小寺・西田の「金曜ランチビュッフェ」

本稿はメールマガジン「小寺・西田の『金曜ランチビュッフェ』」からの転載です。金曜ランチビッフェの購読はこちら(協力:夜間飛行)

Spotifyでジョギングするとめっちゃ捗る件

音楽ストリーミングサービス最後の巨人、Spotifyが9月29日より日本でサービスが開始された。2008年10月にヨーロッパでサービスを開始、日本に来るまで実に8年もかかったわけである。

現在はまだ招待制で、コードをリクエストすると、メールで招待コードが送られてくるという状況だ。その理由としては、日本人利用者特有のレコメンデーションデータが十分に機能するまで、十分なデータが集まってからフルサービスを開始するという方針だからだと言う。とは言え、コードをリクエストすればたいていは数日後には送られてくるようなので、特にユーザーを選別しているわけではないようだ。

僕もサービス発表後すぐにコードをリクエストして、ここ2週間ぐらい便利に使っている。レビューも多く上がっているが、ほかにあまり見かけない用途のレビューをしてみたい。

実はSpotifyは、昨年の5月にSpotify Runningという機能を搭載した。ランニング向けのプレイリストを提供する機能だ。

同時にNike+ アプリとも連携した。Nikeは2006年にAppleと連携し、iPodと靴底に入れるセンサーの組み合わせてランニングのログ管理をするというソリューションを発表している。その後もAppleとは協力関係にあるので、Spotifyとの連携も驚くには当たらない。

筆者のジョギング歴はかれこれ10年以上になるわけだが、これまでずっとNike+アプリを使ってログを溜めている。昨年だったか合計ランニング距離が3000kmを突破した。ペースとしては遅い方だが、ガチのランナーというわけではないので、まあこんなものだろう。

これまでランニングのお伴としての音楽は、専用のプレイリストを作っていた。ランニング用のプレイリストを提供する音楽サービスも多いが、どうも選曲がピンと来なかったのだ。そんなこともあり、あまり期待していなかったのだが、SpotifyのRunning機能を試してみたら、けっこう良かった。

シンプルながら効果は高い

Spotify Runningを使うのは簡単だ。特にモード変更や設定は必要無く、「ブラウズ」にある「ジャンル&気分」から、「Running」を選ぶだけだ。するとおすすめプレイリストがいくつかあるので、好きなものを選ぶ。

「ジャンル&気分」から、「Running」を選択

プレイリストを選ぶと、「ランニングを開始」という大きなボタンがあるのが、一般のプレイリストにはない特徴だ。これをタップすると、ペースを測定するために走るよう促される。スマホを持って10秒ほど走ると、測定完了。そのまま、そのテンポに合わせた楽曲が再生される。

「ランニングを開始」で測定スタート
軽くランニングすると、自動的にテンポを測定
テンポにピッタリの楽曲が再生される

通常ランニングのサポート機能と言うと、性別や年齢、身長、体重などを入力することで、距離の測定をしてカロリー計算などをしてくれるものだが、Spotify Runningには一切そんな機能はない。ただただ、走るテンポにピッタリあった楽曲を次々に流してくれるだけなのだ。

だがそれだけで十分価値がある。音楽を聴きながらだと、ペースが落ちないし乱れないのだ。ただしばらく走っているうちに、どうしてもペースは落ちてくる。その場合は、手動でペースを変更できる。変更するとすぐに新しいペースにあった音楽が再生されるという仕組みだ。

曲と曲の間は、クロスフェードで繋がる。ただし、リズムのタイミングまで合わせて繋げてくれるわけではないので、その時にちょっとペースが乱れるのが難点だ。まあ技術的にはそんなに難しくないと思うので、そのうち綺麗に繋がるようになったりするだろう。

Spotify Runningでは、ログを取ったりする機能はないので、終わったら音楽を止めるだけ。シンプルだ。

Nike+との連携は…いらねえなw

ランニングの距離や走るペースのログを残したいと思ったら、ランニング専用のアプリを使えばいい。SpotifyからはRun Keeperというアプリを勧められるが、特にSpotifyに特化したモノではなく、複数の音楽サービスと連携できるランニングアプリだった。Nike +もSpotify対応になっているので、こちらも試してみた。

「音楽を選択」のところをタップすると、音楽サービスとの連携を設定する画面が出てくる。ここにSpotifyを登録する。すると次に、「ペースステーションを作成」というウィザードが起動する。

Nike+ では別途「ペースステーション」を作成する

「目標ペースを設定」と出てくるが、これがなんのことだかわかりにくい。ヘルプなどを漁ってみると、どうやら1kmを走るのに何分かかるか、というものらしい。そんなデータどこにあるのかと思ったら、Nike+のメインページに「平均ペース」としてさりげなく表示されていた。

「目標ペース」ってなに?
なんだよそこに書いてあるのかよ

ただこれは真ん中と最後に、クールダウンのためにウォーキングしている間のデータも含まれているので、実際ランニングだけしている時はもっとペースが早いはずだ。しかもこれは単に移動速度を計測しているだけで、歩数とは関係ない。同じ時間かかっても、大股で走る人と小股で走る人では当然リズムが違うはずだ。

とりあえずこのペースを選択し、ジャンルを選ぶとプレイリストが作成される。実際にこれで走ってみたが、やっぱり走るペースとは全然違うテンポの曲がかかるので、これなら使わない方がマシだ。

というわけで現在は、距離のログ収集はNike+を音楽なしでスタートさせ、音楽は裏でSpotify Runningを走らせている。ランニングが一段楽しくなるSpotify Running、ジョガーはぜひ試していただきたい。

小寺・西田の「金曜ランチビュッフェ」

本稿はメールマガジン「小寺・西田の『金曜ランチビュッフェ』」からの転載です。

コラムニスト小寺信良と、ジャーナリスト西田宗千佳がお送りする、業界俯瞰型メールマガジン。

家電、ガジェット、通信、放送、映像、オーディオ、IT教育など、2人が興味関心のおもむくまま縦横無尽に駆け巡り、「普通そんなこと知らないよね」という情報をお届けします。毎週金曜日12時丁度にお届け。1週ごとにメインパーソナリティを交代。

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2016年10月12日 Vol.101 <秋はどこに行ったのか号> 目次
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01 論壇【西田】
「テレビ放送のネット同時配信」論点を整理する
02 余談【小寺】
Spotifyでジョギングするとめっちゃ捗る件
03 対談【西田】
クエリーアイ・水野CEOに聞く「人工知能が本を書く時代」(3)
04 過去記事【西田】
ニンテンドー3DSの秘密
05 ニュースクリップ
06 今週のおたより
07 今週のおしごと

小寺 信良

テレビ番組、CM、プロモーションビデオのテクニカルディレクターとして10数年のキャリアを持ち、「難しい話を簡単に、簡単な話を難しく」をモットーに、ビデオ・オーディオとコンテンツのフィールドで幅広く執筆を行なう。メールマガジン「金曜ランチビュッフェ」(http://yakan-hiko.com/kodera.html)も好評配信中。