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世界初のBlu-ray/DVDビデオのハイブリッドタイトルとして、ポニーキャニオンが2009年2月18日に発売する「コード・ブルー ドクターヘリ緊急救命 Blu-ray BOX」(PCXF-60001/36,540円)。そのハイブリッドディスク実現に向け、技術提供した株式会社共同テレビジョンとインフィニティ・ストレージ・メディア株式会社が12月19日、同技術の概要を発表した。 既報の通り、「コード・ブルー ドクターヘリ緊急救命 Blu-ray BOX」は、世界初となる片側の記録面にBDビデオとDVDビデオの両方の信号を記録したタイトル。DVDプレーヤーに挿入すればDVDビデオとして、BDプレーヤー/レコーダではBDビデオとして再生ができるのが特徴で、フォーマット過渡期である現在、注目を集めている。
技術的には、2004年12月に日本ビクターが発表した、「BD-DVDコンビネーションROMディスク」とほぼ同じものを使っている。この技術はBDA(Blu-ray Disc Association)の特許プールに登録されており、インフィニティストレージメディアがそれを使って、今回のハイブリッドディスクを実現したという。
具体的には、まず片面2層のDVDビデオを作成する。その記録層表面に、Blu-ray Disc用の記録層(単層)を追加。容量的にはDVD 2層(8.5GB)、BD単層(25GB)の3層ディスクが構成される。そこに、BDビデオプレーヤーの場合は、波長405nmの青色レーザーを、DVDプレーヤーの場合は650nmの赤色レーザーを照射し、反射した信号を読み取ることになる。
技術的ポイントは、BD記録層の反射膜に波長選択性のある特殊な金属製の半透過膜を使っていること。この膜は青色レーザーに対して45~50%程度の透過率しかなく、読み取るための十分な光を反射するが、赤色レーザーの650nm波長になると透過率が80%近くなる特殊な性質を持つ。青色レーザーは反射し、赤色レーザーは透過することが可能になり、DVDプレーヤーに挿入すると、BD層をスルーしてDVD層のみを読み取れる。逆に、BDプレーヤーではBD層でレーザーが反射して読み取れるため、DVDビデオとして認識されない。
DVD/BDのどちらの規格にも準拠しているため、既存のDVD/BDプレーヤーやレコーダ、PCなどで再生することが可能。しかし、光路にBD層があるため、DVD機器によっては影響が出る可能性は否定できない。そこで、インフィニティストレージメディアでは検証機関に再生互換性のテストを依頼。BD/DVD対応のプレーヤーやレコーダ、PC用ドライブなど、64機種でテストしたところ、100%読み取れたという。しかし、海外製のDVDプレーヤーなど、DVDフォーラムの規格に沿っていないような製品では再生できない可能性もあるため、同社では「再生互換性は99%」と表現している。
このハイブリッド規格はBDAで既に認証されたもので、現在の規格ではBD1層、DVDは2層だけでなく、1層も選択できるという。また、BD2層、DVD1層を実現する次の規格策定に向け、開発が進められているとのこと。なお、BD2層、DVD1層が実現した場合、「技術的には現在のBD/DVDプレーヤーでも再生することは可能になると考えられる」(インフィニティ・ストレージ・メディアの北村武彦社長)という。また、現在のハイブリッドディスクはBDプレーヤーで再生すると、DVD層は認識されないが、これは製品側によって対応可能な現象であり、「メーカーの対応によってはBD、DVDの両方の層を認識できる製品が出てくるかもしれない」(北村社長)という。
ディスクの製造ラインはDVD用のラインを使用。BD記録層を貼り合わせる際にはラインから外して作業を行なっている。コスト面では共同テレビジョンとインフィニティストレージメディアが協議している最中だが「Blu-rayとDVDの両方を封入するタイトルよりは、価格を下げたい」としている。
■ 1層BDへの収録に向け、新たなエンコード技術を使用
今回のハイブリッドディスクでは、BD層は1層に限られている。しかし、収録するのは話数の多いテレビドラマであるため、低ビットレートでも画質を落とさないエンコード技術が求められる。オーサリング技術で協力したビデオテックの小山康明氏は、オーサリングに、日本ビクターが2006年11月に発表した「インテリジェントHDエンコード技術」を使っていることを明らかにした。 これはMPEG-4 AVC/H.264への圧縮時に利用する技術で、MPEG-4 AVCの豊富な符号化パラメータを、独自の手法で高精度かつきめ細かく制御することで、処理量を軽減しつつ符号化効率を高めるもの。MPEG-2規格と比べて数百倍のきめ細かさで符号化パラメータを高精度制御する2パスエンコードアルゴリズムや、独自の適応型動き推定アルゴリズムなどが使われているが、今回の「コードブルー」ではそれらの性能を向上させた第2世代の技術が使われており、同技術を採用した初のタイトルになるという。 映像は1080iで収められているが、小山氏はその品質について「テレビドラマなどのインターレース映像のエンコードはプログレッシブと比べても難しい。それでもインテリジェントHDエンコード技術でマスターと見分けがつかないくらいの高画質でエンコードができた。ディスクによってはBD層に180分記録できており、“ハイブリッドディスクにはうちのエンコーダを使って欲しい”というくらい自信がある仕上がりになった」と語った。
なお、BD-BOXは4枚組、DVD-BOXは7枚組であり、SD層のみを考えるとBD-BOXの枚数が足りないように思える。DVD-BOXの本編ディスクは6枚で、全11話を各ディスクに2話収録(最終は1話)。BD-BOXは各枚3話収録で、最終巻が2話収録になっている。しかし、収録するSD映像に関しては「同じクオリティの映像を収めている」とのこと。特典映像も両フォーマットに収録しており、ハイブリッド版にのみ出演者へのインタビュー映像を収めている。
■ レンタル市場への導入にも期待 共同テレビジョンでは今回のハイブリッドディスクを「DVDからBDへの過渡期に、BD市場を広げる起爆剤として注目される技術」と位置付け、セル市場だけでなく、省スペースが見込めるレンタル業界にも訴求していく考え。 販売するポニーキャニオンでは、今後のハイブリッドディスクのラインナップについて「既にBD再生環境を整えており、最高の画質を求める人には普通のBDを。現在はまだDVDだが、今後BDも検討しているというユーザーにはハイブリッドというイメージになる。よって、ハイブリッドでリリースするか否かは、発売するタイトルが対象としているユーザー層によって決まってくるだろう」(第1映像製作部の鈴木寿裕氏)としている。
□ポニーキャニオンのホームページ
(2008年12月19日) [AV Watch編集部/yamaza-k@impress.co.jp]
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