◇ 最新ニュース ◇
【11月30日】
【11月29日】
【11月28日】
【Watch記事検索】
ソニー、ストリンガー会長が会見。「BDこそが最高」
-「クリエイティブ分野に投資する時期に」


ハワード・ストリンガー会長兼CEO

12月11日開催


 ソニーのハワード・ストリンガー会長兼CEOは11日、東京・品川の同社本社で会見し、同社の現状などについて言及した。「CEO就任初年度は、財務面から体制づくりを行ない、足固めをした。2年目は経営の観点から組織に手を加え、横断的に動きができる組織へと手直しした。そして、いまは、イノベーションに集中するタイミングがきた。すでに厳しい変革はやり終えている。クリエイティブの花を開かせる方向に、エネルギー(投資)を向ける時期だ」などとした。



■ 営業利益5%に向けて着実な進展

Rolly

 冒頭、ストリンガー会長は、2007年の業績に触れ、「ソニーのエレクトロニクス事業にとっては好調な年であった。とくに、2007年度第2四半期は飛躍的な成長を遂げ、上半期の営業利益率は7%に近づいている。Blu-ray Disc、デジタルミュージックプレーヤー、有機ELテレビ、Rollyといった、ワクワクする新製品を投入できた。また、北米では、ブラックフライデーを含む週末も大変好調な販売実績となり、液晶テレビではナンバーワンシェアを獲得。中国でもBRAVIAがトップとなった。だが、日本のテレビ市場においては、シャープが健闘しており、まだ1位とはいえないのが残念だ。さらに、携帯電話のソニー・エリクソンも、全世界4位となり、欧州では第3位、英国では1位になっている。5メガピクセルのサイバーショットケータイを心待ちにしている人が多く、ウォークマンケータイもいい動きをしている」と説明した。

 また、年末商戦にかけても「大幅な販売増を予想している。為替の影響やサブプライムローンの影響、市場の不透明感の影響を指摘し、神経質な見方もあるが、それらは、来年にかけてのものであり、いままでのところは良好。ソニーのエレクトロニクス事業は影響を受けておらず、小売店では予想よりも動きがいい。5%の営業利益率達成の軌道において順調である」などとした。



■ ドバイの投資会社の出資は信任投票

 会長兼CEOに就任してからの約2年半については、「過去については、難しい時期もあった。上級管理職のひとりが、もしかしたらこれまでは財務実績ばかりに心配しすぎているのではないか、と指摘したが、私は、まず我々の財務実績を安定したものにし、正しい方向に向けることが必要であると答えた。このマイルストーンは達成しつつある。最近、DIC(Dubai International Capital)が、ソニーに対する投資を決めたのは、財務実績に対する評価であり、信任投票のようなものと受け止めている。5%という営業利益率目標を達成する上で、その取り組みが評価された。海にいるサメに恐れることなく、安全にビジネスを進めることができる状況にある」と喩えた。

 また、「安心とともに、自信、確信をもって事業に取り組めるようになると、それをベースにクリエイティブを発揮できるようになる。ソニーの全体を包むムードもより明るく、より強くなっている。イノベーションを引き出すような大変いい雰囲気が出ている。これこそが待っていたものである。ただし、改革を急ぎすぎてはならないと考えている」とした。

 さらに、「研究開発の成果を、いち早く製品につなげ、実用化していくスピードが大切。製品化へのスピードという点では、さらに努力を要する」と指摘。「創業者の井深大氏は、“資源は常に限られている。だからこそ、利益をあげていない部門に対しては、勇気と意欲をもって手を引くべきであり、それによって、資源を競争力のあるところに振り向けることができる”、と明言している。競争力を維持するためには、タフであることが重要。ソニーは、創業の段階から、井深氏も、盛田氏がタフにやり続けてきたが、その事実を忘れてしまいがちだ。タフであることは正直さ、率直さの現れであり、果敢に取り組んでいく」と、今後も構造改革の手を緩めない姿勢を見せた。

 今後については、「2週間は日本にいて、1週間はニューヨーク、残り1週間はほかで過ごすというスケジュールはこれからも変わらない。日本人は、私を英国人と見ているが、英国人は私を米国人だと見ている。そして、米国人は私がどこの人間だかわからないと思っている。そろそろ私自身も、厳しさよりも、楽しみを享受したい。すでに厳しい変革をやり終えているといえる。しかし、自己満足度をして、止まるわけにはいかない。常になにかやらなくてはない緊張感が必要である」とした。

 ストリンガーCEOは、「東京に帰ると、家に帰ったようにくつろげる。将来、引退した時には、東京のスポークスマンになれる」としたものの、「これは、近い将来の話ではない」として、会長兼CEOとしての職務に留まることを示した。



■ 来年は米国でも有機ELを投入へ

 一方、主要な製品についても言及した。

 PLAYSTATION 3については、「世界的に好調な販売実績を維持している。米国では週あたり20万台を出荷し、欧州でも同様に週20万台を出荷。日本ではやや少ないものの、週5~6万台のレベルで推移している。とくに、40GBモデルを導入してから、販売が大幅に伸びており、米国では前年同期比300%の伸びとなっている」とした。

有機ELテレビ「XEL-1」

 また、有機ELテレビについては、「有機ELのテレビの販売は限定的なものであり、いまは、大量生産を可能にするプロセスの構築に着手している。現時点では、日本だけで限定的な販売をしているが、来年には米国でも限定的な販売を始める。ただし、米国での具体的な発売時期や、その他の地域での発売時期は明確にはできない。ソニーにとって、有機ELは象徴的な製品である。有機ELは、驚異的なイノベーションを体現したものであり、初めて見ると、とにかく感嘆の声が出る。ソニーが誇れる技術」とした。

 Blu-ray Discについては、市場データを紹介しながら優位性に言及。「Blu-ray Disc対応機は、11月24日現在、北米でPS3を含めて270万台を出荷した。HD DVDは75万台に留まっている。また、Blu-ray Discの映画ソフトの販売実績は、2対1でHD DVDを凌いでいる。米国で販売しているソフトタイトルでもBlu-ray Discは73%を占めている。さらに、欧州では、Blu-ray Discが3対1で上回っており、日本でも、次世代ディスクレコーダーのうち97%をBlu-ray Discを占めている」と強調。

 さらに、「ソニーは、全面的にBlu-ray Discにコミットしている。Blu-ray Discこそが最高の画質を提供するものであり、著作権保護でも最も確実である。また、容量も大きく、提供する映画も一番面白く、最高のタイトルがBlu-ray Discにある。Blu-ray Discこそが消費者に選ばれるフォーマットであると確信している」とした。



■ ソフト開発体制の強化を自己評価

 今回の会見では、ソフトウェアに対する取り組みに関して、自己評価するコメントが多かったのが印象的だ。

 「ソフトウェアエンジニアが、新製品の設計、開発といった全体プロセスの初期段階から参画する体制が整った。また、すべての製品グループのなかで、ソフトウェアアーテキクトが確固たる地位を持つようになった。多くの製品が、シームレスにつながるような提案ができるようになったのもソフトウェアエンジニアの努力によるところが大きい。来年、本格的な運用を開始するプレイステーションネットワークは、その如実な例であり、これも、ソニー・コンピュータエンタテインメント、ソニーピクチャーズ、ソニーオンラインエンタテインメント、そしてソニーのエレクトロニクス部門のソフトエンジニアが一堂に会して、協業したからこそ実現したものだ」と自信を見せた。

 また、「ソニー・エリクソンは、ソニーミュージックと緊密な関係を持ち、1曲99セントで配信するといったサービス以外に新たなものができないかといったことを模索している。いま、社内ではソニーテクノロジーウィークを開催している。社内に限定して、技術成果を展示しているものだが、どの展示を見ても、ソニーのソフトウェアエンジニアが関わり、スムーズにネットワークにつなげるアプリケーションが採用されているのを目の当たりにできる。これはソニーの抜本的な変化ともいえるものだ。ソフトを通じたSony Unitedを実現し、ソフトの領域においても、マイクロソフトやアップルといった最先端のソフト企業と競合できる会社になっている。ソニーは、従来型のエレクトロニクスの会社に比べて、強力なものに進化した」などとした。

 これまでの取り組みについて「ソニーの偉大さとは、アナログの世界における偉大さであった。また、初めて、デジタルドリームキッズの世代がくるということを公表したという点でも偉大であった。だが、発表するだけでは事足りない。それ以上のことが求められる。つまり、内部での革命が必要とされた。ソニーは、それに向けて、構造改革や再建に取り組んできた。2年前には痛みを伴うレイオフも実施した。デジタル化への移行は、いわば世代的な変革を意味する。その点でソニーには難しさを伴った。より年齢が上の社員や、エグゼクティブがいたためだ」と振り返る。

 加えて「私は、米国において、ソフト産業に携わってきた歴史的背景があるので、それをベースにより若い世代とコネクトすることができた。私の重要な仕事は、若いソフトエンジニアを、勇気づけることであり、ソニーのなかにより引き込んでいく。既存のハードエンジニアと新たなソフトウェアエンジニアの双方の才能を融合することで、Sony Unitedを実現し、それがデジタル革命のなかで有効に作用した。いまは、ソフトとハードのエンジニアは、熱心に付き合っている男女のようで、好意と情熱を持っているが、まだ結婚はしていない。近く結婚することになる」と、ソフトウェアの成果を強調した。


□ソニーのホームページ
http://www.sony.co.jp/
□関連記事
【2006年6月26日】ソニー、新経営体制1周年。ストリンガー会長らが会見
-「心のV字回復で復活へ。PS3/BDはリスクを負い実りを取る」
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20060626/sony.htm

( 2007年12月11日 )

[Reported by 大河原克行]


00
00  AV Watchホームページ  00
00

Copyright (c)2007 Impress Watch Corporation, an Impress Group company. All rights reserved.