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パイオニア、約10万円の密閉型最上位ヘッドフォン「SE-MONITOR5」。MASTER1の技術投入

 オンキヨー&パイオニアイノベーションズは、パイオニアブランドの新製品として、ハイレゾに対応した密閉型のハイクラスヘッドフォン「SE-MONITOR5」を5月下旬に発売する。価格はオープンプライスで、店頭予想価格は10万円前後。

密閉型のハイクラスヘッドフォン「SE-MONITOR5」

 パイオニアのハイレゾ対応、オーディオ向けのアラウンドイヤーヘッドフォンは、ハイエンドの「SE-MASTER1」(実売25万円前後)と、「SE-MHR5」(実売19,800円前後)がラインナップされているが、両者の価格差は大きく、かつ「SE-MASTER1」が開放型である事から、その間を埋めるようなアッパークラスで、なおかつ密閉型のヘッドフォンとして「SE-MONITOR5」が開発された。「SE-MONITOR5」の重量は480g。

「SE-MONITOR5」の立ち位置

 製品名の「MONITOR」は、1960年に発売され、「ステレオミミー」の愛称で展開した「SE-1」や、バリアブルチャンバー方式を採用したオープンエアの「MASTER-1G」(1980年)、放送局向けモニターヘッドフォン「MONITOR 10」(1975年)などの流れを汲む“MONITORシリーズの復活”と位置づけられている。今後の製品名の展開としては「MASTER」が「ハイレゾ対応のハイクラスオープンタイプ」、「MONITOR」はハイレゾ対応のハイクラス密閉タイプと区別される。

かつての「MONITOR」が復活

 振動板には、独自開発のセルロースナノファイバーを採用。植物由来のセルロースを加工したもので、植物細胞壁の骨格成分をナノレベルまで細かくほぐすことで得られる繊維を使っている。高剛性かつ軽量であり、一般的な樹脂フィルム振動板と比べて適度に内部ロスもあるため、付帯音が生じにくいという。

独自開発のセルロースナノファイバーを使った振動板を採用

 自社開発のユニットで、サイズは50mm径。ホームオーディオのスピーカーで使われているユニットと同様に、振動板部分とエッジの素材が異なるフリーエッジ構造を採用しており、中央はセルロースナノファイバー、エッジにはエラストマーを採用。それぞれに最適な素材を選定することで、ハイレゾ音源に対応した広帯域再生と、クリアな音像、広い音場を実現したという。再生周波数帯域は5Hz~85kHz。出力音圧レベルは99dB。インピーダンスは40Ω。最大入力は1,000mW。

 ベース部とハウジング部の素材には、剛性の高いマグネシウム合金を採用。「クリアで締まりのある低音と、音源に忠実で“見晴らしのいい”空間表現力豊かな音を実現した」とする。

ベース部とハウジング部の素材には、剛性の高いマグネシウム合金を採用

 メインチャンバーとサブチャンバーの間に、アコースティックポートを設置。低域の再現性向上と遮音性の向上を図っている。メインチャンバーのハウジング内部にはディフューザーを設置。ドライバー背面からの音が拡散するとともに、ハウジング部の剛性を高めることで、自然な響きを実現した。

メインチャンバーとサブチャンバーの間に、アコースティックポートを設置
フロントバッフルに空いた通気孔。なお、写真は最終品ではないので上部の穴が2つ並んだ形状だが、最終仕様では1つの繋がりになる
ハウジングの通気孔

 「SE-MASTER1」の技術も多く取り入れているのが特徴。ドライバを背面から抱き込み、ベースに強固に固定するフルバスケット方式を採用。固定部品にもマグネシウム合金を使う事で、不要な共振を強力に抑制している。

ドライバを背面から抱き込み、ベースに強固に固定するフルバスケット方式

 ベースとハンガーとの連結には、ゴム部材を挟み、緩やかにつなぐ「フローティング構造」を採用。L側とR側の音の相互干渉を排除し、セパレーションを高めている。

ハウジングとハンガーとの連結にゴム部材を使う「フローティング構造」

 ケーブルは着脱可能で、ヘッドフォン側の端子は3.5mm。ケーブルは3本同梱。入力端子がアンバランスのステレオミニである3mのケーブルに加え、1.6mの短めのケーブルを同梱。さらに、バランス接続向けに、入力端子に2.5mm 4極プラグを採用した1.6mケーブルも付属する。バランスケーブルのピンアサインは、ハイレゾプレーヤー「XDP-300R」のアサインに沿ってる。

 いずれも独自のツイストケーブルで、ノイズの発生や外部ノイズの影響を低減。クリアな高音質再生を実現するという。

ヘッドフォン接続側は3.5mm、入力端子は3.5mmのステレオミニのケーブルに加え、2.5mm 4極バランスプラグのケーブルも同梱する
プラグのピンアサイン

 イヤーパッドもベロアタイプとレザータイプの2種類が付属。異なるつけ心地や、サウンドの違いも楽しめる。ケーブルを含まない重量は480g。

イヤーパッドもベロアタイプとレザータイプの2種類が付属
ヘッドバンド部

音を聴いてみる

 密閉型ハイエンド「SE-MASTER1」(実売25万円前後)に対して、「色付けのない、ハイスピードなサウンドで、開放型だけど低音もかなり出るヘッドフォン」という音の印象がある。「SE-MONITOR5」試聴の際にも、そのサウンドを思い出しながら装着したが、出て来る音は予想を良い意味で裏切ってくれる。

 「SE-MASTER1」との最大の違いは密閉型である事だが、低域がより派手に、強くなるという感じではない。中広域のシャープさ、分解能の高さが低域にも貫かれており、タイトで反応の良い、締まった低音だ。

 特筆すべきは、密閉型にも関わらず、音の広がりが豊かで「本当にコレ、密閉型だよな?」と、思わず指でハウジングを触ってしまうくらい開放感のあるサウンドだ。その点で、「SE-MASTER1」と近いイメージを受ける。バランス接続にすると、さらに広大な音場が広がり驚かされる。

 SE-MONITOR5ならではサウンドの特徴としては、ハウジングにマグネシウム合金を使っている事による、響きだ。色付けは少ない方向ではあるが、マグネシウム合金らしい、金属質だが、軽やかでソリッドな響きが感じられる。「キンキン」と高い音がおおげさに響くのではなく、しっかりと余計な鳴きを抑えた「コンコン」という音に近い。この響きが、再生音に清涼感を与え、音のトランジットの良さに、さらにシャープさを加えているように聴こえる。

 価格は2倍以上違うが、SE-MASTER1のようなサウンドを密閉型でも味わいたいという人にはピッタリ。密閉型であっても、開放感のようなスピード感、音場の広がりを味わいたいという人にも注目のヘッドフォンになるだろう。