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ヤマハ、10万円台でもAtmos+DTS:XとシネマDSP重ね掛け可能なAVアンプ「AVENTAGE」

 ヤマハは、ハイクラスAVアンプ「AVENTAGE」(アベンタージュ)3機種を7月より順次発売する。Dolby Atmos、DTS:Xに対応し、音場プログラム「シネマDSP HD3」を掛けあわせる事も可能。音響の最適化を64bit演算処理で行なう「YPAO プレシジョンEQ」にも対応する。価格と発売時期は、7.1chの「RX-A1070」が14万円で7月中旬、9.2chの「RX-A2070」が20万円で7月下旬、9.2chで11.2chプリアウト対応の「RX-A3070」が27万円で7月下旬。カラーはチタンとブラックだが、A2070はチタンのみ。

ハイクラスAVアンプ「AVENTAGE」の7.1chモデル「RX-A1070」

 従来は、上位のA3060のみDolby Atmos、DTS:Xと「シネマDSP HD3」の掛け合わせや、「YPAO プレシジョンEQ」に対応していたが、今回の新製品では、後継モデルのA3070に加え、下位モデルのA2070、A1070までこれらの機能を搭載。コストパフォーマンスに優れた製品となっている。

 各モデルの最大出力は、A1070が170W×7ch(6Ω)、A2070が220W×9ch(6Ω)、A3070が230W×9ch(6Ω)。

9.2chの「RX-A2070」

3機種共通の特徴

 オブジェクトオーディオフォーマットのDolby Atmos、DTS:Xに対応。個々の音を、頭上を含めた室内のどの位置にも定位、移動させられ、3次元的な音響空間を自在に創り上げられるという。「RX-A3070」は5.2.2ch、5.2.4ch、7.2.2chに加え、11.2chプリアウトも備えているため、外部パワーアンプ2chと組み合わせる事で7.2.4ch構成にも対応可能。

 プレゼンススピーカーの設置位置は、フロントスピーカー上方壁に設置する「フロントハイト」、天井に設置する「オーバーヘッド」、「ドルビーイネーブルドスピーカー」の3パターンから選択できる。

9.2chの「RX-A3070」。上がチタンモデル、下がブラックモデル

 付属マイクを使い、部屋固有の初期反射音を測定。最適化する「YPAO-R.S.C.」と、その計測結果に基づいて再生時の周波数特性が音量に応じて聴感上フラットになるようにコントロールする「YPAO Volume」にも対応。A2070とA3070は、設置した各スピーカーの距離と方角、プレゼンススピーカーの高さを自動計測することで音場空間を立体的に補正する「YPAO 3D測定」にも対応。水平角度測定をサポートしている。

A2070とA3070は「YPAO 3D測定」にも対応。水平角度測定をサポートしている

 さらに全モデルで、64bit処理の「YPAO プレシジョンEQ」に対応した。AVプリアンプのフラッグシップ「CX-A5100」で採用した「YPAO High Precision EQ」と同じ系統の技術であり、高精度な演算を行なう事で、演算誤差を低減するもの。

A3070は最新のDAC「ES9026PRO」を搭載

 搭載するDACはESS製で、A1070が24bit DACの「9006AS」×1基、A2070は「9006AS」を2基搭載。A3070は、最新の「ES9026PRO」を新たに採用。より深い音の静寂性と、微小信号の忠実な再現性を獲得したという。さらに「9006AS」も搭載するほか、ロームと共同開発した高精度電子ボリューム、ルビコンとのコラボして専用に音質調整されたオリジナル PML(薄膜高分子積層)コンデンサなども投入した。

A3070は、最新の「ES9026PRO」を新たに採用

 DSP処理用のチップもA1070とA2070は個数を増やし、3機種とも3基搭載。処理能力を高めた。

音場プログラムも進化

 いずれのモデルも、音場プログラム「シネマDSP HD3」を、Dolby Atmos/DTS:Xと掛けあわせて利用できる。「シネマDSP HD3」の音場プログラムは、「Enhanced」などを含む計24種類。

 仮想のプレゼンススピーカーを空間上に生成することで、プレゼンススピーカーを設置しなくてもシネマDSP HD3再生ができるバーチャル・プレゼンススピーカー機能と、バーチャル・リアプレゼンススピーカー機能も装備。2つのバーチャル使用で仮想11.2ch再生ができる。ただし、Atmos、DTS:X信号はバーチャル再生されない。

7.1ch「RX-A1070」のブラックモデル

 前述の通り、上位機種やA3060で搭載していた、最新の音場プログラム「Enhanced」を追加。AtmosやDTS:Xなどの3Dサラウンドフォーマットに最適な映画系プログラムと位置付けられており、サラウンドバックの音場を、サラウンドのL/Rチャンネルに任せ、スクリーンに集中していた前方の音場の移動感をアップさせようというもの。フロントの音場は基本的にL/R/Cチャンネルで作られるが、LとRの音場を分け、センターはLとRの足し算で生成。前方の音場が広くなり、横方向の移動感が出やすくなる“新4音場処理”プログラムとなっている。

 さらに、エンターテイメント系の5プログラムにも、新4音場処理アルゴリズムを用いて刷新。「Sport」、「Music Video」、「Recital/Opera」、「Action Game」、「Roleplaying Game」が対象で、ボーカルやナレーションがクリアになるほか、定位感を保ったままワイドなサウンドに、効果音の移動感も向上し、躍動感のある空間表現が可能になったという。

ネットワークプレーヤー機能搭載。MusicCast強化

 HDMI端子は4K/60p、HDR、BT.2020、HDCP 2.2に対応。今後のファームウェアアップデートにより、Dolby Visionとハイブリッドログガンマにも対応予定。8入力、2出力を備えており、その内7入力/2出力で対応、前面端子のみ非対応となる。

A1070のフロント入力部分

 IEEE 802.11b/g/nの無線LANも内蔵。Ethernet端子も搭載し、ネットワークオーディオプレーヤー機能も用意。USBメモリに保存したハイレゾ音楽ファイルの再生も可能。192kHz/24bitまでのWAV/FLAC/AIFF、96kHz/24bitまでのApple Losslessに加え、5.6MHzまでのDSDもダイレクト再生できる。DSD以外ではギャップレス再生も可能。

 radiko.jpにも対応しており、radikoプレミアムのエリアフリー聴取もサポート。SpotifyのSpotify Connectにも対応している。

 Bluetoothもサポート。ルータを使わずに機器と直接ワイヤレス接続する「Wireless Direct」機能も用意。AirPlayにも対応する。

 MusicCast機能を使い、DLNA対応のNASなどに保存されている音楽ファイルを、ネットワーク経由で再生する事も可能。MusicCast対応機器と連携し、AVアンプから、別の部屋のMusicCast対応機器へと音楽を伝送したり、アプリから各部屋で再生する音楽を制御する事もできる。

 MusicCastを便利にする機能として、AVアンプの電源をONにすると、リンクしたMusicCast対応機器の電源も自動的にONになるトリガー再生機能を搭載する。

 ゾーン出力機能では、「Zone 2 Link Master」に対応。ゾーン2で再生している音声をマスターとし、他のMusicCast他奥製品でリンク再生させる事ができる。メインゾーンの電源がOFFの場合でも、Zone 2 Link Masterは利用可能。

「RX-A3070」

 本体前面に搭載した「SCENE」ボタンに、コンテンツ登録が可能。入力が「NET」、「USB」、「Bluetooth」、「チューナ」の時に、選択しているラジオ局やコンテンツが登録可能。音場プログラム、ミュージックエンハンサー機能のON/OFF、出力先のHDMI端子などもセットで割り当てられる。

 筐体には制振・高剛性なシャーシを採用。左右対称コンストラクション構造になっているほか、リジッドボトムフレーム、H型クロスフレームも採用。A3070には、底板を二重にしたダブルボトム構造と鋳鉄製レッグも追加している。A1070とA2070の脚部には、新開発のアンチレゾナンスレッグを採用。直線と曲線状の補強を組み合わせ、強度と制振性を高めている。

A1070とA2070の脚部には、新開発のアンチレゾナンスレッグを採用。直線と曲線状の補強を組み合わせ、強度と制振性を高めている

 パワーアンプは、高速熱帰還トランジスタと大容量制振ヒートシンクを採用した左右独立構成のディスクリート構成。「D.O.P.G.コンセプト」などの基本構成は3機種共通。パワーサプライ部は、オーディオ回路用、デジタル回路用、アナログ映像回路用、FLディスプレイ回路用を独立させ、ステージ間の相互干渉を防ぐ4回路分離型。

「RX-A2070」
「RX-A1070」

 アナログ音声入力はRCA×9系統(Phono入力含む)。光デジタル×3、同軸デジタル×3も搭載。さらにA3070はノイトリック製のコネクタを使ったXLRバランス入力(2ch)も装備する。

 映像入力はHDMI×8、コンポジット×4、コンポーネント×2。ヘッドフォン出力、サブウーファ出力×2も搭載。A3070は11.2chのプリアウト、A2070/1070は7.2chプリアウトも備える。

 AM/FMラジオも搭載。FMワイド放送にも対応する。消費電力はA3070/2070が490W(待機時最小0.1W)、A1070は400W(待機時最小0.1W)。外形寸法と重量は、A3070/2070が435×474×192mm(幅×奥行き×高さ)で、A3070が19.6kg、A2070が17kg。A1070は435×439×182mm(同)で14.9kg。

A1070の背面
A2070の背面
A3070の背面

 なお、RX-A3070の発売に先立ち、7月22日に東京で先行視聴会も開催される。詳細は専用ページを参照のこと。

音を聴いてみる

 まず、コストパフォーマンスの面で要注目の7.1chモデル「RX-A1070」を聴いてみる。前モデルのA1060と比べると、音場の広さ、低音の沈み込み、そして広い音場に定位する音像の明瞭さが大幅にアップしている。音場は広大で、奥行方向もよく見える。低域の分解能もアップしており、ピアノの左手の描写も聴き取りやすい。進化幅は大きく、同じクラスのモデルが進化した……というレベルではなく、ワンランク上の製品と聴き比べている感覚だ。

 そのまま、上位モデルの新機種A2070に変更すると、高域に艶やかさが出てくる。低域の安定感もアップ。低い音に腰があり、ドッシリとした印象になる。駆動力も高く、低域のトランジェントもアップした。ただ、確かに上位機らしさはよくわかるのだが、A1070のサウンドはかなり肉薄している事がわかる。

 A3070は刷新したDACによる効果と思われるが、SN比がかなり向上。空間の広さだけでなく、奥まで見通しが良く、音の余韻が広がる様子がよくわかる。クラスが違うので馬力の違いは歴然としたものがあり、中低域の音圧に肺が圧迫されるような凄みが加わる。静粛さと、ドライブ力の高さを兼ね備えた描写は、さすが上位モデルだ。

 刷新されたエンターテイメント系のDSPプログラムも体験した。「Sport」、「Music Video」、「Recital/Opera」、「Action Game」、「Roleplaying Game」の5プログラムだが、いずれも音場の包囲感が向上、音の移動なども明瞭になっている。

 例えば「Sport」モードでサッカーを観る場合、アナウンスの音声を明瞭に再生しつつ、スタジアムの熱気感も豊かに再生するよう開発されているという。「Action Game」でStar Warsバトルフロントをプレイすると、雪のトンネル内での音の包囲感がアップ。低音の深みや音圧も上昇し、迫力がアップする。それでいて雑な音にならず、精細感も維持されているのが好印象だ。

 「Music Video」も、空間の広さを出しつつも、ステージ場の熱気がより熱く伝わってくる。ドラムのうねりや、吹き寄せるような低域もよりドラマチックに感じられる。

 「Recital/Opera」も音楽系ソースで幅広く使えそうなモードだ。Dolby Atmosで収録されている、BEGINの25周年記念コンサートBlu-rayで試すと、ホールの広がりがよりリアルになる。またこのコンサートは、舞台が少し高い位置にあり、観客が見上げるような位置関係になるが、Recital/Operaを利用した時の方が、“高さ”がよく出て、映像とマッチするのが実感できた。