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「ダビング10と補償金は不可分」権利者団体がJEITA批判
-Blu-rayにも補償金で「親孝行を」


12日にJEITA町田会長から書簡が届く

12月17日発表


 デジタル私的録画問題に関する権利者会議28団体と社団法人実演家団体協議会加盟59団体の87団体は17日、コピーワンス問題と補償金制度に関する合同記者会見を開催した。

 87団体が維持と適用機種の拡大を求める私的録音録画補償金制度について、同制度を不要と主張する社団法人電子情報技術産業会(JEITA)と対立。地上デジタル放送の新録画運用ルールである「ダビング10」に関しても、私的録音録画補償金制度の維持が前提と訴える87団体に対し、JEITAは補償金不要を訴えていた。

 そのため87団体は、JEITAに対し公開質問状を送付。質問状は、「コピーワンス緩和の合意を破棄するのか」、「合意を破棄する場合いかに消費者に説明するのか」、「なぜ、補償金不要論を中間答申策定以後の、いまになって主張するのか」など7項目を記載し、12月7日までの回答を求めていた。しかし、JEITAからの回答はなかった。



■ JEITAは質問に回答しないが、会長名義の書簡が届く

実演家著作隣接権センター 椎名氏

 実演家著作隣接権センターの椎名和夫氏は、公開質問状送付後の事実関係の推移について説明。11月20日の「総務省 第27回デジタルコンテンツ流通の促進等に関する検討委員会(以下デジコン委員会)」ではJEITA側委員からの発言は無し、同27日に開催された28回「デジコン委員会」でも発言無し、11月28日開催の文化庁「第14回私的録音録画小委員会」でも回答が無し。さらに、12月7日の回答期限にはJEITA担当者がINTERNET Watchのインタビューに答えて公開質問状には回答する気がないことを言明している。

 しかし、その後の12月12日に、JEITA町田会長からの公開質問状に関する書簡を受領。期限までに回答しなかった理由と、18日開催の文化庁 第15回私的録音録画小委員会にて回答する旨が、記載されていたという。

 椎名氏は、「12月7日の取材記事において、公開質問状を場外乱闘になぞらえ、回答する気がない旨の発言をされたことについては極めて遺憾であり、憤りを禁じ得えない」と指摘。これまで総務省が「コピーワンス緩和問題」を、文化庁が「私的録音録画補償金制度」と公開の場を分担してきたが、椎名氏は「2つのこの議論は不可分。社会的制度として同じ背景のもとで同じ場で議論するべきと考えた。決して場外ではない、公開の場で私たちは質問をしている」と訴えた。

 また、「JEITAは、技術的保護手段の下での私的録画については、“権利者の経済的不利益は発生せず補償の必要はない”と権利者への対価の還元の必要性を否定する一方で、“放送事業者が広告収入から契約により権利者に還元するべき”とも主張している。矛盾した主張で、結局JEITAは私的複製に利用される機器を販売して大きな収入を上げながら、権利者への対価の負担を回避するためだけに言を左右しているだけ。JEITAの持つ社会的責任に照らしても誠に残念なもの」と批判。さらに椎名氏は、「JEITAでは、“担当者の意思疎通ができている”と言っているが……」としながら、町田会長からの書簡を掲げ、「じゃあ、これはなんですか? 返事する必要がないとしながら、5日経った後で会長からこういう書面がでてくる。本当に一枚岩なのですか? 」と問いかけ、「今必要なのは、利己的な叩きあいではなくて、現実的な仕組み作り」と訴えた。

 また、文化庁と総務省における2つの委員会の議論に参加しながら、「一方で賛成、一方で反対というのはいかがなものなのか? JEITAは自らの一貫性のない発言により、コピーワンス緩和の実現を危うくしようとしている。その社会的な影響についてどのように考えているのか。JEITAには誠意ある対応を求めたい」と問いかけた。


■ Blu-rayは、補償金で親孝行を

日本映画製作者連盟 華頂氏

 日本映画製作者連盟の華頂尚隆氏は、「場外乱闘はできないとJEITAはおっしゃっているようですが、一方的に声明をホームページに公開するなど、先に場外に出たのはJEITAじゃないですか?」と切り出し、「某メーカーのBlu-rayの広告で、“デジタル生まれ、映画育ち”というキャッチコピーがありました。個人的には非常にこの広告が好きで、メーカーの宣伝の方は、文化振興はソフトとハードの両輪ということを非常によくご理解されていると思います。しかし、12日の町田会長の書簡にしても、メーカーの法務部の方々はソフトをないがしろにしています。団体内、企業内のこの乖離というのはなんなのでしょうか? と思っています。JEITAは自ら場外に降りた末に、セコンドともチームとしても意思疎通ができていない。単なる撹乱、試合放棄ではないかと思います。18日にリングに戻って会議の席上で行なうということですが、さきほどのコピーからすると映画はBlu-rayの育ての親ということですから、早くBlu-rayが補償金対象の仲間入りして親孝行してほしい」と訴えた。

 続いて、日本音楽作家団体協議会の小六禮次郎氏は、「保護してくれ、リスペクトしてくれ、というのはおこがましいかもしれない。でも、文化に対する思いというのは絶対必要だと思います。JEITAの方々は、話が進んだ後でもいつも“話ができていない”、という大前提に戻るようなことをおっしゃる。このような返事をされるのは、やはり社会的な責任がないのではないかと。一貫性のある、普通の方が見てもわかるような対応をしていただきたいと思います」と語った。

 社団法人日本音楽著作権協会(JASRAC)の菅原瑞夫理事は、「補償金は、先輩方が知恵を絞って作ったバランスの取れた制度。確かに15年経ちましたので、いろいろな変化はあろうかとおもいます。だが、例えば技術的保護手段がある、と(JEITAは)おっしゃるのに、審議会、委員会の場でそれが示されていない。具体的なものがあって、そこで世の中の変化に応じて制度を考えましょうといわれれば当然考えます。しかし、それもない。ハードとソフトの両輪という視点での前向きな話を聞きたいと考えていますが、残念ながらお聞かせいただけない。明日の委員会でどういう形の提案があるのか、期待しています」と語った。

日本音楽作家団体協議会 小六氏 JASRAC 菅原理事


■ デッドラインは2008年6月に

 なお、「放送局やメーカーが準備を進めている中、ダビング10は白紙に戻る可能性があるか?」との質問については、椎名氏は「必ずしも白紙に戻る必要はないと思う。ダビング10の解が示されるとき、“補償金制度の帰趨が重要でそれ如何によって、補償金制度を前提としないn回について態度を留保する”ということを申し上げた。デジコン委員会では2008年6月ごろに(ダビング10が)開始という話があるようですが、基本的に補償金問題が決着できない限り、凍結されるものだと考えている。したがって、6月というデッドラインが来るまでに解決すべきだと思っているし、無用な混乱を招かないように関係者が努力して解決すべき」とした。

 また、椎名氏は、補償金制度の利点を冷静に判断してほしいとし、「DRMがあれば、補償金は必要ないという議論もあるが、一定のアロワンス(許可)のなかで、自由にコピーができる。これは利用者にとってもメーカーにとっても利益のあること。補償金はメーカーやユーザーにメリットのある制度だと思う。iPodに端を発して、JEITAは廃止に突っ走り、権利者もなんとかしないとと突っ走って、政治的な膠着に至った。しかし、もうすこし冷静な判断があるんじゃないだろうか。メーカーの経営層の方に、冷静に判断していただけないかな、と思っている。もう一回補償金制度を社会のインフラとしてジャッジしていただけないかな、と強く期待しています」と、訴えた。


□関連記事
【12月7日】JEITAが「公開質問状」に回答しなかった理由~亀井委員長に聞く
“場外乱闘”ではなく正式な審議の場での議論を(INTERNET)
http://internet.watch.impress.co.jp/cda/special/2007/12/07/17796.html
【11月9日】「JEITAは“コピーワンス緩和”合意を破棄するのか?」
-ダビング10と補償金は不可分。権利者28団体が質問状
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20071109/dub10.htm
【7月17日】権利者86団体がコピーワンス見直し問題でJEITAを批判
-「私的録音録画補償金制度は大前提」と改めて主張
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20070717/fca.htm
【7月12日】「コピーワンス」見直しは「コピー9回」へ
-10回目でムーブ。地デジ録画の運用ルール見直し
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20070712/soumu.htm

( 2007年12月17日 )

[AV Watch編集部/usuda@impress.co.jp]


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