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NTT、3Dメガネ無しの人にはクリアな2D映像が見える新3D映像技術

 日本電信電話(NTT)は、3Dメガネをかけた人には3D映像が見え、かけていない人にはクリアな2D映像が見えるステレオ映像の生成技術を開発した。2D画像内に3D画像を隠して埋め込む技術で、3Dメガネ無しで見た場合でも画質が低下しない世界初の技術だという。

新技術によるステレオ画像生成の流れ

 一般的なステレオ画像は、少し離れた視点から撮影した2つの画像を、左右の眼に別々に提示。2つの視点から見たときの画像間の差異(視差)に基づき、見た人間は奥行き(3D情報)を知覚する。

 しかし、専用の3Dメガネをかけずに見ると左目用と右目用の画像が重なり合ってぼけてしまい、画質が大きく低下。さらに、複数の視聴者の中に一人でも3Dを楽しめない人が含まれていた場合、その人だけに向けて2D表示に切り替えるといった事もできない。

3Dメガネをかけずに見た時の画質比較。左が従来のステレオ画像、右が新たな技術を使ったもの。画質の低下が抑えられている

 NTTコミュニケーション科学基礎研究所が新たに開発したのは、人間が奥行きを知覚する際に働く視覚メカニズムの科学的知見を応用し、2次元表示との完全互換性をもったステレオ画像生成技術。

 両眼のちょうど中間の視点から見た時の2D画像に対し、人間に奥行き情報を与える働きをする視差誘導パターンを加算減算することで、奥行きを近似的に作り出し、左目用/右目用画像を生成する。位相の異なる2つの正弦波を足し合わせると、その中間の位相の正弦波になるという「単振動合成」の性質を応用している。

新技術で視差を生み出す仕組み

 左右画像同士を足し算すると、視差誘導パターンが打ち消されて完全に元の画像に戻り、3Dメガネをかけない人はクリアな2D画像が見られるという。メガネをかけた人には、視差誘導パターンの効果で、その画像に奥行きがあるように見えるという仕組み。

 具体的には、元画像の明暗の空間的な変化を1/4周期分ずらしたパターン(90度位相シフトパターン)を加算することで位置をずらし、左目用画像を生成。同様に、反対方向に1/4周期分ずらしたパターン(-90度位相シフトパターン)を加算することで右目用画像を生成する。

 こうしてできた左右画像間の位置ずれの差が、両眼立体視に必要な視差に対応。足し合わせるパターンの重みを操作することで位置ずれ量を変えられ、所望する視差を再現できるとする。左右画像を足し合わせて合成すると、位相シフトパターンのみが相殺され、元画像に戻る。例えば、2Dだけでは見分けにくい部分を見るときに、老眼鏡を使う感覚で3Dメガネを使う、といった使い方も可能。

 既存のステレオ画像を変換する場合は、入力画像を複数の空間周波数帯に分解した上で同様の処理を施す。シフトさせる位相量は、空間周波数によって変える必要がある。

 生成されたステレオ画像は、既存の3D提示装置で表示可能。「左右の眼に表示する二枚の画像は、厳密にはそれぞれの眼から見た画像とは異なりますが、再現できる視差の制限内であれば、従来法とほとんど区別できない3D画像として人間には知覚される」という。

 現在の3D対応テレビがそのまま利用できる事や、メガネ無しで見る2D画像の劣化をほぼ完全に無くす事、視差誘導パターンのみを打ち消すため、元画像のコントラストの圧縮が必須ではないといった利点がある。

 一方で課題として、従来のステレオ画像に比べて、3Dメガネで見たときに再現できる奥行き量(視差)に制限があり、大きな奥行きを正しく再現できず、また再現しようとすると画質の低下(ぎらつき)が生じるという。画像変換アルゴリズムのハードウェア化や、画像圧縮技術への応用も、今後の検討課題としている。