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鉄腕アトムが対話型ロボットに。ドコモ、VAIO、富士ソフト開発、雑誌付録で組み立て
2017年2月22日 15:19
講談社と手塚プロダクション、NTTドコモ、VAIO、富士ソフトの5社は、「ATOM」プロジェクトを共同で発足。その第1弾として、手塚治虫の「鉄腕アトム」をモデリングした、人工知能搭載の二足歩行ロボット「ATOM」を組み立てられる雑誌“コミュニケーション・ロボット「週刊 鉄腕アトムを作ろう」”の創刊が発表された。雑誌の創刊号は830円で、通常号は1,843円。パーツ付きの号は価格が異なり、トータル70巻で18万4,474円となる。
手塚治虫生誕90周年として発足した「ATOMプロジェクト」の発表会が22日に開催され、その中で明らかにされたもの。鉄腕アトムを生んだ手塚治虫を父に持つ手塚プロダクション 取締役 ヴィジュアリストの手塚眞氏と、講談社の野間省伸社長、NTTドコモ吉澤和弘社長、富士ソフト坂下智保社長執行役員、VAIO大田義実代表取締役が来場。
プロジェクト参加企業が協力したコミュニケーションロボットの「ATOM」が披露された。人工知能を備えた二足歩行のロボットで、自然な対話や、しりとり、なぞなぞの掛け合いなども可能。200万画素カメラで家族の顔を12人まで認証し、その日のスケジュールを教えてもらったり、絵本の読み聞かせなども可能。会話をするたびに親密度が高まるという。手足を動かしてラジオ体操などもできる。
サイズは、手塚治虫が描いた鉄腕アトムの約1/3となる身長約44cm、重量は約1.4kg。外装はABS。頭部や首、両脚、両腕など合わせて18軸の可動部分を持ち、サーボモーターで動作の位置や速度を制御する。会話をしている時は、両目の部分に備えたLEDが黄色や白に光り、白色の時に話しかけると会話できる。そのほか、ネット接続状態などの自己診断も行ない“調子が悪い時”に通知する機能も備える。
ほとんどの動作や会話を制御する中枢となるメインボードはVAIO製。シングルボードのRaspberry Pi 3(Model B)も使用している。ネットワーク機能はIEEE 802.11b/g/nの無線LANを搭載。消費電力は最大46.8W。5,800mAhのリチウムイオンバッテリを内蔵する。
胴体の部分に2.4型のタッチパネル液晶を搭載。モノラルスピーカーを内蔵し、子供への絵本の読み聞かせや、動画/音楽再生などに対応。ユーザーに合わせて、おすすめの動画コンテンツを紹介するといった機能も備える。
雑誌は4月4日から'18年9月にかけて毎週火曜日に発売。全70巻構成で、パーツ付きの“高価格号”に部品を同梱する。雑誌の解説などを読みながら、約1年5カ月をかけて、購入者がロボットの「ATOM」を組み立てられる。「ドライバー1本で組み立て可能」としており、第2号にプラスドライバーや作業用手袋も同梱。
雑誌の創刊号は830円で、通常号は1,843円。パーツ付きの号は価格2,306円~9,250円。全70巻に渡って刊行され、トータルで約18万円となる。組み立て済みセットも用意し、価格は212,900円。
同プロジェクトにおいて、VAIOは電気系統メインボードなどの基板実装を担当、NTTドコモがスマートフォンに採用されている技術の「自然対話プラットフォーム」を提供する。また、コミュニケーションロボットの「PARLO」を手掛ける富士ソフトが設計を担当した。ATOMの声は、'03年版アニメを担当している声優・津村まこと。
組み上がった完成品の形で購入したい人に向けて、VAIOが組み立て代行サービスも行なう。同社がかつてソニーのロボット「AIBO」を製造していた長野・安曇野工場において、これまでの組み立て技術を活かして提供されるという。送料は無料。
「Amazon Echoの利便性と真逆」、家族の一員に。ドコモやVAIOなどの技術が結集
講談社の野間省伸社長は、企画から3年を経て立ち上げたというプロジェクトの内容を説明。「家族の一員となるロボット。手塚先生が言うところの“人類とロボットの共存のきっかけ”」として普及を目指す考えを示した。
手塚プロダクション 取締役 ヴィジュアリストの手塚眞氏は、父・手塚治虫による1951年「アトム大使」のデビューから、1952年の「鉄腕アトム」連載、初のテレビアニメ化などを振り返り、当時“50年後の未来を考えて作られた”というオリジナルの鉄腕アトムに対し、「いよいよ本当のロボットの世紀が来る。まだ空も飛べないし、10万馬力もないが、未来に向けてどんどん進化していくプロジェクト。日本から世界に向けて、平和の大使となっていくことを願っている」との想いを語った。
ATOMにおいて「自然対話プラットフォーム」を提供しているNTTドコモの吉澤和弘社長は、スマートフォンの対話エージェントサービス「しゃべってコンシェル」がこれまで累計で17.2億回利用され、その基盤技術やノウハウを活かして同プラットフォームが開発されていることを紹介。その中から、会話の意図を汲み取る「意図解釈」や、あらかじめ設定されたシナリオに沿って会話する「シナリオ対話」、ニュースや天気などのWebコンテンツを会話の中で紹介する「外部コンテンツ連携」が活用されることを説明した。
高齢者福祉施設などで700台以上が採用されているコミュニケーションロボット「PALRO」を手掛けている富士ソフトがプロダクトリーダーを担当。ATOMのロボティクスや、人工知能、アプリケーションの設計開発を行なった。同社が約10年に渡って研究開発してきたAI/ロボティクス技術を搭載したPALROを元に、全ての専用デバイスを新規に開発。滑らかで、違和感のない動作を実現したという。富士ソフトの坂下智保社長執行役員は、「コミュニケーションロボットのPALROで培ったテクノロジーとノウハウをATOMに注いだ。長年の研究開発と実践の場での英知を結集している」と自信を見せた。
電気系統メインボードなどの基板実装(製造)を行なったVAIOは、ソニーのAIBOなどの製造で実績を持つ安曇野工場で組み立て代行を行なうことを説明。VAIOの大田義実代表取締役は「プロジェクトを知り尽くした安曇野のエンジニアが、一台一台作る。私も、自分用と自分の孫に最低2台購入する」とした。
ATOMプロジェクトのリーダーを務める講談社の奈良原敦子氏は、「いくらAIが飛躍的に進化したといわれる'17年の現代といっても、手塚先生の描いた鉄腕アトムには遠く及ばない。しかし、このATOMは現代の科学技術の進化に合わせ、会話や機能も進化するロボット。AI進化を家庭で体験できる」と紹介した。
同社は、「どんなロボットが現代に求められているか」という25~65歳の男女にインターネットでアンケート調査を実施。最も多かった回答が、「会話やコミュニケーションできる機能」だったことから、「家にいつもいてくれるロボットに人々が求めるのは、Amazon Echoに代表されるような、徹底した利便性を追求したものとは真逆の、友達や家族に求める対話や癒しという側面。それがATOMというロボットキャラクターを実現しようと考えた原点」と説明。ATOMの持つ様々な機能の中から、歌と踊りの“アトムRAP”や、人の見た目から判定する“年齢当てクイズ”も披露した。