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パイオニア株式会社は13日、ディスプレイ事業の構造改革とホームエレクトロニクス事業の損益改善の具体的な施策を発表。プラズマパネルの自社生産撤退に伴い、子会社パイオニア・ディスプレイ・プロダクツ(DPC)の山梨工場、およびパイオニアプラズマディスプレイ(PPD)の鹿児島工場を閉鎖/売却。他事業に再配置できない従業員には特別退職プログラムを実施することなどを明らかにした。 同社は 既報の通り、2008年内に国内投入予定のプラズマテレビ新製品を最後に、プラズマパネルの自社生産から撤退。松下電器とパネル供給や共同開発で包括提携を結び、パイオニアのパネル開発技術者は2008年6月から松下へ転籍。2009年6月から松下・尼崎第5工場より出荷されるパネルの供給を受けることを明らかにしている。 供給されたパネルを使ったテレビの組み立てを行なう必要があるため、DPCの静岡工場は組み立て工場として生産を継続。国内の物流や検査の拠点としても引き続き活用するという。しかし、DPC山梨工場、PPD鹿児島工場については、パネル生産終了後に閉鎖。売却を含めた活用策を検討している。 それらに携わっていた従業員については、DPC静岡工場やカーエレクトロニクス事業、子会社や関連会社を含むグループ内の他事業に再配置する計画だが、それで対応できない従業員には特別退職プログラムが用意されるという。 また、シャープからパネル供給を受けることを明らかにしている液晶テレビ事業に関しては、2008年8月から欧州を皮切りに市場投入する予定。最初の製品はパネルではなくシャープから製品そのものの供給を受けることになるという。「早く市場投入したいが、開発の時間的制約もあるので、最初は有りネタを使い、変化をつけられる部分に施すだけになるだろう。生産もひっくるめてシャープさんにお願いする」(須藤民彦社長)。 ただし、今後はパネルの供給を受け、パイオニア独自の技術を搭載した液晶テレビを開発。導入地域を拡大していく計画だ。また、「シャープの優れた液晶技術と、パイオニアが得意とする高画質化技術を組み合わせるために、共同開発を行なうことを協議中」だという。 須藤社長は液晶テレビ開発における、自社が手掛ける範囲について「(パネルをシャープから供給されても)描画技術などは独自のものを維持しないといけないなと原則的には考えている。しかし、独自技術にこだわってもあまり成果が出ないところは割り切って共通(共同開発)にしていきたい」と語る。 また、これらテレビ製品の組み立てを担当することになるDPCの静岡工場については、「国内向けの商品に関しては、やはり日本でモノを作ることは必要だと考えており、静岡工場で生産することを決めている」とする一方、海外向けについては「今後の可能性を検討中で何も決まっていない」とした。 これらのディスプレイ事業構造改革を実施することで、2010年3月期のディスレイ事業における経費を2008年3月期と比べ、150億円削減する予定。 また、ディスプレイやAV機器の製品設計技術者のうち、約200人を、注力しているカーエレクトロニクス事業やDJ機器を扱うプロSV事業に振り分ける再配置計画も実施。海外の販売体制を含めた固定費削減に加え、国内の管理部門、販売部門においても300人規模の雇用調整を予定し、労働組合との協議を開始。役員報酬の一部カットなども行ない、ホームエレクトロニクス事業全体の損益改善を目指す。ディスプレイ事業の構造改革も合わせて費用削減効果は230億円を見込んでいるが、大きな効果が出るのは2010年3月以降になる予定。この施策の実行に伴い、2009年3月期に150億円の費用を見込んでいる。 2009年のテレビラインナップのイメージとして須藤社長は、「シャープさんとの今後の話し合いによるが、液晶で40インチ台を導入する気はある。先々、プラズマで40インチ台をやるかどうかはわからない」と語り、プラズマは50インチ以上の大画面サイズのみになる可能性を示唆。また、2008年に投入を予定している、同社生産最後となるプラズマテレビに関しては「最後なので(生産を)かなり絞った状態になるので、不良在庫が残るなどの部分は心配していない」とした。
■ ホームエレクトロニクスを2010年3月期に黒字化
同日に発表された、2008年3月期の決算は、営業収入が前期比97.2%の7,744億7,700万円、営業利益は同87.3%の109億700万円、当期純損失は179億9,200万円となった。 DVDドライブやBlu-ray Disc関連デバイス、カーオーディオ、カーナビ機器の売り上げは増加したものの、プラズマやDVDの売り上げ減少が響き、営業収益は前期比2.8%のマイナスとなった。営業利益もカーナビは増加しているが、プラズマの損失が拡大したため、前期比12.7%減。当期純利益も所沢事業所と大森事業所の一部を売却した利益があったが、プラズマ生産設備などの減損約232億9,300万円を計上したことなどで、損失が拡大した。 セグメント別では、カーエレクトロニクスはオーディオ/ナビ共に売り上げは増加。前期比4.5%増収の3,739億円。北米でOEMの売り上げが増加したほか、市販市場の売り上げも中南米で増加した。営業利益ではOEMで開発費用が増加しているが、広告宣伝費などの販売費が減少したことで、前期比18.3%増益の261億円となっている。 一方ホームエレクトロニクスの売り上げは、前期比8.8%減の3,295億円。プラズマは北米や欧州を中心とした販売台数の減少により売り上げも減少。DVDドライブやBD関連デバイスの売り上げは増加しているが、DVDレコーダの売り上げ減少が響いている。営業損失は前期の158億円から179億円へと拡大。DVDレコーダでは開発費圧縮で損失が縮小したが、プラズマの売り上げ減少により損失が広がった。
その上で、中期経営目標として2011年3月期に連結営業収益9,000億円、営業利益370億円を掲げる。経営戦略としては、カーエレクトロニクス事業では市場トップポジションを維持しながら、OEMを一層拡大。ソフトウェア開発の外部委託を内製化に切り替えることなどで収益の拡大に努め、中期的に営業利益率6%の水準を目指す。2011年3月期にはカーエレクトロニクス分野で営業収入4,500億円、営業利益260億円を掲げる。
ホームエレクトロニクスでは、前述のディスプレイ事業の構造改革、損益改善などを行なった上、BDプレーヤーなどのAV事業、DJ機器などのプロSV事業を拡大。2010年3月期の黒字化を目標にしており、2011年3月期には営業収入3,700億円、営業利益80億円を目指している。
□パイオニアのホームページ
(2008年5月13日) [AV Watch編集部/yamaza-k@impress.co.jp]
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