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テレビ市場において「フルHD」は、すでに重要な要素となった。37型以上のクラスでは、もはや“当たり前”ともいえ、各社がフルHD対応を進めている。 一方、PCディスプレイの世界でも、AV機能を重視したフルHD以上の解像度を有した製品が続々と発売されている。音楽やビデオはパソコンで管理/視聴するという人も増えており、PCディスプレイにおいても、フルHD対応は今後一層重視されそうだ。 6月以降、三菱電機の「VISEO MDT241WG」とナナオの「EIZO FlexScan HD2451W/HD2441W」が発売。8月には、アイ・オー・データ機器の「LCD-MF241X」が発売される。いずれも、24型/1,920×1,200ドットの液晶パネルを採用し、2系統のHDMIやD5入力、HDCP対応DVIを搭載するなど、仕様面の共通項は多い。 しかし、「LCD-MF241X」はリモコンを装備するなど、より手軽にAV機器との連携を楽しめる工夫がなされている。大手量販店では、129,800円程度で予約を受け付けており、AV/PC共用のディスプレイと考えれば、価格もなかなかリーズナブル。今回は、LCD-MF241Xの実力を検証した。
■ 充実の入力端子。デザインは普通のPCディスプレイ
24.1型の1,920×1,200ドットの液晶パネルを採用。PCディスプレイのためアスペクト比は16:9ではなく、16:10となる。応答速度は16ms(中間色6ms)、コントラスト比1,000:1、輝度400cd/m2、視野角は上下/左右178度。 デザイン的には普通のPCディスプレイで、ボディの質感は10万円超の上位製品としてはやや物足りなさが残る。本体前面下部にタッチパネル式の操作ボタンを備えており、左からMENU、ボリューム下/上、HDMI(左向きの三角)、VIDEO(右向き三角)、PC(□)、電源ボタンをレイアウト。 入出力端子は背面にまとめており、映像系は、HDMI×2のほか、D5、S映像/コンポジット、DVI-D(HDCP対応)、アナログRGB(D-Sub 15ピン)の各入力を各1系統装備。音声入力はビデオ系用のアナログ音声(RCA)2系統と、PC用のステレオミニを1系統備える。
ヘッドフォン出力を装備。2.5W×2chのステレオスピーカーも内蔵する。チルト角度は上30度/下5度、スイーベル角度は左右350度、高さは約70mmの範囲で調整可能。USB端子もアップストリーム1系統、ダウンストリーム3系統備えており、キーボードなどを接続できる。スタンドを含む外形寸法/重量は566×228×418~488mm(幅×奥行き×高さ)/10.8kg。 LCD-MF241Xの大きな特徴の一つがリモコン。HDMI/ビデオ/PCの各ボタンを備え、ワンタッチで各入力への切替が可能なほか、画面サイズやモード設定、子画面のON/OFFなどが行なえる。また、内蔵スピーカーの音量変更ができるのもポイントだ。
■ 外部機器利用時にはリモコンが便利 HDMI端子にPLAYSTATION 3とブルーレイDIGA「DMR-BW200」を、D端子にXbox 360を接続して、AVディスプレイとしての実力を検証した。
HDMI×2にDVI-D(HDCP対応)、アナログRGB(D-Sub 15ピン)、D5、S映像、コンポジットと豊富な入力端子を備えるだけに、入力切替にも工夫が施されている。切替はディスプレイ下部のボタン、もしくはリモコンで行なうが、単純な順送り式ではなく、HDMI系とビデオ入力系、PC系(DVI、D-Sub15pin)の各映像ソースごとに管理されている。 本体側で切り合える場合、左向きの三角ボタンがHDMI系、右三角ビデオ系、□ボタンがHDMI系となる。リモコンはHDMI、ビデオ、PCの各ボタンが用意されており、各ボタンを押すと、その入力系統の1つめにの端子に、もう一度押すとその入力系統の2つめの端子に切り替わる。 例えばリモコンでPCからHDMI2に切替える際には、HDMIボタンを1回押して、HDMI1を呼び出し、もう一度押すとHDMI2に切り替わる。合計6系統の入力を、HDMI、ビデオ、PCの種類別に各2系統に分け、それぞれを呼び出せるため、順送り式よりキー操作は少なく、直観的に操作できるようになっている。 PCディスプレイに外部チューナなどを接続して利用する場合、こうした細かな使い勝手の部分で、通常のテレビとの違いを感じさせるのだが、LCD-MF241Xはこの点非常によく考えられている。多目的ディスプレイとしての使いやすさを、しっかり意識した設計と感じる。 入力切り替え時間は約2~3秒で、レスポンスに不満はない。ただし、HDMI接続したブルーレイDIGA「DMR-BW200」に切替えた際は、5秒強の切り替え時間がかかった。HDMIの認証で時間がかかる機種もあるようだ。 レコーダやPS3などを接続してAVモニターとして利用する際には、やはりリモコン付属のメリットが非常に大きい。PCディスプレイとして利用する場合には、1m以下の視聴距離のため、本体のボタン操作に問題はないが、1m以上離れてビデオ視聴する場合などは、リモコンがあるとないとでは使い勝手が全然違ってくる。 接続したチューナでテレビを見る時も、チャンネル間のボリューム差やCM時の音量変化をリモコンですぐにボリューム調整でき、画質設定などもリモコンから行なえる。テレビを使っている時とほとんど変わらない操作性が実現できる、というのは他の製品との大きな違いだ。離れた距離での視聴を重視する人には、リモコンの価値は高い。
■ 画質は良好。ゲームモードやPinPも装備
AV系入力利用時のアスペクトモードは、入力解像度のまま表示する[リアル]、アスペクトを維持したまま1,600×1,200/1,920×1,080ドットに拡大する[スマートズーム]、つねに1,920×1,080ドットに拡大する[ズーム]、1,920×1,200ドットに拡大表示(16:9映像以外)する[パノラマ]の4モードを装備する。 PC入力利用時には、パノラマモードが選択できないが、入力信号の解像度をアスペクト比を維持したまま2倍に拡大する「Dx2D」(ドット2倍ドット)モードが選択可能となる。 アスペクト変更はOSDのほか、リモコンの[サイズ]ボタンで変更できる。基本はスマートズームで問題無いだろう。Dot by Dot表示する[リアル]では、1080i/p、720p、480i/pの各信号に対応する。なお、LCD-MF241Xではオーバースキャン設定がないため、テレビ視聴時などに、上部にノイズが見えることもあるが、これらを覆って見えなくする機能は備えていない。 PC接続時には、付属のユーティリティ「ディスプレイマネージャー」を利用して、画面上で輝度/コントラストなどの設定変更が可能。Windows Vistaのサイドバー用ガジェットも用意する。 映像モードは、標準/映画/CG/写真/文字/DTPの6種類を用意。ただし、6種類すべてが利用できるのはPC接続時のみで、HDMI/ビデオ入力接続時には、標準/映画/CGのみとなる。各モードは、リモコンのモードボタンで切り替える。ボタンを押すと、「クイック・セレクト・バー」と呼ばれるGUIがディスプレイの下部に表れて、確認しながら選択できる。
画質面では、「MFコア」と呼ぶ動画画質改善機能を搭載。コントラストを自動調整し、白飛び/黒つぶれを防ぐ「ACC(アドバンスト・コントラスト・コントロール)」や、ブロックノイズ除去や、3次元Y/C分離、3次元N/Rなどから構成される技術で、HDMIとビデオ系の入力の時に適用可能となっている。
各項目は映像モードごとに調整可能。調整した値は、各入力ごとに保存される。たとえば、同じ標準モードでも、接続する機器にあわせてHDMI1と2で設定を変えて保存ができる。 画質は良好だ。標準モードで、HDMI/D端子入力したBlu-rayやHD DVD、デジタル放送などを視聴したが、大きな不満は無く、ハイビジョン映像をきっちり楽しめた。“PCディスプレイ”と感じさせるようなクセが無く、自然な表示だ。 階調表現もしっかりしており、映像を見ている限り、微妙なグラデーションもきちんと再現できている。グレースケール表示では、若干グラデーションの境界に段差が見えるが、実用上は問題ない。この点では、三菱の「MDT241WG」より好印象だ。大手AVメーカーのテレビ製品と比較しても、バックライトの透過光による黒浮きが、やや目立つ程度。AVディスプレイとしての性能もかなり高いと感じる。 AV入力利用時の映像モードは、標準/映画/CGの種類。テレビ番組の場合は、標準/映画のいずれかで良さそうだ。多くのディスプレイ製品では、映画モードは輝度を落とした絵作りになるが、「LCD-MF241X」では標準とCGのほうが絶対的に暗い黒が表現できる。 ただし、暗部階調の表現では、映画モードがベストだ。たとえば、BDビデオ「007カジノ・ロワイヤル」のボンドとヴェスパーが電車中で食事をするシーンでは、標準モードでは潰れてしまうヴェスパーの影側の黒髪が、映画モードではきっちり確認できる。微妙な陰影を伴う作品であれば、映画モードが最も適している。 標準モードとCGは、輝度はほぼ同じだが、CGはより色ノリのよいしっかりした絵作りになる。映像にメリハリがでてくるのでアニメやゲームなどとの相性は良い。なお、各モードとも、初期状態ではNRをかなり強めに効かしているようだ。ソースによってはやや弱めにしたほうが良い場合もあった。
また、ゲームモードも搭載。ゲームモードON時は、ノイズ除去と3次元Y/C、ブロックノイズ除去の各機能を強制的にキャンセルすることで、フレーム遅延を抑制し、ゲームプレイ時の違和感を解消するというものだ。レースゲームやゴルフゲームを試してみたが、OFFの状態でも個人的にはさほど遅延を感じないので、効果は「あるような気がする」という程度。もっともビデオ視聴でも、HDMIなどのデジタル入力時は、ノイズ除去にさほど気を使う必要もないので、ゲームモードONでも問題ないだろう。
また、PinP(2画面表示)機能も搭載している。PinP可能なのは、PC系(DVI/D-Sub 15ピン)とHDMI/ビデオ系の組み合わせで、親画面がPC系、子画面をHDMI/ビデオ系で表示可能。ビデオ系やHDMI系の同時表示はできない。 PC入力表示時に子画面ボタンを押すと、PinP表示を開始。サイズは3段階、位置は上下/左右の4カ所に変更可能となっている。また、子画面の入力切り替えや、音声の親/子切り替えなどもリモコンのボタンで変更できる。
■ PCもAVもフルHD。リモコンが便利 PCディスプレイをベースにAV機器との接続性を強化した多目的ディスプレイだが、AV機器との接続性に抜かりはなく、きちんと作り込まれている製品だ。画質も文句無く、使っていて、「パソコン用を流用しています」的な部分を感じさせず、完成度が高い。 すでにPS3やレコーダを所有している人にとっては、PC環境の強化と同時に、フルHDのAV視聴環境も入手できる。非常に魅力的な製品といえる。画質も良く、リモコンという競合製品にはない特長も、大きなアピールポイントなるだろう。 AV/PCを問わず、フルHD環境を構築できる「LCD-MF241X」だが、強いて欠点をあげると、デザインがいかにも「アイ・オー・データのPCディスプレイ」なところだろうか。また、スピーカーの音質/出力についても、BDやHD DVDを本格的に楽しむのであれば物足りない。環境にあわせて強化したい。ともあれ、比較的小型サイズでフルHD環境を求めるのであれば、一つの選択肢としてとても魅力的な製品だ。 □アイ・オー・データ機器のホームページ (2007年7月27日) [AV Watch編集部/usuda@impress.co.jp]
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