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ジェームズ・キャメロン監督が3年ぶり来日。アバター最新作は「ただ感じてほしい」
2025年12月11日 11:10
映画「アバター:ファイヤー・アンド・アッシュ」の公開に先駆け、都内でジャパンプレミアイベントが開催。監督を務めたジェームズ・キャメロンが3年ぶりに来日し、最新作への想いを語った。イベントには映画監督の山崎貴、俳優の宮世琉弥がゲスト出演し、トークセッションも行なわれた。
映画「アバター:ファイヤー・アンド・アッシュ」は、全世界歴代興行収入ランキング第1位の「アバター」、第3位の「アバター:ウェイ・オブ・ウォーター」に続く、シリーズ第3弾。来週12月19日から全国の劇場ほか、IMAX、Dolby CInema、4DXなどのプレミアムラージフォーマットで上映が開始される。配給はウォルト・ディズニー・ジャパン。
拍手で迎えられたキャメロン監督は、「こんにちは!」と日本語で挨拶をしながら登場。
先日のワールドプレミア後、米国の大手メディアから最新作に対し絶賛の声が寄せられていることについて聞かれると、キャメロン監督は「『アバター:ファイヤー・アンド・アッシュ』では、(主人公である)サリーの一家が様々な危機に晒されます。サリー家の長男の死の数週間後から始まるのですが、残されたキッズたち……ロアクやキリ、トゥクらの視点でストーリーが進んでゆくと同時に、彼らの成長や葛藤など“家族の物語”が描かれます」と内容を紹介。
そして「こうした家族の物語は、言語や国を超えて世界共通のものです。もちろん、アバターシリーズに付きもののアドベンチャーや見たことの無い美しい世界もたくさん登場するのですが、やはり家族の物語、登場人物に共感するような部分が、観た方に伝わったのではないかと思います」と反響の理由を話した。
3作目のおススメシーンについては、「作品は、曖昧であったり、すごく難しい物語に作っていたりはしていません。皆さんには純粋に、キャラクターと一緒に冒険の旅に出てもらいたいと思っていますから、内容についてはあまり触れない方がいいかなと思います」とコメント。
「ただ、1つだけお伝えするとすれば……“キリ”を是非チェックしてもらいたいですね。15歳のキリを演じているのは、SF好きの方ならご存じのシガーニー・ウィーバーです。撮影し始めた時、彼女は72歳。撮影は1年以上に及びましたが、声から顔の表情、仕草まで全ての面でキリを演じています。今作ではキリの秘密も明かされるので、楽しみにしてください」と語った。
イベントには、映画監督の山崎貴、俳優の宮世琉弥が特別ゲストとして参加。3名によるトークセッションが行なわれた。
キャメロン監督作品のファンであるという宮世は、「今日キャメロン監督にお会いできて本当に光栄です。最新作は映像美、役者の芝居、ドラマ、そしてアクションも素晴らしく、僕の人生の中で最高峰のクオリティでした。この映画には家族愛や環境問題など、多くのテーマが込められており、もっと多くの方に届いてほしいです」と、仕上がりを絶賛。
イベントのために最新作「ゴジラ-0.0」の撮影を切り上げてきたという山崎監督も「技術的に凄いところは数えきれませんが、何が一番凄いか?というと、CGで描かれているキャラクターたちの魂がキチンと見えること、伝わってくること。キャラクター達はみな複雑な想い、葛藤があり大きな流れの中に飲み込まれていく。とても壮大でありながら、とても小さなファミリーの話でもある。もう泣かずにはいられない魂の物語が出来ていると思いました」と評した。
トークセッションでは、宮世からキャメロン監督へ、質問が投げかけられた。
宮世は「キャストの演技は本当に素晴らしく完璧なものでしたが、それをパフォーマンスキャプチャーに落とし込むうえで、人間味をどのような塩梅で活かし作ったのか」と質問。
この質問に対して、キャメロン監督は「1作目は新しい映画の形を作れたという自負はありましたが、もっと(リアルなCG表現が)できるはずだとも感じていました。というのも、出演者はシガニー・ウィーバーやケイト・ウィンスレット、サム・ワーシントン、ゾーイ・サルダナといった世界最高峰の、それこそアカデミー賞にノミネートされるような俳優たちです。私は彼らのすべてを、100%余すことなく表現したかったのです」と明かした。
「2作目を皆さんにお届けするまでの5年の間、最も時間を費やしたのが、フェイシャルパフォーマンスをいかに完全にキャプチャするか? というリサーチと実現のための技術開発でした。脚本を書いて役者に渡して、その解釈は彼ら彼女らに委ねるわけですが、表情は1年以上をかけてキャプチャーします。撮影やカメラワークはその後に行なうのです。通常の方法とは異なる、少し奇妙なプロセスですが、だからこそ特殊でユニークな表現が生まれるのだと思います」
「観客の皆さんは、美しい風景であったりクールなキャラクターを観るだけでなく、“一緒に旅”へ出ていただくわけです。身長3メートルの青い肌のキャラクターであっても、演じているのは人間の俳優です。私はフェイシャルキャプチャーという作業が本当に大好きなのです」
最新作のVFX映像を見ての感想を聞かれた山崎監督は、「ちょっと半端ない、というのが正直な感想です。ストーリーに感動している自分と、使われている技術の凄まじさとその手間を目の当たりにして、『もう本当に勘弁してほしい』と感じましたね」と吐露。
「例えばバシャっと水が跳ねる描写も、ハイフレームレートでブレずに水滴がクリアだから本当に宙に浮かんで見えるし、炎も輪郭を保った状態で揺らめいている。エモーショナルな部分に直接訴えかけるような映像を作るために、最新技術を使っているところが素晴らしいと思いました」
「それから“前に飛び出して驚かせる”のがこれまでの3Dでしたが、『アバター』以降の3Dは画面の奥側に世界が展開されるようになりました。今日これから映画を観る方はパンドラの風景を眺めることになるわけですが、アバターではパンドラという異世界を、目の前に展開するために3Dが使われている訳です。技術が物語に完全に寄り添って物語に仕えている、という点が本当に素晴らしいところだと思っています」と語った。
発言を聞いたキャメロン監督は「私自身、山崎監督の作品を拝見し“ストーリーテリングのためにVFXを使っている”という点に心を動かされました。撮影中だという『ゴジラ-0.0』も大変期待しています。それから……もし(撮影が)遅れるようでしたら、セカンドユニットで入りますので是非お声がけください(笑)」とコメント。
山崎監督は「そっち(セカンドユニット)の方がいいシーンが出来てしまって、僕の立場が無くなる可能性が大いにあります……(苦笑)」と答えていた。
イベントの最後、キャメロン監督から日本のファンに向けてメッセージが送られた。
「これは日本の観客に限らず、世界中の方々にお伝えしたいのは、『アバター:ファイヤー・アンド・アッシュ』を観る時は、ただ感じていただきたい、と思います。そして自分に、家族に、あるいは自分の人生に、何処か繋がりを感じていただければ嬉しいです。少しでも繋がる、自身と共感できるところがきっとあると思います。それこそが私たちがこの映画を作った理由でもあるのです」
「この作品が過去作と同じように多くの皆さんに受け入れられたならば、映画というのは言語や宗教、国というのは関係がない、人間というのはやはりみな同じで、誰もが希望や夢、恐れる心、愛などを持っているのだ、ということを改めて感じることができると思います」
「私もかなりの人生を生きてきた方ですが、本当に今ほど世の中が冷たく、怒りが溢れている時はないと感じています。だからこそ、今この映画を作りたいと思ったのです。我々人間がどういうもので本来あったのか? を思い出せるために。今日はありがとうございました」










