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Blu-ray版「AKIRA」で体験する24bit/192kHzサラウンドの衝撃
−AVアンプの設定に注意。「2層50GBディスクがカツカツ」


AKIRA BDビデオ版
(c)1988マッシュルーム/アキラ製作委員会
2月20日発売

標準価格:8,190円


 大友克洋監督のアニメ「AKIRA」のBlu-ray Discビデオの発売が2月20日に迫る中、バンダイビジュアル株式会社が18日、BDビデオ版の試写会を開催。BDビデオ版製作に込めた想いや、アニメBDとしては世界初となる、24bit/192kHzのドルビーTrueHD 5.1chで収録したサウンド魅力などを紹介した。

【BDビデオ版 AKIRAの仕様】
タイトル 仕様 音声 品番 価格
AKIRA 本編:124分予定
片面2層
16:9
1080p
MPEG-4 AVC
(1)日本語
 (ドルビーTrueHD 5.1ch
  24bit/192kHz)
(2)日本語
 (リニアPCM ドルビーサラウンド)
(3)英語(5.1ch)
BCXA-0001 8,190円

 既報の通り、「AKIRA」のBDビデオ版は2月20日に8,190円で発売される。当初2007年7月に「オネアミスの翼」や「機動警察パトレイバー 劇場版」などと共にリリースされる予定だったが、その後に延期。新しい発売日が決まらない状態が続き、ファンをヤキモキさせていた。

 AKIRAのBDビデオ化を担当した、バンダイビジュアル コンテンツ本部 プロデュース3部 第1課課長の武井潤プロデューサーによれば、もともとAKIRAのBDビデオ版は「BDビデオの発売を開始するにあたり、“まずユーザーにお届けすべき作品”として、真っ先に製作が開始されたタイトル」だという。その言葉を裏打ちするように、BDビデオの型番は「BCXA-0001」。その“0001番”の発売が遅くなったのは、“映像と音声のクオリティ追求”を徹底していたためのようだ。

2008年10月のCoFestaで講演する大橋氏。芸能山城組の組頭・山城祥二としても活動している

 AKIRAは映像的に強いインパクトのある作品だが、音声面にも非常に大きな特徴がある。それは、芸能山城組が手掛けるケチャを中心とした非常に生々しい音楽を使っていること。手掛けているのは国際科学振興財団主席研究員/文明科学研究所所長であり、脳科学者でもある大橋力氏だ。

 大橋氏は人間の可聴域上限の20kHz以上の音をカットせず、100kHz以上に及ぶ超高周波を含んだ音を聴くと、脳の中で美しさや感動を司る“基幹脳”が活性化し、自律神経系や免疫力、内分泌系の活動が改善されるなど、良い影響があるという「ハイパーソニック・エフェクト」効果を提唱。その実践として芸能山城組を組頭・山城祥二氏を名乗り、音楽製作も行なっている人物。

 大橋氏の理論はCoFestaのレポート記事を参照していただくとして、その超高域をマルチチャンネルで収録するためにはCDやDVDビデオフォーマットでは足らず、最低でもBlu-rayの24bit/192kHzが必要になる。BD版制作にあたって大橋氏から「ドルビーTrueHDを使えば、MPEG-4 AVCのフルHD映像と一緒に、なんとか24bit/192kHz 5.1chの収録が可能になる」との打診があり、その仕様を実際のソフトとして実現させるためのプロジェクトがスタートしたという。


■ 2層50GBでも「もう何も入らないほどのカツカツ」

Dolby Japan 技術サポート部 コンテンツ技術担当の中山尚幸シニア・マネージャー

 音質面でBDビデオのスペック的な最高クオリティを目指すのであれば、リニアPCMで24bit/192kHz信号を収録したいところ。だが、AKIRAは124分の長編アニメ作品であり、DVDよりも効率的な圧縮ができるMPEG-4 AVCで映像をエンコードしているとは言え、映像面のクオリティを維持するとそれなりのデータ量が必要になる。Dolby Japan 技術サポート部 コンテンツ技術担当の中山尚幸シニア・マネージャーによれば、「24bit/192kHz 5.1chのサラウンドを固定レートのリニアPCMでそのまま収録すると、それだけで2層のBDが一杯になってしまう」という。

 また、「24bit/192kHzのリニアPCMはBDビデオの規格ではオプション扱いになってしまい、どのプレーヤーでも再生できる別のフォーマットの音声も収録しなくてはならず、残り少ない容量に、さらに音声を追加することになってしまう」(中山氏)という。ちなみに192kHzはBDビデオ規格のサンプリングレートとしては最高値であり、最大チャンネル数は192kHz時で6chまで(48/96kHzでは8chまで)となっている。

 それでも仕様の検討段階ではリニアPCMを採用し、本編を2枚組、3枚組などにする方法や、音声をPCMにして空いた容量に低レートな映像を入れる「音質重視版」と、逆に映像にビットレートを多数割り当て、音声を高圧縮にする「画質重視版」の2種類の商品を作ることすらアイデアとして出されたという。しかし、「世界中にファンがいるAKIRAというユニバーサルなタイトルとして、そうした仕様を採用することがユーザーメリットになるのか?」(武井プロデューサー)という考えから、複数枚構成などの特殊な仕様は見送られ、音質を落とさずに1枚に映像/音声を収められるドルビーTrueHDの採用が決まった。

 しかし、可逆圧縮のドルビーTrueHDで圧縮しても、通常のBDビデオより大容量の音声データになることに違いはない。「DVD時代は映像をエンコードして、そこに音声を加えてという流れだったが、AKIRAのBDビデオではまず音声をエンコードして、可変レートで刻々と変化する空き容量に合わせて映像をどうやって入れていくかという手法になった。発売までに時間がかかったのは、試作とテスト再生を繰り返し、絵と音声の最もバランスが良いポイントを見つけるのに時間がかかったため」と、武井プロデューサーは作業時の苦労を振り返る。

 そうして完成したBDビデオ版は、2層50GBをほぼ使い切っており、武井プロデューサーは「もう何も入らないほどのカツカツ(笑)」だという。


■ フィルムの質感を大切にした画質

バンダイビジュアル コンテンツ本部 プロデュース3部 第1課課長の武井潤プロデューサー。BDビデオ版を観た大友監督から「久しぶりに観返したけれど、いいね」とクオリティに太鼓判をもらったという

 音声にばかり注目が集まっているが、映像面のクオリティもこだわりを持って作られている。BDビデオ版のために新たにHDテレシネを行なったニューマスターを使用しており、その元になっているのは上映用フィルムの複製を行なうためのマスターポジだという。

 '88年の作品ということもあり、フィルムにはキズやゴミがあるが、BDビデオ化にあたっては1から修復作業を行ない、可能な限り取り除いたという。武井プロデューサーは「視聴中に気になるようなノイズは無い。最新のデジタル制作のアニメと比べると違うかもしれないが、逆にフィルムの質感、粒状感を活かした映像になっている」と、仕上がりに自信を見せる。

 発色面では「金田の服やバイクなどの赤の発色がBDビデオでは非常によく出る。出過ぎるくらいなので、フィルムの質感に合わせた調整も行なった」とのこと。武井プロデューサーは映像的な見所として、「能力の暴走による崩壊など、多数のオブジェクトが複雑に動くシーンでも破綻が無い。また、そういう動きのあるシーンだけでなく、静かなシーンでフィルムならではの質感も観て欲しい」と語った。

発色やフィルムの質感を活かした絵作りを行なったという
(c)1988マッシュルーム/アキラ製作委員会


■ 特典は絵コンテに注目

 映像と音声にほとんどの容量が割かれているが、特典も忘れられてはいない。目玉はHD解像度で収録された絵コンテ集だ。内容としてはDVD-BOXに付属していたものと同じ(第3次世界大戦のシーンなどは含まれていないバージョン)なのだが、コンテの内容がしっかりと判読できる解像度で収録されており、BDビデオならではの特典と言えるだろう。

 ポップアップメニューは金田バイクのハンドルを連想させるデザインを採用。映像特典としてはそれ以外に、特報や予告編を収めている。また、封入特典として特製ブックレットも同梱している。

BDビデオの解像度を活かし、読める絵コンテを特典として静止画収録 ポップアップメニューは金田バイクのハンドルをイメージ 内容物一覧
(c)1988マッシュルーム/アキラ製作委員会


■ 再生時はAVアンプの設定に注意

パイオニアの試聴室「STUDIO HINOKI」

 試写会は東京・目黒にあるパイオニアの試聴室「STUDIO HINOKI」で行なわれた。オープン時にレポートしているが、無垢の檜を大量に使った部屋で、TADのスピーカー「Reference One」(1本315万円)をメインにしたピュアオーディオ用システムと、パイオニアのAVアンプ最高峰「SC-LX90」(88万円)と100kHzまで再生できるEXシリーズのスピーカーを組み合わせた5.2chシステムが用意されている。

 デモで使われた機材はAVアンプが「SC-LX90」(88万円)、BDプレーヤーが「BDP-LX91」(43万円)、フロントプロジェクタが海外向けのElite KUROブランド「KRF-9000FD」で、スクリーンはスチュワートの「LXC150HUM13B」(150型)。スピーカーは「S-1EX」×2台 (52万5,000円×2台/フロントトールボーイ)、「S-7EX」×1台(42万円/センター)、「S-2EX」×2台 (31万5,000円×2台/リア用ブックシェルフ)、「S-W1EX」×2台(21万円/サブウーファ)という構成。

スピーカーはEXシリーズを使用

 BD版AKIRAの簡単なインプレッションは、CoFestaのレポートしたが、同イベントでは業務用機材が多数使われていたため、今回の試写では民生向けホームシアターのハイエンド環境で、そのクオリティを体験することができた。

 やはりインパクトがあるのはサウンドだ。CoFestaでも驚かされたが、レンジの広さだけでなく、中低音の解像感が非常に高く、冒頭暴走シーンの車の爆発音、ゴミの山に突っ込んだ時の細かい散乱音などが、強い音圧で押し寄せると同時に、その1音1音がどこまでも細かくバラける。耳というよりも体で音を浴びているようなイメージであるため、強烈な刺激音のはずなのだが、耳の痛みなどは無く、むしろ心地良いとすら感じる。今までに体感したことのないサウンドだ。

 業務用スピーカーで体感した際は、そうしたサウンドが広大なホールに際限なく広がったため、広がり過ぎて密度が薄く感じる部分もあった。今回の試写では同一シリーズで揃えられたスピーカーの、音色の繋がりの良さも手伝い、音場の密度や情報量がより豊富に感じられた。

 例えば金田達が溜まり場にしているスナック「春木屋」のシーン。薄く広がる暗騒音が店内の広さと圧迫感を同時に感じさせる一方、各テーブルで小声で話す客達の音が非常に明瞭で、音像も個々の位置に明確に定位するため、音だけ聴いていても驚くほどの立体感を感じる。こうした繊細な描写は、映画館ではなかなか味わえず、ホームシアターならではの魅力である。

AVアンプは「SC-LX90」、BDプレーヤーは「BDP-LX91」

 なお、24bit/192kHzで収録されたBDビデオは現在のところほとんど存在せず、扱う音声データも大量になるため、ハードウェアメーカーにとっても機器の性能が試されるソフトとなる。オプションとはいえ、BDビデオの規格に用意された音声仕様であるためHDサラウンドに対応したAVアンプであれば大半がサポートしているが、DSPの処理速度などがネックとなり、再生時に同時利用できない機能などがあるという。

 パイオニアのホームエンタテイメントビジネスグループ ホームAVマーケティング部 パブリシティー課の八重口能考課長によれば、同社のAVアンプ現行モデル「SC-LX90/81/71」などでは、AKIRAの24bit/192kHzデコードと、スピーカーの位相特性を揃えて正確な駆動を行なう「フルバンド・フェイズコントロール」機能は同時利用できず、「フルバンド・フェイズコントロール」をONにしていると、192kHzを96kHzに落として処理してしまうという。同機能をOFFにすれば24bit/192kHzのまま処理は可能。

 他社のAVアンプでもこうした機能制限は起こる可能性があるため、再生時には信号の情報表示機能を利用し、キチンと24bit/192kHzと表示されているかどうかチェックすると良さそうだ。パイオニアではこうした点について、設定方法などをユーザーにアナウンスする事も検討しているという。

'88年に公開された「AKIRA」は、大友克洋の名と共に、日本のアニメを世界に知らしめた衝撃作。BDビデオでも衝撃を起こしそうだ
(c)1988マッシュルーム/アキラ製作委員会

 また、当然のことだが、接続するスピーカーに20kHz以上の超高域再生能力が無ければ、192kHzを96kHzの良さを最大限に楽しむことはできず、古いスピーカーの場合にはスーパーツイータの追加なども必要になる。オリジナルのドルビーサラウンド音声もリニアPCMで収録されているが、やはりここは24bit/192kHzを味わいたいところ。クリエイターのクオリティへのこだわりが詰め込まれたBDビデオ版AKIRAは、鮮烈な体験と引き換えに、AV機器メーカーやユーザーにも対応を問う、挑戦的なソフトと言えそうだ。

 なお、今月の21日〜23日までパシフィコ横浜・カンファレンスセンターで開催される「A&Vフェスタ 2009」のパイオニアブースでは、AKIRAの24bit/192kHz再生デモも実施する予定だ。

□バンダイビジュアルのホームページ
http://www.bandaivisual.co.jp/
□タイトル情報
http://product.bandaivisual.co.jp/web_service/shop_product_info.asp?item_no=BCXA-0001
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http://av.watch.impress.co.jp/docs/bdhdship/
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http://av.watch.impress.co.jp/docs/20081020/akira.htm
【2008年9月26日】Blu-ray版「AKIRA」が2009年2月20日発売
−アニメBD初の24bit/192kHz収録。新規HDテレシネ
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20080926/bandai.htm

(2009年2月18日)

[AV Watch編集部/yamaza-k@impress.co.jp]


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