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NHK、超薄型有機ELディスプレイ実用化へ前進。長寿命に適した材料の構造を特定

 NHKは11日、超薄型/軽量で持ち運べるフレキシブルディスプレイの実現に向けて研究開発を進めているリン光材料を使った有機EL素子において、長寿命化に適した材料の特徴を特定したと発表。これを新たな設計指針として提案し、フレキシブルディスプレイの実用化を目指す。

有機EL素子の構造と使用したホスト材料の分子構造

 NHKの研究では、通常の蛍光発光を利用した材料に比べて約4倍の発光効率が得られるというリン光材料を用いた有機EL素子の研究開発を行なっており、素子の長寿命化と低コスト化を進めている。今回、素子の中で光を発する発光層の材料の分子半径を調べ、長寿命化に適した材料の特徴を見出したという。

 有機EL素子の発光層は、電気エネルギーを作り出すホスト材料と電気エネルギーを受け取って発光するリン光材料で構成される。素子寿命が異なる複数の有機EL素子を用いて、ホスト材料の分子構造を調べた結果、最大分子半径が小さい材料ほど、長寿命であることが判明。これは、ホスト材料とリン光材料の中心間距離が小さい材料では、電流で生成した不安定な状態のホスト材料から電気エネルギーがより短時間でリン光材料に渡され、ホスト材料の劣化が小さいことを示しているという。

 今後は、この材料設計の指針により、これまで長寿命化が困難とされていた青色素子用のホスト材料を開発することで、高効率/長寿命なフレキシブルディスプレイの早期実用化を目指す。今回の研究成果は、5月11日にScientific Reports誌に掲載されている。

ホスト材料に依存した素子寿命と最大分子半径
ホスト材料Aホスト材料Bホスト材料Cホスト材料D
連続駆動寿命1,260時間5,800時間11,000時間20,000時間
最大分子半径1.51nm1.42nm1.31nm1.22nm