準で問題なさそうだが、彩度をあげたい場合はドラマ、コントラスト感ある映像を求める時にはゲーム/スポーツを利用したい。特に色のりの良い[ドラマ]は標準モードとしても使えそうな出来だ。

 映画モードは出来が良くない。バックライト輝度は落ちるとともに、暗部の階調もバッサリと消えてしまう。一見すると映画っぽいが、たとえばBDビデオ「007 カジノ・ロワイヤル」のボンドとヴェスパーが電車中で食事をするシーンでは、ヴェスパーの髪の毛が真っ黒い塊になってしまう。映画らしい色と輝度ではあるものの、階調が失われるのは如何ともしがたい。映画視聴時もドラマや標準モードを使ったほうがいいと感じた。

 なお、映像設定として、明度/コントラスト/明るさ/シャープネス/彩度/色合いを個別に調整できるが、各項目を調整できるのは、標準モードのみ。標準モードをどのように生かすか、使いこなしも悩ましいところだ。


 また、PinP(2画面表示)機能も搭載しており、デジタル放送とHDMIやD端子、PC入力などの2画面表示が可能となっている。HDMI同士の2画面表示や、HDMI、VGA、D端子を組み合わせたPinPはできない。

 このPinP機能が充実しており、画面サイズは大/小とサイドバイサイドを選択可能で、画面位置は右上/下、左上/下の4カ所の設定が行なえる。いずれもリモコンに専用ボタンを用意している。さらに、2画面の入替や、2画面音声切り替えについても、専用ボタンを備えており、ボタン操作でPinPのほぼすべての機能が活用できる。非常に力の入った機能になっている。ただし、サイドバイサイド時や、子画面について、正しいアスペクトで出力できないこともあり、このあたりはもう少し改善が必要と感じた。

PinP機能 充実したリモコンのPinP専用ボタン


■ 機能は大手に匹敵。「画質にいくら払うか」が問題

 機能面では、大手メーカーに匹敵し、上回っている部分も多い「LF-4201DAB」。PinPの充実やインターフェイスの作り込みなど、安いだけではなく数々の工夫を盛り込んでおり、「単に部品を集めた」だけではないノウハウの詰まった製品と感じる。チャンネル切り替えや操作体系などに大きな不満もなく、うまくまとめられている。

 ただし、画質については今一歩と言わざるをえない。もちろん、デジタルテレビ視聴を中心と考えれば十分ではあり、初めてデジタルテレビに触れる人や数年前の薄型テレビからの買い替えとなれば、満足できる品質だろう。しかし、映画視聴などじっくりと高品位コンテンツを楽しむためには、もう少し画質の向上が必要だ。Blu-rayやHD DVDなどを積極的に楽しみたいという人には、画質にこだわった大手メーカーの製品のほうがお勧めできるのは間違いない。BDやHD DVDが発売されたことで、ディスプレイへの画質の要求水準も一段上がっているためか、各社製品の画質向上は目覚ましいものがある。低価格がウリの製品ではあるが、さらなる画質向上を期待したい。

 とはいえ、「予算の限りで、機能とカタログスペックを持った最大のサイズ」という微妙な消費者心理をターゲットとし、うまく製品とパッケージになっている。消費者のさまざな欲求にこたえる、一つの選択肢として製品が仕上げられており、「必要な人に必要な品質を低価格で提供する」というコンセプトは製品からも感じられる。

 ただし、この夏の商戦で大手メーカー製の液晶テレビにおいても、42型フルHDの値下がり目立ってきている。20万円台前半の製品も出始めており、プラス数万円でより高画質が手に入る市場環境になりつつあるようだ。「プラス数万円で画質」を取るか、「20万円以下で最大サイズ」を取るかという判断が、LF-4201DABの購入時を左右するポイントとなりそうだ。

□バイ・デザインのホームページ
http://www.bydsign.co.jp/
□製品情報
http://www.bydsign.co.jp/products/lf4201dab.html
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(2007年7月13日)

[AV Watch編集部/usuda@impress.co.jp]


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