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シャープ株式会社は8日、年頭記者会見を開催。同社の片山幹雄社長が、2008年の事業方針などを明らかにした。 会見中、片山社長はCESで初公開した65型の超薄型液晶テレビについて触れ、「これら薄型液晶テレビに採用した新技術の一部を応用した新製品を近々に市場に投入する予定」と、薄型液晶テレビ製品化の可能性を示唆。 また、2007年に発表した薄型の52型液晶テレビの試作機は、独自の低消費電力技術により、年間消費電力量140kWh/年を実現していることから、この技術を利用することで、液晶テレビの消費電力は現行モデルの2分の1にまで低減できるとし、「この新技術を利用した液晶テレビを、もし現在全世界で使われているブラウン管テレビ(約12億2,000万台)と置き換えられれば、年間1,000億kWhの消費電力量が削減できる。1,000億kWhという電力量は、14ヵ所の火力発電所の年間発電量に相当する」と説明。省エネ効果をアピールした。
■ 亀山第2工場の第4期生産ラインは7月に前倒しで導入 2008年の重点事業としては、液晶テレビ事業及び大型液晶パネル事業と、太陽電池事業を挙げた。 なお、今年は販売目標などについては公表しない方針を示しており、「ただ液晶テレビのシェアを伸ばすことだけが、シャープのブランド価値の向上に繋がるものではないだろうと考えた。もちろん社内的には販売目標を設定しているが、それを外部に公開することは差し控えることにした」と説明している。 液晶テレビ事業については、「2007年度の液晶テレビの世界需要は、当初6,800万台と予想されていたが、予想以上の需要があり、現在は7,400万台が見込まれている。そして2008年度の需要は9,600万台と予測されているが、これはテレビ全体(約2億2,000万台)の約45%にものぼり、2008年度には約半数が液晶テレビになる」と世界の液晶テレビ需要について説明した。 亀山第2工場については、2008年内の導入を予定していた第4期生産ラインを7月に前倒しして導入、現在の月産6万枚のマザーガラスの投入能力を、1.5倍となる月産9万枚とする計画を明らかにした。 「月産9万枚に生産体制を強化することで、東芝との提携などで提供するための外販用のパネルも用意できるようになる。外販分を考慮した場合、増産体制の強化は必要不可欠」と増産の必要性を強調した。
2007年にはポーランドやメキシコに工場を立ち上げ、「グローバル5極一貫生産体制」を構築したシャープだが、2008年度はこれら各工場のオペレーションの精度を高める年であるとし、「稼動を開始したポーランドやメキシコの工場だが、各工場への部材供給が不十分など、短納期の対応などには不安が残る状態。これらオペレーションの精度を高めていき、サプライチェーンを進めることが2008年度の課題となる」とした。 2008年度に注力する地域としては、特に中国に力を入れていくとしており、「実は2007年12月単月の数値では、中国向けの液晶テレビの販売額がヨーロッパを上回った。今年開催の北京オリンピックを視野に入れると、かなり力を入れていくことになる」とした。 ■ 2012年の創業100周年に向けた2つのビジョンを発表 2012年にシャープは創業100周年を迎える。それに向け、新たな2つのビジョンを発表した。 1つは「液晶ディスプレイで真のユビキタス社会を実現する」というビジョンで、具体的には、「液晶パネルや、青紫色レーザー、携帯電話用カメラモジュールなど、同社の保有するデバイス群や技術などを採用した製品を、ポータル端末に見立てて、各種サービスやネットワークとの融合を図っていく。それにより新たなライフスタイルを提案し、液晶ディスプレイで真のユビキタス社会を実現していく」というもの。 もう1つは、「省エネ・創エネ機器を核とした環境・健康事業で世界に貢献する」というビジョンで、「省エネ化を進めた家電製品の開発に加え、エネルギーを創り出す“創エネ”を行なう太陽電池の拡大を通じて、エネルギー問題の解決に取り組む。そのほか、健康器具を普及させることで、創エネ/省エネを核とした環境・健康事業でも世界に貢献したい」というもので、いずれも2012年に向け進めていく。 なお、2010年3月稼動予定となっている堺市の液晶パネル新工場については、「“21世紀型コンビナート”への関連企業の進出を募っていたが、大日本印刷株式会社やコーニングジャパン株式会社、旭硝子株式会社、長瀬産業株式会社など14社が決定した」と発表。従業員数は全体で5,000名、そのうちシャープの社員が3,000名となる見込み。
■ 薄膜太陽電池の生産体制を強化 太陽電池事業のうち、結晶系太陽電池については、シリコンの自製化を2007年秋より本格的に開始したほか、外部からの安定調達などにより、原材料の確保が安定したという。 また、結晶系太陽電池と比べて、原材料の使用料がわずかで済むほか、構造や生産工程がシンプルな薄膜太陽電池についても、生産体制を強化していく。具体的には現在生産量15MW/年の葛城工場を増強し、10月には160MW/年とする。薄膜太陽電池は、気温が高い方がより高い発電量が見込めるため、結晶系太陽電池は個人向けに、薄膜太陽電池は大規模な発電システム向けに提供していく方針を示した。
「仮にゴビ砂漠に太陽電池を敷き詰めると、スペース効率50%時でも、世界中の電力が賄える10万7,000TWh/年の発電量が得られる。これは火力発電所の場合、約15,000ヵ所の年間発電量に相当し、CO2量は約336億t/年に相当する。太陽電池事業に力を入れることで、“創エネ”を推進し、低消費電力の液晶テレビを普及させることで、省エネも推進していく」とした。
そのほか、携帯電話事業については、「国内市場は、販売奨励金の見直しなどにより、例年より減少するだろう。ただし、携帯電話の普及により、最近では2台所有する“2台持ち”の人が増えており、この層を取り込んでいきたい」としたほか、「海外市場については、日本近隣のアジア諸国にターゲットを絞り展開していく」とした。 また、白物家電についても「ウォーターオーブンの『ヘルシオ』が好調。今年はこれを米国で展開していく。また、エアコンに搭載される空気清浄化技術の『プラズマクラスター』も性能を上げて空調機器などに採用していきたい」とした。 □シャープのホームページ ( 2008年1月8日 ) [AV Watch編集部/ike@impress.co.jp]
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