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松下、尼崎第5工場のパネルサイズはシャープ堺を超える
-新プラズマパネル「Neo-PDP」を発表、春モデルに搭載


尼崎第5工場の完成イメージ(合成写真)

2月5日開催


 松下電器産業株式会社は、2009年5月の稼働を予定している尼崎第5工場で生産するプラズマディスプレイパネル(PDP)のサイズを、2,280×3,920mmにすることを明らかにした。

松下電器産業パナソニックAVCネットワークス社の坂本俊弘社長

 2月5日、同社尼崎工場で開いた説明会で、松下電器産業パナソニックAVCネットワークス社・坂本俊弘社長が公表した。

 これは、42インチを16面取りできるサイズで、シャープが2010年に稼働する予定の堺工場で計画されている第10世代の液晶パネル用マザーガラス(2,800×3,050mm)よりも大きいという。

 また、材料投入からパネル生産完了までの生産リードタイムが、茨木第1工場に比べて53%の削減となる、1.8日としたほか、第1工場では60以上あった生産プロセスを67%にまで削減できるという。

 「第5工場では、PDP生産の大幅な合理化を実現した。コスト競争力の点でも効果が発揮できる」(坂本社長)という。


42型の面取り数、生産リードタイムなどを向上 建設中の尼崎第5工場



■ 発光効率2倍のPDP技術を春モデルに。超大画面/薄型PDPは’09年度内発売へ

 一方、新たなパネルとして、「Neo-PDP技術」を開発し、約1カ月後に発表が予定されている同社春モデルに、新パネル技術の一部を採用することを明らかにした。2009年度に発売する製品には、この新パネルを標準で搭載し、尼崎第3工場および第4工場で生産されるプラズマパネルも、順次、新パネル技術へと移行することになる。

 新パネルでは、新開発した蛍光体をはじめ、新材料および新プロセスを採用。また、放電効率を改善した新セル構造の採用、さらに新たなパネル駆動方式を用いることで、従来のフルHDプラズマパネルに加えて、発光効率を2倍にできるほか、輝度をそのままにして消費電力を2分の1に引き下げることが可能になる。

 「明るさ2倍、あるいは消費電力半分が実現できる新パネルを採用することによって、省エネ化、高画質化、大型化、薄型化、低コスト化などにもつなげることができる」とする。

 高画質化では、デジタルシネマ画質の実現が可能になるとして、「黄色や金色、深紅といった色が鮮やかに表現できるようになる。映画の色再現性を大きく進化させられる」と語る。

 また、新リアルブラック駆動方式と呼ばれる新駆動方式の採用とともに、パネルの新材料開発による予備放電の発光量を低減することで、暗所コントラスト最大30,000対1を実現するという。

 新パネルでは、シングルスキャン方式を採用しているのも大きな特徴だ。

 従来のフルHDパネルでは、上下方向から信号を送り、パネルを光らせるというダブルスキャン方式を用いていたが、下方向からのシングルスキャン方式を実現。これによって、駆動回路部品点数を65%削減するとともに、コストを半減。データドライバの多出力化によって8%のコスト削減、波形最適化で5%のコスト削減効果があるという。


「Neo-PDP技術」の特徴 Neo-PDP技術を用いた試作品と、現行モデルとの比較でアピールした

 「調査会社の予測では、PDPが今後苦戦するという需要予測が出ているが、その予測の前提条件には、42インチのフルHDでは、液晶テレビの方がコストメリットがあるという考え方がある。しかし、42インチプラズマフルHDパネルが、シングルスキャン化したことで、この前提条件が崩れる。薄型テレビの需要予測を大きく覆す技術になる」と位置づけた。

 また、今年1月のCESで発表した150インチプラズマディスプレイについては、「2009年度中の発売を考えている」(坂本社長)としたほか、24.7mmの超薄型フルフラットパネルについても、「同様に2009年度中の正式発売を予定している」と語った。


CESで披露された150型PDP(左)と、最薄24.7mm(右)のPDP



■ IPSアルファの新パネル工場は'09年度生産開始

 加えて、坂本社長は液晶パネル生産に対する考え方についても言及した。

 松下電器は、昨年12月、日立製作所、キヤノンとの提携を発表。液晶パネル生産を行なうIPSアルファの株式を過半数取得するとし、次期工場建設についても、松下電器が中心となって推進することが明らかになっている。

 坂本社長は、IPSアルファで生産される「IPS-Proパネル」が、シャープなどが生産するVAパネルに比べて、原理的に視野角が広いという優位性を説明。「視野角が狭いと、斜めから見ても変色しないように、RGBの画素を分割してそれぞれをドライバICで表示することになる。だが、IPS-Proパネルでは画素分割をせずに視野角を確保できるため、データドライバの数が少なくなり、回路コストの面でも優位になる。また、高い透過率を維持できることから、明るくて見やすい画面が実現できる。これはバックライトの消費電力を少なくすることにつながる」として、機能性およびコスト面での強みを強調した。

 松下電器によると、VAでは視野角改善のためにドライバICで28個、ゲートICで8個のICが必要であるのに対し、IPS-ProではドライバICで8個、ゲートICで6個のICで済むという。

 「IPSアルファへの投資は周回遅れとの指摘もあるようだが、構造的、原価的に十分競争力を発揮できる技術と判断し、IPSアルファテクノロジの新パネル工場への大型投資を決めた」とした。

 なお、IPSアルファテクノロジの新パネル工場については、2009年度を目標に生産を開始する計画を示し、「詳細は正式に決まった時点で発表する」と語った。


□松下電器産業のホームページ
http://panasonic.co.jp/index3.html
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【2007年1月10日】松下電器、中期経営計画にてPDP生産第5工場の建設を発表
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http://av.watch.impress.co.jp/docs/20070110/pana.htm

( 2008年2月5日 )

[Reported by 大河原克行]


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