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株式会社東芝は、DVDへのHD映像記録規格「HD Rec」に対応した新HD DVD/HDDレコーダ「RD-A301」を12月中旬より発売する。価格はオープンプライス。店頭予想価格について東芝DM社の藤井美英社長は、「価格はオープンなのでお店が決めることですが、私の期待を込めて10万円を切ってほしい」とした。 HDD容量は300GB。HD DVDドライブは、HD DVDビデオソフトの再生と、1層/2層HD DVD-R記録が可能。DVD-R/RW/RAMへの記録にも対応するが、カートリッジ式のRAMはサポートしない。チューナは地上/BS/110度CSデジタルチューナを各2系統と、地上アナログチューナを1系統装備する。 ■ HD DVDはデジタルコンバージェンスの中の一つ。年内終戦は撤回
東芝執行役上席常務 デジタルメディアネットワーク社 社長の藤井美英氏は、「テレビ事業が不振で肩身が狭い」と本社での発表会に至った経緯をユーモアを交えて説明し、「BDの悪口を言わないと収まらないようなので、新製品発表会の前座ということで、少しだけ語らせていただきます」と切り出し、HD DVD事業戦略について説明した。 まず、1月にBlu-ray Disc Associationのプレゼンテーションで使われたスライドを参照し、「彼ら(BDA陣営)は、“HD DVDは今頃無い。だからフォーマット戦争は終わっている”と、1月に主張していました。しかし、BDが予想したような、HD DVDが年末に無くなるという状況は残念ながら起きていない」とコメント。北米市場の民生用プレーヤー(PS3を含まず)でシェア55%、北米で300タイトル以上などのHD DVDの状況を紹介した。 さらに、欧州市場でのスタジオの支持の高さや、プレーヤー(PS3含まず)で70%というシェアをアピールし、「われわれの理解ではコンテンツの制作コストがBDの半分。BD-JAVAの制作コストが特に大きい」と説明。なお、プレーヤー1台あたりのタイトル購入数については、「Blu-rayの3~4倍。まあ、この数字はインチキで、われわれも都合のいい時だけPS3の数字を入れます。これもPS3込みの数字ですから、あまり気にしなくてもいい」とユーモアを交えて解説した。
さらに、PCにおけるHD DVDサポートの強化など、今後の戦略を紹介。「20万台のHD DVD搭載PCが北米でこの年末販売され、2008年にはHD DVD搭載機が500万台を超えるだろう。われわれもPCにHDMIを搭載しており、PCで映画を見るという文化も広がりつつある。PCそのものがプレーヤーになってきている」と語る。 また、「ある会社は“BDだけで”と言っているようですが、30GBとか50GBとか、ではやはり足りない。やはり録画はHDDで、残したいものを光ディスクに残す。NANDフラッシュもあり、遠い先は光ディスクもHDDもなくなる時代が来ると思いますが、当面は光ディスクとHDDを使い分けていく」と東芝の記録メディア戦略を紹介した。
RD-A301については、「目玉は価格。オープンプライスで、お店が決めることですが、皆様が“期待していた価格”があると思います。ヒントを言うと、私の期待も込めて、やはり10万円を切ってほしい」と紹介。「プレーヤーは199ドルが“マジックプライス”。ただ、レコーダではそれは無理。レコーダは“やっぱり10万円”と皆さんがおっしゃる。HDD無しで10万円を切った製品があるので、“BDが10万円を切った、東芝は2番目に10万円を切った”と書かれるかもしませんが、(RD-A301は)HDDに何度でも録画でき、DVDにもHD DVDにも焼けるという製品。みなさんの期待に応えた価格で12月中旬に出したい」と訴えた。 また、日本のレコーダ市場における次世代DVDシェアを「わずか1.8%」と紹介、「ハイデフだけではだめ。家庭のどこでもハイデフを楽しめる。そのためのインタラクティビティや、ネットワークをIT産業や映画産業と組んで作っていきたい。それがHD DVDの願い。最近は“CEとITの戦いだ”とか、わけのわからないこと言われていますが、ハイデフのコンテンツをさまざまな場所で楽しめる、大きなデジタルコンバージェンスの中でHD DVDはどうか、という話をしている。そうした違いを、消費者の方々に理解していただけるようにがんばりたい」と語った。 なお、BDとのフォーマット戦争については、「今年中に戦争を終わらせると言いましたが、これは無理ということで、『撤回』とさせていただきます。もう少し長い目でやっていきたいなと思っています」と、フォーマット戦争が継続することを認めた。
■ HD DVD市場を「トランスフォーム」 なお、東芝とパラマウントは、年末に向けて共同でキャンペーンを実施。HD DVD製品購入者にHD DVD「トランスフォーマー」などプレゼントする。
パラマウント ホーム エンタテイメント ジャパンのセールス・デパートメント ディレクターである加茂克也氏は、HD DVD市場を「トランスフォームさせていきたい」と宣言。「アメリカではトランスフォーム、つまり“変革”を達成した」とし、第1週目で19万枚という北米市場での「トランスフォーマー」の販売実績をアピール。「ザ・シューター」や「トップガン」などの新タイトルを紹介した。 HD DVD独占供給の決定の理由として、「複製コストの少なさ」、「安価なハードウェア」、「ツインフォーマット」、「コンボディスクなどの多様なディスク方式」、「HDiによるインタラクティブ機能」などを列挙。12月19日に日本での発売を控えた「最強ラインナップ」として「トランスフォーマー」と、「スタートレック 宇宙大作戦」をアピール。HD DVDのPinPやネットワーク機能についても紹介した。 また、VARDIA購入者に「トランスフォーマー」HD DVDをプレゼントするというキャンペーンについて言及。特別に制作したRD-A301購入者向けのVARDIAレッドのフィギュアを紹介し、「多くの方にトランスフォーマーを届けたい」とアピールした。
■ HD Recは「パラダイムシフト」
また、東芝DM社 デジタルAV事業部の所寛之事業部長が、HD DVDの市場予測とともに、VARDIAの戦略を解説。VARDIAのラインナップについては、「A、S、Eとベンツのような構成」と紹介し、「テレビとの連携」、「高効率圧縮記録」、「ダビング10対応と充実の編集機能」、「次世代DVDの録画/再生」を軸に、新RD-A301をアピールした。 HD Rec機能については、1,920×1,080ドットのフルHD解像度でも録画可能な点や、無劣化のAAC形式で5.1chのデジタル放送音声を記録できる点をアピール。画質設定も47段階と柔軟な選択が可能なことを紹介。 また、今後HD DVD対応VARDIAの新モデルとして「RD-A102」、「RD-X7」の2モデルの投入計画を予告。詳細は「後日」としているが、RD-X7は、1080/24p出力やDeep Colorに対応し、高画質化回路を内蔵した上位モデルとなる予定。
東芝DM社 デジタルAV事業部 DAV商品企画部 商品企画担当 グループ長の片岡秀夫氏は、HD Recの採用を「パラダイムシフト」と表現。「消費者にとって大事なことは何か? ハイビジョン番組を安く保存できることではないか」と問いかけ、HD Recへの対応を「どこでも買える、今お使いのDVDにそのまま記録できる。消費者不在の競争からの脱却。ハイビジョン時代のレコーダのあるべき姿にたどり着いた」と語った。 BD陣営が採用しているAVCRECとの違いを説明するとともに、「DVDにHD記録できるとHD DVD-RやBD-Rが売れなくて困らないのか?」という疑問には、「BDは困るかもしれないが、HD DVDは困らない」と説明。HD DVD-R、DVD-Rの共用が可能などのコスト競争力の高さを訴えた。
なお、HD DVDとBDのコンボプレーヤー/レコーダについて、藤井氏は、「東芝としては可能性は無い。ドライブはあっても、“BD-JAVA”と“HDi”の2つを同時にサポートしていくということは厄介だと思う。199ドルのプレーヤーを作るとか、それ以下の価格で実現するとなると、安価なLSIでメモリの容量も減らさないといけない。だが、PCにおいては、現実的だと思う。両対応プレーヤーを出している会社もあるが、BDが良ければこんなことはやらない。将来の布石としては(両対応の会社には)期待もしている。最終的にはシェアがどうこうというよりは、消費者に決めてもらうのが一番いい」とコメントした。 □東芝のホームページ ( 2007年10月31日 ) [AV Watch編集部/usuda@impress.co.jp]
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