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“空気の流れ”に注目、MrSpeakers新最上位ヘッドフォン「Flow」を開発者が解説
2016年10月22日 16:45
エミライは22日、開催中の「秋のヘッドフォン祭 2016」において、米MrSpeakersの新フラッグシップヘッドフォン「Flow」シリーズを紹介。新たに採用した「True Flow」テクノロジーなどを、MrSpeakersの創立者のDan Clark氏が解説した。
「Flow」シリーズは、開放型「ETHER Flow」と、密閉型「ETHER C Flow」が11月下旬に発売される。価格はオープンプライスで、店頭想定価格はどちらも23万円前後。既存のETHER、ETHER Cは併売で、Flowは上位と位置づけられる新フラッグシップだ。
Flowシリーズは、ヒダのような特殊な形状を採用したV-Planar振動板を平面駆動する方式は、既存のETHER/ETHER Cと同じ。大きく進化した点は、平面振動板を駆動させるために4列に並んだマグネットが配置された“トレイ”だ。
振動板が動くと、当然空気の流れが発生する。それを通過させるための1.5mmほどの穴がトレイに沢山開けられている。既存のETHER/ETHER Cは、単純に穴が空いているだけだが、Dan Clark氏はこの穴を通過した空気が、回折・反射する事で渦をつくり、解像度の低下要因になっていると気付き、対策に乗り出した。
以下の図は、左が従来のもの、右がFlowシリーズ。緑色で塗られた部分が、3Dプリンタで作られ、新たに投入された樹脂製のパーツ。流体力学に基づいた形状で、空気の流れをスムーズにするガイドのような役割を果たすという。これにより、中域の歪率を1/2以下に抑制できたという。これが特許技術の「True Flow」テクノロジーであり、Flowシリーズの名前の由来にもなっている。
既報の通り、MrSpeakersではコンデンサ型のヘッドフォンも製品化にむけて開発を進めている。Dan氏はその中で、「コンデンサ型のヘッドフォンは、振動板が軽いので音が良いのだと考えていた。しかし、共鳴などを比較すると、それだけが要因ではない事に気付き、空気の流れが原因だと突き止めた」という。
新モデルでは、前述のトレイ変更だけでなく、それに伴ったチューニングも変更。さらに、従来のETHERとETHER Cではイヤーパッドの形状が異なっていたが、ETHER Flow/ETHER C Flowでは、角度をつけた形状のパッドに統一されるなど細かな違いもある。
既存のETHER/ETHER CからのアップグレードもMrSpeakersのサイトでは受け付けており、前述の新形状トレイに変更するベーシックなアップグレードは350ドル、イヤーパッドなども含め、外観も全てFlow仕様にアップグレードするサービスは500ドルで提供している。
日本で取り扱うエミライも、同様のサービスを提供する予定だが、価格や時期、どちらのサービスも実施するのか、片方だけにするのかなどは、決定次第、改めて発表するという。
進化の度合いを聴いてみる
既存のETHERとETHER Cは、平面駆動型らしい繊細さや、トランジェントの良さがありながら、低域も適度に出て、クールかつシャープな描写と組み合わさり、完成度の高いサウンドが楽しめるモデルだ。
ETHER Flow/ETHER C Flowでは、振動板など基本的なパーツに変化は無いが、聴き比べてみると確かに音が進化している。2機種に共通するポイントは、低域と高域どちらの伸びも良くなり、レンジがグッと拡大した事。
また、どちらかというとクールでシャープなキャラクターだったが、音がスムーズに出るようになった結果なのか、落ち着いた、ウォームな描写に変化しており、聴いていてホッとするような気も良さがある。
個人的に印象深いのは、密閉型のETHER C Flowだ。ETHER Cはレンジが開放型よりは広くなく、中低域のパワフルさがあるが、少し狭いレンジの中で高い描写力を楽しむような傾向があった。
しかし、ETHER C Flowではレンジが拡大。パワフルさを持ちながら、開放型の音にも近づいた感じがあり、進化の度合いがより大きく実感できた。