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「亡念のザムド」など、スタートしたPSN動画配信を検証する
−41本でサービス開始。高画質コンテンツと意外に厳しいDRM


9月24日サービス開始


 PLAYSTATION 3(PS3)などでアクセスできるPLAYSTATION Network(PSN)上において24日、「亡念のザムド」などの映像配信サービスがスタートした。

 世界各地の天気情報やニュースなどをチェックできる「Life with PlayStation」や、βテストがスタートした3Dコミュニティ「Home」など、ゲーム以外の機能強化も積極的に進めているPS3において、エンターテイメントプラットフォームとして新たな魅力が追加されることになる。さっそくその使い勝手を体験してみた。

 まずはサービスの概要をおさらいしておこう。配信が行なわれるのはPLAYSTATION Network(PSN)。新作ゲームの体験版やデモ映像、ゲームの追加コンテンツなどを配信/販売しているPSN Storeでの有料配信となっている。

亡念のザムド
(C)BONES/Sony Computer Entertainment Inc. , Aniplex

 PSNには、PS3、もしくはPCでアクセスできる。しかし、PCでアクセスする場合、各種コンテンツは接続したPSPにダウンロードする方式となっているため、PCからアクセスするPSN StoreではPSP向けのコンテンツしか表示されない。将来的にはPSP単体でPSNにアクセスできるようになる予定だが、現時点で有料動画配信はPS3のみで受けられるサービスということになる。なお、詳細は後述するが、PS3でダウンロードしたコンテンツをPSPにムーブすることは可能だ。

 配信コンテンツは、HD映像が720pのMPEG-4 AVC/H.264で、ビットレートは6〜8Mbps。SD版は1.5〜2Mbps程度で配信される。コンテンツラインナップの代表は、ボンズの新作アニメ「亡念のザムド」(ぼうねんのざむど)。そのほかにも、アニプレックスやバンダイチャンネルの40タイトルが用意。サービス開始時の合計は41タイトルとなっている。

 全てアニメなので「アニメ配信サービスか?」と思われがちだが、アニメに限定されているわけではないようだ。SCEでは今後のラインナップの指標として「ゲームユーザーにお楽しみいただける厳選されたハイクオリティなタイトル」(SCE)としており、テレビ朝日、東京放送、日本テレビ放送網などのコンテンツも配信予定としている。


■ スタート時配信タイトルが31から41へ増加

 PSNのページにアクセスすると、画面左上に「ムービー」というアイコンが追加されている。これを押すと、画面全体が横方向に回転。動画配信メニューへと切り替わる。

 メニューは「亡念のザムド」、「オススメ」、「テレビシリーズ」、「特撮・OVA」、「劇場公開」、「配信中作品一覧」が用意され、「ザムド」は別格という扱いだ。作品一覧を見ると、8月に発表された約30作品から少し増えており、「BLOOD the last vampire」や、「天地無用 魎皇鬼 第3期」、「闘牌伝説アカギ」などのタイトルが追加されている。

PSN動画配信のコンテンツ一覧

画面左上に「ムービー」というアイコンが追加されている 動画配信のページ 配信コンテンツの一覧

 価格は、亡念のザムドのHD版が400円、SD版が300円。それ以外は作品によってまちまちで、テレビシリーズは200円、OVAは300円(古めのものは200円)、劇場用作品は450円のものが多いようだ。ストリーミングは無く、ダウンロードレンタル方式のみとなる。

 課金はPSN Storeのシステムを利用する。PSNで有料コンテンツを買ったことが無いというユーザーもいると思われるので、その手順を簡単に紹介しよう。

 まず、PSNでお金を利用できるようにするため、PSNのウォレット(財布)機能にお金をチャージする。チャージ元はクレジットカード、電子マネー「Edy」、プレイステーション ネットワーク カード/チケットの3種類から選べる。クレジットカードを使う機会が多そうだが、その場合は1,000円、3,000円、5,000円、1万円、2万円から指定してチャージできる。なお、チャージの上限は2万円で、それ以上登録することはできない。

 今回は1,000円のプレイステーション ネットワーク カードを使ってみた。チャージはクロスメディアバーメニューの「アカウント管理」から実施。「購入管理」から「ウォレット」を選び、PSNカードの裏面を削って現れる数字を入力すると、カードの金額に合わせたお金がチャージされる。

チャージはクロスメディアバーメニューの「アカウント管理」から実施 チャージ完了

 欲しいタイトルを選ぶと「今すぐ購入」か「カートに入れる」が選べ、カートに入れれば複数のコンテンツを一度に購入することが可能だ。購入したコンテンツは「ダウンロードリスト」に移動し、タイトル横のダウンロードボタンを押すとダウンロードがスタートする。通常の映像ダウンロードと同様に、ダウンロードしながら再生したり、バックグラウンドでダウンロードしておくことも可能だ。

 なお、「亡念のザムド」の場合のみ、購入時にHD/SDのどちらかを選択する画面が現れる。SD動画はPSPにムーブして視聴することが可能だ。詳しくは後述するが、HD版をダウンロードした後、SD版をダウンロードする際には別途料金がかかり、PS3でHD映像をSD映像に変換する機能なども備えていないため、ダウンロード前に「PSPでも見るかどうか?」を考えておかねばならないので注意が必要だ。

「亡念のザムド」の場合のみ、購入時にHD/SDのどちらかを選択する画面が現れる HD/SD共に、再生後は72時間視聴ができる。また、再生していない状態でも購入後30日が過ぎてしまうと、コンテンツは削除されてしまう ダウンロード中の画面。ダウンロードしながらの再生や、バックグラウンド処理も可能だ


■ ダウンロード後の取り扱いは簡単

 ダウンロードが終了したコンテンツは、クロスメディアバーの「ビデオ」欄に表示される。今回は「ザムド」の第1話をHD版で、第2話をSD版で購入してみた。

 ファイルの情報を表示させると、拡張子は「MNV」と表示される。ファイルサイズはHD版(第1話)が約1.5GB(24分28秒)、解像度は1,280×720ドット。映像コーデックはMPEG-4 AVC/H.264で8Mbps、音声はAACの256kbpsと表示される。SD版(第2話)は423MB(25分58秒)で、解像度は720×480ドット。映像コーデックはMPEG-4 AVC/H.264で2Mbps、音声はAACの256kbpsである。

 HD/SD共に、再生後は72時間視聴ができる。また、再生していない状態でも購入後30日が過ぎてしまうと、コンテンツは削除されてしまう。PSPにムーブしたコンテンツに関しても同様だ。DRMにはMarlinを採用している。情報表示画面には残り時間が29日と表示されており、一度でも再生すると初回再生の時間と、それから72時間後の再生限界時間が表示される。

ダウンロード後は他の動画ファイルと同様に表示される SD解像度版の概要 HD解像度版の概要

 コンテンツに対するメニューを表示させると、SD版にのみ「ムーブ」という文字が表示される。PSPに転送するためのボタンであり、転送方法自体はゲームなどの転送と同じ。PS3とPSPをUSBケーブルで接続して「ムーブ」を選べば、転送がスタートする。PSP用に再変換などはせず、同じファイルを転送しているようで、転送自体はすぐに終了する。PSP側で転送後のファイル情報を表示させたところ、ファイルサイズは解像度、ビットレートなどは全て同じものだった。

 PSPへの移動はムーブ扱いとなり、元のSD動画はPS3から削除される。もちろん再生制限はPSPにも引き継がれる。ソニーのBDレコーダにある「おかえり転送」のような機能は無く、PSPからPS3に書き戻すことはできない。そのため、PSPへムーブする時はよく考えてから行なったほうがよさそうだ。ちなみに、PSPからネットワーク経由でPS3を操作する「リモートプレイ」を使った場合、PSPからPS3内の購入コンテンツは表示/再生できなかった。

 HD/SDコンテンツとも「コピー」ボタンは表示されない。よって、PS3に接続したUSBメモリなどにコピーすることはできない。つまり、HD版に関してはPS3のHDDを取り出してPCなどに接続しない限り、ユーザーがダウンロードした動画にファイルとしてアクセスすることはできないようだ。

SD版には「ムーブ」ボタンが表示される HD版は再生、始めから再生、削除、情報表示のみだ PSPにSD版を転送中

 PSPに転送したSD動画は「VIDEO」フォルダに保存される。ファイル名は「JV9000-NPMA07256_CN-17705.MNV」となり、そのままPCの各種プレーヤーで再生しようとしても再生はできない。拡張子をAVIなどに変更しても再生できなかった。しかし、ファイルをコピーし、ファイル名を「JV9000-NPMA07256_CN-17706.MNV」などに変更してPSPで読み込んだところ、同じコンテンツが2つ認識され、どちらも再生できた(再生期限は同じ)。

PSPに転送したところ 情報表示。ファイル自体はPS3で落としたものをコピーしただけようで、解像度やビットレートに変化はない メモリースティック内にある「JV9000-NPMA07256_CN-17705.MNV」というファイルがSD動画のファイルだ

 このメモリースティックを他のPSP(PSP B)で読み込ませたところ、「このコンテンツを利用するには、本機を認証する必要があります」と表示され、再生はできなかった。そこで、他のPS3で同じようにザムドの第2話を購入し、他のPSP Bに転送。その第2話ファイルをPSP AのメモステにPCを使ってコピーしたところ、どちらの第2話も再生できた。再生認証はメモリースティックに紐付けされているのではなく、PSP本体に紐付けされているようだ。

 そこで、PSPを再度PS3にUSB接続し、PSPを接続したままメモリースティック内のSD動画を認識させると、コンテンツのタイトルなどは認識するが、再生はできない。カードリーダを介してメモリースティックを読み込ませても、ファイルは認識されず、再度PS3でSD動画を再生することは不可能なようだ。

 こうなると、HDとSDコンテンツをセットにしたバージョンや、HD版を購入すれば低価格な追加料金でSD版をダウンロードできるなどの追加サービスが欲しくなるところ。PS3本体でHDをSDへ圧縮する機能があっても良いだろう。デジタル放送の録画がダビング10の導入で緩和された今、ある意味でそれよりも厳しいコピーコントロールである点はいささか残念だ。

ファイル名を変えたり、コピーしても同じメモリースティックとPSPならば再生できる 他のPSPのメモリースティックと入れ替えても再生はできない PSPをPS3に接続して再生を試みたが、できなかった


■ 「ザムド」はHD/SD版ともにハイクオリティ

 HD版とSD版の画質を、46型の液晶テレビで比較してみた。SD版は平均2Mbpsと低ビットレートだが破綻は少なく、細部を気にしないのであれば46型でも十分鑑賞できる。ただキャラクターの服のグラデーションが曖昧であり、戦闘シーンなどでは輪郭にモスキート/ブロックノイズも発生する。オープニングで表示される文字は比較的滲みが少ないが、その背景の絵は崩れがちになってしまう。しかし、主線の太いアニメ映像とPS3の強力なアップコンバート能力により、パッと見た限りではハイビジョン映像に見えるクオリティだ。

 HD版では前述の不満が払拭され、疾走シーンや細かい破片が飛び散るシーンなどでもブロックノイズはほとんど出なくなる。階調のトーンジャンプも抑えられ、滑らかな高画質が楽しめる。Blu-rayに収録されたデジタルアニメと比べると、色の鮮やかさや精細感に劣る印象だが、地上デジタル放送のテレビアニメよりは高画質と言えるだろう。なお、SD版もPSPに転送すれば、前述の粗はまったく目立たなくなる。

 作品内容は既報の通り。強力な力を持つ「ザムド」に変身してしまうようになった少年・アキユキが主人公。自らの力を制御できるようになるため、仲間と共に世界を巡り、成長していくという物語だ 製作は「鋼の錬金術師」や「交響詩篇エウレカセブン」などで知られるボンズ。監督はジブリで「千と千尋の神隠し」に演出助手として参加し、「エウレカセブン」でも絵コンテや演出を担当した宮地昌幸氏。同氏初の監督作品となる。疾走感のあるOPから非常にクオリティが高く、今後の展開にも大いに期待できそうだ。

ひょんなことからザムドの力を手にしてしまうアキユキ
(C)BONES / Sony Computer Entertainment Inc. , Aniplex
アキユキの幼なじみ、ハル ザムドの力を制御できる謎のヒトガタ使い・ナキアミ 組み込むことで浮遊機関を作ることができる“赤宙石”(せきちゅうせき)が存在する、架空の世界が舞台
(C)BONES / Sony Computer Entertainment Inc. , Aniplex


■ 映像配信サービスとしての独自色が出せるか?

 これまでのPSNは、PS3ゲームのデモや追加コンテンツの配信、PSP用ゲームの配信を積極的に行なう一方で、映像の配信はそれほど注力していなかった。PS3の発売当初はSPEのBlu-ray Discビデオのトレーラーなどが多く掲載されていたが、新規の追加も少なく、So-netが展開していたPS3/PSP向けの動画配信サービス「Portable TV」も2007年8月末で終了している。

 こうした状況の中での動画配信スタートは、「Life with PlayStation」や「Home」機能の追加と合わせて、「PS3でゲーム以外の、新たなエンターテイメントプラットフォームになれるか?」を占う転機と言えるだろう。スタート時に揃えられたコンテンツはアニメファンに人気の高いコンテンツが多く、目玉となる「ザムド」も、アニメファンに支持されるボンズの完全新作ということから、インパクトは大きい。PS3がインターネットに接続されていれば、プロバイダや回線に依存せずにサービスが受けられるハードルの低さも他のサービスに対するアドバンテージと言えそうだ。

 一方で、対応するテレビがあれば、手軽に有料ストリーミングコンテンツが楽しめる「アクトビラ ビデオ フル」や、NTTグループが手がける「ひかりTV」など、競合サービスも魅力を高めている。今後は「PSNだからこそ楽しめる魅力と、使い勝手の向上」が望まれるだろう。

 コンテンツ面ではオリジナルアニメや、ゲームを原作としたアニメなど、PS3ユーザーの嗜好に沿った、ある意味“濃い”コンテンツの充実に期待したいところ。ゲームをプレイする合間に、新作ゲームの情報や攻略を扱う番組が、PS3でそのまま視聴できるようになっても面白いだろう。

 システム面ではPSPにムーブしたSDコンテンツの書き戻し、もしくはHD/SDのファイルをセットにした販売はぜひとも対応して欲しい。時間が無い時はPSPで、帰宅後の鑑賞はHDを大画面でというニーズは確実に存在するし、映像配信としては後発でもあるため、柔軟な視聴スタイルの提供は必須と言えるだろう。

 「亡念のザムド」の場合、HD版が400円、SD版が300円という価格設定は他のサービスと比べるとどうだろうか? 26話構成なので、全話HDで見ようとすると10,400円かかる。レンタルDVDの新作が一泊二日で350円くらいであることを考えるとそれほど高いとは感じない。レンタルBDだとさらに100円程度高価な店舗が多いだろう。テレビアニメであれば無料で録画できてしまうので比較にならないが、セルのBDビデオと比較すると、例えば同じ26話構成の「マクロスF」の場合、全話そろえると6万円を超えてしまう。

 問題は「亡念のザムド」がアニメ作品であり、この作品を“いち早く観たい”というアニメファンの多くが、アニメのBlu-rayを率先して購入する層とかぶっていることにあるだろう。ザムドのBDビデオ化はまだアナウンスされておらず、出るにしても価格が幾らになるのか不明だが5万円を超えることは確実だろう。となると、将来的に5万円払ってセルBDで揃えるものに、さらに1万円支払って一足先に鑑賞するか? という問題に突き当たる。結論としては“コンテンツの魅力による”わけだが、判断するためにも“1話のみ無料配信”などのサービスは欲しいところ。いっそのこと「PSN配信のみで、絶対にBDビデオで出ない」と宣言されれば話は別だが、BDビデオ版も欲しいというアニメファン心理もあり、悩ましいところである。

□SCEのホームページ
http://www.scei.co.jp/
□ニュースリリース
http://www.jp.playstation.com/info/release/nr_20080718_xamd.html
□ザムドの公式サイト
http://www.xamd.jp/
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(2008年9月24日)

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