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音楽配信のSpotify、広告付き無料聴き放題で日本参入。月980円の有料プランも

 サブスクリプション型の音楽配信サービス「Spotify(スポティファイ)」が9月29日から日本でサービス開始する。月額980円のプレミアムサービス(Spotify Premium)のほか、広告付き無料プラン(Spotify Free)が用意される点が特徴といえ、4,000万曲以上が聴き放題となる。まずは、エントリー制でスタートし、メールアドレスを登録すると招待者に利用コードが送付される。

日本初“フリーミアム”音楽配信。日本上陸にあたり「歌詞」対応

 アクティブユーザーは全世界で1億人以上、有料会員が4,000万人を超え、世界ではストリーミング音楽配信の代名詞とも言えるSpotifyが日本参入。最大の特徴は無料でも利用できることで、音楽配信サービスとしては「日本で初めてのフリーミアムサービス」としている。

 日本市場参入にあたり、多くの日本のレーベルが参加するほか、豊富なプレイリストも用意。視聴履歴に応じたレコメンデーションも行なわれる。日本向けにすでに100万個のプレイリストが用意されているほか、日本参入にあたり新たに歌詞表示に対応。カラオケもできる。

歌詞表示に対応

 プレイリストは、ユーザーの視聴履歴に基づき作成される「Discover Weekly」(月曜日更新)や、ユーザーがフォローするアーティストなどの情報を参照する「Release Rader」(毎週金曜日更新)など、独自の音楽発見機能として提供。海外のプレイリストだけでなく、日本の「トウキョウ・スーパー・ヒッツ」や、「Best of J-ROCK」など東京拠点で作成するリストも用意。さらに、「ゲーム」や「Runnning」などの用途にあわせたプレイリストも用意し、Runnningではランニングのペースに合わせて適した楽曲をセレクトしてくれる。

おすすめプレイリスト
Runnning

 再生した曲は「MyMusic」に登録される。お気に入りのプレイリスト作成や、「今どんな曲を聴いているか」を、FacebookやTwittetr、Tumblr、LINEなどでシェアできる。

 iOS、Androidアプリが提供開始されており、スマートフォンやタブレットから利用できるほか、パソコン(Windows、Mac)からも再生可能。また、プレイステーションと連携する「PlayStation Music」も展開し、PlayStation 4/3でもSpotifyを利用できる。PlayStation Musicについては別記事で紹介している。

 Spotify Connectに対応したスピーカーやカーオーディオへのオーディオ出力に対応。すでに80種類のハードウェアが展開されているという。

 無料版のSpotify Free(フリープラン)は、広告付きの無料音楽配信サービスとなり、ストリーミング中の曲と曲の間に15~30秒の音声広告が挿入される。また、アプリ上にもバナーが表示される。スマホではシャッフルモードのみで、アーティスト、アルバム、プレイリストを選んで再生が可能だが、楽曲を指定できない「ラジオステーション」型となる。

 自由に楽曲を選ぶ「オンデマンド」利用は、フリープランでは、タブレットとPCのみで対応。再生時間も「30日ごとに15時間」に限定される。スマホでのオンデマンド利用は不可。

Spotify Free

 Spotify Premium(プレミアムプラン)は、月額980円有料のサービスで、広告は一切入らない。より高音質なビットレート320kbpsとなり、好きな音楽を好きな順番で聞けるオンデマンド利用は、端末、時間ともに無制限。また、端末への楽曲ダウンロード(オフライン再生)にも対応し、通信回線が無い環境でも音楽を楽しめる。

Spotify Premium

 Freeでは音質設定は行なえない。Premiumは、最高音質(320kbps)、高音質、標準が選択可能で、標準のビットレートは160kbps。

プランPremiumFree
料金980円無料
広告無しあり
オフライン再生-
音質設定最高320kbps不可
オンデマンド
(PC、タブレット)
(30日で15時間制限)
プレミアムプランはオフライン再生に対応

 課金方法は、クレジットカード(VISA、Master、JCB、Amex)と、Sony Entertainment Networkアカウントのウォレット。また、NTTドコモ、KDDI、ソフトバンクのキャリア決済や、コンビニ決済で販売するカード決済(ローソン、ファミリーマート、ミニストップ、サークルKサンクス、セイコーマート)にも近日対応予定。

「無料」と「音楽へのこだわり」が他社との違い

 Spotifyのダニエル・エクCEOは、「今日は夢がかなった日」と世界最大規模の音楽サービスの日本上陸を宣言。日本が60カ国目のSpotify提供国となる。

Spotifyのダニエル・エクCEO

 4年前から日本でのサービス開始を準備してきたというスポティファイジャパンのハネス・グレー代表取締役は、1億人以上が利用し、4,000万人を超えるプレミアムユーザーがいるなど「最も支持されているサービス」としてSpotifyを紹介。強みとしては、「われわれはテクノロジー企業ではない。テクノロジーを利用する音楽企業だ」として、音楽やアーティストのファンならではのプレイリストなどの魅力をアピールした。

スポティファイジャパン ハネス・グレー代表取締役

 スポティファイジャパン ライセンス&レーベルリレーションズディレクターの野本晶氏は、日本においても有料のストリーミングミュージックが伸張しており、「Spotifyによりこの数年でさらに伸ばしていく。音楽産業の健全な発展に寄与していく」と目標を説明した。

 また、Spotifyが権利者に支払った金額は5,000億円を超え、世界の音楽業界に貢献していることを強調し、「ドイツ、イギリス、アメリカの音楽ビジネス伸長の原動力になっている。世界の音楽産業の45%がストリーミングになっている」とアピールし、ドイツにおける成長事例を紹介。CDの売上が減少していたが、2012年にSpotifyが上陸すると、音楽業界の底上げが図られ、4年連続の伸長となったという。

 この理由は、Spotifyだけが原因ではないが、ドイツのアーティストが世界的に成功。ドイツのレーベルの売上の10%がSpotify経由のものとなり、2016年末にはストリーミングの売上はダウンロードの2倍になるという。

Spotifyが日本でできること

 日本でもこうした成功を目指し、世界に開かれたプラットフォームとして、「1億人のユーザーに日本のアーティストを紹介していく」という。また、Discover Weeklyなどのプレイリスト機能で新しいアーティストや楽曲との出会いを積極的に促し、アーティストにとっての「新たな収益源」になることを目指す。発表会場では、LinkinPark、ONE OK ROCK、Kygo、メタリカ、東京スカパラダイスオーケストラ、m-floなどのアーティストによる歓迎メッセージが上映されたほか、宇宙飛行士の毛利衛氏を起用したプロモーションビデオが披露された。

毛利衛氏

 また、アマゾンジャパンでKindle事業本部長を務めた玉木一郎氏が、10月1日からスポティファイジャパンの社長に就任。玉木氏は「日本の読書体験をより良いものにしようと取り組んできたが、これからは『目で読む文化』ではなく『耳で聞く文化』を広げていきたい」と言及。「日本におけるファン拡大」、「日本のアーティストの海外への紹介」、「いつでもどこでも音楽の実現」を目標に掲げ、Spotifyの拡大に自信を見せた。

10月からスポティファイジャパン社長に就任する玉木一郎氏