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アーマチュアの価格破壊!? アップル純正カナルを聴く
−リモコン付きで9,400円ながら2〜3万円モデルに匹敵


発売中

標準価格:9,400円


 アップル純正のカナル型イヤフォン、「Apple In-Ear Headphones with Remote and Mic」の出荷が12月9日頃から開始されている。もともと9月に第4世代iPod nanoや第2世代iPod touchと共に発表されたイヤフォンだが、Apple Storeで近日発売予定というステータスのまま、12月を迎えていた。なかなか発売日情報が出てこなかったが、突如9日頃から発送が開始され、10日には編集部にも届いた。

 このイヤフォンが注目されているのは、大きく3つの理由がある。1つはアップル純正のカナル型イヤフォンであること。もう1つは9,400円という価格。最後は対応するiPodと組み合わせることで、様々な操作ができるリモコン機能を持っている事だ。

 中でも注目は価格。この「Apple In-Ear Headphones with Remote and Mic」(以下In-Ear Headphones)は、通常のダイナミック型ドライバとは異なり、昨今のカナル型イヤフォン高級機でトレンドとなっている「バランスドアーマチュアユニット」を搭載している。また、そのアーマチュアユニットが低域用と広域用に、2つのドライバを搭載している2ウェイ型になっているのが特徴だ。

 アーマチュアのイヤフォンは、1万円以上の高価なモデルがほとんどで、最近のモデルではShure「SE110」(シングルアーマチュア/実売12,000円前後)、Klipsch「Custom-1」(シングル/14,800円)、クリエイティブ「Aurvana In-Ear Earphones」(シングル/9,800円)など、1万円台はシングルドライバタイプのみ。デュアルになるとShure「SE420」(実売5万円前後)、オーディオテクニカ「ATH-CK10」(37,800円)、Ultimate Earsの「IE-30」(32,970円)、「Super.fi 5 Pro」(32,970円)、「Super.fi 5 EB」(24,990円)など、安いモデルでも2万円台半ばになってしまう。

 それらと比較すると、デュアルドライバタイプでリモコン機能も持ちながら、シングルドライバのモデルよりも安い9,400円という価格設定は“バランスドアーマチュアイヤフォンの価格破壊”と言っても過言ではないだろう。その実力はどの程度のものか、さっそく使ってみた。


■ デザイン性の高い梱包やアクセサリ

 音を聴く前にデザインや付属品などを見てみよう。ケースはiPod nanoなどと同じクリアタイプで、ホワイトを基調としたアップルらしいデザイン。左上に内部のイヤフォンキャリングケースや巨大な薬のカプセル(?)のようなアクセサリが透けて見える。左上に入っている林檎マークが可愛い。

 ケースから取り出すと、イヤフォン本体は三角形のキャリングケースに封入されている。気になるのはその下にあるカプセル。表面に「L」と「S」と書かれており「L/R(左/右)じゃないの?」と首をかしげたが、左右の白いキャップを外すと中からイヤーピースが現れた。左右でサイズが異なり「L」はラージ、「S」はスモールという意味なのだろう。

ケースはクリアタイプ キャリングケース 薬のカプセルのような不思議なケース

 イヤーピースは棒状のパーツに串刺しされており、キャップを外してもバラバラになることがない。イヤーピース用ケースを付属しているイヤフォンも幾つかあるが、ピース自体が散らばらない工夫がなされているのは珍しい。小さなポイントだが、よく考えられており、デザイン性を損なわずに実現しているあたりが心憎い。

イヤーピースの収納ケースだった イヤーピースが棒状のパーツで串刺しにされていた 交換用メッシュ

ケーブルはY型で、長さは約1.3m

 そのほかの付属品は説明書と、リモコンの使い方などに絞って掲載されているクイックシートのみ。説明書が入ったケースの内側に交換用のメッシュが付属している。イヤフォンの開口部に付いているパーツで、汚れて詰まった時などに交換するためのものだ。

 ケーブルはY型で、長さは約1.3m(入力端子から分岐まで1,065mm/分岐からイヤーピースまで330mm)。ツルツルとしたゴムの覆膜で、タッチノイズはそこそこある。リモコンユニットは右ユニット側の中程に搭載されており、位置は移動できない。スライダーも備えている。延長ケーブルは付属していない。重量は10.2g。


■ サポート外だが、iPhone 3Gでもボリューム以外は利用可能

 長方形のリモコンユニットはシンプルなデザインで、上下に「+」と「-」マーク。中央が若干くぼんでおり、灰色に塗装されている。iPhone 3G付属イヤフォンに付いているリモコンユニットと比べると縦に長く、同じように側面に一本の切れ込みが入っている。このリモコンは前面と背面のパーツが分離しており、ユニット全体を指でつまんで力を入れると、「カチカチ」とスイッチのように押し込める。

 指でつまむ位置を変えると、シーソーのように上側だけを閉じたり、下側だけを閉じたりすることが可能で、「+」側を押し込めばボリュームアップ、「-」側ではダウン。中央のくぼんだ部分を押し込むと音楽や映像の再生/一時停止が可能。ダブルクリックすると次の曲へ、トリプルクリックすると前の曲に戻ることが可能だ。背面にはマイクを内蔵しており、対応プレーヤーに接続すると、ボイスレコーダ機能が利用できるようになる。プラグは4極タイプのステレオミニ。金メッキ塗装はほどこされていない。

リモコンユニット 横から見たところ。全体がスイッチのようになっている 背面にはマイクを内蔵

上にあるのがiPhone 3G付属イヤフォンのリモコン部 プラグは4極タイプ

nanoでボイスレコーディングが可能

 第4世代iPod nanoに接続してみたが、リモコンを見ずに指先の感覚だけで快適な操作が行なえる。ボリューム調整も必ず上側がプラス、下側がマイナスになっているため、迷うことはない。接続するとnanoのメニューにボイスレコーダ機能が出現。選ぶとマイクのアイコンが現れ、そのまま声などを録音できる。録音音質も良好だ。

 シンプルかつ使いやすいリモコンだが、注意しなければならないのが対応プレーヤーが少ないこと。具体的には第4世代iPod nano、iPod classic(120GBモデル)、第2世代iPod touchにしか対応していない。早い話が、9月にイヤフォンと同時に発表されたiPod/iPod touchしか正式サポートされていないというわけだ。プラグは普通の4極タイプなので、従来のiPodでも音が出ることは明記されているが、リモコン機能の汎用性の低さは残念なところだ。また、マイクが内蔵されているのに、iPhone 3Gが対応モデルに入っていないのも不思議である。

 そこで、編集部にあるiPhone 3G、第1世代iPod touch、第5世代iPod(60GB)に接続してみた。第1世代touchとiPod 5Gでは、音が聴けるのみでリモコン操作は一切不可。一方、iPhone 3Gはボリューム調整こそ効かないものの、再生/停止、ダブルクリックでの送り、トリプルでの戻しが可能で、着信時にクリックすると通話、会話後にクリックすると終話することも可能。もちろんマイクも有効で、本体側のマイクはOFFになり、リモコン側のマイクで快適に通話できた。ボリュームが効かないので正式サポートされていないが、それ以外の機能としてはiPhone 3G標準付属のリモコンと同じことができると考えて良いだろう。それ以外の非対応iPodでは、純粋なイヤフォンとして使うことになる。


■ コストパフォーマンスの良い再生音

 付属のイヤーピースはシリコンタイプで、S/M/Lの3サイズを同梱。ホワイトカラーしか用意されていないのがアップルらしい。素材はシリコンで柔らかい。注目すべきは形状で、音道形成部分のみ、硬い素材で作られている。「MDR-EX500SL」など、最近のソニー製品で見かけるハイブリッド仕様のイヤーピースと同じで、音の通路を保持して形状変化による音への影響を抑えるほか、本体への装着を容易にする効果がありそうだ。

付属のイヤーピース。左は裏返して音道部分を露出させたもの 装着したところ。音道部分が硬いので装着しやすい

 ハウジング部はなだらかな曲線を描いており、素材はiPod付属イヤフォンと同じプラスチックと思われるが、面積が小さいため密度の高さが生む高級感がある。前面に向けてはめ込まれた銀色の金属パーツがデザインアクセント。ハウジングが小さいので耳の奥に挿入するのも比較的容易で、軽いため抜けにくい。耳穴に合ったサイズのピースを選べば装着安定性は高いと言える。音漏れも少なく、電車内で席に座っても隣の人を気にしなくてすみそうだ。

なだらかな曲線を描くハウジング 背中にはバスレフポートと思われる穴が イヤーピースを外したところ

 再生周波数特性は5Hz〜21kHz。インピーダンスは23Ω。感度は109dB/mW。安いアーマチュアイヤフォンにありがちな“良すぎるくらい抜けの良い高音”を想像しながら耳に入れたが、思いのほかバランスが良い。マクロスFのサントラ「娘フロ。」から「射手座☆午後九時Don't be late」を再生。ボリュームを上げると、安いアーマチュアではボーカルの高域がキツ過ぎて、耳が痛くなるのだが、「In-Ear Headphones」では適度に“わきまえて”おり、高域が突き抜けすぎることがない。

オーディオテクニカ「ATH-CK9」

 編集部にあるシングルドライバモデル、オーディオテクニカ「ATH-CK9」(22,050円)は低域が弱めで、かなり耳穴に押し込まないとバランスがとれないシングルドライバ特有の再生音だが、「In-Ear Headphones」では普通に装着するだけで低域も豊富に出力される。 いきものがかり「HANABI」など、音の数や音圧が頻繁に変わる楽曲でも、ボーカルがシンプルにサビを歌う際の透明感と、ドラムやエレキギターが重なって音に迫力が出る場面の対比が良く出ている。

 しっかりとした低音が音楽を支えることで、再生音に安定感が出るほか、クラシックやJAZZ、ロックのライヴ録音など、低域の音圧が重要になる楽曲もこなせている。同時に、伸びる高音にも適度に厚みが出るため、アーマチュアにありがちな“安っぽくてカサカサした音”ではない。女性ヴォーカル、アストラッド・ジルベルトの「Corcovado」もそれなりに艶っぽく聴かせてくれる。

Klipsch「Image X5」

 Klipschのシングルアーマチュアは小型ユニットと細身のハウジングを採用し、耳穴により深く挿入することでシングルらしからぬ低域再生を実現しているのが特徴だが、この特徴を持つ「Image」シリーズの下位モデル「Image X5」(29,800円)と比べると好勝負。X5はシングルドライバらしい、つながりの良い再生音で、「In-Ear Headphones」に負けない低音を聴かせてくれる。音全体のまとめかたの上手さもあり、個人的には「X5」に軍配を挙げる。

 デュアルアーマチュアとの比較として、オーディオテクニカの「ATH-CK10」(37,800円)を用意したが、この差が非常に興味深い。一聴して「CK10」の方が音楽が“きらびやか”に聴こえる。高域が強調されているためで、シンバルがバシャンとはじける様や、エレキギターの鳴きなどが魅力的。低域も「In-Ear Headphones」より盛り上がっており、T.M.Revolution「resonance」のうねる低音が音楽を引っ張っていく描写が心地良い。高域はもとより、低域の解像感が高く、アコースティックベースの弦の動きや、ピアノの左手もきわめて明瞭だ。

オーディオテクニカ「ATH-CK10」

 だが、言い換えれば高域と低域を強調した“ドンシャリ”サウンドであり、音の分離が良く解像感も高いために“ハイファイ足り得て”いるのであり、バランスが良いとは言えない。「In-Ear Headphones」はそれと比べると高域は抑え気味で、低域の量感も一歩劣るのだが、個人的にはこちらのほうがバランスのとれた再生音に聴こえ、好ましいと感じた。

 価格面で比較相手を探すと、どうしてもダイナミック型になる。ソニーのカナル型EXモニター新モデル「MDR-EX500SL」(実売1万円前後)を用意した。16mm径の大型ユニットによる低域の量感はやはりダイナミック型に分があり、音楽に一層迫力が出る。解像感ではアーマチュアが勝るかとも思ったが、「EX500SL」もほぼ同レベルの分解能を持っており、個々の楽器の動きが良くわかる。

ソニー「MDR-EX500SL」

 比較して気付くのは中域の情報量だ。先ほど「In-Ear Headphones」は“バランスがとれている”と書いたが、あくまで他のアーマチュアと比べた結果であり、ダイナミック型と比べると刺激的な高/低音に見合うだけの中域が無いことに気付く。スペアナのイメージとしては山のような形状のダイナミック型に比べ、アーマチュアはお皿の断面のように聴こえる。

 実際の音では、前述のシンバル、エレキギターの鳴きなどで、ダイナミック型では高音が空間に伝搬し、広がる様が余韻として知覚できるが、アーマチュアでは最初の一撃が刺激的で強烈な反面、それにマスキングされてかすかな余韻が聴き取れない。結果として音場が狭く感じられるほか、聴いていて疲れる音になる。「それならばアーマチュアでもドライバを増やしてバランスをより良くすれば良い」となると、3つのドライバを搭載したトリプルドライバモデルの出番。だが、価格帯としては5万円オーバーになり、「In-Ear Headphones」や「EX500SL」の比較対象とは言えないだろう。


■ アーマチュアの入門に最適

 音質の結論としては、安価なシングルアーマチュアイヤフォンよりもバランスの良い再生音が楽しめ、高域/低域強調も適度なレベルに抑えられているため、“違和感が少なく、聴きやすいアーマチュアイヤフォン”と言えそうだ。1万円を切る価格は、デュアルアーマチュアとして価格破壊的なものであり、他社の動向にも影響を与えるモデルと言えそう。そういった意味で「アーマチュアに興味があるけれど、高いから買ったことが無い」というユーザーの入門機としては理想的な製品と言えるだろう。もちろん、iPod付属のインナーイヤーイヤフォンとは次元が大きく異なる再生音であるため、リモコンの利便性も含めて、標準イヤフォンからの買い替えにも適している。

 ただし、再生音そのもののキャラクターについては、一般的なダイナミック型イヤフォンとは大きく異なる。ダイナミック型の音の分離の悪さや、低域の解像感不足、高域の伸び不足などに不満がある場合はそういった不満が改善できそうだが、低域の量感やバランスの良い再生音などの面では劣る部分もある。ダイナミック型でも1万円近辺の高級モデルになると、前述の弱点をかなりカバーした製品が増えているので悩ましいところ。アーマチュアとダイナミックの音の傾向の違いは、店頭試聴機でも容易に判断できるため、まずは“どちらの音が気に入るか?”を試すことが重要。“アーマチュアが良い”となれば、その中での“お買い得モデル”であることは間違いない。

□アップルのホームページ
http://www.apple.com/jp/
□製品情報 (カナル型)
http://www.apple.com/jp/ipod/inearheadphones/
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−2ウェイアーマチュアで9,400円。インナーイヤー型も
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【9月11日】アップル担当者が語る新iPodとイヤフォン、Genius
−曲面にこだわるnano。カナル型イヤフォンはiPhone非対応
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20080911/apple.htm

(2008年12月11日)

[AV Watch編集部/yamaza-k@impress.co.jp]


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