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ニンテンドーDS/DS Lite用のワンセグチューナ「DSテレビ(NTR-016)」が20日より発売された。同社直販サイトのみでの販売となっているが、11月8日の予約開始時には、予約が殺到し、注文サーバーにアクセスできなくなるほどの人気を集めた。
10月25日の任天堂決算発表資料によれば、DS/DS Liteをあわせた全世界での累計販売台数は5,364万台、日本国内だけでも1,971万台。携帯電話以外では、もっとも普及しているモバイル端末といえるDSで、ゲームだけでなくワンセグ受信までしてしまおうというのが、今回発売された「DSテレビ」だ。 折しも競合プラットフォームの「PSP(プレイステーション・ポータブル)」が、9月に発売した新型「PSP-2000」で、ワンセグチューナに対応。PSP用ワンセグチューナの価格も6,980円とDSテレビとほぼ同じだ。PSPが、テレビCMで積極的に「大画面ワンセグ」をPRしていただけに、「ゲーム機でワンセグ」の土壌も整いつつある。DSテレビの実力を試してみよう。 ■ 少々大きめのDSテレビ本体 パッケージには、ワンセグテレビ本体のほか、専用のカバーのほか、外部アンテナが同梱されている。 DSテレビの外形寸法は、45.3×16.5×110.5mm(幅×奥行き×高さ)、重量は40g。本体部は中央から折り畳み可能となっており、上部には伸縮式の2本のロッドアンテナを収納、下部はDS/DS LiteのDS用カードスロット用の接続部となっている。ニンテンドーDS Liteと組み合わせて利用した場合の重量は258g。 DSのカードスロットに差し込むだけで装着完了。取り外す際は、右脇のロック解除ボタンを押しながら本体側に押し込んだあと、引っ張る。このボタンの傍らに、外部アンテナ用の接続端子を備えている。 アンテナ部は、DS本体に対して垂直位置に設置できるほか、DSの背面にぴったり合わせるなど、最大270度の可動域を有している。また、ロッドアンテナは、2段階に収縮可能で、左右に最大90度ずつ倒すことができる。これを各45度開いた形となる「縦V字ポジション」が任天堂の推奨利用環境となる。 装着時の重量バランスは、通常のDS利用時とはさほど変わない。正面から見てもアンテナが見える程度なので、視聴者側からの違和感は少ない。ただし、背面や側面から見るとDS本体に対して、かなり大きくはみ出しているので、デザイン的には少々野暮ったい。また、アンテナを真横に倒すと、DS本体からかなりはみ出してしまうので、電車内での利用では、隣の人に迷惑をかけないよう注意が必要だ。
■ 2画面を生かした操作体系
DS Liteに接続して電源を入れると、接続確認画面が出た後に、DS Liteの下の画面にチャンネル設定画面が現れる。DSテレビの各種設定、操作については、この下のタッチパネル液晶を用いるようになっている。チャンネル設定は、エリア選択方式のほか、全局スキャン(オールサーチ)の2方式が用意されている。 チャンネル設定が終わると、下の液晶に登録されたチャンネルが表示される。各チャンネルボタンを押すと、チャンネルが切り替わる。切り替え時間は4~6秒。決して速くないが、切換え中にアニメーションを表示するなどの工夫を行なっており、体感的にはさほど待たされる印象はない。 また、チャンネル設定の[オリジナルセット]に6つまでのチャンネル情報を登録可能となっている。旅行/出張先などのセットをあらかじめ作っておけば、ここで切り替えるだけで、その地域でワンセグ放送を視聴可能となる。
チャンネル表示の右脇に、字幕のON/OFF切換えと、番組情報表示、電波計(チューナ感度確認)、各種設定呼び出しなどのボタンを用意している。 表示画面は横位置だけでなく、縦位置表示も選択できる。表示向きの切り替えは、DSのSELECTボタンを利用する。また、アスペクトモードはSTARTボタンを利用し、16:9、4:3の切り替えが可能となっている。 番組表(EPG)機能は備えていないが、チャンネル表示脇の[i]のボタンで視聴中のチャンネルの番組情報を確認できる。同画面で、次に放送予定の番組も表示される。また、電波計では、受信状態をアナログメーター風の画面で確認できる。
チャンネルリスト右脇の各種設定ボタンを押すと、チャンネル、映像、音質、デザインの各設定画面へのショートカットが表示される。映像設定では表示枠や表示の拡大/標準切換え、画面輝度設定が選択できる。字幕表示はできるが、データ放送や番組表表示には対応しない。また、録画機能も備えていない。 画質は、[標準]でも、色ノリが強く、コントラストをかなり強調した絵作りになっている。[あざやか]、[おだやか]の各画質モードも用意されているが、特にあざやかだと、青空のグラデーションなどで際に等高線上の階調の乱れが出やすくなる。
一番バランスがいいのは、[標準]だが、ちょっと色が強すぎると感じたら[おだやか]に変更するといいだろう。また、輝度は十分に高いので、電車内などでも問題なく番組視聴が可能だった。 ■ 受信感度は十分だが、モバイル利用に課題も
感度はまずまず。東京千代田区のビル内の編集部では、ほとんどのチャンネルが映ったが、電波の弱い東京MXテレビは、外部アンテナを利用してもほとんど受信できなかった。調布市の自宅でも、主要チャンネルはほぼすべて受信でき、固定テレビとして使う分にはほとんど問題がなかった。外部アンテナを利用して利用すれば、時折生じていた画像の乱れも無くなり、セカンドテレビ的に利用できる。 調布市の自宅から京王線に乗り、笹塚まで移動してみたが、ロッドアンテナをきちんと伸ばさないと受信が安定しない。アンテナを伸ばすと、ほぼすべてのチャンネルが受信可能となったが、時折音声や映像が途切れることがある。特に、対向車両通過時や、駅停車時に途切れがちだ。 主に、推奨環境の横位置/V字型でテストしたが、着席時、立っている時、など、利用状況によってかなり受信状況が変化する。アンテナを調節すると、途切れていた映像が見られるようなこともあるが、やはり数分に1回は途切れてしまう。番組の内容を理解するにはほとんど問題ないのだが、それでも、もう一歩受信性能を強化してほしいと感じた。 ただし、電車利用時に最も気になったのは感度ではない。DSテレビ自体が大きく、特に背面や側面から見るとかなり奇抜なデザインなので、目立ちやすい。電車内でDSをプレイする人は珍しくないとはいえ、飛び出したアンテナ部は気になるようで、「あの人のDSなんか……」的な視線が気になる。また、アンテナがかなり伸びるため、特に立って利用する場合は、隣の人の邪魔にならないようにしたい。立って利用する場合は、縦位置で利用するのも有効だ。
さらに、かなりDSから出っ張ってしまうので、利用しない時は、DS本体から外して、DSテレビ専用カバーを取り付けて収納するのが最適だ。「少々大きめのDSテレビをどうモバイル環境で扱うか」と考えると、うまくチューナを本体をデザインマッチさせているPSPや、そもそもチューナを内蔵している携帯電話と比べると、見劣りしている。主要な用途が、通勤用テレビの場合は、他の選択肢も考慮しておきたい。 なお、テレビ視聴中にDS本体のふたを閉じると、「聞くテレビモード」に切り替わり、映像出力を切り、音声だけを聞くことができる。ラジオ替わりに利用でき、バッテリ駆動時間も向上するので、ニュースなどを流し聞きする時には重宝しそうだ。 バッテリ駆動時間は、ニンテンドーDS Lite利用時で、約5時間(最低輝度)/4時間30分(低輝度)/4時間(高輝度)/3時間30分(最高輝度)。実際にDS Lite/標準モードで、明るさ[中]で視聴したところ、約5時間弱で視聴停止した。 ■ DSらしい、ユニークな付加機能
DSテレビの特徴的な機能としては、タッチスクリーンを使ったインターフェイスだけでなく、「enjoyツール集」という名称の各種ツールがあげられる。[読むTV]、[メモ]、[TVの旅]、[ツボTV]、[TVやん]、[G&W]の各機能が用意されている。 読むTVは、テレビの字幕部を一時記憶しておき、それを後で確認できるという機能だ。たとえば、相撲中継やNHKの連続ドラマなどでは、ほとんど字幕が入っているので、あとから見ても内容を確認できるし、ニュースも字幕だけで内容を知ることができる。数分に1回は番組の1画面のサムネイルが保存されるため、番組の雰囲気も感じられる。なかなかユニークな機能だ。 保存可能な字幕情報は約30分。ただし、DSの電源をOFFにすると字幕情報も消去されてしまう。 メモは、その名のとおりタッチスクリーンを使って書いた手書きメモを保存する機能。上部のボタンで表示中のワンセグ画面を静止できるため、止めた画面の電話番号などをメモするなどの活用も可能だ。
TVの旅は、チャンネル設定した地域の情報をDSテレビに格納しておき、旅の履歴として確認できるというものだ。DSを常に持ち歩く、という人にとっては自分の行動範囲の備忘録としても使えるわけで、なかなか面白い提案だ。[G&W]は、ゲームウオッチのゲームをプレイできるというもので、[Fire]というゲームがプリインストールされている。 ツボTVは、疲れ目や、眠気などの症状に合わせて、効くツボを表示してくれる。効果のほどは、ひとそれぞれだろうが、話のタネにはちょうどいい。TVやんは、「テレビを仲間と一緒に見る」という機能。DSの無線機能を使って皆で会話するという意味かと思ったら、白黒のキャラクターが、[このテレビ見たかった」とか、「おはよう」とか、下の画面で言葉を交わすだけ。正直あまり使い道は感じなかった。
■ DSならではのワンセグの楽しさ 録画や番組表などは備えていないが、“テレビをライブ視聴する”というシンプルな機能を、DSらしい楽しい操作方法で実現している。これがDSテレビの最大の魅力と言える。価格も6,800円とリーズナブルだ。 ただし、本体がやや大きいため、毎日通勤/通学電車で楽しむ、という使い方であれば、携帯電話やPSPのほうが手軽。モバイル利用時の、取り回しや収納方法などは工夫が必要だ。もっとも、全ての機能をDSにまとめたいという人にとっては、魅力的な製品となるだろう。 利用シーンとしては、たとえば、リビングのテレビは家族が見るので、セカンドテレビとしてDSを活用する。あるいは、ライブで見たいスポーツを外出先で楽しみたい、といったニーズには、きっちりと答えてくれる。特に外部アンテナを利用することで、受信感度は大幅に向上するので、「卓上テレビ」的に自宅や外出先などに設置するなど、さまざまな応用が想定される。 据え置きにするのであれば、録画機能も欲しいところだが、いろいろ要求していくと、他のワンセグ端末とさほど変わらなくなってしまう。あくまで、DSというプラットフォームがあり、その上でリーズナブルに、如何にしてDSならではのワンセグ体験を実現できるのか、ということを考えた製品といえるだろう。 無理な小型化を目指すのではなく、パソコンや携帯電話とは一風異なる新しいワンセグ環境を実現したという点で、DSテレビはユニークな製品に仕上がっている。 □任天堂のホームページ ( 2007年11月20日 ) [AV Watch編集部/usuda@impress.co.jp]
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