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ティアック、“New Vintage”掲げたネットワークCDレシーバ、木と布を使ったオーディオ

 ティアックは19日、「New Vintage(ニュービンテージ)」をテーマにしたフラップグシップライン「Reference7」として、ネットワークCDプリメイン「NR-7CD」を発表。さらに、ライフスタイル系の製品として、オールインワンのネットワーク対応オーディオシステム「WS-A70」も発表した。「NR-7CD」は2017年1月下旬発売予定で、価格はオープンプライス。店頭予想価格は42万円。「WS-A70」は2017年春発売予定で、価格は未定。

新製品発表会で披露されたネットワークCDプリメイン「NR-7CD」

 「New Vintage」は、ティアック創業者である谷勝馬社長(当時)が手掛けた1957年発売のオープンリール型テープレコーダ「TD-102」が、レコーディングの世界に大きな影響を与え、その後も多くの家庭用/業務用機器を生み出してきたことを踏まえ、「時代が変わっても、引き継がれている技術や情熱を込め、新たな製品を生み出す」という考えに基づいたもの。

ティアック創業者である谷勝馬社長(当時)
オールインワンのネットワーク対応オーディオシステム「WS-A70」

 同社は今年の4月に新企業理念と新企業タグライン「Recording Tomorrow」を発表。「リアクティベーション(ブランド再生)」を掲げ、新生ティアックとして再スタートを切っており、New Vintageはそれを象徴する新製品と位置付けられている。

ネットワークCDプリメイン「NR-7CD」

 Referenceシリーズの最上位となる「Reference7」の1モデル。CDプレーヤー、ネットワークプレーヤー、アンプ、Bluetoothレシーバ機能などを1つにまとめており、スピーカーを追加するだけで本格的なオーディオシステムとなる。

CDプレーヤーも装備

 ネットワークプレーヤー機能は、OpenHome互換で、DSD 5.6MHz、PCMは192kHz/24bitまでのデータが再生可能。ギャップレス再生や、操作アプリを止めても途切れなく再生を続ける「オンデバイス・プレイリスト」機能などに対応。NR-7CDに最適化された専用アプリを使い、スマホやタブレットから選曲操作ができる。日本ではサービスが実施されていないが、音楽配信のTIDAL、Qobuzにも対応している。

 BluetoothやCDなど、すべてのPCM音源を最大DSD 12.2MHz、もしくはPCM 384kHzまでアップコンバートする「RDOT-NEO(Refined Digital Output Technology)」回路を搭載。フルエンシー関数を応用したティアック独自の回路となる。PCMをDSDに変換する事もできる

 背面にUSB端子を備え、接続したUSBストレージを簡易サーバーとして使うことも可能。CDドライブメカは、業務用機にも採用されている高性能・高信頼性を追求したもの。

 Bluetoothは、対応プレーヤーやスマホと連携する事で、ハイレゾでの伝送を可能にするLDACコーデックをサポート。aptX、AAC、SBCにも対応。SCMS-Tもサポートする。

 DACは旭化成エレクトロニクス製の「VERITA AK4490」を採用。DACからプリ、パワーアンプまでは、左右チャンネルそれぞれの基板をシンメトリーに配置したデュアルモノ回路構成を採用。相互干渉を低減し、チャンネルセパレーションを向上させている。全段フルバランス伝送で、信号経路でのノイズの影響も受けにくくしている。

 アンプ部には、ICEpower製Class-Dステレオパワーアンプ「50ASX2」をBTL構成で、左右チャンネル独立して搭載。最大出力は140W×2ch(4Ω)。「ワイドバンドでリニアリティの高い音楽再生を実現する」という。スピーカー適合インピーダンスは4Ω~8Ω。

 フロントパネルには、“NEW VINTAGE”デザインをアピールするVUメーターなどを装備。インシュレータは3点支持のピンポイントフット。背面の入力端子には、削りだし金メッキ処理のRCA端子を採用。IEC規格のACインレットを備え、OFCを使ったオーディオグレードの電源ケーブルも付属。赤外線リモコンも用意する。

フロントパネルにはアナログメーターも

 入力端子はアナログRCA×1、同軸デジタル×1、光デジタル×2。同軸と光デジタル入力は192kHz/24bitまでサポート、DoPでのDSD入力にも対応する。ヘッドフォン出力はステレオミニで、500mW×2ch(32Ω)、適合負荷インピーダンスは16~600Ω。

 消費電力は100W。外形寸法は442×345×152mm(幅×奥行き×高さ)で、重量は約13.4kg。

イヤフォン出力も
背面

オールインワン型システム「WS-A70」

 オールインワン型のシステム「WS-A70」は、ネットワークプレーヤー、Bluetoothレシーバ、スピーカーを、ウォルナット突板仕上げの筐体に収めた製品。

オールインワン型システム「WS-A70」

 “木と布”をテーマに開発された。布部分は世界で活躍するテキスタイルデザイナー須藤玲子氏のブランド「NUNO」とコラボ。布を使ったサランネットをマグネットで取り付ける事ができ、このネットは別売で用意する予定。ユーザーが好みのものを買う事で、インテリアや季節などライフスタイルに合わせて自分でコーディネートができる。

布を使ったサランネットを付け替えてデザインをカスタマイズできる

 ネットワークプレーヤーとしては、ハイレゾオーディオの再生に対応。無線LANを備えるほか、BluetoothはLDACにも対応。AirPlayにも対応する。音楽配信のSpotify、GoogleCastなどもサポートする。USBストレージに保存した音楽ファイル再生も可能。マルチルーム再生にも対応予定。

 内蔵アンプはICEpower製ClassD。スピーカーは同軸2ウェイタイプを採用している。

 iOS/Androidアプリから制御できるほか、天面にコントロールボタンを装備。簡単な操作で音楽が楽しめるという。

操作部は天面に
スピーカーは同軸2ウェイ
背面

認知度など、ティアックの課題を克服して“ブランド再生”へ

 英裕治社長はオーディオ市場の現状について、「最盛期には4,000億円程度の規模があったが、現在では1,500、1,600億ほどで、大半がポータブル機器という時代。衰退の理由は、市場規模が拡大するにともない、本来の“モノづくり”よりも、利益や規模を追う形になってしまったためだろう。製造は中国や韓国のEMSに任せ、開発も全て丸投げしてしまうというケースすら見受けられるようになってしまった。コモディティ化すると、製品やメーカーに個性が無くなり、お客様から見るとあまりおもしろくない。それならば“安いモノでいいか”という市場になり、大手だけが生き残り、中小企業は苦しくなり、撤退や解散、大手に吸収されていった」と振り返る。

英裕治社長

 その上で、「ティアックはオーディオ以外の事業も手掛けていたので生き残れたが、これで満足はしていない。メーカーとして、モノづくりの本質を忘れてはいけない。いつも社員に“ティアックは100人のお客様が全員が満足する製品を作るメーカーではない。10人、15人であっても、少し高価でもこんな製品が欲しいというお客様が必ずいる。そういう人たちにフォーカスしてものを作ろう”と話している。大局をつかむ“木を見るな、森を見ろ”という言葉があるが、我々は“森を見るな、木を見ろ、木を見るためには近寄り、状況を把握する必要がある”と考えている」と、理念を説明。

 「規模やコストを第一優先にせず、本当にいいものをお客様にお届けするメーカーになりたい」と語り、身近な成功例として、ハイエンドブランドのエソテリックを紹介。「(ハイエンドの)規模は小さいが、最高のクオリティの製品を作るという姿勢は一貫しており、同業他社からお褒めの言葉をいただくほどに成長した。ティアックとしても、本意で新しいものに挑戦する。新しいステージに向けて変わろうとしていこうとしていると感じていただきたい」とした。

執行役員 音響機器事業部 コンシューマーオーディオビジネスユニット長の大島洋氏

 執行役員 音響機器事業部 コンシューマーオーディオビジネスユニット長の大島洋氏は、これまでのティアックの課題として、「ブランド認知度の低さ」、個性の弱い製品を出す事による「ブランドイメージの毀損」などを挙げ、「モノづくりに集中してきた我々は、製品中心の伝え方をしてきたが、ライフスタイル的な観点でうまく伝えていく事は苦手だった。ブランド再生に向けた“New Vintage”は、相反する2つの言葉で成り立っているが、Vintageには“音の良さ”、Newには“今だからこそできる、ハイレゾやネットワークへの対応”という意味が込められている」と語り、新製品の音質や機能面をアピールした。

 また、高音質を支える開発体制として、Philipsも導入している「ゴールデンイヤープログラム」を採用している事を紹介。音の特性を聴き分けるトレーニングや、能力テストをクリアした人がゴールデンイヤーとして認定され、製品の音質チェックなどを担当するもので、現在は30人が認定。1人は「プラチナムイヤー」を獲得している。

ティアックのオープンリールデッキが楽器に!?

 発表会にはゲストとして、デジタルメディア評論家の麻倉怜士氏、多摩美術大学教授で、かつては電機メーカーでオーディオ機器のデザインも担当していた和田達也氏、仮面ライダー555などに出演、高層ビルや鉄道、昭和歌謡などに造形が深く、ミュージシャンとしても活動している半田健人氏が登場。

デジタルメディア評論家の麻倉怜士氏

 麻倉氏は、オープンリールデッキの「A-4300」や、ハイエンドカセットデッキ「A-450」など、これまで購入してきたティアック製品を紹介。若い頃は、高価であっても無理をして購入したいほど、ティアックが“憧れのブランド”であり、「質実剛健、信頼感、安心感というイメージがある」と説明。

 その一方で、「かつてはたいへん良かったが、昨今はどこでも作っているようなものばかり」と、“ティアックファン”としての苦言を呈し、子会社であるエソテリックの製品やブランドイメージの評価の高さを紹介。ヨーロッパでは広く受け入れられているが、日本では少ない「メディア一体型プリメインアンプ」が、音楽愛好家にマッチする製品ジャンルであるとし、それを具現化したような今回の新製品への期待を寄せた。

半田健人氏

 音楽活動でもティアックのデッキを活用しているという半田さんは、音の良さや信頼性だけでなく、デザインの良さも魅力として紹介。「ミュージックビデオを撮影する際、小道具としてカセットデッキを使う事になり、家にあるソニーやパイオニアのデッキと並べた時に、ティアックのデッキを持っていく事にした。カッコイイビデオを撮りたかった、その時に選んだのがティアック。今後も“これを持っていたらカッコが付く”そういうブランドであり続けて欲しい」とエール。さらに、英社長に向かって「最高のカセットMTRをもう一度作っていただけないですか、録音ヘッドがだいぶ弱ってきているので」と要望を届ける一幕もあった。

和田達也氏

 和田氏は、「他社がコストなどの問題でアルミが使えないとか断念する中、ティアックさんはそういった素材も採用していて羨ましい、他のメーカーとは何か違うなと感じていた」と、オーディオ機器のデザインをしていた当時を振り返る。そして、「日本のオーディオのブランドとして、ネバーギブアップの精神で、そうしたキチッとした質実剛健なモノづくりを続けて欲しい」と語った。

 発表会の最後には、複数のオープンリールテープレコーダを楽器として演奏する3人グループ、オープンリールアンサンブルのパフォーマンスも展開。ティアックのオープンリールデッキも使って演奏されたほか、ティアックが1972年に、オープンリールデッキのユーザーが集まった“ティアッククラブ”で、生演奏を録音するイベントを開催した際に録音されたテープを使い、即興でミックスしながらの演奏も披露。大きな拍手を浴びた。

オープンリールアンサンブル