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LG、有機ELサイネージ強化で曲面や両面、“壁紙”デザインなど
2017年2月2日 20:37
LGエレクトロニクス・ジャパンは2日、55型/フルHDの有機ELパネルを活用したデジタルサイネージ3製品を発表した。小売店やオフィスなど屋内施設への導入を想定し、国内法人向けに受注を開始している。
いずれも55型/1,920×1080ドットの有機ELパネルを使ったディスプレイで、ラインナップは、表裏に同サイズのパネルを備えた「Dual-view Flat」(55EH5C)、パネル部分のみ壁掛けにして映像が流れる窓のような「Wallpaper」(55EJ5C)、円弧状に曲げて大型曲面ビデオウォールなどを構築できる「Fixed Curved Open Frame」(55EF5C)。
価格は構成に応じて変わるが、通常の液晶ディスプレイを使ったサイネージ製品と比べて「大体1.3〜1.5倍程度になる」(LGエレクトロニクス IT&ID Salesパート 専任部長の尾崎孝之氏)という。
有機ELは動画サイネージ向け
パネル解像度はフルHD/1,920×1080ドットで、最大輝度は400cd/m2、コントラストは100,000:1。視野角は上下左右178度、応答速度は1ms(グレー to グレー)。10bitカラーに対応する。寿命(輝度半減までの時間)は約3万時間で、画面の焼付きを避けるために動画再生を主な用途とし、1日あたり18時間までを運用条件としている。消費電力は190W、スタンバイ時は0.5W。ベゼル幅は製品ごとに異なる。
いずれもパネル駆動用の基板などを収めた「T-Con」や、サイネージ用コンテンツを再生する「Signage box」、接続用ケーブルなどを標準セット。映像用インターフェイスとしてHDMIやDisplayPort、Ethernetなどを備える。
「Dual-view Flat」は設置場所に応じて、天吊りと床置き、ウォールマウントの3タイプを用意。床置き型はオプションの利用で、電動回転させることも可能。
「Wallpaper」は薄い壁にパネルを簡単な固定具のみで取り付けられるのが特徴。曲げて利用することはできない。T-ConとSignage boxをまとめたボックスを離れた場所に置き、付属のケーブルで接続する。
「Fixed Curved Open Frame」は柱に巻きつけたり、専用スタンドで自立させてビデオウォールとしての活用を想定。パネルはフラットなまま出荷され、組み付け時に業者が既定の曲率に曲げて治具で固定する。最大曲率は短辺が1,500R、長辺が2,000R。展示では4枚を組み合わせて4K映像を上映していた。
この他、垂直ガラス板の間に、55型有機ELパネルを縦に2枚組み込み、表裏の両面で映像表示が可能な「In-Glass Wallpaper」を開発中で、3月から世界市場で順次展開予定。さらに、Fixed Curved Open Frameを大型・高精細化し、6月に65型4Kサイネージ製品を展開することも明らかにした。
LGエレクトロニクスの尾崎氏は、有機ELパネルをサイネージ利用する利点について「従来の液晶パネルを使ったものと比べて応答性やコントラスト比の高さ、薄くて軽くできること、パネルを曲げられること」と説明。一方で液晶に劣る部分としては「輝度半減までの寿命時間が約3万時間と短く(液晶は約5万時間)、コスト(歩留まり)の面でもまだ高い。今後の取り組みとして、まずベゼル部のさらなる狭小化を目指す。有機EL素材の改善で映像の焼付きを改善し、より長時間の運用を可能にすることや、最大曲率の向上、表示部の軽減化などを行なっていく」とした。
サイネージの世界市場で20%近いシェア。設計から運用まで携わる
LGのデジタルサイネージ事業について、斎藤秀実 デジタルサイネージ事業推進室長は「LGエレクトロニクスと(グループ内のソリューション会社である)LG CNS、各国のSIパートナー企業と一体となってシステムデザイン、ハードウェア・システム構築、運用管理まで総合的なソリューションを用意。ハードの提供にとどまらず、ユーザーの要望に合わせたビジネス展開を行なっている」と説明。必要に応じて、LGグループ内で映像コンテンツも制作・提供できるという。
2016年の第3四半期までのデジタルサイネージの世界市場は、前年同期比で18%伸長(IHS調査)。「LGは19.3%のシェアを獲得し、世界で1位、2位を争う立ち位置にある。今後、有機ELサイネージの日本市場への積極的な投入を行なっていく」(斎藤氏)。そして「これまでのLCDサイネージではできなかった課題を解決し、ユーザーの空間にLGの持つ有機ELデジタルサイネージで新たな価値をクリエイトする」とした。