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パイオニア、業績不振を受けて須藤社長が退任
-第2四半期決算を発表。通期損失は780億円に


須藤社長(左)と小谷新社長(右)
10月30日発表


 パイオニア株式会社は、2009年度第2四半期決算を発表するとともに、代表取締役社長の須藤民彦氏が退任し、11月16日付けで現常務取締役の小谷進氏が新社長に就任する人事を発表した。

 この人事は、通期連結業績見通しが170億円の営業損失となり、純損失も780億円に拡大することなどによる経営責任を明確にするもの。新社長となる小谷氏はホームエンタテインメントビジネスグループ本部長。カーエレクトロニクスの営業や、国際部長、海外現地法人社長などを経験しており、今後パイオニアは小谷社長のもと、事業構造改革を推し進め、業績回復を図っていく方針。なお、須藤現社長は取締役として、新社長をサポートしていくという。

須藤民彦代表取締役社長 11月16日に新社長に就任する小谷進常務取締役

第2四半期業績

 第2四半期決算は、売上高が前年比82.8%の1,660億7,600万円、営業利益はマイナス68億7,200万円、純利益はマイナス452億3,400万円と大幅な赤字を計上した。

 状況の変化を受け、通期業績予想も下方修正。5月13日発表時から、売上高は前年比800億円、10.4%減の7,000億円に修正。営業利益については、当初予測の70億円のプラスから、170億円のマイナスに、純利益は190億円のマイナスから、780億円の損失とした。

 また、2010年度に売上高9,000億円、売上高370億円を目指すという中期経営目標についても、「目標達成はほぼ困難(須藤社長)」としており、新社長のもと2009年までに新しい目標を策定し、発表する予定。

 須藤社長は、「事業環境はかつてないほど急速に悪化している。変化に対応できず、大幅な損失を計上した。私の力不足によるもの。株主、関係者の皆様に深くお詫び申し上げる。こうした中では、新しいリーダに舵取りを任せるべきと考えた」と社長交代の理由を説明。業績の悪化については、「サプライズに近い悪化になっている」と述べ、その責任を取り退任するとした。

 新社長に就任する小谷常務取締役は、「厳しい環境の中、引き受ける責任をひしひしと感じている。全力を尽くして一日も早く業績の回復を実現する。ホームエレクトロニクスの事業部長として構造改革を行なってきた。まだ半ばだが、ほぼ計画通りで、成果もみえてきている」と言及。「しかし、急激な経済環境の変化で、さらなる対応が求められている。新体制では意思決定のスピードを重視していく。先頭に立ってリーダシップを発揮して、引っ張っていく」と意気込みを語った。

通期業績予想も下方修正 下方修正の主な要因


■ プラズマの売上減と、カーエレの損益悪化が響く

ホームエレクトロニクスの概要

 2008年第2四半期は、市販市場向けのプラズマディスプレイやDVDドライブ、カーオーディオの売上が減少。営業損益も、売上減と原価率悪化により、赤字となった。

 ホームエレクトロニクスの営業収入は、前年同期に比べて30%減の625億8,900万円。海外におけるプラズマディスプレイの売上減少に加え、DVDドライブも売上減となった。ホームエレクトロニクスの売上に占めるディスプレイの売上構成比は40%(前年は41%)。

 国内の売上は、前年比36.4%減の67億4,700万円。海外は同29.2%減の558億4,200万円。ホームエレクトロニクスの営業損失は69億5,300万円(前年同期は41億500万円)。


カーエレクトロニクスの概要

 カーエレクトロニクスについては、売上高が前年比7.7%減の855億4,600万円。カーナビは市販市場向けが欧州で増加し、増益となった。OEMの売上も北米で減少したが、中国や国内で増加し、増収となった。カーオーディオは、北米や欧州で減収となった。カーエレクトロニクスに占めるOEMの売上構成比は約40%(前年同期は38%)。同事業の営業利益は、88.2%減益の10億7,200万円。営業利益率は1.3%。

 その他の事業では、有機ELの売上が減少し、前年比2.2%減収の179億4,100万円。営業利益は64.1%増益の4億4,300万円。携帯電話用スピーカーの損益改善が、増益に寄与したという。

 構造改革の進捗についても報告。ディスプレイ事業においては、PDPパネルの自社生産を2009年3月までに終了するが、DPC山梨工場については2008年8月に、PDC鹿児島工場は、2008年11月に生産を終了する。また、DPC静岡工場は2009年2月に生産終了を予定している。

 山梨工場は売却交渉中で、鹿児島工場はFEDを展開予定のエフ・イー・テクノロジーズに譲渡することで基本合意、静岡工場はホームエレクトロニクスの生産、アフターサービス拠点として、規模を縮小しながら運用する予定。

 今後、PDPパネルは2009年夏よりパナソニックから供給を受け、パイオニアの独自技術を採用したパネルをパナソニックが生産する予定。あわせて、一部のパネル技術者がパナソニックに移籍している。

 そのほか、海外の販売体制見直しや、ディスプレイ/AV事業の人員再配置などの施策を進め、固定費の削減を図っていく。

ディスプレイ事業の構造改革。鹿児島工場はFEDに譲渡予定 ホームエレクトロニクス事業の構造改革


■ 創業の精神で市場創出を。PDP撤退に困難も

 質疑応答では、「近年大きな損失が続いている。世の中のために、なんのためにパイオニアがあるのか。どう考えているのか」との質問も出た。須藤社長は、「かつては“世界初”の製品などを次々に手がけてきた。そうしたことが近年ないのは事実。パイオニアがもう一度成長するためには、そういった新しい分野が必要になる。研究所や経営戦略室などで、そうした新カテゴリの計画を練っている」と語った。

 小谷新社長は、「パイオニアの創業の精神は、最先端であること。それが伝統。ものづくりに前向きに取り組んできたが、そういう製品がなかなか出てこなくなっている」とし、新しい製品カテゴリに取り組む姿勢を見せた。

 依然、約25%と世界トップシェアを誇るカーエレクトロニクスについても収益が悪化しており、営業利益率は1.3%となった。利益率6%を目標に掲げて取り組んできたが、PNDの台頭など、カーエレクトロニクスをめぐる周辺状況も変化している。須藤社長は、「経済環境の悪化と構造変化の両方がおきている。6%という目標が維持できるのか、別の考え方が必要か。まだ答えを見つけられない。市販市場でもメカレス化などの変化が起きている。ただ、OEMでも3~4年先には5%ぐらいの利益確保を目指しており、見通しとしては6%もありうる。数字だけの遊びではなく、どういう価値を生み出せるのかが重要。これからそこを積み上げたい」とした。

 また、退任の率直な感想を尋ねられた須藤社長は、「退任を考えたのはこの1カ月内外。想像以上に数字が悪化した。まず責任を明確にして、緊張感を社内にも与えなければいけない。気持ちとすれば、当然道半ばで、2期連続で途中交代と言われ、忸怩たる気持ちでいっぱい」と語った。さらに、3年間の任期中に足りなかったことを問われ、「PDPの生産撤退を決めた時に、『もっと早く決めたかったか?』との問いに、『そういう部分もあるかもしれません”と答えたら、記事で『正直な社長』と書かれた。それは素直な気持ち。だが、いかに会社がPDPに賭けていたかということと、その責任を強く感じた。そして撤退することの困難を感じた」と述べた。

 今後の展開について小谷新社長は、DJ向け機材などのプロSV事業や、Blu-ray関連の事業強化の方針を説明。さらに、「協業が重要な選択肢になる。シャープと協業を進めているが、1年たっていろいろなプロジェクトが進行している。CEATECではシャープとの成果(AQUOS XS)を披露したが、次の段階に入っている。パナソニックとも、6月よりパネル供給を受けることになっており、パイオニア独自技術を織り込んだパネルを作っていただくことで合意している。こうした協業は、将来にとって大きな意味を持つ。積極的に進めていく」と説明した。

□パイオニアのホームページ
http://pioneer.jp/
□ニュースリリース(社長人事/PDF)
http://pioneer.jp/press/2008/pdf/1030-4.pdf
□ニュースリリース(第2四半期業績/PDF)
http://pioneer.jp/press/2008/pdf/release_2q09j.pdf
□ニュースリリース(連結業績修正/PDF)
http://pioneer.jp/press/2008/pdf/1030-3.pdf
□関連記事
【7月31日】パイオニア、2009年度第1四半期決算を発表
-プラズマ減収などで損失拡大
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20080731/pioneer.htm
【5月13日】パイオニア、ディスプレイ事業の構造改革計画を発表
-プラズマ2工場を閉鎖。液晶TVはシャープから製品供給
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20080513/pioneer.htm

(2008年10月30日)

[AV Watch編集部/usuda@impress.co.jp]


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