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Hulu、5月17日に全面リニューアル。モバイルのスポーツ/ライブ中継や1080p対応

 映像配信サービスの「Hulu」は、5月17日に動画配信システムを全面リニューアルし、モバイル対応を強化する。これまで、PCのみでの視聴に限定されていた音楽ライブやスポーツ中継、FOXチャンネル、BBCチャンネルのリアルタイム配信をスマートフォンやタブレットで視聴可能にする。

 当初2月のリニューアルを予告し、その後5月以降と延期されたが、今回リニューアル日時が正式決定した。リアルタイム配信チャンネルは、「FOX チャンネル」、「ナショナル ジオグラフィック チャンネル」、「Baby TV」、「ジャイアンツ LIVE ストリーム」、「スポーツ中継」、「BBCニュース」、「音楽ライブなどイベント」。

リアルタイム配信のスマホ対応で、スマホから巨人戦
リアルタイム配信コンテンツ
リニューアル後の画面

 なお5月17日時点では、Apple TVやAndroid TVなどのテレビデバイスはリアルタイム配信に対応していないが、「開発スケジュールの問題。今後対応を検討する」という。

 インターフェイスも改善、ウェブサイトやモバイルアプリ、TVやゲーム機などの各種リビングルームデバイス毎に最適化した。特に日本で利用率の高いiPhoneアプリを一新しており、1画面の表示コンテンツ数を増やし、他のデバイスに近いインターフェイスとした。

iPhoneの画面を一新。左が従来の画面、右がリニューアル後
Androidのホーム画面
iPadのHulu
Apple TV

 また、日本市場向けに絞り込み機能など検索を強化。公開年代やジャンルなどでの絞込に対応。さらに、コンテンツ名だけでなく、人名検索に対応した。加えて、映像コンテンツに詳しい、Huluスタッフによる「特集」も強化し、「500本のホラーを見た編集部Oがオススメする……」といったトピックやテーマごとの作品探しが可能となる。

検索機能を強化。年代でも探せるように

 画質も強化し、最高1080pまで向上。モバイル向けの配信では、[自動]に加え、最高/高/中/低から画質モード選択が可能になり、約0.9GB/時間など、通信量の目安も確認可能となった。

モバイルでの画質設定に対応

 システム側のコンテンツ管理も変更。従来は同一番組でも複数言語がある場合は、字幕版、吹き替え版が別のコンテンツとして表示されていた。そのため、ランキングなどでも字幕版、吹替版が分かれて表示されるなどの課題があったが、リニューアル後は1つのコンテンツを選んで、字幕や音声を選択する形となる。

 加えて「マルチプロフィール」を導入。1つのHuluアカウントで、複数のプロフィールを設定可能になり、家族それぞれの嗜好にあわせたレコメンドなどが行なわる。プロフィールにパスワードロックをかけて、本人以外が使えない設定も可能。

マルチプロフィール対応

 キッズ対応も強化。キッズ専用のプロフィールを用意し、年齢制限コンテンツが再生されることが無くなるようにする。また、サービス全ての経路でSSL(暗号化通信)を採用する。

キッズ

 なお、コンテンツのダウンロード対応については、「(コンテンツの)契約もあり、全コンテンツでの対応は難しいが、考えている」(HJホールディングス 太田正仁事業戦略室室長)とのこと。4KやHDRなどの高画質化については、「ユーザーニーズを見ながらサービス設計しているが、競合の(4K)加入状況からもいまはニーズが少ないと判断している。スペックを追求するより、ワンプライス(933円)のシンプルなサービスを指向している。リニューアルで様々な検討を行なったが、ニーズを優先し、機能はかなり絞った。ただし、ニーズが高まれば、すぐに対応できる体制にしている」とした

日テレ統合後3年「日本のHulu」に。リアタイは「音楽」も

 Huluは、2011年9月に日本市場に参入したが、2014年に日本テレビが完全子会社化。日テレ100%子会社のHJホールディングスが運営している。こうした経緯から、これまでのHuluは、米国で開発したシステムに日本の機能を加える場合の制限が多く、スピードの面でも弊害となっていたという。

 今回のリニューアルは、インターフェイスなど、ユーザーから目に見えるデザインや使い勝手においては「キープコンセプトで、今のユーザーが戸惑わないよう配慮した」とのことだが、配信を支えるシステムを一新。「日本主導のジャパンオリジナルHulu」(太田事業戦略室室長)に生まれ変わる。

自由度のため、動画システムを全面リニューアル
太田正仁事業戦略室室長

 HJホールディングスの於保浩之社長は、Huluの日本における沿革や、2016年12月現在で会員数が151.2万人に、配信コンテンツが4月現在で41,521本となったことを紹介。デバイス別のユニークユーザーについては、サービス開始当初はPCが多かったが、「いまはモバイルがトップでさらに伸びている」と紹介。そのため、モバイルにおけるリアルタイム配信対応を優先して開発したとする。

HJホールディングス於保浩之社長
Huluの会員数推移
デバイス別視聴UU

 リアルタイム配信は、巨人戦やウォーキング・デッドシリーズを最速配信する「FOXチャンネル」、ニュースの「BBCチャンネル」などが配信中だが、今後はニュースチャンネルを増やすとともに、音楽チャンネルの新設も計画しているという。

 スポーツストリーミングの「DAZN」などのサービスも増えているが、「Huluは専門店ではなく、百貨店。スポーツだけではなく、いろいろなコンテンツが揃っている場所にしていきたい。利用動向などをきちんと見ながら、コンテンツをそろえていく」と説明。また、日本テレビグループの強みを生かした調達も行ない、例として地方局と共同制作するアンジャッシュ渡部建によるグルメ番組「渡部の歩き方 グルメ王の休日」を紹介。地方だけで放送し、その後Huluで配信という座組で展開しており、金沢を扱った回は、同地域の視聴率14%と注目を集めたという。

 リニューアルの目的は、日本主導の開発体制の構築だが、それに加えて、近年高まりつつあるコンテンツホルダーからの権利保護強化という側面もあったという。リニューアル後は、Wiiやニンテンドー3DS/3DSLL、'14年以前の多くのテレビやレコーダなどでHuluが見られなくなるのも、こうしたコンテンツ保護の一環とのこと。

 また、民放各局やIIJが出資して設立した、配信プラットフォームの「JOCDN」については、リニューアル時点では利用せず、「今年度中の対応はない」とした。なお、リニューアル前後の15日17時から17日8時までは、新規入会と退会処理ができなくなるほか、リニューアル後はログインが必要となるため、利用中のログインIDやパスワードを控えておくよう呼び掛けている。

リニューアル時の注意事項