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IPSアルファ、姫路に液晶TV用の第8世代パネル工場を建設
-松下が3,000億円投資。32型換算で年間1,500万台


IPSアルファの米内史明取締役社長(左)、松下電器産業株式会社 森田研常務役員(右)
2月15日発表


新工場生産計画。2010年度は年間700万台、2011年度には年間1,300万台の体制になるという

 株式会社IPSアルファテクノロジは15日、テレビ用のIPSα液晶パネルの新生産拠点として、兵庫県姫路市に「IPSアルファテクノロジ姫路工場(仮称)」を建設すると発表した。3月31日をもって同社を連結子会社化する松下電器が約3,000億円投資。パネルは主に松下に供給され、「VIERA」に採用される。着工は2008年8月を予定しており、2010年1月より稼働を予定している。

 新工場は兵庫県姫路市飾磨区妻鹿日田町(しかまくめがひだちょう)にある、出光興産の兵庫製油所跡地に建設される。敷地面積は約480,000m2。姫路港に接した用地で、JR姫路駅から6.5km。最寄駅は妻鹿駅。生産には第8世代のマザーガラスを使用し、2013年のフル稼働時で32型換算で年間約1,500万台の生産能力を持つという。

工場の完成イメージ 建設予定地の地図 新工場の概要

 既報の通り、日立製作所と松下電器は同日に、液晶ディスプレイ事業における包括的な提携について、正式契約を締結。松下が、中小型液晶パネル事業を行なっている日立の100%子会社、株式会社日立ディスプレイズの株式24.9%を、日立からの株式譲渡により3月31日までに取得。IPSアルファテクノロジについても、日立ディスプレイズが保有するIPSアルファの株式を含む、大型IPS液晶パネル事業を660億円で松下が取得することを発表している。

 松下は、薄型テレビ事業の主力としてPDPを位置付けているが、中小型サイズについてはIPSαパネルを用いた液晶テレビをラインナップ。今回の日立との提携により、IPSアルファの事業運営への関与を深め、姫路新工場についても松下が中核となって建設を推進。パネルの安定調達を図る。そのため、都内で行なわれた姫路新工場の発表会には、IPSアルファの米内史明社長と共に、松下電器の森田研常務役員も出席した。


■ 新工場は有機ELも視野に

松下電器の森田研常務

 松下では、薄型テレビ事業において、37型以上で世界シェア25%を目指すという「GP3計画」を掲げている。同社の森田常務は「PDPが基軸という図式は変わらないが、液晶についても中小型サイズをより大きく発展させることが、計画達成に欠かせない」と、姫路新工場への投資理由を説明。

 また、「液晶と技術的な共通点が多い有機ELディスプレイへの展開も視野に入れている」として、研究を進めているテレビ用の大型有機ELディスプレイを、将来的に姫路新工場で生産する可能性を示唆。IPSアルファの米内社長も、「有機ELでも液晶と同様に駆動基盤は必要なので、いつになるかは現在のところわからないが、今後どう作っていこうかと考えてはいる」と補足した。


■ 「IPSαなら十分戦えると考え、投資した」

IPSアルファの米内社長

 IPSアルファの米内社長は、新工場の場所を姫路に決めた理由について、「関西空港や神戸港、姫路港に近く、海外拠点へのアクセスが便利なこと」、「ガラスやカラーフィルタなどの部材・薬液供給メーカーが近隣にあること」、「関西電力や大阪ガスといったユーティリティ供給会社が近く、安定供給が期待できること」などを挙げる。

 また、用地が広く、工場を建設する約480,000m2の敷地に加え、さらなる拡大が可能なこと。松下電器と近く、人員が行き来する際のアクセスが便利なことなども決め手になったという。

 生産するパネルサイズについては、「現在IPSアルファの茂原工場で手がけている32/37インチの内、第8世代ガラスに適した32インチを新工場で生産。37インチは引き続き、第6世代ガラスを使っている茂原がジャストフィットなので、茂原で作る。新工場ではそれに加え、40インチ台の生産も視野に入れていく」という。40インチ台になるとPDPとの住み分けが難しくなるが、松下の森田常務は「地域などにより、需要があれば、40インチ以上の液晶を作ることも考えていないわけではない」と含みを持たせた。なお、新工場のパネルについては、一部外販も検討しているという。

姫路を選んだことで、安定生産、生産/輸送コスト削減、在庫低減などが見込めるという 用地にはまだ余裕があり、将来的な工場の拡大にも対応できるという

他社の第8世代工場と比べた投資効率(投資額/ガラス投入面積)のグラフ

 生産性については、「茂原で培った工程短縮プロセスや高精度検査修正技術などを用い、高い生産性を実現できると、これまでの経験から確信している」とし、他社の第8世代工場と比べて投資効率(投資額/ガラス投入面積)が優れているとアピール。

 しかし、競合他社は第10世代のマザーガラスによる生産を進めており、「2010年完成の工場で第8世代ガラスは遅く、コスト面で不利ではないか?」との問いが飛ぶ。米内社長は、IPSαパネルの原理や利点を紹介した上で「透過率が高く、バックライトのコストが抑えられる。また、フルHDの倍速駆動パネルの場合、他社が駆動用ドライバーICを36個や、24個搭載しなくてはならないところ、IPSαパネルならば14個で済む」と、材料コストの低さを強調。他方式のパネルの材料コストを100とした場合、IPSαパネルは85と、15%有利だという。

 松下の森田常務は「IPSαパネルを選んだのは、“良いテレビを作りたい”という気持ちから。材料や生産コストも抑えられ、なおかつ良いテレビが作れる。そこが魅力。投資には償却期間が問題になるが、販売価格の低下や、材料費/固定費の削減を見込んだ上での投資なので、十分戦えると考えている。例え我々の工場だけが永遠に償却費が続いたとしても勝てるという前提でやっている」とした。

フルHD、倍速駆動パネルで他方式と比べた際の、駆動用ドライバーIC数を示した表 他方式と比べ、全体で15%材料コストが有利だという IPSαパネルのバックライト消費電力の表。32型で同社従来品と比べて大幅に低減されている

会場ではIPSαパネルの利点を説明する展示も。左は他方式の液晶パネル、右がIPSαパネル。それぞれ横から見た写真だが、駆動用ドライバーICがパネルの上下に並ぶ他方式に比べ、IPSαでは片側だけで駆動可能 透過率が高いため、バックライトを高輝度化しなくても、高輝度なテレビを開発できる。そのため、バックライトに電圧をかけるインバータ基板で比べても、IPSα(上側左)の方が、他方式(上側右)と比べ、トランスが少なくて済む

 なお、新工場の設備について米内社長は、「CO2削減の取り組みを強化し、現工場と比較して25%の削減を目標として掲げる、スーパーエコファクトリーにすることを約束する」と宣言。そのために、工場の廃熱を純水精製に再利用したり、外気や重力などの自然エネルギーの活用、廃棄物削減や再利用を目指すゼロエミッションなど、現在予定されているアイデアを披露。合わせて、「透過率の高いIPSαパネルでは、世界トップクラスの低消費電力化が実現できる。エコロジーに生産でき、使っている間も低消費電力でエコロジー」と、アピールした。

□IPSアルファテクノロジのホームページ
http://www.ips-alpha.co.jp/
□ニュースリリース(PDF)
http://www.ips-alpha.co.jp/news/pdf/20080215.pdf
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(2008年2月15日)

[AV Watch編集部/yamaza-k@impress.co.jp]


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