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マランツ、旭化成DAC搭載など内部を刷新した105mmの薄型AVアンプ「NR1608」

 ディーアンドエムホールディングスは、マランツブランドの薄型AVアンプ「NR1608」を6月中旬に発売する。価格は9万円。高さ105mmながら、Dolby AtmosやDTS:Xに対応。DACやプリアンプ回路も一新した。カラーはブラック。

左が薄型AVアンプ「NR1608」。右のAVプリ「AV8802A」と比べると、薄さがわかる

 「NR1607」の後継モデル。最大出力100W(6Ω)の7chディスクリートパワーアンプを内蔵したAVアンプで、外形寸法440×376×105mm(幅×奥行き×高さ)の薄型デザインが特徴。出力や筐体サイズは従来と同じだが、デジタル系、アナログ系どちらの回路もブラッシュアップを加え、音に磨きをかけたという。

薄型AVアンプ「NR1608」

 オブジェクトオーディオのDolby AtmosやDTS:Xに対応。5.1.2ch構成、5通りのスピーカー配置に対応。フロントハイト、トップフロント、トップミドル、フロントドルビーイネーブルド、リアドルビーイネーブルドのいずれかをオーバーヘッドスピーカーとして使用可能。

 デジタル系で大きな変更はDACで、従来のTIバーブラウンから、上位モデルの「SR7010」でも採用している旭化成エレクトロニクス製の32bit/8ch DAC「AK4458VN」を新たに搭載。SN比と分解能に優れ、「よりきめ細かなサウンドを実現した」という。

旭化成エレクトロニクス製の32bit/8ch DAC「AK4458VN」を新たに搭載

 クアッドコアのDSPである、シーラスロジックの「CS49844A」も搭載。DSP自体は従来モデルと同じだが、アルゴリズムを刷新。Dolby Atmosなどのオブジェクトオーディオに対応しながら、音場補正などの処理も同時に利用できる。

シーラスロジックの「CS49844A」

 ネットワーク音楽再生機能も備えており、自社開発のネットワークモジュールを搭載しているが、その世代も一新。処理速度や安定性が大きく改善し、ストリーミング音楽再生やネットワークラジオがより便利に利用できるという。

 DSPやネットワーク、USBなどのデジタル回路への電源供給には専用のトランスを使用し、アナログ回路との相互干渉を排除。デジタル電源回路の動作周波数を通常の約2倍に高速化し、スイッチングノイズを再生音に影響の及ばない可聴帯域外へシフトさせている。

デジタル系の基板

 シールドにより回路間のノイズの飛び込みを抑え、電源ラインに流入するノイズはデカップリングコンデンサーを用いて除去。挿入するコンデンサの種類や定数はサウンドマネージャーによる試聴を繰り返し最適なものを選定。基板やシャーシを固定するビスやワッヤーの種類を使用する箇所に応じて変更するなど、細かなノウハウも活用されている。

 プリアンプ回路も一新。従来は出力セレクターとボリュームが1チップに統合されたデバイスを使っていたが、NR1608ではJRC(新日本無線)と共同開発した、個別の高性能ボリュームICと信号セレクター回路を新たに採用。これにより信号経路を最適化でき、SN比を改善したという。

プリアンプ回路も一新

 パワーアンプ部は7chフルディスクリート構成。サラウンドバックを含む全7チャンネルを同一構成、同一クオリティで、チャンネル間の温度差に起因する特性のばらつきを抑えるために、パワーアンプをヒートシンクに一列にマウントするインライン配置を採用。つながりの良いサラウンド再生を追求した。

パワーアンプをヒートシンクに一列にマウントするインライン配置を採用

 ディスクリート構成であるため、回路設計およびパーツ選定の自由度が高く、Hi-Fiアンプと同様に音質チューニングを徹底。新しいDACやプリアンプ回路とのマッチングを図るために使用パーツ、定数を見直している。

 接続するスピーカーのインピーダンスは最低4Ωまで対応。サラウンドバックおよびオーバーヘッドスピーカーを使用しない場合には、フロントスピーカーをバイアンプ駆動したり、2組のフロントスピーカーを切り替えて使用することも可能。

 こうした取り組みについて、サウンドマネージャーの尾形好宣氏は、「AVアンプはWi-FiやBluetooth、スイッチング電源などが1つの筐体内にあり、悪条件が同居している。そのため、いかにノイズを低減していくかが大事。シールドされたケーブルや、シールド板で直接電波を遮断、ガスケットという導通改善デバイスなどを活用する。半導体デバイスにも電源供給するが、その電源ラインのノイズ取りも徹底。デカップリングコンデンサをいろいろな種類のものを使い分け、カットアンドトライしながら音質も練り上げている。外装にも、取り付けに使うビスに、菊座のワッシャーを追加して高周波を変化させるなど、(10万円以下の製品で)コスト的にはキビシイが、そこは今まで積み重ねたノウハウでカバーしている」という。

サウンドマネージャーの尾形好宣氏

 専用マイクを使ったオートセットアップ機能「Audyssey MultEQ」も搭載。最大6ポイントでの測定結果をもとに、スピーカーの距離、レベル、サブウーファのクロスオーバー周波数を最適な状態に自動設定する

 スピーカーとリスニングルームの音響特性も測定し、時間軸と周波数特性の両方を補正。ルームアコースティックを最適化する。測定マイクを設置するスタンドも付属する。

 ドルビーイネーブルドスピーカーを利用する際は、Audyssey MultEQの自動補正に加えて、天井までの高さをAVアンプに入力する事で、補正の精度をさらに高める事ができる。

 「Audyssey MultEQ Editor」というアプリも2,400円で用意。AVアンプ単体では設定できない詳細な調整項目にもアクセスできるもので、部屋に起因する音響的な問題をより精密にカスタマイズして対応可能。インストーラーやホームシアターのエキスパートの使用を想定している。

 HDMI入力は8系統、出力は1系統装備。HDMI端子はすべてHDCP 2.2に対応。HDMI入力は、4K/60pまでサポート。4K/60p/4:4:4/24bitや、4K/60p/4:2:0/30bit、4K/60p/4:2:2/36bitもサポート。広色域表現BT.2020のパススルーにも対応する。

 HDRもサポート。HDR10に加え、Dolby Visionとハイブリッドログガンマもサポートする。ただし、ハイブリッドログガンマは今後のファームウェアアップデートで対応予定。

 セットアップアシスタント機能も充実。テレビ画面に表示されるガイドに沿って作業するだけで、初期設定が完了する。センタースピーカーやフロントスピーカーの位置、接続する端子の場所などといった情報をイラストを交えて紹介。スピーカーケーブルの剥き方、ネットワークの接続、入力機器の接続などもガイドしてくれる。

 リモコンには、4つのスマートセレクトボタンを搭載。入力ソース、音量レベル、サウンドモードの設定などをボタンに記憶。AVアンプの操作に詳しくない人でも、手軽に利用できるとする。

 Ethernetに加え、2.4/5GHzデュアルバンドのWi-Fi(IEEE 802.11a/b/g/n)にも対応。ネットワークオーディオ機能も利用可能。DSDは5.6MHzまで、WAV/FLAC/AIFFは192kHz/24bit、Apple Lossless(ALAC)は96kHz/24bitまでサポートする。FLACやWAVのほか、DSD、AIFF、ALACのギャップレス再生も可能。AirPlayにも対応。インターネットラジオにも対応する。

 フロントUSB端子から、USBメモリなどに保存した音楽ファイルの再生も可能。Bluetoothにも対応し、iOS/Androidスマートフォンなどの音楽をワイヤレスで受信して聴くことも可能。

 デノンが展開しているワイヤレス・オーディオシステム「HEOS」にも対応。「HEOS」アプリを使い、ストリーミング音楽配信サービスやインターネットラジオ、LAN内のミュージックサーバー(NASなど)や、USBメモリに保存した音源の再生操作が可能。Bluetooth再生にも利用できる。

 音楽ストリーミングサービスは、新たにAWAやSpotify、SoundCloudなどに対応。インターネットラジオの検索にはTuneInを利用する。

 iOS/Android向けのリモコンアプリ「Marantz 2016 AVR Remote」も用意。無線LAN経由でスマートフォン/タブレットから、電源入力やサウンドモード切り替え、ボリューム操作などが可能。AM/FMラジオチューナも搭載。ワイドFMの受信もサポートする。

 入力端子は、HDMI×8、コンポーネント×2、コンポジット×3、アナログ音声×3、光デジタル音声×1、同軸デジタル音声×1。出力はHDMI×1、コンポーネント×1、コンポジット×1、2.2chプリアウト×1、ゾーンプリアウト×1、ヘッドフォン×1を装備する。

 消費電力は250W。重量は8.3kg。

内部

 マーケティンググループの高山健一氏は、スリムデザインのAVアンプとして、NRシリーズがユニークなポジションを築いてきたことを紹介。さらに、同シリーズの出荷実績が右肩上がりで成長を続けている事を紹介。「AVレシーバの市場自体はのびているわけでないので、(スリムなAVアンプという)トレンドがのびている」と分析。

使用イメージ

 同時に、NRシリーズを通常のAVアンプではなく、「リビングの生活を豊かにするマルチコントロールセンターをコンセプトにした製品。良い音で映画を見る事が基本ではあるが、テレビやSTB、PC、スマートフォン、タブレット、ゲーム、NASに保存した音楽など、様々なものと連携し、そのサウンドが楽しめる。時代に合わせてコンセプトを拡大していった製品でもある。105mmというリビングに寄り添うカタチで、導入できるのが重要な要素」と説明。

 さらに、「薄いからといって妥協があっては、ロングラン製品にはなっていない。音質に対して、妥協しているところは何一つない。“純粋さの追求”というマランツサウンドは維持している。Hi-Fiであろうが、AVアンプであろうがマランツとしての音に対するアプローチは変わらない。DSPで様々な処理をして音作りするブランドもあれば、マランツは膜の無い、音の純粋さの追求している。“サイズはパフォーマンスの証ではない”」とし、NRシリーズに込めた想いを紹介した。