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秋の新製品発表がひと段落し、年末商戦に向けた各社の新AV製品ラインナップが揃いつつある。最大の商材ともいえる薄型テレビについては、各社意欲的な新製品を発表している一方で、本格的な普及期に入ったこともあり低価格化が進んでいる。 大画面やレコーダなどの周辺機器との連動とが一つのトレンドとなっているが、機能的には横並びになりつつあり、差別化はかなり難しくなっている。そうした中、三菱電機の新REALシリーズでは、一風変わったアプローチで差別化を図っている。 ■ 映り込みを恐れず画質を追及した「DIAMOND Panel」 新REALの特徴は、画質へのこだわり。各テレビメーカーともに高画質化に注力しているが、52/46/40型をラインナップする新REALの最上位モデル「MZW」シリーズの画質への取り組みは他に類を見ないユニークなものだ。
MZWシリーズでは、「DIAMOND Panel」と命名された独自の液晶パネルを採用する。最新のVA系52/46/40型のフルHDパネルに光沢コート処理を施し、コントラスト表現を改善したという独自のパネルだ。これが最大のアピールポイントとなっている。 多くの液晶テレビでは、映り込みを低減する「ノングレア処理」を液晶パネルに施している。このノングレア処理は、液晶表面のTAC層と呼ばれる偏光フィルム層に凹凸を作り、外光を拡散させることで、映り込みを抑制するものだ。 しかし、外部光拡散させるということは、何も表示していない状態でも光を拡散しているともいえる。つまり、「黒」の状態をしっかり表現できないということでもある。映り込みの抑制という利点があるものの、一方で拡散した光による暗部の浮きあがりや画面の白っぽさという画質面での弊害もある。各社ともその弊害を承知しながら、日常的なテレビ視聴で気になってしまう「映り込み」の抑制を優先し、ノングレア処理を導入している、ともいえる。 しかし、新REALでは画質を最重視し、このノングレア処理をあえて省略。さらにパネルに光沢コートを施すことで、黒色の再現性を大幅に向上し、コントラスト表現力を高めている。40型でこうした光沢コートを施したのはREAL MZWシリーズが初めてという。暗室コントラストは3,000:1。光沢コート前面に配した低反射コートの効果もあり、一般的な住環境におけるコントラスト(リビングコントラスト)は1,200:1を確保している。 同様に外光が拡散しないために、色再現性も向上。色再現性はHDTV規格(ITU-R.BT709)比で114%で、10bitパネルの能力を余すことなく表現できるという。また、ノングレア処理を省いたことで、パネル内部からの透過光/映像も拡散せずに、忠実に映像を表示できるため、「本来の精細感を余すことなく再現できる」という。
実際に映像を視聴してみると、各画素の色情報の豊かさ、解像感の高さが確かに伝わってくる。画素がざわつかず、艶やかな光沢ある画面と色の力強さを見ていると(パネル前面にガラスを配した)プラズマを見ているような錯覚も覚える。強力な鮮鋭かつ艶やかな表現力は確かに、既存の液晶テレビとは一線を画すものだ。 ただし、ノングレア処理を省いたことから、当然「映り込み」はかなり多い。通常の液晶テレビでは、“ぼんやり明るい光源”のように拡散される天井の蛍光灯が、蛍光灯の形がわかってしまうぐらいしっかりと映り込んでしまう。映像を表示している時にはさほど気にならないが、暗めの映画を見るときは、やや明かりを落とすなどの工夫も必要だろう。設置時になるべく光源が写りこまないようにする、などの配慮が求められる。 つまり、新REALでは、“映り込み”をあえて犠牲にしながらも、画質を優先したというわけだ。同社AV営業統轄部の吉田泰弘部長は、「画質を求めるのであれば皆が考えているはず。しかし、なかなかできないことだとは思う。たしかに映り込みは増えてしまうが、私たちの規模であればやれると判断した」という。 このパネル自体の製造は三菱電機ではない。しかし、光沢コートや低反射コートも施し、さらにスリムベゼルを実現するための工程なども必要となる。そのため、通常のパネル製造工程に、数段の後工程が加えらえている。同社の要求を元に、カスタマイズされたREALシリーズ専用パネルとなるため、通常のパネルと比べると、当然パネル価格は高価になってしまう。「われわれにしかできない画質を求めた結果(AV営業統轄部 吉田部長)」という。 そのため、販売面でも、画質や使いやすさを訴え、高付加価値製品として展開する予定。店頭の展示についても、画質などを訴求できるよう工夫しながら、販売店と協力していくという。
■ 使い勝手の向上や「ワンサイズアップ」を提案
高画質への取り組みは、パネルだけではない。120Hzの倍速駆動に対応した新開発の映像エンジン「DIAMOND Engine PRO II」を搭載。通常の60Hz映像に補間映像を生成することで動画応答の改善を図る「倍速ピクチャー」技術を導入し、1画素単位で縦/横/斜め方向の動きベクトルを検出、検出したデータをもとに補完映像を作り出し、元映像の間に挿入することで、残像を低減する。また、フィルム素材の24コマ映像から、均等コマ数の補間画像を生成する「なめらかピクチャー回路」も搭載。映画フィルムの動きを忠実に再現する事を可能としている。 音響面では、フロントスピーカーだけで5.1ch音声をバーチャル再現する「DIATONE サラウンド 5.1」や「DIATONE サラウンド HEADPHONE」を搭載。スピーカーユニットは6×12cmと7cm径と小口径だが、「DIATONE リニアフェイズ」技術により、音の特性をデジタル処理により移相補正して、クリアで抜けの良い音を実現する。出力は10W×2ch。 新たにパイプオルガンと同様の倍音技術により、重低音の再現性能を高める「DIATONE BASE」を搭載。ユニットの再生能力としては、150Hz程度までしか出力できないのだが、聴感的には大口径ウーファに迫る低域を実現できるという。
スピーカーが小口径となるのは、「映像以外なにも見せたくない」というデザインコンセプトを最重視した結果でもあるという。ベゼル部が細いデザインもそうした考えによるものだが、同時に「通常の37型の設置スペースに42型がおける」というワンサイズ上の設置が可能というポイントも販売時に強く訴求していくという。 MZWシリーズだけでなく、10月に発売する32型のMXW/MXシリーズもこうした「ワンサイズアップ」可能なデザインを踏襲している。 また、新REALシリーズでは、同社のDVDレコーダ「DVR-DV735/DV745」とのHDMI連携が可能なREALINK(リアリンク)を搭載し、AVシステムとしての使い勝手も向上。REALINK独自の機能としてワンボタンで、その番組終了までを録画/追っかけ再生する「番組ポーズ録画」機能を実現。今見ている番組をワンボタンで録画開始し、番組が終了すると自動的に録画を終了する「一発録画」機能も搭載している。さらに、使い勝手の向上を図った「グット楽リモコン」をレコーダ側に同梱するなど、使いやすさへ配慮した製品展開を図る。 「使いやすさ」と「画質」をテーマに、付加価値を訴える新REALシリーズ。AV新製品発表会では「AV事業をしっかりやる」と宣言したが、新提案をどこまで市場に浸透させることができるのか。年末商戦に期待したい。
□三菱電機のホームページ ( 2007年10月18日 ) [AV Watch編集部/usuda@impress.co.jp]
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