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JBL、もう一つのリファレンススピーカー「K2 S9900」
-「民生スピーカーの最高峰をエベレストと競い合う製品に」


Project K2 S9900
2月25日発売

標準価格:210万円(1台)


 ハーマンインターナショナル株式会社は、「Project EVEREST DD66000」と並ぶ、JBLブランドのリファレンススピーカー「Project K2 S9900」を2月25日に発売する。価格は1台210万円。仕上げはマホガニーのみとなる。

Project EVEREST DD66000

 JBLは'89年にリファレンススピーカー「Project K2 S9500」を投入。それから約12年後の2001年に、後継モデルとして「Project K2 S9800」を発売。その後も2002年に低価格な「K2 S5800」(1本110万2,500円)を、2004年には「K2 S9800」をバージョンアップした「K2 S9800」(178万5,000円)を投入するなど、K2シリーズとして精力的に展開。

 その一方、K2シリーズとは別の商品として、2006年9月に1本315万円のハイエンドモデル「Project EVEREST DD66000」を発売した。今回の「K2 S9900」は「K2 S9800SE」の後継であり、EVERESTよりは低価格だが、どちらもハイエンドのリファレンススピーカーと位置付けられている。

2004年発売のバージョンアップモデル「K2 S9800」 Project EVEREST DD66000 K2シリーズ新モデル「Project K2 S9900」

3ウェイのフロア型

 外観的にはK2シリーズ伝統の細身のフロア型。380mm径のパルプコーンウーファと、ミッドレンジには100mm径のマグネシウム振動板を採用したコンプレッションドライバを採用。スーパーツイータとして25mm径のベリリウムを振動板にしたコンプレッションドライバを取り入れた3ウェイシステムを構成している。

 EVERESTは、左右に2基の380mm径ウーファを並べた構成で、ウーファのサイズも同じであるため、“EVERESTを縦に割ったようなスピーカー”ともいえる。ハーマン インターナショナル マーケティング部の藤田裕人次長も「“シングルエベレスト”と言っても良いデザイン」と語るが、新開発のユニットも取り入れられており、「あくまでEVERESTは孤高のキング・オブ・キングス。対するK2は、シリーズ展開していけるもの」(藤田次長)と区別。EVERESTの下位モデルというイメージは払拭しつつ、「K2の特徴を受け継ぎながら、EVERESTの要素も取り入れたモデル」と説明した。

 最大の特徴は、ミッドレンジのコンプレッションドライバー「476Mg」の振動板にマグネシウムを使ったこと。ダイナミック型ユニットの振動板にマグネシウムを使う例は他社にもあるが、コンプレッションドライバへの採用は世界初だという。EVERESTはベリリウムを使用しており、「EVEREST開発時にマグネシウムもテストしたが、当時は素材の純度向上や酸化を抑えるコーティングなどで条件に合う技術が無く、ベリリウムが採用された」という。マグネシウムはベリリウムと比べても比重が軽いため、同じ比重の振動板を作る場合は厚くすることが可能になり、K2 S9500とM9500に使われていたチタン振動板の2.5倍の厚さとなる127μを実現。剛性をより高めることができ、正確なピストン運動が可能になった。

ミッドレンジのコンプレッションドライバーには、振動板にマグネシウムを使っている ユニットの背面

 EVERESTに使われている380mm径ウーファ「1501AL」は、ダブルウーファなのでインピーダンスは16Ω。S9900はシングルウーファであるため、8Ωのものが必要。そこで、新開発のウーファ「1500AL-1」が採用された。これは単なる“8Ω版”ではなく、前モデルのK2 S9800に採用された「1500AL」を、S9900用に改良し直したもので、EVERESTの「1501AL」と発端を同じにしながら、別のユニットと表現できる。具体的には、ボイスコイル長を1500ALの20.3mmから25.4mmに延長し、厚みを若干薄くした。これにより、コイル外周と積層型トッププレートの間に大きなクリアランスが生まれ、コイルの表面積が広がり、放熱性能がアップ。また、振動板の前後運動による冷却効果を高めるため、中央のコイルフォーマーの孔子(パーフォレーション)を無くしている。これにより、許容入力が25%向上した。

380mm径のウーファを搭載 ユニットの搭載位置

クロスオーバー特性

 ツイータはEVERESTのものと同じ、25mm径のベリリウムを振動板を用いたコンプレッションドライバ「045Be-1」を採用。軽量なベリリウム振動板に、同じく軽量な一層巻きのアルミリボンボイスコイルをボビンを使わずに取り付けることで、駆動系の軽量化を行ない、レスポンスの向上を図っている。

 クロスオーバー周波数は900Hzと15kHz。システム全体の周波数特性は33Hz~50kHz(-6dB)。インピーダンスは8Ω。許容入力は400W。ネットワークの仕様もEVERESTに準じており、各トランスデューサーおよび入力コントロールボードに対応した4個の独立したボードから構成。エンクロージャ内の異なる場所に配置してクロストークを避けている。インダクターには空芯コイルを使用。キャパシタにはポリプロピレンフォイル製コンデンサを使っている。なお、スピーカーターミナル部分にバイアンプ用切替、プレゼンス調整、高域レベル調整を行なうロータリースイッチを備えている。

ツイータはEVERESTのものと同じ、25mm径のベリリウムを振動板を用いたコンプレッションドライバ 各トランスデューサーおよび入力コントロールボードに対応した4個の独立したボードから構成して相互干渉を防いでいる

 また、S9900独自の改良点として、ウーファ用のネットワーク回路からダンピングを目的に挿入された抵抗素子を省いた。これは、ウーファユニットとキャビネット内部の設計を最適化させることで、キャビネット側でダンピングがかけられるようになったため。これにより、ユニットの持つレスポンスを、ダイレクトに引き出せるという。

 エンクロージャにはEVERESTのデザイン要素も受け継いでおり、曲面を持たせたバッフルはミッドレンジのホーンのサイドウォールとしても機能している。上下のホーンフレアはSonoGlass製の「リップ」と呼ばれるもの。エンクロージャーの平面部分は25mm厚のMDF。曲面部分には溝の付いた、厚さの異なる2枚のMDFで構成し、合計25mm厚。2枚のMDFの間には吸音材などが充填されており、外部からのノイズを遮断する二重ガラスのような働きをする。バスレフ型で、背面にポートを備えている。外形寸法は560×350×1,217mm(幅×奥行き×高さ)で、重量は81.6kg。S9800SEよりも高さや奥行きが減り、より設置しやすくなっている。

背面にあるバスレフポート スピーカーターミナル。バイアンプ駆動や音質調整も可能 奥行きが少ない、独特のデザインを採用している


■ 定位も良いホーンサウンド

 試聴デモでは得意とするJAZZを中心に再生が行なわれた。Sherman Irbyの「Work Song -Drar Cannonball」から「Work Song」を再生すると、Sherman Irbyのアルトサックスが突き抜けるような鋭い音で発表会会場を満たす。トランジェントが良く、胸が圧迫されるような音圧の高さが豪快で心地良く、ホーンスピーカーで再生するJAZZならではの“旨味”が堪能できる。

 背後にうずまくアコースティックベースも380mm径のウーファが余裕をもって再生しており、解像感が高く、弦をはじく指の動きが明瞭に描かれる。個々の楽器の描き方の分離や定位も良く、フロア型モデルながら、2ウェイのブックシェルフを聴いているような、膨張しすぎない音場の“適度な広さ”に驚かされる。鳴りっぷりの良さはEVERESTを彷彿とさせるが、楽器がスピーカーの前に飛び出して自由奔放に演奏し、音場が雄大に広がるEVERESTとは異なり、個々の定位を理路整然と配置していくような生真面目なキャラクターを覗かせる。“K2ならではの良さ”を挙げるとすればこのあたりになりそうだ。

 クラシックのSimon Rattle指揮、ベルリン・フィルのベルリオーズ「幻想交響曲」から第5楽章:サバトの夜の夢を大音量で再生。音場は一気に広がり、恐ろしいほどの低音が吹き出すが、破綻なくストリングスの音を描写し分けていくところにハイエンドスピーカーの余裕を感じさせる。モニターライクな精密なキャラクターを維持しながら1つ1つの音が野太く、迫力を増していくイメージであり、これもまたEVERESTとの違いと言えそうだ。

 デモの再生装置はマークレビンソンで、SACD/CDプレーヤーが「No512」(220万5,000円)、プリアンプが「No32L」(336万円)、モノラルパワーアンプが「No532」(294万円)。

デモ再生はマークレビンソンのシステムを使用 試聴の様子


■ 「民生スピーカーの最高峰を競い合う製品に」

 高い山の名前を冠した同社のリファレンススピーカーだが、エベレストを超える高さの山は地球上には存在しない。ハーマン インターナショナルの安田耕太郎社長は新スピーカーの開発にあたって「それならばエベレストとK2を融合させる方向はないだろうかと考えた。そして、エベレストは孤高の存在として据え置きながら、K2の系譜にエベレストの要素を追加した今回のK2 S9900が誕生した」と経緯を説明。「今後はエベレストとK2が、民生スピーカーの最高峰を競い合う立場であり続けて欲しい。そして、10年、20年後と、その時代毎のK2にバトンタッチするまでの間、S9900を存分に可愛がって欲しい」と製品に込める想いを語った。

安田耕太郎社長 開発を担当したJBLのチーフ・エンジニア、グレッグ・ティンバース氏もビデオレターを寄せた


□ハーマンのホームページ
(2月17日現在、この製品に関する情報は掲載されていない)
http://www.harman-japan.co.jp/
□関連記事
【2006年9月8日】ハーマン、1本315万円のJBL「エベレスト」スピーカー
-「DD66000」。振動板にベリリウムを使用
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20060908/jbl1.htm

(2009年2月17日)

[AV Watch編集部/yamaza-k@impress.co.jp]


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