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株式会社ジャパン・ライツ・クリアランス(JRC)とグーグル株式会社(Google)は27日、Googleの運営する動画投稿サイト「YouTube」の日本における音楽著作権の包括利用許諾契約を締結した。今回の締結により、利用者がJRC管理楽曲を演奏した映像や、打ち込みなどで自作した管理楽曲音源を自作ビデオに使うことなどが可能となる。 JRCは、2000年に設立された音楽著作権管理事業会社で、Mr.Children、L'Arc-en-Ciel、スピッツ、浜田省吾、シド、BENNIE K、DOUBLEなどのアーティストの楽曲の管理を受託。現在の管理作品数は約5,000曲、2007年4月~2008年3月の徴収実績は約9億円となっている。
今回の契約では、楽曲の音楽著作権のみが対象となるため、プロモーションビデオ(PV)や、CDなどのオリジナル音源を直接利用する場合には、従来同様許諾が必要となる。PVやCDなどのオリジナル音源には、楽曲の著作権のほか、映像製作者や演奏者などの著作隣接権が含まれているが、今回の契約には隣接権の許諾が含まれていないため。 JRCに著作権管理を委託するアーティストやレコード会社については、YouTube上で自身の公式チャンネルの立ち上げや運用が可能となり、フルバージョンのPVやライブ映像、インタビューなど自身の映像コンテンツなどが公開できる。
今回の契約締結に伴い、JRCが著作権を管理するアーティスト所属のレコード会社として、株式会社フォーライフミュージックエンタテインメントと、有限会社デンジャー・クルー・エンタテインメントの2社の公式チャンネルがYouTube内に開設される。 デンジャー・クルーの公式チャンネルは本日より開設され、同社所属アーティストのムック、シド、ギルガメッシュらのPVのフルバージョンが公開されている。フォーライフミュージックの公式チャンネルは4月4日より開設。DOUBLE、BENNIE K、阿部芙蓉美らのPVやライブ映像などの公開を予定している。
■ YouTube、JASRACとの許諾契約は「現在も協議中」 発表会ではJRCの荒川祐二代表取締役社長が、同社の著作権管理について「音楽著作権の4分類のうち、ゲーム/ビデオ/CD制作や、インターネット音楽配信などのインタラクティブ配信を含む“録音権等”を管理している。『CD制作で何枚のCDを制作したか』や『インターネット配信でどれだけダウンロードされたか』など、いずれもきっちり数えることのできる部分を管理しているため、『いつ、どこで、何が、何回、どのように』といった詳細なデータをアーティストなどの権利者に対して提示できる」と説明した。 そのほかにも「新たなサービスやニーズに対しても、迅速な対応ができる」とし、これまでも、2003年3月に携帯電話向けの「着うた」サービスにおける使用料を従来の着メロと明確に区別したルールを制定したほか、2006年4月の段階で定額配信(サブスクリプション)サービスに対応した使用料規定を制定するなどの実績を紹介した。 今回のYouTubeとの利用許諾契約についても「音楽ファンが演奏した管理楽曲のライブ映像などが自由に公開できるようになるほか、学生が卒業記念に合唱した管理楽曲の音声付きビデオなどが自由に公開できるようになり、これまで以上にユーザーがYouTubeを積極的に活用できるようになる」と利用シーンなどを紹介した。 レコード会社の公式チャンネルについては、「今回紹介した2社のほかにも、順次公式チャンネルを開設していく予定。そのほか、決定ではないが、夏頃にはスピッツもYouTubeに自身の公式チャンネルを開設する予定で、現在調整を進めている」とした。 Googleの村上憲郎代表取締役社長も登壇し、「今回の締結により、YouTubeのユーザーの利便性がさらに向上すると期待している。音楽コンテンツ産業の発展に貢献できればうれしい」とコメントした。なお、社団法人日本音楽著作権協会(JASRAC)との許諾契約の進捗については「現在も協議中の段階」と発言したに留めた。
すでに公式チャンネルを開設したデンジャー・クルーの大石征裕代表取締役社長も登壇し、「インディーズレーベル会社として1982年に設立したが、当時は管理事業者がJASRACのみで、『JASRACに登録しなければ違法』といった間違った噂も出るような状況だった。そこで、ロック好きの反骨精神からJASRACは利用せず、JRCが設立されるまでは自社で著作権の管理を行なってきた」と当時の思い出を語った。 現在の状況としては「現在はロックのほか、ビジュアル系バンドも扱っているが、ビジュアル系は海外での人気が高く、アニメなどと共に海外進出が盛んな日本文化の1つ」と説明。 YouTubeについては「ユーザーが勝手にYouTubeに上げてくれた同社の新人アーティストのPVなどが海外で高い評価を集めている。メジャーなロックバンドのPV映像なども勝手に上がっているが、そうした映像と比べてもアクセス数は高い。こうしたメジャーなバンドの映像はDVDなどが発売されていてそれを買えば済むが、知名度の低い新人アーティストのPVはYouTubeでしか見られないので、アクセス数が上がり、プロモーションとしても最適」と分析。「日本のアーティストでも、YouTubeのほか、iTunesとMySpaceがあれば、日本にいながらにして海外へのプロモーションができる」とした。 今後の展開については「インディーズのアーティストは知名度も低く、国内の映像メディアではあまり取りあえげてもらえないため、公式チャンネル内で独自の番組を公開するなどの展開を行なっていきたい」とした。 フォーライフミュージックの後藤由多加代表取締役社長は、自社のチャンネル開設について「YouTubeはユーザー主体で人気となったサービスなので、そこに企業が参加してくることで、どのような反応をされるかが心配だが、試行錯誤を重ねて展開していきたい」とした。
□JRCのホームページ ( 2008年3月27日 ) [AV Watch編集部/ike@impress.co.jp]
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