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パナソニック株式会社と三洋電機株式会社は、資本業務提携契約を締結。今後、公開買付により、パナソニックが三洋の総株式の完全希薄化後における議決権の過半数を取得し、子会社化する。 株式買付価格は普通株式1株あたり131円。三洋電機の現在の大株主である3社からは、買付けへの応募が予定されており、3社が有する優先株を普通株式に換算すると議決権の約70.5%相当(約5,671億円)となるため、3社が応募した場合、買付けは成立する見込み。買付け開始時期は、「国内外の競争法に基づく手続きを終えた後、速やかに実施する」としており、進捗状況を2009年2月を目処に報告するとしている。なお、買付けの成立後も、三洋電機の上場は維持する方針。 今回の提携により、特にソーラー(太陽電池)事業、二次電池事業(モバイルエナジー)の強化を見込む。ソーラー事業については、パナソニックの経営プラットフォームを活用し、高効率のHIT(結晶系)太陽電池の事業拡大を図るとともに、次世代太陽電池の開発・実用化を加速するという。また、パナソニックの国内外販路を活用し、増販効果も期待できるとしている。 二次電池については、三洋電機の高い生産技術などをパナソニックに導入。パナソニックからは高容量技術を提供することで、両社の商品力を一層強化していくという。特に市場拡大が予想されている、ハイブリッド自動車(HEV)/電気自動車(EV)用電池についても積極投資を行ない、パナソニックグループとして、あらゆる完成車メーカーとの連携強化/拡販を見込む。 さらに、三洋電機をパナソニックグループの一員とすることで、三洋電機の資材購買などの全社調達コストの削減やロジスティックス関連コストの削減を図る。またパナソニック独自のコスト削減ノウハウを三洋電機に導入することで、経営体質の強化を実現するという。 両社は、資本提携契約をうけて、コラボレーション委員会を発足。子会社化後の協業成果の早期実現に向けて、経営制度や技術開発、調達、ロジスティックス、品質管理、ITインフラなどを検証。両社のシナジー発揮に向け、パナソニックは1,000億円規模の投資も視野に入れ、検討を加速するとしている。 ■ エナジーエコロジー分野のグローバルリーディングカンパニーに
パナソニックの大坪文雄社長は、「電機産業を取り巻く環境はグローバル競争の激化に加え、金融危機に端を発した世界的な景気後退により、厳しさの一途をたどっている。パナソニックと三洋の両社は、これまでの戦略を加速してくだけでなく、成長強化に向けた抜本的なアクションが必要という課題認識で一致している。両社の技術、製造力を結集し、グローバル競争力強化に向けたシナジーを追求し、企業価値の最大化を目指す。世界中の人々の生活の質的向上と、地球環境の共存において、高く評価される企業グループになると確信している」と、三洋電機子会社化の目標を説明。株主や利益共有者への理解を呼びかけた。 三洋電機の佐野精一郎社長は、「100年に一度と言われる極めて不透明かつ厳しい経営環境のなかで、中期経営計画の達成、さらに事業の更なる発展に向けて、大きな道が開けた。パナソニックからの物心両面からの支援が具体化されたことで、厳しいグローバル競争に勝ち残るための大きなアドバンテージを得たと考えている。シナジー実現のための1,000億円の投資により、中期経営計画で定めた設備投資計画に加え、ハイブリッド自動車用二次電池や太陽電池への追加投資を実施し、成長戦略を加速していく。パナソニックグループの中で、当社のエネルギー、エナジー事業をさらに成長させていく。また、提携により影響を受ける可能性のあった三洋のOEM事業は、情報隔離措置など方策を徹底し、両社で最大限協力することで合意した。提携を通じて、両社の合算を超えた大きなシナジーを期待している」と提携の経緯と目標を語った。
また、上場の維持、三洋ブランドの維持なども合意されており、佐野社長は「当社の企業価値向上にとって、パナソニックが最善のパートナー。環境エナジー先進メーカーへの変革という、三洋の将来像の実現につながっていく」と訴えた。 パナソニック大坪社長は、「こうした厳しい環境下にあって、なぜいま手を組むのかと思われるかもしれない。しかし、こういうときこそ、成長に向けた果敢なアクションが必要。両者の強みを結集し、競争力を強化し、不況回復期に一気に打って出る基盤を作ることが重要」と説明。パナソニックの幅広い商品群や、グローバル販売網、コスト低減力という強みと、三洋の二次電池、太陽電池、電子部品/業務用冷凍空調、デジタルイメージングなどの強い商品などに言及し、両社の強みを融合した「エナジーエコロジー分野のグローバルリーディングカンパニーになれる」と目標を設定した。 そのため、パナソニックグループの中核事業として、新たにエナジー(Energy)事業を追加。既存の生活快適実現(Appliance Solutions)、半導体/デバイス(B.B Devices)、カーエレクトロニクス(Car Electronics)、デジタルAV(Digital AV Networks)の4つの戦略事業に加え、「ABCD+E Quintet(五重奏)」としてさらなる成長戦略を図るとした。 エナジー事業の目指す姿としては、「創エネ」、「蓄エネ」、「省エネ」の3本を柱に、「家まるごと、ビルまるごと、エネルギーマネージメントし、世界に比類なきグループを目指していく」という。 創エネでは、パナソニックにおいては太陽電池の追加によるオール電化の強化や太陽/燃料電池のハイブリッド化なども計画。同社の販路を用いたグローバル展開をめざす。また、三洋においては、次世代太陽電池の実用化に向けた技術開発、先行投資などをパナソニックとの協力により実現。蓄エネでは、リチウムイオン・ニッケル水素二次電池の技術協力や商品力強化などを図る。 エナジー事業以外でも、デジタルAVやホームアプライアンス、半導体などで協力。具体例としてあげたのは、空調事業における協力で、パナソニックの家庭用換気扇と三洋の業務用空調を組み合わせたトータルソリューションが図れるとした。もう一点はヘルスケア事業で、パナソニックのバイオ診断装置と三洋のメディコム事業の組み合わせによる拡販などを計画しているという。 さらに、パナソニックのコスト削減力などを三洋に導入するほか、スケールメリットを活かした調達力の向上、ITインフラの共有などで、経営体質を改善。両社のシナジー目標として、2012年度の増益効果800億円を掲げた。うち、エナジー事業が400億円とし、「太陽電池や、ハイブリッド自動車など2012年以降も大きな成長が見込める。事業会社同士ならではの成果を皆さんに示すことができると確信している」と語った。 なお、三洋電機の雇用についての両社の協議については、「第二四半期の決算時にも申し上げたとおり、きわめて厳しい半導体や、おのおのの事業の構造改革については、三洋としてやり切っていきたい。雇用問題についても配慮していくが、来期の経営計画や状況を見ながらやる。事業があってこその雇用と考えている。大坪社長と、『こうやらねばならん』という話はしていない(三洋 佐野社長)」とした。 また、重複事業について三洋 佐野社長は、「確かに重複は多々ある。それは地域、流通、販売など区分しながら十分対応できる。それ以上にシナジーのほうが、三洋の中期経営計画達成や事業の拡大にとっても大きく、必要不可欠だった(三洋 佐野社長)」と説明。パナソニック大坪社長は、「あるとは思う。われわれも詳細にピックアップしている。しかし重要なことはコラボレーション委員会で実務担当者も含めて、明確に意識して削除する。また、知恵を出せばシナジーに変えられる。それが事業会社の強み」と語った。景気後退への対応については「処方箋がないとは思っていない。損益分岐点比率を下げるなど、やるべき施策を打つ。市場が翳ってきた薄型テレビについても、抑えるべき設備投資は抑える。また、光明の見えるマーケットには新しい商品で打って出る。詳細はしかるべきタイミングで報告する。経営陣で足元を固めつつ、来年、再来年に向けて成長エンジンとして、三洋との提携を考えた(パナソニック大坪社長)」とした。 □パナソニックのホームページ ( 2008年12月19日 ) [AV Watch編集部/usuda@impress.co.jp]
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