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法制度によるデジタル放送の著作権保護を検討開始
-“無反応機”問題を議論。ダビング10詳細は1月決定


12月27日開催


 総務省 情報通信審議会は27日、「デジタル・コンテンツの流通の促進等に関する検討委員会 第30回」を開催した。

 2008年6月の導入を目指す、地上デジタル放送の新しい録画ルール「ダビング10」の進捗について報告されたほか、著作権保護の仕組みについて、従来の技術的な制限だけでなく、法律などによる制度的なエンフォースメント(実効性の担保)の必要性など、新たなシステム設計に向けた議論が行なわれた。


■ ダビング10の技術仕様は1月に決定。6月実施に向けて準備が進む

 「ダビング10」に関しては、放送事業者委員の関祥行氏が、進捗状況を報告。「技術ルールについては、Dpaとして、運用規定の改定作業に入っている。すでに第1次案ができあがり、メーカーとのすり合わせをしている段階。遅くても2008年1月末には決定する予定で進めている」という。

 放送開始日時は、「6月を目指しているが、まだ何日とはいえない。放送事業者側の送出機器の改修時期が影響するので、放送事業者と相談している。1月にはいつ改修が終了し、いつから実行に入れるか明確にしていきたい。その後、6月を目指して送出機器の改修を進めるとともに、メーカー側は機器の対応を進めていく」とし、「6月が近くなったら周知活動を行なわなければならない、Dpaを中心に、メーカーと協力とりながら行ないたい」と報告した。


■ デジタル放送の著作権保護システムの抜本的見直しを

 一方、現在のデジタル放送の著作権保護システム全般に対し、新たな制度設計を検討する取り組みもスタート。技術検討ワーキンググループにおける検討結果をもとに、新たな著作権保護の在り方について、議論が行なわれた。

 現在のデジタル放送では、放送事業者が放送コンテンツにコピー制御信号(COGなど)を多重化した上、スクランブルを施して送信。そのスクランブルの解除のためにはB-CASカードが要求される。受信機では、コンテンツの保護規定(ARIB規格TR-B14)を遵守した製品に対して、B-CASカードの支給契約によりカードを貸与する。

 このように、暗号化技術を中心としながら、「技術と契約」により、ルールが遵守されるように定めているのが、現在のデジタル放送の著作権保護システムとなる。

委員会で事務局から提出された無反応機についての資料

 しかし、これらのルールに違反して、コンテンツの保護規定(TR-B14)で定められた「制御情報への反応」を無視する機械(無反応機)の販売も確認されている。たとえば、「フリーオ」と呼ばれるパソコン向けのUSBチューナは、B-CASカードを別途用意することで、録画が可能となるが、ARIBの運用規定で定められたローカル暗号などの各運用ルールは守られていない。そのため、録画したコンテンツに著作権保護は施されておらず、運用規定のルールに反する録画が可能となっている。

 フリーオの例では、保護規定を守った機器に対して発行したB-CASカードを流用することになるので、「B-CASの支給契約に違反」はしているが、実際に取り締まることは非常に困難だ。こうした技術と契約だけでのコントロールの困難に加え、各種コストなどを勘案して、法制度などにより、ルール違反を取り締まる制度的エンフォースメントの導入について、検討が開始された。

 今回の委員会では、制度的エンフォースメントの具体案までは踏み込まず、基本的な議論の検討方向について確認された。現行の技術エンフォースメントで定めていることを、制度で全て置き換えられるものなのか、また、技術と制度の双方のエンフォースメントの併用が必要か、なども今後の検討課題としていく方針。

 委員会の主査を務める慶応義塾大学の村井純教授は、技術検討ワーキンググループにおける議論を紹介。議論の枠組みを提示した。

 今後の検討の視点としては、以下の4点を紹介した。

  • スクランブルの可否、これに伴うコスト負担
  • エンフォースメントのルール違反の事前抑止力
  • エンフォースメントのルール違反に対する実効的防衛効果
  • エンフォースメントの実現、維持に要するコスト

 スクランブル化とその解除という現在の仕組みについて、村井主査は「解除する機能部分が必要というハードルがあることで、一定の効果を上げているのではないか。もし、スクランブルを行なわず、“ルール違反”に制度で対応する場合は、機器製造が容易になり制度で取り締まり可能な限度を超えて出回る可能性はある」とした。

 そのため、「制度的にどうやって、どういうことを抑制したいのか。制度の具体像を検討しなければ、スクランブルを用いたエンフォースメントの長所短所を議論できない」とし、「スクランブル化」と「制度でのルール保護」のバランスの在り方を課題に挙げた。

 「コストの問題」については、「スクランブルを実施するために相当のコストがかかっている。さらに、制度でのエンフォースメントの場合には、ルール違反機器を見つけ出して、摘発するということをやっていく。そのコストはどうなのか。明確化が重要だ」とした。また、「基幹放送の範囲」についても、「地上デジタル機器は基幹放送向けと考えるのが自然だが、それ以外の機器での扱いを考える必要がある」とした。

 さらに、制度エンフォースメントの導入時には、「その期待値をどこに定めるか。どういうことを抑止したいのか明確化するべき」とし、ルール違反機器が「事前に出回ることを抑止するのか、事後に対応することを重要に考えるのか」という課題を提示。

 事前の対処については「ルールの順守のための動機づけをきちんとすべき」としたほか、事後については「販売や流通などにあたって、だれの、どのような行為を取り締まるべきか明確化するべき」と論点を紹介した。


■ 制度的エンフォースメントの導入に前向きな意見

 委員会では各企業、団体の代表が意見を交わした。権利者団体の代表は、「スクランブルを外すということに権利者が同意するわけない、と一部で言われているのですが、権利者はコピーワンスの時と同様に、スクランブル化の決定に関わっていません。コピーワンスの緩和の合意に至ったが、それをあざ笑うかのような、(無反応)機器が出てきている。実態として、現状のスクランブルのエンフォースメントとしての枠組みは、すでに失われているものと考えられる。権利者が口をはさむ問題ではないが、スクランブルは解除していく方向がいいだろう。放送事業者や機器メーカーの責任において、制度的なエンフォースメントで決めていってほしいと思います(椎名委員)」とコメント。

 また、「ダビング10については、かねてから指摘させていただいているように、“クリエータへの対価の還元”が第4次中間答申にも書かれています。しかし、文化庁の私的録音録画小委員会において、JEITAさんは“権利者の不利益は発生しないので対価(私的録音録画補償金)は必要ない”としている。政府の公式な答申に書かれているものに、その答申に参加したものが、どう責任を取るかという問題。Dpaからは6月開始ときいていますが、ダビング10の実施は、この問題が解決するまで凍結すべき、と考えている。補償金には長い歴史があるが、コピーワンスの議論を契機に長い間のコンフリクトを解消し、ポジティブな互恵関係を築く最大のチャンスのはず。関係者のなお一層の努力を求めたい(椎名委員)」とした。

 エンタテインメント事業者の代表からは、「ダビング10や無反応機器も確かに問題ではあるが、コピー商品のほうがはるかに重大。機器の問題というより、コピーを販売したり、頒布する人間が悪い。スクランブルの解除は賛成でも反対でもない。権利者サイドとしては、ダビング10があり、それは制限付きだというルールだと理解している。無反応機器でコピーが乱造されるというのは、完全にルールを逸脱している。それは法律であろうが、制度であろうが、ルールを守らないものは取り締まってもらわないと困る(堀委員)」とコメントした。

 放送事業者の代表からは、「デジタル放送の始まった4年前の時点でも、なんらかのエンフォースメントが必要という認識は同じ。ただ、その時に取りうる手段として、今の技術的な手段を導入した。不正カードの問題も当時からある程度認識はしていたし、カードの枚数が増えてコストも莫大になる、という認識もあった。その改良や制度的な手段も検討してきた。ただ、4年前の段階では現在の手段しか取れないので導入した。ようやく制度の検討が始まるということで道が開かれた思い。今の技術的エンフォースメントを制度だけで担保できるのか、あるいは併用が必要か、という議論が必要だが、制度の検討に入る時期が来ているのかな、という印象。コピーワンスの見直しについては、我々放送事業者は、6月に向けて粛々と作業を進めていく。皆で取り組んでいくべきと考えている(長谷川オブザーバー)」と訴えた。

 また、機器メーカーの代表は、「エンフォースメントの枠組みと期待値をまずはっきりさせることが大事。ルールを守ることは勿論大事だが、皆がルールを守れば規制はいらない。守らない人がいるのであれば、きちんとやる必要がある。ただし、いわゆる規制強化につながらないようにやっていく必要ある。コストや国際競争力という観点が必要。ここで国際競争力を失ってはメーカーとしては元も子もない。だれのために、なにをしたいのか、もう少し、砕いていく必要がある(田胡委員)」とした。

 村井主査は、「コピーワンスの改善については、関係者の努力で、第4次答申の提言の実現に向け進歩している。皆さんの議論が実現に向けたプロセスを進んでいるということで、お礼を申し上げたい。コンテンツ流通にかかわるルールについては、本質的になんのためにやるのか、ということが必要だ。第4次答申では、コンテンツに対するリスペクト、次世代への継承などが、目指す方向になっている。エンフォースメントの技術、制度だけが問題ではなく、ベースとなる考え方をまず認識し、技術ワーキンググループではそれを踏まえて、いまからどういう技術と制度的なエンフォースメントを作り上げたら、新しい出発点にできるかを進めます」とまとめた。

□総務省のホームページ
http://www.soumu.go.jp/
□デジタル・コンテンツの流通の促進等に関する検討委員会
http://www.soumu.go.jp/joho_tsusin/policyreports/joho_tsusin/digitalcontent.html
□関連記事
【12月18日】「ダビング10」は2008年6月を目標に
-難視聴対策の衛星による地デジ再送信計画が発表
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20071218/soumu.htm
【7月12日】「コピーワンス」見直しは「コピー9回」へ
-10回目でムーブ。地デジ録画の運用ルール見直し
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20070712/soumu.htm

( 2007年12月27日 )

[AV Watch編集部/usuda@impress.co.jp]


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