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8Kにも対応する360度VR映像をスマホで、新会社NTTテクノクロスがソリューション公開
2017年4月12日 15:25
NTTソフトウェアとNTTアイティは、音声・映像などのメディア処理やAI技術を活用したソリューション事業を強化するため合併。4月1日付で新会社のNTTテクノクロスを発足した。また、NTTアドバンステクノロジの音響・映像に関する事業も統合、スタジアムなどで撮影した360度映像から一部を切り取り、手元のスマートフォンでVR視聴するシステムなど、シナジーを活かしたソリューションを企業などに向けて展開していく。
8Kにも対応した360度映像VR配信システム
3社の強みをかけ合わせたソリューションシナジーの1つとして紹介されたのが、360度映像から任意の部分を切り出し、スマートフォンで視聴するシステム。NTTアイティが手がけていた、映像や静止画に電子透かしとして情報を埋め込み、スマホのカメラで読み取る「Magic Finder」技術を使い、視聴者がテレビ放送やネットの動画配信映像にスマホのカメラを向けると、360度映像配信のアドレスへとジャンプし、アプリからVR映像が楽しめる。これにより“テレビの映像の中に入っていくような”サービスが展開できる。
VR映像の視聴部分には、NTTアドバンステクノロジが作った「パノラマ超エンジン」を利用する。360度映像の配信は、視聴者がその一部分を見た際も、高解像度で表示できるようにするためには、4Kなど、高解像度な360度映像を元映像として使う必要がある。だが、高解像度な映像の配信には帯域が必要となってしまう。
この問題を解決するのが「パノラマ超エンジン」。例えば4Kの360度映像を配信する際、視聴者は常時、引きの画角で全体をぐるぐる見回しているのではなく、興味のある一部分を止まって注視するという行動に注目。注視している視界(90度程度)の映像は720p程度の解像度で、看板などの文字が見えるクオリティで配信。その際、視界の外の、見ていない部分の映像のレートを大幅に落とす事で、4Kの360度映像でも約3Mbpsで配信可能とし、無線LANを使わず、スマートフォンのLTEでも利用可能としている。通常の4K/360度映像の配信には、MPEG-4 AVC/H.264などで圧縮した場合でも12Mbps程度は必要となるため、約4分の1となる。
技術的には8K/360度映像にも対応でき、その際でも約6Mbpsに収まるという。8K映像からフルHD解像度で切り出して表示したり、ズームしていって8Kのドットバイドット映像を見せるといった事も可能。2台のカメラを使って3D VR映像を配信したり、1台の映像をスマホ側の表示アプリで擬似的に3D表示する機能も備えている。
パラメータの設定によって、解像度やビットレートなど、柔軟な対応ができるほか、360度撮影を行なう事業者と組んで、ワンストップでクライアントの要望に応えられるという。SDKも提供し、クライアントが用意するアプリで、こうした機能を利用するといった使い方もできる。
2020年度にNTT外からの売り上げを50%超に
合併した3社は、いずれもNTT研究所と関連した事業を行なっており、NTTアイティでは研究所の技術を使いながら、市場ニーズも盛り込んだ製品の内製を中心に発展、販売チャンネルを活かした拡販も実施。NTTアドバンステクノロジでは、ソフトとハードを組み合わせたビジネスを構築、NTTソフトウェアではセキュリティやクラウドなどの基盤構築を強みとしていた。
一方、市場では2020年に向け、自動運転や高速回線を活かした高臨場映像配信、医療、農業などでICT(Information and Communication Technology)を活かしたサービスが進化している。これに対応するため、3社でそれぞれに分担していたNTT研究所の映像・音声などのメディア処理、AIなどの技術を結集。3社の強みをかけ合わせ、こうした技術をワンストップで蓄積・活用するのがNTTテクノクロスとなる。
NTTテクノクロスでは従来と同様に、NTT研究所と連携、研究試作を受注して開発を行ない、それを市場に展開。得られた知見を研究所へとフィードバック。新たな提言なども行なう。これを1つの柱としながら、さらに「新ソリューション創出」、「統合契機の新たなシナジー」の2つも柱に加え、3本柱を中心に事業を運営していく。
事例の1つとして、研究所のAI技術を活用し、企業のコールセンター向けソリューション「フォーサイト ボイスマイニング」を開発。ユーザーからの電話と、オペレーターのやりとりを、音声認識技術でリアルタイムに文字化。そこから、関連するキーワードをAIが自動抽出し、バックヤードにあるFAQシステムから、参考になる情報を探し、オペレーターの画面に表示。それをベースに、オペレーターが新人であっても質の高い顧客サポートができるという。
2つ目の柱である「新ソリューション創出」では、前述の360度映像配信や、ロボットを用いたソリューションも提供。NTTテクノクロスが音声認識、音声合成、インテリジェントマイクライブラリなどの技術を提供、他にも、NTTグループ各社が音声対話、質疑応答、対話制御などの技術を盛り込み、共通基盤として「corevo」を開発。これを、NTTドコモが高齢者健康支援に、NTT東日本が地域振興といったように、各社が活用している。
NTTテクノクロスでは、corevoと接続するコミュニケーションロボットなど、様々なデバイスを、マイクロソフトのPowerPointで簡単に操作できるソリューションを開発。例えば、レストランがランチの写真を撮影し、料理の説明を書き込んだPowerPointを作成。corevoにアップロードすると、ショッピングモールの案内所などに設置されたサイネージディスプレイやタブレットに料理のメニューや写真が表示され、案内ロボットが書き込んだ内容を合成音声で喋るなど、プログラミングなどができない人でも、店舗/観光案内、製品紹介を簡単に作成できるという。
2020年に向け、地方創生に向けた取り組みが加速する中、多言語サイネージや、ロボットを使ったコミュニケーションの強化、VRを使った新しい映像体験などを組み合わせ、高品質な“おもてなし”実現に寄与できるという。
こうした施策を踏まえ、NTT外の市場からの売り上げを増加させる。中期経営計画では、2017年度の計画は売上高425億円の内、NTT外の市場からの売り上げが185億円だった。利益は12億円。これを、2020年度計画では売上高500億円、NTT外からの売り上げを50%を超える250億円と掲げており、営業利益は22億円を見込んでいる。
串間和彦社長は、「NTTテクノクロスは社員1,800人で発足した。請負の仕事をこなすだけでなく、新しいサービスをお客に提供するにはどうすればいいのか、知恵をめぐらし、それを世に出して、評価を受ける姿勢を持って欲しいと社員に伝えている。1,800人は、ベクトルを合わせるのにちょうどいい規模。風通しよくし、一体感持っていけるし、相当規模の開発もできる規模。社会に貢献し、お客様とともに躍進していきたい」と抱負を語った。