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Blu-ray Disc Association(BDA)の基調講演は、Blu-ray Discを推進する各社が集まり、最新の規格化状況や市場状況を報告。さらに、デジタルメディア評論家の麻倉怜士氏を司会とし、パネルディスカッションが行なわれた。 ■ BDの新しい方向性を模索。中国でもBD本格化
BDAの代表として登壇した、パナソニック株式会社 蓄積デバイス事業戦略室 室長の小塚雅之氏は、最新の規格化状況などを報告した。 規格化については、2007年にほぼ完成しており、2008年はBD-R 6倍速を規格化。すでに6倍速対応のメディア/レコーダなど製品も発売されている。「規格化としては一段落して、これからどんなアプリケーションを実現しようかということを議論している」という。 日本国内のレコーダ市場におけるBDについては、台数ベース4割、金額ベースで6割という現状から、年末には台数5割、金額7割となる見通しを示した。ソフトについても、「500タイトルを超え、年末にかけていいタイトルも続々と増えてくる」とし、年末の売上拡大を予測した。 さらに中国の状況も報告。「2月に(HD DVDとの)フォーマット戦争は終わったのですが、中国では“まだなにかやっている”という話もあるので、誤解があるといけませんので説明します」とし、ソニー、パイオニア、パナソニックがBDプレーヤーを出荷済みで、ディスクについてもSPEと華録集団とソニー(SDADC上海)が中国国内のBDディスク生産を開始したことなどを報告。また、機器メーカーへの生産支援のための検証センターも設立したという。 そのため、中国メーカーも6社がBDプレーヤーを開発し、7月のSinoCESに出展。さらに中国独自の音声フォーマット「DRA」もオプション規格に含めることを決めている。そのため、2008年内には中国でもすべてのインフラが整い、「日米欧に続き、中国でもBlu-rayの本格普及期に入る」と説明。中国向け製品の具体例などを紹介した。
BDフォーマットの今後については、「ハリウッドとの協業とDVDとの差別化」を挙げた。「高画質」や「高音質」に加え、BD-JAVA、ネットワーク機能の「BD-LIVE」などの取り組みを進めるほか、3D表示などの新機能についても取り組む。ただし、現時点では3Dについての規格化作業などはまだ始まっていない。 ウォルト・ディズニー・ジャパン株式会社 ウォルト ディズニー スタジオ ホーム エンターテイメント 日本代表の塚越隆行氏は、6月に設立されたDEGジャパンの活動を報告。コンテンツメーカーと機器メーカーの連携を図り、Blu-rayをはじめとする新しいデジタルエンターテインメントの創出や共同プロモーション、アワードの開催などを行なっていく。現在の加盟社は、コンテンツメーカーが24社、機器メーカーが8社となっている。
また、塚越氏は米国の状況として、「BD-LIVEやセカンドセッションなど、BD周辺の新しいビジネスが立ち上がりつつある。日本ではBD-LIVEなどは増えていないが、gfkのデータでは、2007年の売上枚数が17万枚、2008年は8月までですでに56万枚。消費者がBDを支持しはじめているのを感じる。米国で先行している機能的な部分がさらに進めるほか、日本ならではの新しいビジネスモデルも生まれてほしい。BDを消費者の皆さんが楽しんでいただけるような環境を作っていきたい」と語った。
□関連記事 ■ 3Dなど新しい提案も。BDAには「土下座しなくても入れる」
また、関連各社の代表による座談会も実施。デジタルメディア評論家の麻倉怜士氏が司会を務め、「Blu-ray Discが人生を変える」とテーマ設定。エアチェックしたディスクを「積読」ではなく「何回でも見直してしまう」と、そのBlu-rayの魅力を語った。 さらに、BDやハイビジョンの魅力を伝えるため、自宅で定期的に開催しているという「視聴会」の来場者の感想なども紹介。麻倉邸のシアターを訪れたメーカー幹部の「忘れていたPackage Mediaの持つ重要性を改めて認識された思いです」などのコメントを紹介し、本格的なシアター環境下でのBD体験の魅力を訴えた。
ウォルト・ディズニー・ジャパン株式会社 ウォルト ディズニー スタジオ ホーム エンターテイメント マーケティング エグゼクティブ・ディレクターの高橋雅美氏は、「眠れる森の美女」などの同社の新作BDタイトルを紹介。 BDの新しい映像体験として、高画質/高音質だけでない、BD-LIVEやDigital Copyなどの取り組みについて説明。米国版の眠れる森の美女では、BD-LIVEを使った、同一タイトルの視聴者同士のチャットやメール機能、さらに会員向けのショッピングサービスなどを実現しているという。
また、米国における映画館の3D化というトレンドを紹介。2011年までに全世界の3D対応スクリーン数が3倍まで増加する予定で、2009年のDisneyの最新作の多くも3Dでリリースされる予定という。「映画館と同じような体験を、家庭でもという流れを考えると、家庭でも3Dという風に変わっていくのではないだろうか」と語った。
「FREEDOM」などを手がけたアニメーション監督の森田修平氏は、アニメーション製作の現場の現状やHD化による変化について言及。「生の美術さんの絵をみると、やはり驚く部分がある。生だと実は荒っぽいけれど、それが画面に入ったときにがらっと変わったように見える。そうしたことが高解像度の映像だとわかる」などの事例を紹介。高解像度化により、「アニメの演出の幅が広がる。やりたいことが増えていくかな、と思います」とした。 ソニーピーシーエル株式会社 事業本部 メディア事業部 JN技術室の横田一樹氏は、「マスターテープの画質をいかにひきだすか」というBDディスクオーサリングの基本を紹介。ただし、「最近は高画質が当たり前になってきた。そのため、BD-Jを使ったインタラクティブなメニューを作品ごとに作ったり、BD-LIVEといった、見るたびに違った、進化するディスクを作れるようにがんばっている」とする。 また、PCLで手がけた思い出深いBDビデオタイトルとして「イバラード時間」を紹介。当時(2007年7月発売)は、「MPEG-2とMPEG-4 AVCのどちらのコーデックで、どういう表現ができるのか、模索中だった」という。“絵画タッチなのに高精細”という同作品を生かすのがMPEG-2かAVCか非常に迷った結果、両方のコーデックで収録し、ユーザーに選択してもらう方式をとったという。なお、同社では現在は多くのタイトルでAVCを採用している。 株式会社ステレオサウンド 月刊HiVi編集長の泉哲也氏は、パッケージメディアとして「クオリティ」にこだわったタイトル、機器を要望した。 また、DEGに大手電機メーカーの8社が入っているが、東芝が入っていないことについて、麻倉氏が小塚氏に質問。小塚氏は、「先ほどの中国メーカーの事例のように、BDAの姿勢はオープンです。土下座しなければ入れないということは無いので、そこだけはご理解頂きたい」と語った。 ディズニーの高橋氏は、フォーマット戦争の終結について、「昨年の段階でもBDが有利、といわれていた。そうはいっても“どっちを買えばいいか”、という不安をお持ちの消費者は実際に多かった。それがなくなったのは大きい。あとはお店、流通の方が積極的に参加していただけるようになり、安心して売れる環境になった。そこは大きい違いです」と言及。 「どんなメディアでもいい。多くの人に見ていただける作品を作りたい」と語る、森田監督だが、HD DVDで発売されたFREEDOMについては、「作品は7巻まであるのですが、HD DVDは6巻で終わってしまい残念」とする。なお、FREEDOMのBD-BOXは4枚組みのボックスセットとして、11月11日に発売される。 BDにおける3D対応について小塚氏は、「BDAの中では、まだ話が始まっていません。ただし、映画館では3D化が進んでいてそこで対策が必要になる。例えば、ハリーポッターも3Dに、さらにピクサーやディズニーも3Dになる。難しいのであればやらないかもしれないが、パナソニックの今回の提案は技術的に“それほど遠くなくできる”という提案です。今後BDAの中で話し合いたいと思いますが、“映画会社がやりたい”という以上、3Dに取り組んでいきたい」とし、4Kよりは3D対応がハリウッドの意向との考えを述べた。 また、配信とBDの競合については、「例えば、アクトビラでも近い将来配信で買ってバーニングできるようになると思います。そういう意味ではBDは配信と相性のいいメディアだと思います」とした。
□関連記事 □CEATEC JAPAN 2008のホームページ ( 2008年10月2日 ) [AV Watch編集部/usuda@impress.co.jp]
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