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航空宇宙技術を採用した2,300万円のMAGICO新スピーカー、McIntoshのポータブルアンプ

 国内外のオーディオブランドが一堂に会する展示会「2017東京インターナショナルオーディオショウ」が、東京・有楽町の東京国際フォーラムで9月29日に開幕した。会期は10月1日までの3日間。入場無料だが、当日またはWebでの事前登録が必要。主催は日本インターナショナルオーディオ協議会(IASJ)。

 アナログプレーヤーからハイレゾまで、輸入商社らが世界各国のオーディオ機器を紹介するイベント。各社ブースの新製品を中心に、気になる展示をレポートする。

エレクトリ

 エレクトリ・ブースでは、米MAGICOの新スピーカー「M6」を発表。価格はペアで2,300万円という超弩級モデル。

MAGICOの新スピーカー「M6」

 筐体には、最新の航空宇宙技術とマテリアルを活用したカーボンファイバーサイドパネルのモノコック構造。F-35戦闘機の外殻構造とも類似しているとのことで、構造の強度対重量比を高め、全体重量を減少、サイズを小さくしながらも内部容積を大きくしている。

 切削機械加工されたフロントバッフルにも、有機的な曲面を採用。全てのドライバをシームレスに再生するという。ツイータは28mm径のダイヤモンドコート・ベリリウム振動板、ミッドレンジは6インチで、グラフェンを使っている。ウーファは10.5インチを3基搭載。こちらはマルチウォールカーボンとグラフェンを使っている。重量は177Kg。

 ドライブするMcIntoshのパワーアンプ「MC 1.25KW」も最新モデルだ。

McIntoshのパワーアンプ「MC 1.25KW

 ポータブル向けの新製品としては、DACを内蔵したポータブルヘッドフォンアンプ「MHA50」を参考展示。価格は10万円程度を想定。

 PCMは192kHz/32bit、DSD 11.2MHz、DXD384までの再生が可能なDACも搭載。iOSやAndroid端末とのデジタル接続にも対応する。また、Bluetooth 4.1にも対応し、プロファイルはA2DPをサポート。コーデックはaptXに対応する。

DACを内蔵したポータブルヘッドフォンアンプ「MHA50」
Bluetooth用のボタンも備えている

テクニクス

 ドイツの「IFA 2017」で披露した、ダイレクトドライブ方式のターンテーブル新リファレンスモデル「SP-10R」プロトタイプ。そのモックを、ブースで展示している。製品は2018年初夏の市場投入を予定。

新リファレンスターンテーブル「SP-10R」のプロトタイプ、モック

 世界トップレベルのSN比や、回転安定性を実現したというターンテーブル。新しいコアレスダイレクトドライブモーターと、7kgと重いプラッターを採用。SL-1200Gに採用していた、コアレスステーターを上下から挟んだ面対抗式ツインローターシステムに加え、ロータの両側にもステーターコイルを搭載。より強力で正確なサウンドを実現するという。

新しいコアレスダイレクトドライブモーターと、7kgと重いプラッターを採用

 プラッタは、真鍮とアルミダイキャスト、ゴムの3層構造。各層の固有振動数を最適化することで、外部振動を完全に抑制したとする。

 電源にはトランスを使わず、超低ノイズの新しいスイッチング電源を採用。電源ユニットはターンテーブルとは別筐体になっており、ノイズが伝わる事を防いでいる。

電源ユニットはターンテーブルとは別筐体

 10月20日の発売を予定している、ハイレゾ対応一体型オーディオシステム「OTTAVA f SC-C70」も出展。2.1chのスピーカーと、天面に搭載したCDプレーヤー、DLNAのネットワークプレーヤー、USBメモリ再生、ラジオチューナを1つの筐体に搭載。

ハイレゾ対応一体型オーディオシステム「OTTAVA f SC-C70」

 ユニットは、2cm径ツイータ×2、8cm径ウーファ×2、12cmサブウーファ×1の2.1ch仕様。出力は、フロントが30W×2ch、サブウーファが40W。再生周波数帯域は40Hz~50kHzでハイレゾに対応。デュアルロングポートにより低域再生を強化。さらに、ツィータ前面の音響レンズ配置により、高域の指向性を確保している。

 アンプ部には、リファレンスシリーズの設計コンセプトを継承したデジタルアンプ「JENO Engine」を採用。設置場所に合わせ、最適なサウンドに調整する「Space Tune」を搭載。「壁の近くに設置」、「コーナーの近くに設置」など3つのプリセットから選択できる。

CDプレーヤーは天面に搭載している

デノン

 コンパクトかつスタイリッシュな“デザイン”シリーズのプリメインアンプが注目のデノンブース。新世代の増幅回路「DDFA」を採用した「PMA-60」と、高音質なクラスDアンプを搭載した「PMA-30」の2機種をラインナップしており、発売時期と価格はPMA-60が7万円で10月下旬、PMA-30が5万円で9月下旬。

左から「PMA-30」、「PMA-60」

 PMA-60は、QualcommのDDFA(Direct Digital Feedback Amplifier)を増幅回路に初めて搭載したプリメインアンプとして話題となったPMA-50(2015年発売)の後継モデルで、最新バージョンのDDFAを搭載。Bluetooth受信やUSB DAC機能も引き続き搭載している。

 新世代DDFAでは、従来PWMモジュレーターとフィードバックプロセッサが個別のチップで、2チップ構成だったものを、1チップ化。これにより、周辺回路がシンプルになり、より音質を優先した回路設計と部品の選択が可能になった。

PMA-60

 PMA-30は、新たなエントリークラスの製品として投入されるもので、DDFAではないが、クラスDアンプを搭載。Bluetooth受信機能は備えているが、USB DAC機能は省き、価格を抑えている。

 さらに、一体型AVアンプとしては国内初となる、Auro(オーロ)-3Dに対応した、11.2ch「AVR-X6400H」、9.2ch「AVR-X4400H」も紹介。Auro-3Dを採用したソフトには、音楽作品も多いため、その効果をピュアオーディオファンに紹介するイベントも行なわれている。

ラックスマン

 ラックスマンのブースでは、会期初日に発表されたばかりの真空管プリアンプ「CL-38uC」と、真空管パワーアンプ「MQ-88uC」を入り口に展示。11月の発売予定で、価格は「CL-38uC」が36万円、「MQ-88uC」が39万円。'11年に発売したプリ「CL-38u」、パワー「MQ-88u」の後継機種だが、外観デザインや内部パーツは一新されている。

真空管プリアンプ「CL-38uC」
真空管パワーアンプ「MQ-88uC」

 プリメインアンプのフラッグシップモデルとして9月下旬から発売されている「L-509X」(78万円)も目玉機種。「ワンボディセパレート」をコンセプトに掲げており、2002年発売の「L-509fSE」、2006年発売の「L-509u」の系譜の第3世代モデル。独自の増幅帰還回路「ODNF」を最新バージョン4.0とし、スルーレートの速さと超広帯域、低歪みに磨きをかけ、定格出力は120W×2ch(8Ω)、240W×2ch(4Ω)となっている。

プリメインアンプのフラッグシップモデル「L-509X」

 さらにラックスマンは、仏FOCALのスピーカー、ヘッドフォンの取り扱いを10月から本格的にスタート。FOCAL製スピーカーのサウンドも体験できるブースになっている。

仏FOCALのスピーカーも勢揃い

アーク・ジョイア

 アーク・ジョイアのブースで注目は、エストニア Estelon(エステロン)フロア型スピーカー「YB」だ。9月8日から発売されており、価格は、グロス・ブラック仕上げとグロス・ホワイト仕上げがペア210万円、マット・ブラック仕上げがペア190万円。

Estelonのフロア型スピーカー「YB」

 3ウェイのフロア型で、2.6cmのドーム型ベリリウムツイータ、特殊加工スライスド・ペーパーコーンをダンピング材で補強した15cmのミッドレンジ用ユニット、アルミニウムコーン採用の22cmウーファを各1基採用。

 キャビネットは密閉型。独特のデザインは音響工学に基づいて非対称に設計されたもので、大理石パウダーなどの複合素材を使ってダイキャスト製法で鋳造している。

 さらに、Sonus Faberでお馴染み、FRANCO SERBLIN氏のスタジオが手がけた、2ウェイスピーカー「LIGNEA」も参考展示。優美なフォルムが特徴で、ツイータは27mm径、ミッドウーファは110mm径。エンクロージャは無垢の木材で、独特の形状により定在波の発生や、共鳴などを抑えている。

FRANCO SERBLINスタジオが手がけた、2ウェイスピーカー「LIGNEA」

TAD

 テクニカル オーディオ デバイセズ ラボラトリーズ(TAD)のブースでは、フロアスピーカー「TAD-R1MK2」を中心としたリファレンスシリーズと、ブックシェルフスピーカー「TAD-ME1」を中心としたエボリューションシリーズを、交互にデモしながら紹介。

 新製品としては、ブックシェルフスピーカー「Micro Evolution One TAD-ME1」の新色シルバー「TAD-ME1-S」を披露。11月下旬に発売で、価格は1本55万円。同カラーのスタンド「TAD-ST3-S」も同時期発売で、価格はペア20万円。

TAD-ME1-S

 エンクロージャの全周にチタニウムシルバー塗装を施している。一本一本丹念に磨き上げ、高光沢な鏡面仕上げを実現。熟練の職人が17工程で、塗装吹き付け、研磨、最終クリア塗装の磨き上げを行なった。

 サイドのBi-Directional ADSポートを構成する鋼板には、砂目調塗装を採用。「異なる質感の色や素材を組み合わせることで、深い色味で艶気のある精悍なデザインに仕上げた」という。

サイドのBi-Directional ADSポートを構成する鋼板には、砂目調塗装を採用

アクシス

 アクシスブースでは、10月に発売される、オーストリアlumenwhite(ルーメンホワイト)のフロア型3ウェイスピーカー「Kyara」(キアラ)が注目を集めている。価格は650万円(ペア)。

lumenwhiteのフロア型3ウェイスピーカー「Kyara」

 独特な流線形デザインのキャビネットを採用したフロア型スピーカー。3ウェイ5スピーカー構成で、新開発のアルミハニカム/セラミック振動板を採用した6.7インチ径ウーファを3基、セラミック振動板の5インチ径ミッドレンジユニットと、1インチ径セラミックドームツイータを各1基搭載する。

 キャビネット内部には吸音材を使わず、流体力学とエアープレッシャー・ダイナミックス・モデリング解析を応用した構造。素材には密度の異なる楽器グレードの木材を積層した特製品を採用した。これにより、単一の金属や木材では得られない自然な音響バランスを実現するという。スピーカーユニットはいずれも独自のCELLテクノロジーを採用し、「これまでのセラミックドライバを⼤きく上回るピストンモーション・リニアリティを達成した」とする。

 オーストリアAyon Audioの新製品も展示。真空管プリアンプ「AURIS」と、真空管パワーアンプ「Crossfire PA」で、発売日は10月。価格はAURISが82万円、Crossfire PAが148万円。

真空管プリアンプ「AURIS」
真空管パワーアンプ「Crossfire PA」

 AURISは三極管によるシングルゲイン・ステージ構成で、出力段にのみカッブリング・キャパシターを使う、純度の高い方式を採用。入力から出力までの物理的なシグナルパス経路は超最短距離になっている。入出力の形式はアンバランスとバランスモードの2種類を用意、いずれもRCA入力の1つは、ライン入力からMM/MC両対応のRIAAフォノ入力に変更できるモジュラー方式を採用。

 パワーアンプの「Crossfire PA」は、真空管プリメインアンプ「Crossfire」から、パワーアンプ部分を独立させた製品。出力管には、自社製の高品位直熱三極真空管「AA62B」を搭載。300Bをベースに、改良を施したもので、シングルユースで30W×2ch出力を実現する。出力インピーダンスは8Ω、4Ω。

 他にも、Dan D'Agostinoのゼロフィードバック・プリアンプ「PROGRESSION PRE」と、フルコンプリメンタリー・ドライブ構成による完全バランス・ステレオパワーアンプ「PROGRESSION STEREO」など、新製品を紹介している。

プリアンプ「PROGRESSION PRE」
ステレオパワーアンプ「PROGRESSION STEREO」