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米TZero Technologiesは3日、最大1080/60pの映像をワイヤレス伝送できる「ZeroWire」第2世代製品を発表した。HDMI接続をワイヤレス化した薄型テレビやレコーダ、STBなどへの搭載を想定しており、送受信ユニットを各50ドル以下(セットでは100ドル以下)で提供でき、製品へのワイヤレス機能追加が低コストでできるのが特徴。2009年第2四半期頃に採用製品の発売がスタートするという。合わせて、同社製品の日本での販売代理をPALTEKが担当することも明らかになった。
送信機と受信機で構成されるシステムで、WiMedia Allianceが策定しているUWB(Ultra Wide Band)形式で、HDMIの映像/音声を無線伝送するソリューション。伝送周波数帯域は3.1~4.8GHzを使用しており、伝送レートは53.3~480Mbpsを実現。独自技術の「UltraMIMO」も活用し、無線LANや各種電子機器との干渉を防ぎ、伝送距離は最大20mまで対応している。HDCPにも対応しており、Blu-ray Discビデオなど、著作権保護された映像/音声も伝送できる。
HDMIのデータをそのまま無線伝送しているわけではなく、送信機側で映像をH.264で圧縮し、データ容量を縮小。128bit AESを用いた独自の暗号化を施した上で、受信機へ送信。受信機からは再びHDMIで出力される。音声は2chステレオと7.1chのマルチチャンネルの伝送に対応。コーデックによる圧縮はしておらず、映像のフレームデータとセットにして送信。レシーバ側で同期をとっており、リップシンクのズレがないように工夫されているという。遅延は16ms(サブフレーム)以下。 映像送信時の圧縮ビットレートは固定ではなく、詳細は明らかにされていないが、イメージとして「1080pの映像と音声の場合、ピークは80~100Mbps程度になるようになっている。UWBの伝送レートは300Mbps程度まで安定したクオリティで伝送できるため、100Mbpsでも余裕を持って対応できる」という。 単体の送受信機だけでなく、受信機のテレビへの内蔵や、テレビ背面への設置などにも対応可能。内蔵する場合は、テレビ側のH.264コーデックが利用できるため、受信機側の機能削減が可能で、50ドル以下という価格をさらに低コスト化することも可能だという。
同社は従来からHDMIの映像/音声信号を無線伝送するチップセットを開発しているが、今回発表された第2世代「ZeroWire」の特徴は、従来JPEG2000を使っていた映像圧縮を、H.264で行なっていること。また、無線伝送システム部分のも様々な工夫を施しており、伝送安定性を向上させたほか、従来必要だった外部アンテナも内蔵可能としている。 HDMIはバージョン1.3aに対応。映像は480i/p、720p、1080i(50/60fps)、1080p(24/56/30/60fps)に対応。HDMI CECによるコントロール信号も伝送できる。
「ZeroWire」のチップセットは、送受信を担当する「TCZ7200」と、DACやADC、メモリコン・トローラーなどを備えたベースバンドの「TZB7200」の2チップから構成される。発表会ではこれに、H.264のコーデックなどを加えたリファレンス・ボードも公開され、実際に無線伝送のデモが行なわれた。HDMI入力を2系統、出力を1系統備えるほか、コンポーネント映像入力やアナログ音声入力も装備している。送受信機の仕様は共通。デモでは送受信機の間を人間が横切っても映像にノイズが乗ったり、リンクが途切れたりせず、安定度の高さがアピールされた。
■ 実績とコストと将来性が強み
HDMI入力された映像/音声を無線伝送し、受信機でHDMIで出力するというソリューションは、他社でも開発が進められているほか、Intel、LG Electronics、パナソニック、NEC、Samsung Electronics、SiBEAM、ソニー、東芝が中心になって策定している「WirelessHD」規格も存在する。特にWirelessHDは指向性の強い60GHz帯を使用し、10mの距離で4Gbpsの転送速度を実現。音声/映像を非圧縮で伝送でき、2009年に搭載製品が登場する予定。圧縮の伴う方式と比べ、クオリティ面でアドバンテージがある状態だ。
バーナード・グレイサウワーCOOは、「ZeroWire」の利点を「実績」、「コスト」、「将来性」だと言う。他社の製品/技術は開発中のものが多いが、前モデルとなるTZeroのTZC7200ソリューションは、既に日立の薄型テレビ「Wooo UT」770シリーズに採用されているほか、米国でリリースされているGefenのワイヤレス送受信機にも使われているという。こうした例を交え、「“既に製品として存在すること”が何よりも強み」だと語る。
「コスト」面では、送信機と受信機で各50ドル以下、両方でも100ドル以下で無線機能を追加できることを強調。競合他社では似たような機能のボードを数百ドルレベルで販売しているとし、「我々は最終製品の小売価格が1,000ドル程度になればと考えており、他社のボードを使っては絶対に不可能な価格」という。さらに、「5GHz帯や60GHz帯を使った技術もあるが、アンテナや部品点数が多く、複雑で、コストもかかるものが多い」と違いを強調。
「将来性」については、「非圧縮伝送を謳うものでも、取り寄せてみると圧縮工程が入っているものもある。また、伝送速度が上がると飛距離が落ちたり、接続の維持が困難になる事が多い。また、現段階では3Gbps程度の速度を維持するのも難しいが、例えば伝送する映像が将来120fpsになったり、カラー情報が20bitになり、データ量が10~15Gbps必要になった場合、3Gbpsでも難しいのに対応できるのかという不安もある」と語り、圧縮を取り入れた「ZeroWire」の将来性をアピールした。
□米TZero Technologiesのホームページ(英文)
(2008年12月3日) [AV Watch編集部/yamaza-k@impress.co.jp]
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