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TSUTAYA TVのHD映画ダウンロードサービスを試す
-DIGAからBD-Rにダビング。使いやすいが互換性に課題も


12月19日サービス開始


 19日より、デジタルテレビ用ポータルサイト「アクトビラ」での映画ダウンロードサービスが開始された。これはアクトビラ上で映画配信サービスを提供するツタヤオンラインの「TSUTAYA TV」上で実現されたもので、「TSUTAYA TV on acTVila」というサービス名称でスタートしている。

 アクトビラでは2007年よりストリーミング配信の「アクトビラ ビデオ」を開始。同様にアクトビラのプラットフォームを使って「TSUTAYA TV」を6月よりスタートしていた。しかし、今回はツタヤオンラインがアクトビラの仕様に基づき、サーバーシステムや課金システムを構築。テレビやレコーダのHDDに、コンテンツをダウンロード可能とした。

DIGA「DMR-BW930」

 ダウンロードしたコンテンツは、48/72時間など期間限定視聴の「レンタル」だけでなく、コンテンツを無制限に視聴可能でBlu-ray Discへの書き出しも可能な「セルスルー」にも対応。最大2回までのダビングが実現可能となった。

 アクトビラのサービス立ち上げ当初から謳っていた「ダウンロード対応」を果たしたことで、サービスとしての基本機能は全て揃ったことになる。また、対応機器として日立のWooo UT 770シリーズや、パナソニックのブルーレイDIGA「DMR-BW930/BW830/BW730」が発売されている。

 VODの新しい姿ともいえる「TSUTAYA TV on acTVila」。今回は、パナソニックのBlu-rayレコーダ「DMR-BW930」で、サービスの使い勝手や、ダビング機能を実際に試した。



■ HDダウンロードからダビングまでをシステム化

アクトビラのトップページ

 まずは、サービスの概要をチェックしてみよう。アクトビラのトップページのビデオメニュー、もしくはTSUTAYA TVの項目をリモコンで選択し、決定操作を行なうことで、TSUTAYA TVにアクセスできる。

 配信される映像の解像度は1080iで、コーデックはMPEG-4 AVC/H.264、DRMにはMarlinを採用している。ビットレートは10~20MbpsのVBR。配信形式は、ダウンロードしたコンテンツを無期限に視聴可能で、Blu-ray Discなどへのダビングが可能な「セルスルー」と、48~72時間の視聴期限があり、ダビング非対応の「レンタル」の2方式が用意さる。価格は、セルスルーの映画が平均3,675円、テレビシリーズが893円。レンタルは映画が平均735円、テレビシリーズが368円だ。

 コンテンツは、パラマウント、ワーナー、NBCユニバーサル、ディズニーなどの映画が中心で、12月中にハリウッドメジャー作品を中心にセルスルー217タイトル、レンタル196タイトルの計413タイトルの配信が予定されている(両販売方式の重複タイトル含む)。

セルスルーではBDやiVDR-Sなど各種リムーバブルメディアに書き出し可能 ハリウッドの大手スタジオが参入。12月中に413タイトルの配信を予定

TSUTAYA TVトップページ

 TSUTAYA TVトップページには、「動画を見る」、「特集」、「ランキング」、「シネマ」、「ニューリリース」、「検索」、「マイページ」などの項目が用意される。基本的に各コンテンツへは「動画を見る」からアクセス可能となっている。

 「動画を見る」の中には、各種オススメコンテンツが用意されるほか、新着や「無料動画」、「セルスルー」、「ハイデフ動画」などコンテンツ種別の検索機能も装備。リモコン操作でもさまざまなコンテンツへのアクセスを容易にできるよう、かなり考えて設計されている。番組の選択画面では、そのコンテンツの販売方式が表示される。全ての方式に対応している場合「ストリーミングレンタル」、「ダウンロードレンタル」、「セルスルー」の3種類が表示される。

 映画の場合、大体ストリーミングレンタルが635円、ダウンロードレンタルが735円、セルスルーが3,675円に統一されている。購入確認画面に遷移すると、本編収録時間や音声チャンネル数、容量などが確認できる。また、セルスルーの場合はダビング可能なメディア種類と回数を表示。基本的にはBlu-ray DiscとDVD(AVCREC)、iVDR-Sの3種類に書き出しできる。ダビング回数は最大2回だ。


動画を見る 作品リストから、セルスルーのコンテンツを表示 キーワード検索にも対応する
コンテンツを選ぶと、説明とともに販売方法の選択画面が現れる 作品リストから、セルスルーのコンテンツを表示。コンテンツの詳細情報も記載されている セルスルーではダビング可能メディアも表示する

ユーザー登録画面

 利用の前にユーザー登録が必要。リモコンでの登録がやや億劫だが、生年月日や名前、クレジットカード番号などを登録。さらに、数字6桁の暗証番号を登録する必要がある。また、TSUTAYAグループの共通ポイントサービス「Tポイント」用のTカード情報も登録可能。コンテンツ購入時やTSUTAYAグループ店舗などでの商品購入時などに付与されたTポイントを、TSUTAYA TVの決済に利用できる。

 一度登録を済ませてしまえば、コンテンツ購入時に6桁の暗証番号を入力するだけで決済が可能となる仕組みだ。なお、現時点では決済方法はクレジットカードのみとなっている。また、ユーザー登録を行なうことで、お気に入りのコンテンツを「マイリスト」に登録する機能なども利用可能となる。

登録した暗証番号は、購入時に入力する 購入確認画面 Tポイント情報を登録できる


■ 映画のダビング回数は1回。画質には満足

ダウンロードを開始

 今回はテスト用にセルスルー(買い切り)で「ノーカントリー」を購入した。価格は3,675円。本編映像は122分で、容量は8.8GB。ダウンロード時間はFTTH回線で28分程度だった。ツタヤオンラインでは、1Mbps程度のADSLだと120分程度のダウンロード時間と案内している。ツタヤオンラインでもFTTH、もしくは12Mbps以上の環境での利用を推奨しているので、基本的には高速なインターネット回線での利用が望ましい。

 ただ、いままでの「ストリーミング」では、回線の都合上利用できなかった場所でも時間をかけて“ダウンロード”できるので、回線への依存度はかなり減っている。そういう意味ではサービスの間口が広がったといえるだろう。ただ、テストに使ったDIGAは、アクトビラ利用中に録画予約がある場合、実行のために一度アクトビラを終了する。こうした機器の通常動作との兼ね合いもあるので、やはりダウンロード時間が短いに越したことはない。

 ダウンロードした「ノーカントリー」は、音声が2chのAACで、ダビング回数は1回だった。ツタヤオンラインでは、ダビング回数は最大2回で、コンテンツによるとしているが、基本的には映画が1回、「HEROS」、「LOST」などのTVドラマ系が2回となっているようだ。

購入確認画面でダビング回数や音声方式などが確認できる ダウンロードを開始。DIGAの録画リスト[ダウンロード]の項目からアクセスできる ダウンロード中の追っかけ再生も可能だ

ダビング方法は通常の録画番組と同じ

 ダウンロードしたコンテンツは、DIGAの「ダウンロード」の項目に保存される。ダウンロード中の追っかけ再生も可能となっている。ダウンロードしたコンテンツは、HDDに保護されたまま保存されるが、このプロテクトを解除することでダビングが可能となる。ダビングの方法は、DIGAの通常の録画番組と変わらない。なお、ダビング回数が0になつてもHDDからは削除されず、そのまま視聴可能だ。

 ダウンロードした番組には、トップメニューやポップアップメニューはなく、チャプタも用意されていない。ただし、DIGAのリモコンから、早送りや巻き戻し、30秒のスキップ機能などは利用可能となっていた。

 8~10Mbps程度のAVCということもあり、画質も良好だ。ハイビジョンらしい鮮鋭感があり、暗部でのノイズのような、圧縮に伴う画の乱れは感じられない。BDビデオ版と比較すると、移動中の車のウィンドウに移る道路の白線の輪郭や、肌のディティールなど、明らかにBDビデオのほうが優れている部分はある。ただし、30~40型のテレビで見て、それほど顕著な差というほどでもない。ハイビジョンのよさが確かに感じられる画質といえる。

 画質には満足したものの、残念なのは、音声がステレオ2chのAACになってしまうこと。発表会での説明では、基本的にマスターに依存するというで、5.1chのコンテンツもあるのだが、やはり2chになるとアクションなどの迫力はややそぎ落とされてしまう印象だ。

 また、ノーカントリーは、息を潜めて殺人鬼と対峙する、その緊張感を演出するために、微細な効果音や音の動きが活用されている作品。そういう意味では、“怖さ”や“驚き”が若干後退するようにも思える。音質も、リニアPCM収録のBDビデオのほうが上だ。音質やマルチチャンネルのサウンドデザインにこだわった映画であれば、やはりBDビデオを購入したい、あるいはTSUTAYAでBDビデオをレンタルしたほうがいい、と感じる。

 とはいえ、気軽に自宅のテレビからハイビジョン映像をダウンロードし、BD化までできるというのは魅力的だ。なお、日立の薄型テレビWooo UT「UT770シリーズ」では内蔵HDDにダウンロードし、iVDR-Sへダビングが可能となっている。


■ 互換性には難あり?

 1080i映像をダウンロードして、BDにダビング可能にするなど、VODの入り口から出口までシステムとしての完成度は高いのだが、気になるのが作成したディスクの互換性についてだ。今回作成したディスクは、ダウンロード/ダビングを実行したDIGA「DMR-BW930」では再生できたが、PLAYSTATION 3では「再生できないディスクです」と表示されてしまう。また、ソニーのBDレコーダ「BDZ-X90」や2世代前のブルーレイDIGA「DMR-BW200」でもタイトルの認識はできるものの、再生はできなかった。

DMR-BW930からは問題なく認識され、再生できる PLAYSTATION 3では再生できない

 TSUTAYA TVのサポートページでも「バックアップ」と表現されているのが気になったが、TSUTAYAに確認してみたところ、「アクトビラのダウンロードの規定に則った形式で配信しており、現時点ではDIGAとWooo UT 770が対応機器となる。今後のアクトビラ ダウンロード対応機器での対応のほか、現在販売している機器についてもメーカーで対応を予定しているものがある」としている。ただし、どの機器が対応するかといった点については、各メーカーの判断によるとしている。

 “ダビング”できても再生機器がないのでは意味がない、今後の再生対応機器の拡大に期待するとともに、安心してコンテンツを購入するためには、再生可能機種のリストなども公開してほしい。


■ よくできたプラットフォームの今後に期待

 ダウンロードに時間がかかるとはいえ、FTTHを導入できない環境でも、自宅にいながらにしてHD映像を視聴できるというのは非常に魅力的だ。ただし、セルスルーに限って言えば、映画で3,675円、テレビドラマで735円という価格設定はやはり高い。

 例えばBlu-rayディスクに書き出すとなれば、さらに300~500円のメディア代が必要になる。4,980円のBDビデオ作品だと、2割引で4,000円という販売店/販売サイトが多く、BDビデオを買ったほうが安いという計算になってしまう。コストパフォーマンスという点では、ダウンロードレンタル(735円)のほうが魅力的に感じる。実際にツタヤオンラインでも主流はダウンロードレンタルと考えているようだ。

 もっとも、実店舗のTSUTAYAのBDレンタルも、最寄の店舗で1泊2日で450円なので借りに行ったほうが安い。ただし、ネットサービスならではの検索性の高さや、家から出なくてもいいし返しに行かなくてもいいという利便性もある。そのため、一概にどの方式がベストとはいえない。ネットDVDレンタルの「TSUTAYA DISCAS」などグループ内で、さまざまな“類似”サービスがあるが、これらも、ニーズの多様化に応えるものといえるだろう。

 TSUTAYA TVは、映像コンテンツのネット流通を、現在の技術で可能な限りの付加価値を持ったサービスとして実現している。技術だけではく、ハリウッド大作をそろえるなど、コンテンツの充実という最も重要なところをTSUTAYAグループの力を活かして、魅力的なものにしている点も重要だ。今後は、日本のコンテンツホルダなどとの話し合いも進めていくというが、コンテンツのさらなる充実には期待したい。

 また、配信、課金、保存までのシステムがしっかりと構築されているため、ある程度普及すれば、例えば特定アーティストのファン限定コンテンツなど、配信プラットフォームとして大いに活用されていきそうな予感もする。日本のビデオ配信サービスの今後を牽引するようなサービスになっていくことを期待したい。

□TSUTAYA TVのホームページ
http://tsutaya-tv.jp/
□関連記事
【12月17日】ブルーレイDIGAがアクトビラビデオダウンロード対応
-購入したHD番組をBDにダビングも可能
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20081217/pana.htm
【12月10日】TSUTAYA、アクトビラで1080iダウンロードを開始
-BDやiVDRにダビングも。19日開始で映画は3,675円
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20081210/tsutaya.htm
【12月9日】日立、Wooo UT 770でアクトビラ ダウンロード対応
-iVDRへのダビングやホームネットワーク配信も対応
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20081209/hitachi.htm

( 2008年12月25日 )

[AV Watch編集部/usuda@impress.co.jp]


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