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TOKYO FMがデジタルラジオ放送休止について釈明
-「福岡のユビキタス特区での実験に集中する」


マルチメディア放送ビジネスフォーラムのマークは、犬のマルチーズからとられている。左のネクタイ犬が「ビジネス」、中央のヘルメット+携帯電話犬が「防災」、「安心」、「安全」、右のヘッドフォン犬が「エンタテインメント」を示している
4月22日発表


 デジタルラジオを発展させた“マルチメディア放送”の実現に向け、技術研究やビジネス面での環境整備、普及活動を行なうマルチメディア放送ビジネスフォーラム(旧デジタルラジオニュービジネスフォーラム)は22日、2007年6月から実施していた第3期活動の成果報告や、今後の活動について発表する総会を実施。TOKYO FMとCSK-ISが共同で主体となり、福岡県福岡市のユビキタス特区で実施する各種実験についても説明が行なわれた。

 デジタルラジオにおける最近の動きとしては、既報の通り、これまで実用化試験放送において、3セグメントを利用した簡易動画の配信やデータ配信など、新技術の実験に積極的に取り組んできたTOKYO FMが、3月31日で701ch~703chの全放送を休止したことが挙げられる。発表の前に登壇したエフエム東京の後藤亘代表取締役会長は、この件について陳謝し、経緯を説明。理解を求めた。

エフエム東京の後藤亘代表取締役会長

 後藤会長は「TOKYO FMがデジタルラジオに率先して取り組んでいたのは、単なる多チャンネル放送がやりたいわけではない。データ放送を使った楽曲配信や、課金システムなど、将来のマルチメディア放送で実現したい技術を検証するため。フォーラムのワーキンググループで検討されたものを、実際に試さなければ試験放送の意味が無い。しかし、DRP(社団法人デジタルラジオ推進協会)では“前向きにやろう”と言いながら、現実に踏み切れていなかった」とし、DRPが持つ試験放送免許では有料課金サービスの実験は行なえないなど、同社が希望していた各種実験ができない状況にあったことを説明。

 「私もDRPの理事の1人であるから責任は免れない。そこで腹を決めてデジタルラジオを休止。福岡のユビキタス特区事業として総務省に認定されたため、そちらで集中的に実験を行なおうと決意した」と語り、デジタルラジオの試験放送で予定していた活動を、今後はユビキタス特区で実施することを説明。同時に、「皆さんにこれまで検討していただいたワーキンググループの成果も、福岡で電波に乗せていきたい」と語り、TOKYO FMだけでなく、マルチメディア放送ビジネスフォーラムの実験もユビキタス特区で実施できるようにする考えを示した。

 フォーラムの事務局でもこれを受け、組織内に「ユビキタス特区ビジネス部会」を設立。ユビキタス特区での実験枠を設定するなど、サポートを強化していくという。後藤会長は、「地下鉄でも受信できるようにしてもらうなど、福岡市の全面的なサポートを受け、力強い。福岡の電波でも、これまでと同様、皆さんと一緒に開発を進めていきたい。あらためてお詫びと、お礼、お願いしたい」と頭を下げた。


■ ユビキタス特区で実施する実験

 続いて、エフエム東京の仁平成彦氏が、ユビキタス特区で実施する実験の概要を説明。詳細は既報の通り。デジタルラジオと同じISDB-Tsbの3セグメント方式を用いて、地上デジタル放送移行完了後に導入が見込まれている、放送・通信を融合させた法体系の実現を目指す「情報通信法(仮称)」を先取りした、「レイヤー体系」を実践。通信分野での事業のように、インフラを整えて貸し出す企業、それを借りてチャンネルの編成を行なう企業、コンテンツを製作する企業といった、3つの階層(レイヤー)構造を導入するもので、実際に広告を付けた放送や、視聴者に課金する有料放送も予定している。

「情報通信法(仮称)」を先取りした、「レイヤー体系」の概要 「IP over デジタル放送のイメージ 放送波を使ったダウンロード配信試験も予定されている

許諾コードの概要

 ほかにも、暗号化したコンテンツを放送波でダウンロードさせ、鍵を通信経由で販売する「放送波ダウンロードコンテンツ課金の検証」、「IP over デジタル放送」としてネット上のコンテンツを変換せずにデジタル放送波に乗せる技術、アジア地域で展開している他のマルチメディア放送方式にも対応した共用端末の開発なども予定しているという。

 スケジュールとしては、2008年7月に試験電波を発射。9月に実験を開始し、2011年3月31日の特区実験終了まで実施。2011年7月25日(予定)の本放送開始を目指す。仁平氏は「2011年は大きな変革の時になると感じている。ユビキタス特区事業として総務省に認定されたことが、本放送の実現に繋がると信じて、福岡で地域の情報を取り込みながら、具体的な実験を進めていく」と意気込みを語った。。

冒頭にはブラジリアンミュージックをSAIGENJI氏が披露

 ほかにも、ユビキタス特区で実験が予定されている「防災ワーキンググループ」、「マーケティングワーキンググループ」、「許諾コードワーキンググループ」が、活動の近況を説明。「防災」では前述の「IP over デジタル放送」を利用して、各市町村が防災情報の提供に利用している携帯電話へのメール送信システムと、マルチメディア放送の防災情報用コンテンツに活用するアイデアを披露。「より確実に届けられる防災情報提供システムが、財政が厳しい市町村でも手軽に導入できる」という。

 ほかにも、「許諾コードワーキンググループ」で手掛けた許諾コード方式が、国際電子技術標準化会議において検討され、国際標準(IEC 62227)として承認されたことが報告。他国のマルチメディア放送にも対応できる共用端末の開発に繋がる成果として発表された。

□マルチメディア放送ビジネスフォーラムのホームページ
http://drforum.jp/index.html
□関連記事
【3月31日】ニュースリリースTOKYO FM、デジタルラジオの本格放送を31日で休止
-課金サービス実験を特区で実施。伊藤忠のチャンネルは終了
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20080331/tfm.htm
【3月28日】エフエム東京、ユビキタス特区での実験概要を説明(ケータイWatch)
http://k-tai.impress.co.jp/cda/article/news_toppage/39198.html

(2008年4月22日)

[AV Watch編集部/yamaza-k@impress.co.jp]


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