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【新製品レビュー】
世界初のジルコニア採用カナル型イヤフォン
これぞダイヤのサウンド? 松下「RP-HJE900」


6月15日発売

標準価格:オープンプライス

実売価格:2万円前後


 高級機から低価格モデルまで、様々なバリエーションが登場し、高音質イヤフォンの代名詞となったカナル型(耳栓型)イヤフォン。昨今のヘッドフォンブームと合わせて、屋外でも高音質を楽しみたいというニーズは高まっていると言えるだろう。

 各社も差異化機能を盛り込み、音質を追求。特に1万円以上の中級価格モデルには、ビクターのウッドハウジング採用「HP-FX500」(実売15,000円前後)、豊富なパーツで音質カスタマイズ可能なパイオニア「SE-CLX9」(22,000円)など、機能やデザイン面でも個性的なモデルが集まり、選ぶのが悩ましい価格帯だ。

 そんな中、松下電器からインナーイヤフォンとして世界で初めてという、“ジルコニア”をハウジングに使ったモデル「RP-HJE900」が6月15日に発売された。価格はオープンプライスで、店頭価格は2万円程度。同社のイヤフォンとしては最上位モデルだが、カナル型としては中価格帯。さらに高価なモデルはバランスドアーマチュアユニット採用のモデルがほとんどなので、ダイナミック型ユニットを採用したモデルとしては高級モデルと位置付けて良いだろう。


■ 模造ダイヤのイヤフォン?

 最大の特徴は、ハウジングに使われている“ジルコニア”という素材。昼の通販番組でやたらと安いダイヤモンドの指輪が紹介され、「実はこれ、キュービックジルコニアなんです」と明かされるシーンを見たことがある人も多いだろう。あのジルコニアである。

 詳しくは“二酸化ジルコニウム”と呼ばれるもので、高硬度なのが特徴。素材としては透明で、ダイヤモンドに迫る屈折率を持つため、カッティングすると本物のダイヤと見まごうほど輝くのだそうだ。

 “模造ダイヤの素材”と聞くとあまり良いイメージではないが、本物のダイヤをイヤフォンにしたらとても買えそうにない。それよりも気になるのが“高硬度”という特徴。ダイヤモンド砥石でしか磨けないほど硬いらしく、“余分な響きが出なさそう”という意味では音に良さそうなイメージ。傷も付きにくく、汗にも強いため、綺麗な状態が長持ちするという。イヤフォンのハウジングとしては利点が多そうだ。なお、ジルコニアはユニットがマウントされているスピーカープレートにも使われている。

ハウジングは濃いめの紺色。光沢塗装され、光によって様々な色に見える。ツルツルとした触感で、高級感はある

 ハウジングは濃いめの紺色で、光沢塗装されている。角度によっては青っぽくも、黒っぽくも見える不思議なカラーだ。新車のボディのような透明感があり、適度な重みと合わせて高級感がある。表面処理は滑らかで、適度な冷たさが心地よい。丸みを帯びてツルツルしているので、指先でつまみそこないそうになる。ともあれ、「さすがは模造ダイヤの素材」と、妙に納得してしまう高級感だ。カラーリング的には男性向けかもしれないが、女性にも受け入れられそうな質感だ。

 構造で興味深いのは、ケーブルが着脱可能なこと。ハウジング下部がプラグ状になっており、強く引くとそのままケーブルが引き抜ける。プラグ形状はACアダプタのプラグを細くしたような独自形状だ。

 ケーブルの着脱機構はUltimate Earsなどで見られるが、その端子とも異なるので、Ultimate Ears用のケーブルは使えない。松下電器から異なるケーブルの単品発売はアナウンスされておらず、「本体部分を長く使っていただける」と説明されているため、ケーブル交換で音色の違いを楽しむためではなく、どちらかと言うと断線時の交換を容易に行なうための機構と言えそうだ。接点が増えるのは音にとってはマイナスだが、安くはないモデルなので長く使うための配慮は素直に評価したい。

ハウジングの付け根が脱着可能なプラグ状になっている。プラグは色分けされており、左右の判断はしやすい

 ユニットはダイナミック型で、口径は8.5mm。インピーダンスは26Ω。音圧感度は100dB/mW。最大入力は200mW。再生周波数帯域は6Hz〜28kHzとかなりワイドレンジだ。重量はコードを省くと約7g。コード込みでは約20gだ。

 コードの長さは約1.2m。タイプは高級モデルらしくY型。細身のケーブルで、ツルツルとしたゴム製シースで覆われている。粘着性は少ないのでコードノイズはそれほど大きくはない。絡まりを防ぐためのスライダーも付属している。

ユニットはダイナミック型で、口径は8.5mm コードには絡まりを防ぐためのスライダーが付いている

イヤピースはXS/S/M/Lの4種類

 イヤピースはXS/S/M/Lの4種類で、一般的なカナル型よりもXSサイズ分多い。耳の穴の小さい女性などには嬉しいバリエーションだ。なお、別売オプションとしてイヤーピースのみの販売もしており、XSサイズの「RP-PD3XS-K」(ブラック)、「RP-PD3XS-W」(ホワイト)、「RP-PD3XS-A」(ブルー)と、カラーバリエーションも用意されている。

 ケースもブラックを基調として高級感のあるデザイン。キャリングケースも革風の大人っぽいデザイン

製品ケース。ベルベット調のケースが高級感を演出。宝飾品のようなパッケージングだ キャリングケースも革風の大人っぽいデザイン


■ 正統派な音質に満足。装着間に若干の不満も……

 細身のハウジングであることも手伝い、かなり耳の奥まで挿入できる。しかし、本体の重量がわりとあるため、耳穴にピッタリ合うサイズのイヤーピースで固定しないと徐々に重さに引っ張られて抜けてしまう。抜けないように大型サイズのイヤーピースを選んでいたが、それでも抜けてしまう。結果的には最小サイズを選び、かなり耳の奥まで押し込むようにして固定できた。

 装着感は人によって異なるものだが、2人でテストしても2人とも“普通のカナル型イヤフォンより抜けやすい”と感じた。耳に引っ掛けて固定する機構など、一工夫欲しかったところ。もっとも、最小サイズのイヤーピースを選べはそれほど不満は感じない。自分に合うサイズのピースをじっくりと選ぶのが使いこなしのコツだ。

 詳細な音質は、編集スタッフ2名で聞き比べたので以下を参照にして欲しいが、全体的な音質イメージとしてはワイドレンジで、付帯音の少なさが特徴と言える。ABS樹脂やプラスチックのハウジングを採用したイヤフォンでは、振動するハウジングからの音が再生音にキャラクターを乗せてしまうことがあるが、ジルコニアの場合は固有の付帯音はまるで感じられない。アルミニウムやABS樹脂と比べて共振レベルが低いためで、共振することはするのだが、その音域が人間の耳に聞こえる限界近く……20kHz付近にあるため、共振による音質への影響が低減できるという。

【音質インプレッション】

編集部:臼田(常用イヤフォンMDR-EX90SL/HP-FX300)

 iPod touchに接続して視聴した。

 使う前に重要なのが、イヤーピースの選び方。個人的には最小のXSが耳にフィットした。以下大きくなるにつれ、フィット感が悪くなり、XS以外は正直使いたくないという感じ……。

 カナル型イヤフォンでは、イヤーピースの選択は重要だ。耳へのフィット感により音の傾向も変わるし、遮音性も大いに左右される。たが、たいていの場合、耳に突っ込むというカナル型の構造上、フィット感はイマイチでも耳から外れて落ちることはあまり無い。

 しかし、RP-HJE900は甘くは無い。大きいサイズのイヤーパッドを装着すると地下鉄の一駅も持たずに、落ちてイライラした。2分と経たずに外れてしまう。ハウジングの比重が比較的重いこと、そして、表面が滑らかなことから、落ちやすいのかもしれない。耳穴の個人差もあるだろうが、個人的にはXS、かろうじてSまでが実用範囲といった印象だ。

 装着感には不満を感じたものの、音の傾向はとても気に入った。特に中低域のスピード、制動感は、ほかのカナル型イヤフォンとは一線を画す気持ち良さだ。ヒップホップやテクノ系のコンプの効いたスネアやキックの音離れの良さに驚かされる。音像がクリアで、付帯音が微塵も感じられない。

 ベースのクリアでゴリッとした質感も気持ちよく、打ち込み系のサウンドへの相性は非常に良い。低域はそれほど下まで出ているわけでもないようだが、タイトなドラム、ベースサウンドを楽しむには最適なイヤフォンだ。

 かといって、ダンスミュージック以外が楽しめないわけでもなく、中域も勢いよく、ポップスやロック、クラシックまでそつなくこなせる。オールドロック、レッド・ツェッペリンのライブ版や、The WhoのMy Generationなど、ラウドかつルーズな低音と、ファズギターの荒々しい歪みが、音の骨格が浮き上がるような強力な音像で伝わってくる。

 高域の情報量もしっかりしている。再生レンジがすごく広いというわけではないが、セパレーションがよく、ボーカルものも気持ちよく楽しめた。女性ボーカルものでは、若干引っかかりも感じることもあり、また、ピアノの強いタッチなどが耳に痛いこともあったが、それもキャラクターという感じ。

 豊かな音場感は無いのだが、立体的な音像で、楽曲の特徴を表現するようなサウンド。個性的だが、決して元のサウンドを壊さない、絶妙のバランスが気持ち良いイヤフォンだ。

編集部:山崎(常用イヤフォンATH-CK7)

 常用しているケンウッドのHDDプレーヤー「HD20GA7」と「iPod touch」を使ってテストした。

 一聴して驚くのは低域の“制動力”。再生音はフラットと言うよりは中低域にボリュームがある“ドンシャリ”寄りだが、その中低域の解像度が非常に高いため、“ドンシャリ”という言葉から連想するボワボワと膨らむ低域とはまったく性質が異なる。

 暴れるユニットをジルコニアが強固にホールドしているイメージ。ロックのドラム、パイプオルガンの低域など、凄みのある野太い低音が気持ちよく吹き出す。1音1音がくっつかず、精密に描かれていることに感心した。同社のカナル型と言えば超低音重視の「RP-HJE70」に驚かされた印象が強いが、その“暴れん坊”DNAを受け継ぎながら、低域の分解能や再生レンジの拡大を極限まで行なったサウンドだ。上品かつ精密で、無駄な音を出さないバランスド・アーマチュアのイヤフォンとは大きくキャラクターが異なるが、このイヤフォンでしか楽しめない音が出ている。

 「川田まみ/JOINT」、「綾音/コンプレックス・イマージュ」など、疾走感のあるロック系の楽曲との相性が抜群。打ち込み系の楽曲も音の分離が良く、得意だ。JAZZのアコースティック・ベースも心地よく鳴らしてくれるだろうと、ケニー・バロン・トリオの「Fragile」を再生。ルーファス・リードのベースから発せられる「ゴーン」という地鳴りのような低音に圧倒される。だが、低音の締まりが良すぎるため、その後に続く余韻や倍音は乏しく、音場が狭いように感じてしまう。だが、使い始めて4、5日なのでエージングはまだまだ。このまま使い込めば低域の伸びは確実に改善されるだろう。

 女性ヴォーカルも中低音が豊かなため、アカペラなどでは芳醇な音が楽しめる。正確さと言う意味では疑問もあるが、魅力的な音であることは確か。普通のイヤフォンであればハウジングの響きで増幅されるような余韻が、ジルコニアではカットされるため、やはり音場は狭い。だが、前述のように低域の解像度が高いため、ボーカルの背後にあるピアノの伴奏やベースの弦の動きは立体的に描写される。その結果“音場は狭めなのに奥行きが非常に深い”という独特の再生音が生み出されている。

 ホルストの組曲「惑星」から「木星(ジュピター)」など、大編成のオーケストラでは迫力豊かな再生が楽しめる。映画のサウンドトラックなどもドラマチックだ。モニターライクな再生音の高級イヤフォンに食傷気味になったら、確かな実力を持ちながら個性も光る、こんな再生音が魅力的に感じるのではないだろうか。


□松下電器産業のホームページ
http://panasonic.co.jp/index3.html
□ニュースリリース
http://panasonic.co.jp/corp/news/official.data/data.dir/jn080526-1/jn080526-1.html?ref=news
□製品情報
http://panasonic.jp/headphone/hje900/index.html
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【カナル型イヤフォン新製品・注目製品一覧】
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【新製品レビューバックナンバー】
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(2008年7月18日)

[AV Watch編集部/yamaza-k@impress.co.jp]


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