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TIAS開幕。B&W「800 D3」に注目。ソナス・ファベールがチューンしたヘッドフォン
2016年9月30日 17:10
国内外のオーディオブランドが一堂に会する展示会「2016東京インターナショナルオーディオショウ」が、東京・有楽町の東京国際フォーラムで9月30日に開幕した。会期は10月2日までの3日間。入場無料だが、当日またはWebでの事前登録が必要。主催は日本インターナショナルオーディオ協議会(IASJ)。
アナログプレーヤーからハイレゾまで、輸入商社らが世界各国のオーディオ機器を紹介するイベント。今年のトピックは、パナソニックがテクニクス(Technics)ブランドで新規出展している事。各社ブースの新製品を中心に、気になる展示をレポートする。
マランツ
マランツブースでは、英Bowers & Wilkins(B&W)のハイエンドスピーカー「800 Series Diamond」の最上位モデル「800 D3」が注目の的。昨年から発売されている「D3」シリーズの最上位モデルで、既存D3シリーズの特徴を備えているが、800 D3のみに投入された技術もあり、「800シリーズDiamondの集大成モデル」と位置付けられている。そのサウンドを確認しようと、多くの人がブースに詰めかけている。
1本の価格は、ローズナット仕上げが2,125,000円、ピアノ・ブラックが2,250,000円(基本的にはペアでの販売)。
ユニットは25mm径のダイヤモンドツイータ×1、150mm径のコンティニュアムコーンミッドレンジ×1、250mm径エアロフォイル・コーンウーファ×2の3ウェイ4スピーカー構成。再生周波数帯域は13Hz~35kHz。ウーファのセンターキャップを、下位モデルの薄いカーボンファイバースキンではなく、振動板と同じシンタクティック・フォーム素材を使い、強度を向上させている。磁気回路にも改良が加えられている。
10月下旬に発売される、マランツブランドのフラッグシップSACD/CDプレーヤー「SA-10」も登場。価格は60万円。最大の特徴は、汎用的なチップメーカーのDACを使わず、「Marantz Music Mastering」(通称MMM)と名付けたマランツ独自のDACを開発・搭載している事。
マランツはドライブメカエンジンを自社で手掛け、デジタルフィルターも独自開発。DAC後段のアナログステージにも「HDAM」を使うなど、ディスクプレーヤーのほぼ全てのパートを自社でハンドリングしており、DACも自社製にすることで、入り口から出口まで、サウンドの全てを自社でコントロールできるようになった。
元フィリップスで、DSPに関する高度なノウハウを持ち、現在はマランツのヨーロッパリージョンの音質担当者でもあるライナー・フィンク氏がマランツオリジナルDACを開発。マランツがこれまで、PCからのノイズ流入対策として採用してきたデジタルアイソレータとリレーを、MMMの内部にも採用。USB DAC機能も搭載し、DSDは11.2MHzまで、PCMは384kHz/32bitまでサポートする。
また、「SA-10」との組み合わせを想定したプリメインアンプ「PM-10」も参考展示。音質を追求し、開発に時間がかかっているとのことで、来年の早い段階での登場が予定されている。
「HD-AMP1」とマッチするコンパクトなサイズとデザインを採用し、高音質ヘッドフォンアンプも搭載したCDプレーヤー「HD-CD1」も9月上旬から発売されたばかりの新製品。価格は6万円だ。
アークジョイア
Sonus faberやWadia、audio researchなどのブランドを持つWorld Of Macintosh(WOM)グループ(旧ファインサウンズ・グループ)が設立した新ブランド「PRYMA(プリマ)」の取扱を開始。第1弾製品として、デザイン性の高いヘッドフォン「PRYMA 01」を展示。9月20日から販売を開始している。
イタリアの工房で一つ一つ職人の手作業により組み上げられるという。大きな特徴は、Sonus faberがサウンドのチューニングなどを手掛けている事。ハウジングなどにSonus faberのロゴも入っている。
ハウジングは軽量で剛性に優れたアルミニウム素材を使用。ヘッドバンドには最高品質というイタリア製本革素材が使われている。ハウジングにカーボンプレートを使ったモデルの実売は65,000円前後、使っていないモデルは約59,000円前後。
もう1つの特徴として、ハウジングとヘッドバンドが分離できる。別売で6色のヘッドバンド単品も販売予定で、組み合わせにより、自由なコーディネートも可能。ハウジングは密閉型で、ユニットは40mm径。
デノン
デノンブランドの注目展示はピュアオーディオの「1600シリーズ」だ。SACDプレーヤー「DCD-1600NE」と、プリメインアンプ「PMA-1600NE」が11月上旬発売で、価格はSACDが12万円、プリメインが15万円。
プリメインアンプ「PMA-1600NE」は、USB DAC機能も搭載。定格出力は70W×2ch(8Ω)、140W×2ch(4Ω)。基本構造は従来モデルのPMA-1500REと同じだが、アンプの出力段に、微小領域から大電流領域までのリニアリティに優れ、大電流を流せる「Advanced UHC-MOS FET」(UHC=Ultra High Current)を、シングルプッシュプルで搭載。増幅回路はハイゲインパワーアンプによる一段構成。USB DAC部分はPMA-2500NE相当で、PCMが384kHz/32bitまで、DSDは11.2MHzまでサポートする。
SACDプレーヤー「DCD-1600NE」は、ディスクドライブとして、DCD-SX11で採用した「Advanced S.V.H. Mechanism」をベースにしたものを採用。「DACマスター・クロック・デザイン」も投入し、マスタークロックをDACの直近に配置。余分なジッタの発生を低減している。
クロック電源の根元には、高周波インピーダンス特性に特に優れた音質用導電性高分子コンデンサを配置。44.1kHz系、48kHz系、それぞれに個別のクロック発振器を搭する。デジタル録音時に失われたデータを復元するという、独自のデータ補間アルゴリズムによるアナログ波形再現技術の最新版「Advanced AL32 Processing Plus」も搭載した。
9月に発売を開始した、ハイレゾ対応イヤフォン3機種も展示。価格はオープンプライスで、実売は「AH-C820」が22,000円前後、「AH-C720」が15,000円前後、「AH-C620R」が10,000円前後。C820は、11.5mmのダイナミック型ドライバを対向配置した「ダブル・エアーコンプレッション・ドライバー」を採用している。
ラックスマン
伝統の“ロの字型”木箱ケースを使った新製品が注目を集めている。真空管プリメインアンプ「LX-380」は10月下旬発売で、価格は46万円。1963年発売のSQ-38から12代目となる、38シリーズの最新モデル。外観は往年の製品を彷彿とさせるノブやスイッチ類を多用し、横幅を440mmのフルサイズとしたフロントパネルを採用している。
回路にはムラード型のドライバー段と繊細で柔らかな音色に定評のある出力管6L6GCをプッシュプル構成で搭載。大出力を目的とするのではなく、真空管らしい艶やかさと厚みのある音質を目指して設計したという。
CDプレーヤーの「D-380」も10月下旬発売で、29万円。2009年の発売の「D-38u」は半導体回路と真空管回路の出力を切り替えて再生できる機能を備えていたが、D-380ではこの機能が進化。真空管出力では、ECC82によるバッファ回路に専用の大型出力トランスを搭載し、適度な倍音成分を付加することで、より密度感の高い濃厚な表現力を獲得したという。DACチップからダイレクトに接続された半導体出力との、サウンドの違いが楽しめる。
「ES-1200」は、ラックスマン初のクリーン電源システム。家庭用AC100Vの電源を、新開発の「サイン波形差分同期補正回路」(シンクロナイズド・デルタ・コレクター・サーキット)で低歪化して、オーディオ機器に最大1,200VAまでのクリーンな電源電力として供給する。10月下旬発売で58万円だ。
TAD
テクニカル オーディオ デバイセズ ラボラトリーズ(TAD)のブースでは、11月下旬発売の小型のブックシェルフスピーカー「Micro Evolution One TAD-ME1」に注目。価格は1本50万円。ブックシェルフスピーカーとして「TAD-CE1」(1台80万円)を既に発売しているが、よりコンパクトかつ低価格なモデルとして「TAD-ME1」が追加される。
ユニット構成は、2.5cm径のツイータと、9cmのミッドレンジの中高域用同軸ユニット「CSTドライバー」と、16cm径ウーファの3ウェイとなる。エンクロージャはバスレフ。このモデル向けに、小型のCSTドライバが新たに開発された。
ウーファも新開発。振動板は、アラミドの織物で作ったものと、もう一枚同じ形状で不織布で作ったものを貼りあわせている。バスレフポートは、CE1と同じ「Bi-Directional ADS」システム。エンクロージャの両サイドに穴があいており、その上にパネルを配置。エンクロージャとパネルの間には隙間があり、それがスリット形状のバスレフポートとして機能する。
アキュフェーズ
アキュフェーズ・ブースで最も注目を集めているのは、9月上旬から発売を開始したSACDトランスポート「DP-950」と、DAコンバータの「DC-950」だ。価格は各120万円。
「DP-950」は、精密加工による重量級のSA CD/CDドライブメカを採用。防振・制振・低重心設計を徹底したというもので、ディスクトレイの動きや、スムースなディスク・ローディング機構にもこだわっている。ネオジウム8極着磁ヨーク・マグネットを使い、ディスク回転時の面ブレも低減した。
DACは搭載しないトランスポートで、DC-950との接続には独自の「HS-LINK Ver.2」を使用。クロックとデータをDACへ直接入力できるという。駆動系と信号系を分離した2個の高効率トロイダル・トランスとカスタム仕様の高音質フィルター・コンデンサ(4,700μF/35V)10個による強力な電源も搭載した。
DACの「DC-950」は、高速FPGAを採用し、独自の再生方式MDSDを進化させている。2倍速の高精度移動平均フィルタ回路を構成。DACチップには、ESSの「ES9038PRO」を採用し、8回路並列動作させている。DSD信号をストレートにD/A変換でき、DSD 11.2MHz、384kHz/32bitのPCMに対応。HS-LINK入力やPCと接続するUSBなど、8系統のデジタル入力も備えている。
12月上旬発売のSACD/CDプレーヤー「DP-560」は60万円。新開発のドライブメカを備えているほか、プロセッサ部にはESSの「ES9018S」を採用。4回路のDACを並列駆動した「MDS+変換方式DAC」により、DSDとPCMをストレートにアナログ変換できる。DSDは11.2MHz、PCMは384kHz/32bitまで対応。USB DACとしても動作する他、同軸、光デジタル、HS-LINK Ver.2も搭載する。
11月下旬に発売する「E-270」は30万円のプリメインアンプ。E-260をフルモデルチェンジしたもので、進化したAAVA方式のボリュームを採用。パワーアンプ部の構成には、最新のインスツルメンテーション・アンプ方式を使っている。出力は120W×2ch(4Ω)。オプションボードスロットも備え、USB DACボードなどを追加する事もできる。
TAOC
アイシン高丘(TAOC)ブースの目玉は、9月に発売を開始した3ウェイフロア型スピーカー「AFC-L1」(1台110万円)。「直線の美しさとラウンド形状を調和させたフォルムとスキマの美の組合せ」と表現する、新しいデザインコンセプトのエンクロージャを採用しているのが特徴。
バッフル面には、ユニットの自然な響きを受止め、自然さを消さないように板厚30mmのロシアンバーチの無垢材を使用。ユニット構成は、既存モデル「FC4500」のスタガード・2.5ウェイから、オーソドックスな3ウェイに変更。ツイータが2.5cm径のリングラジエタータイプ、ミッドレンジが18cm径のスライスドペーパーコーン、ウーファが23cm径のポリプレピレンコーン。ツイータとミッドレンジはスキャンスピーク製。ウーファは、オーディオテクノロジー製だ。