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ビクター、“竹響板”を追加したウッドコーンコンポ
-フルレンジながら豊かな低音。録音機能も追加


10月上旬発売

標準価格:オープンプライス


 日本ビクター株式会社は、ウッドコーンスピーカーを採用した高級ミニコンポの新モデルとして、スピーカーに改良を加えた「EX-AR3」を10月上旬に発売する。価格はオープンプライスで、店頭予想価格は84,000円前後の見込み。

 同社初のウッドコーンスピーカーをセットにしたコンポ「EX-A1」は、2003年11月に発売。その後、より高音質化した「EX-A3」が2007年2月に発売されているが、「EX-AR3」はその後継モデル。実売は84,000円前後で、従来のA3(発売当初実売8万円前後)よりも若干高価になっている。

 DVD/CDプレーヤーと、独自のデジタルアンプ「DEUS」(デウス)を内蔵したメインユニットと、フルレンジユニット1基を搭載するシンプルな小型ブックシェルフスピーカーで構成。機能的に追加されたのは前面のUSB端子に接続した、マスストレージクラス対応のプレーヤーなどに直接MP3録音ができるようになったことで、そのほかに大きな違いはない。主にスピーカーの高音質化に注力したモデルチェンジとなっている。

右がAR3のメインユニット。左はA3のもの。録音用のインジケーター追加などを除き、外観はほぼ同じ 右がAR3のスピーカー、左はA3 AR3のスピーカー

 使われているのは、カバ材の丸太から切り出した厚さ約0.28mmの木製シートを、独自の成形工法技術でコーン型の振動板に成形したウッドコーンユニット。カバ材は、“響きの良さ”に繋がる、自然な減衰特性を持ち、伝搬速度と内部損失のバランスがアルミやポリプロピレン、紙パルプよりも理想に近いとされている。また、振動板上の伝搬速度が木目方向により異なるので、定在波が出にくく、共振ポイントも現れないといった利点が多い。一方で、ユニットの形に成形すると、ひび割れたり、時間が経つとそっくり返ってしまうなどの問題があった。

 その問題を、スルメからヒントを得た“日本酒に浸す”工夫でクリア。日本酒の持つ保湿力を活用し、高温でプレスした際でも木材の水分が一気に蒸発してしまわず、割れない弾力性を持ったまま成形することが可能になった。また、形状を保つために木材専用の熱硬化性樹脂を使っているが、樹脂を使い過ぎるとプラスチックのような音になり、木材の良さが損なわれるため、木の音色を残す工夫が施されている。

試作段階のウッドコーン。ひび割れが起きている 日本酒に浸した後に成形したもの 実際のウッドコーン振動板

 こうした技術により初代ウッドコーンスピーカーが誕生。前モデルのA3では、採用ユニットを8.5cm径から9cm径にアップ。エンクロージャの容積も向上させたほか、磁気回路にネオジウムマグネットやアルミショートリング、歪みを取り除く銅ギャップなどを取り入れることで、エネルギー感や再生帯域の拡大などの改良が加えられた。

 今回の「AR3」では、A3で不足していた「腰の低い低域再生と、低音の解像度不足」、「サイズを超える音場表現力」、「全体の解像度」の向上を目標に開発。使っているユニットはA3とまったく同じ9cm径のウッドコーンだが、エンクロージャ内部にチェリーの響棒を追加。さらに、階段状の“竹響板”を内部の底に導入している。

 竹響板は5つの竹板で構成されており、ユニット側に向かって放射状に繊維の方向が揃えられている。これにより、エンクロージャの振動を制御。低域の表現力が向上したという。なお、板の追加により、従来下部にあったバスレフポートは上部へと移動している。この技術は特許出願中であり、ウッドコーン以外のフルレンジスピーカーでも低域再生能力改善に活用できるという。

上段が従来モデルのA3、下段がAR3。ポートの左右にチェリーの響棒が追加された 竹響板を投入することで、エンクロージャの振動を制御している
素材の繊維方向を揃えた竹響板 左は従来モデルのA3、右がAR3。竹響板とチェリーの響棒を加えたことで、バスレフポートが上部に移動した

 ほかにも、内部に充填している吸音材をチェリーから、より孔が多い(表面面積が大きい)メープルに変更。解像度のある、重厚な低域を実現するという。スピーカーの外形寸法は120×267×161mm(幅×奥行き×高さ)。重量は2kg。防磁タイプ。

 メインユニットはDVD/CDに加え、MP3/WMA/WAVと、JPEG静止画を収録したDVD-R/RW、CD-R/RWの再生に対応。前面にUSB端子を備えており、USBメモリなどに収録した同ファイルも再生できる。また、新たにMP3形式での録音機能も追加。128kbps固定で、USB接続したプレーヤーなどのメモリにCDから録音できる。

 デジタルアンプ・DEUSは、最大出力40W×2ch。圧縮音楽の欠落した情報を独自のアルゴリズムで再生成する「K2テクノロジー」や、3Dフォニック、ヘッドフォンサラウンド、クリアーボイスなどの機能も利用可能。AM/FMチューナも備えている。

 出力端子はD2、S映像、コンポジット、光デジタル音声、サブウーファ、AVコンピュリンク、ヘッドフォンを各1系統。アナログ音声出力を2系統用意。入力はアナログ音声と光デジタル音声を各1系統備えている。メインユニットの外形寸法は246×283×104mm(幅×奥行き×高さ)。重量は3.8kg。リモコンも付属する。

A3の背面。バスレフポートが下部についている AR3の背面。ポートは上部に移動した メインユニットの背面


■ 再生音には大きな変化

比較試聴の様子

 発表会場では、従来モデルとの比較試聴も実施。ユニットやエンクロージャーのサイズ、アンプにも大きな変更は無いが、再生音が大きくクオリティアップしていることが確認できた。特に低域の量感が増加し、ピアノの左手が鍵盤を押し込む力強い音が、従来モデルよりも一段と深く落ちる。腰の据わった低域再生ができるため、フルートやアコースティックベースの音の輪郭が明瞭になり、音像に立体感が出た。

 従来のウッドコーンフルレンジは、トランジェントの良さや解像度の高さなど、ユニット性能の良さは感じられるものの、低域が不足していたため、全体では高域寄りのバランスとなり、結果的に高域のキツさが気になる部分もあった。しかし、新モデルではバランスが改善され、女性ヴォーカルのカサつきが減り、芳醇な響きが楽しめる。また、その低域もウッドコーンで出しているため、解像度の高さが全域で維持されているのも好印象だ。

ホームAV事業グループ AVシステムカテゴリー 技術部 商品設計グループの今村主幹技師

 同社ホームAV事業グループ AVシステムカテゴリー 技術部 商品設計グループの今村智主幹技師は、「スピーカーは楽器でありたい」というウッドコーンスピーカーの基本理念や、木材の響きを活かした再生音の実現への取り組みなどを紹介。「再生周波数特性など、測定値的には従来モデルと大きな違いは出ないが、耳で聴いてみるとライヴ感やヴォーカルの感情表現などが大幅に向上していることがわかる」と、新モデルの特徴を説明。

 新モデル開発にあたっても、ビクタースタジオと共同音質チューニングを行ない「オリジナルマスターテープのイメージを再現するレベルまで完成度を向上させた」と語り、グループ企業との連携で、ソフト制作側の感性や技術力も柔軟に取り入れられる、同社ならではの強みもアピールした。

 なお、「EX-AR3」は、10月上旬発売のマグネシウム製ユニットを採用したフロア型スピーカー「SX-M7」と共に、9月30日から幕張メッセで開催される「CEATEC JAPAN 2008」の同社ブースにおいて、試聴できるという。

□日本ビクターのホームページ
http://www.victor.co.jp/
□ニュースリリース
http://www.victor.co.jp/press/2008/ex-ar3.html
□関連記事
【2007年1月17日】ビクター、新開発ウッドコーンを採用したミニコンポ
-9cm径フルレンジユニット搭載。K2テクノロジー採用
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20070117/victor1.htm
【2003年9月30日】ビクター、世界初の木製コーンスピーカー採用DVDミニコンポ
-DVDオーディオ再生も可能、単品スピーカーは来春発売
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20030930/victor.htm

(20089年9月16日)

[AV Watch編集部/yamaza-k@impress.co.jp]


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