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ヤマハ、64bitで音場補正する「A3060」などハイクラスAVアンプ「AVENTAGE」3機種

 ヤマハは、ハイクラスAVアンプ「AVENTAGE」(アベンタージュ)の第6世代3機種を8月上旬より順次発売する。いずれもDolby Atmos、DTS:Xに対応。上位モデル「RX-A3060」は、設置環境への音響の最適化を64bit演算処理で行なう「YPAO プレシジョンEQ」機能も備えている。価格と発売時期は、7.1chの「RX-A1060」が14万円で8月上旬、9.2chの「RX-A2060」が20万円で8月上旬、9.2chの「RX-A3060」が27万円で9月上旬。

上位モデル「RX-A3060」のチタンカラー

 各モデルの最大出力は、A1060が170W×7ch(6Ω)、A2060が220W×9ch(6Ω)、A3060が230W×9ch(6Ω)。A1060とA3060はチタンとブラックの2色、A2060はチタンカラーのみとなる。

「RX-A2060」のチタンカラー
左からRX-A1060のチタン、ブラック

 オブジェクトオーディオフォーマットのDolby Atmos、DTS:Xに対応。A1060は5.1.2ch構成に加え、新たに5.1.2ch+ゾーン2にも対応。A2060/3060は5.1.2ch、5.1.4ch、7.1.2ch、5.1.2ch+ゾーン2、7.1.2ch+ゾーン2に対応するほか、リアプレゼンスのアサインにフロントプレゼンスが使えるようになる事で、新たに5.1.2ch+フロントバイアンプ駆動にも対応。また、A3060のみ7.1.4ch構成もサポート。

 付属マイクを使い、部屋固有の初期反射音を測定。最適化する「YPAO-R.S.C.」と、その計測結果に基づいて再生時の周波数特性が音量に応じて聴感上フラットになるようにコントロールする「YPAO Volume」にも対応。A2060では新たに、設置した各スピーカーの距離と方角、プレゼンススピーカーの高さを自動計測することで音場空間を立体的に補正する「YPAO 3D測定」にも対応。水平角度測定にも対応している。

左からA1060、A2060、3060

 さらに、A3060では64bit処理の「YPAO プレシジョンEQ」に対応した。これは、AVプリアンプのフラッグシップ「CX-A5100」で採用した「YPAO High Precision EQ」を同じ系統の技術。高精度な演算を行なう事で、演算誤差を低減するもので、A5100はDACの直前に32bitに戻して32bit対応DACで処理している。

 しかし、A3060はDACに32bit対応のESS「SABRE32 Ultra DAC ES9016S」を1基採用し、プレゼンス用には24bit DACの「9006AS」を1基使っている。このため、処理自体は64bitで行なっているが、DACの前で24bitに戻して処理をしている。そのため名称も「High Precision EQ」ではなく「プレシジョンEQ」となっている。

RX-A3060の内部基板

 HDMI端子は4K/60p、HDR、BT.2020、HDCP 2.2に対応。8入力、2出力を備えており、その内7入力/2出力で対応、前面端子のみ非対応となる。

RX-A3060のブラックモデル

 ゾーン出力機能も強化。別の部屋に2ch出力したサウンドに対して、「Extra Bass」と「Volume EQ」が適用できるようになった。これにより、2chの小さなスピーカーを接続した場合も、よりリッチなサウンドが再生できるという。

 IEEE 802.11b/g/nの無線LANも内蔵。Ethernet端子も搭載し、ネットワークオーディオプレーヤー機能も用意。USBメモリに保存したハイレゾ音楽ファイルの再生も可能。192kHz/24bitまでのWAV/FLAC/AIFF、96kHz/24bitまでのApple Losslessに加え、5.6MHzまでのDSDもダイレクト再生できる。DSD以外ではギャップレス再生も可能。

A3060のみに搭載された機能やパーツ

 A3060は、音場プログラム「シネマDSP HD3」を、Dolby Atmos/DTS:Xと掛けあわせて利用できる。「シネマDSP HD3」は22プログラムから選択可能。CX-A5100と同様に、プログラムのアルゴリズムもアップデートされている。

 また、シネマDSP 30周年を記念し、新音場プログラム「Enhanced」を追加。AtmosやDTS:Xなどの3Dサラウンドフォーマットに最適な映画系プログラムと位置付けられている。

Enhancedのイメージ

 このプログラムは、サラウンドバックの音場を、サラウンドのL/Rチャンネルに任せ、スクリーンに集中していた前方の音場の移動感をアップさせようというもの。フロントの音場は基本的にL/R/Cチャンネルで作られるが、LとRの音場を分け、センターはLとRの足し算で生成。前方の音場が広くなり、横方向の移動感が出やすくなっているという。

 DAC部分ではウルトラロージッターPLLモードの選択が可能。OFFはジッタ除去機能の無効、レベル1が初期値で、レベル2、3と、ジッタ除去の性能を上げていく事ができる。

「RX-A3060」のリモコン

radiko.jpに対応

 3機種に共通する新機能として、radiko.jpに対応。radikoプレミアムのエリアフリー聴取にも対応する。

 初回の利用時のみ、アプリ「MusicCast CONTROLLER」を使っての選局や、エリアフリー聴取アカウントの登録を行なう必要があるが、以降はAVアンプのリモコンからもラジオ局のUP/DOWN選局などは可能。ただし、アプリからの方が放送局の一覧表示からの選局など、操作はしやすくなっている。

アプリ「MusicCast CONTROLLER」からradikoの放送局を選んでいるところ
高精細なGUIを備えている

その他の仕様

 筐体には制振・高剛性なシャーシを採用。左右対称コンストラクション構造になっているほか、リジッドボトムフレーム、H型クロスフレームも採用。A3060には、底板を二重にしたダブルボトム構造と鋳鉄製レッグも追加している。電源供給は、オーディオ、映像、デジタル、EL表示の4回路に分離して供給。干渉を防いでいる。

左からRX-A1060のシルバー、ブラック

 パワーアンプは、高速熱帰還トランジスタと大容量制振ヒートシンクを採用した左右独立構成のディスクリート構成。「D.O.P.G.コンセプト」などの基本構成は3機種共通。

 Bluetoothにも対応。ルータを使わずに機器と直接ワイヤレス接続する「Wireless Direct」機能も用意。AirPlayにも対応する。操作用アプリは、前述の「MusicCast CONTROLLER」に加え、「AV CONTROLLER」も用意する。

 MusicCast機能を使い、DLNA対応のNASなどに保存されている音楽ファイルを、ネットワーク経由で再生する事も可能。MusicCast対応機器と連携し、AVアンプから、別の部屋のMusicCast対応機器へと音楽を伝送したり、アプリから各部屋で再生する音楽を制御する事もできる。

 MP3などの圧縮音楽ファイル再生時や、Bluetooth音楽再生時、さらにロスレスの音楽にも適用できる高域補間再生機能「ハイレゾリューション・ミュージックエンハンサー」も用意。

 アナログ音声入力は9系統(Phono入力含む)。光デジタル×3、同軸デジタル×3も搭載。映像入力はHDMI×8、コンポジット×5、コンポーネント×3。ヘッドフォン出力、サブウーファ出力×2も搭載。A3060は11.2chのプリアウト、A2060/1060は7.2chプリアウトも各1系統装備する。

A3060の背面

 AM/FMラジオも搭載。FMラジオは、補完放送にも対応する。消費電力はA3060/2060が490W(待機時最小0.1W)、A1060は400W(待機時最小0.1W)。外形寸法と重量は、A3060/2060が435×474×192mm(幅×奥行き×高さ)で、A3060が19.6kg、A2060が17kg。A1060は435×439×182mm(同)で14.9kg。

A2060の背面
A1060の背面

音を聴いてみる

 ヤマハの試聴室において、2chでアデルのアルバム「25」を使い、3モデルを聴き比べてみた。

 A1060は非常にクリアで、量感がありつつタイトさも兼ね備えた低域が特徴。これ単体で聴いている分には不足を感じないが、上位モデルのA2060やA3060に切り替えると、低域の沈み込みがさらに深くなり、音場の奥行きも一層広がる。

 A2060は高域の抜けがよく、クリアさの中にもしなやかさがあある。フラットではあるが、開放的なサウンドだ。A3060は、A2060の音の傾向をさらに進化させた印象で、高域の伸びも最高。スケール感がアップし、2chでも体を包み込まれるような感覚だ。

 ハイレゾ楽曲のシャンティ「ララバイ」などを聴くと、A1060はシャープな描写で情報量の多さがよく分かる。だが、描写の細かさがそのままむき出しになっているような感覚もある。A2060に切り替えると、質感がアップし、輪郭のキツさが緩和される。A3060では重心がグッと下がり、安定感が増す。シャーシがより強固になっている点などが効いているのだろう。

 シネマDSP 30周年を記念し、A3060に追加された新音場「Enhanced」もAtmos版の「シカゴ」などのBlu-rayソフトで体験。

 フロントの移動感がよりわかりやすくなるというモードだが、確かに、出演者が歌いながら移動するようなシーンでは、移動の軌跡が明瞭になり、右から左へと音像が動いているリアルさに磨きがかかる。

 ライブステージや、オペラハウスなどが劇中に登場するような作品を試聴すると、前方のステージの広がりや、奥行き方向の深さが「MOVIE THEATER Enhanced」ではより引き立つ。中央のベストな位置でステージを楽しんでいるような音場が目の前に出現するので楽しい。音楽ライブBDなども、リッチな気分で楽しめそうだ。

 なお、発売に先駆け、8月6日の10時30分~12時、14時~15時30分の2回、各回定員25人(要予約)で試聴会も開催される。場所はヤマハ東京事務所。詳細は専用ページを参照のこと。