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NICT、透明スクリーンに投写するホログラム3D映像技術。車やメガネに応用も
2016年10月14日 16:33
情報通信研究機構(NICT)の電磁波応用総合研究室は13日、透明なスクリーンにホログラム映像が浮かぶ「プロジェクション型ホログラフィック3D映像技術」を開発したと発表した。3D表示の車載ヘッドアップディスプレイ(HUD)やスマートグラスのホログラム映像化、デジタル3Dサイネージなどへの応用が期待できるという。
今回開発した「プロジェクション型ホログラフィック3D映像技術」は、ホログラム映像を拡大投影する技術と、投影されたホログラム映像の光を特定の観測位置に集光する特殊な光学スクリーンをホログラムプリンタで作る技術によって実現。ホログラム映像を自由な画面面積や視野角で見られることを特徴としている。
レンズや凹面ミラーといった光学素子を用いて視野角を拡げる従来の技術とは異なり、ホログラムプリンタで作った薄い光学スクリーン1枚で、従来の光学素子以上の設計自由度を実現。光学スクリーンはほぼ透明で、ディスプレイの使い方に応じて柔軟なシステム設計が可能となった。
NICTは、これまで「電子ホログラフィ」と呼ばれるホログラフィック3Dディスプレイの開発を行なってきたが、実用的な画面面積と視野角を持つためには、空間光変調器(SLM)の高解像度化が必要だった。また、電子ホログラフィでは、画面面積と視野角との間にはトレードオフの関係があったことや、ディスプレイ後方に複雑な光学系が必要とする場合が多かったことなどが課題だったという。
新開発の光学スクリーンは、SLMの解像度に依存することなく、3D情報を保ったままホログラム映像の光をユーザーの観察位置に集められるようになり、従来技術よりも大きな視野角と近い距離でホログラム映像を観察できるようになった。実験では、画面面積は7.3×4.1cm、水平視野角は約20度を達成しており、これらは自由な設計が可能だという。
また、ホログラフィックプロジェクタは、NICTが2010年に開発したホログラフィック3Dディスプレイと投影レンズを組み合わせることで、ホログラム映像を自由に拡大投影できるように新開発した。
今後は、ディスプレイのフルカラー化を進めるほか、実用化を目指したシステムの簡素化や、複数の観測者に映像を提示できるシステムの検討、観測位置を自由に走査できるシステムの開発などを進めるという。