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NTT、動画配信の体感品質を最大化し通信量削減する制御技術

 NTTは19日、動画配信において、体感品質(QoE)に基づく動画品質制御技術を確立し、十分なQoEを保ちながら通信量を減らす実証実験に成功したと発表した。

NTTが確立した動画品質制御技術の概要

 モバイル通信環境で動画を視聴する際は、視聴品質の悪化とパケット料金の負担増が課題となる。NTTは、十分な視聴品質で見られずストレスを抱えるユーザーがいる一方、必要以上の視聴品質で通信量が増大し、負担となるユーザーも存在すると想定。この課題解決に向け、体感品質(QoE:Quality of Experience)をあらかじめ設定された目標値に近づけながら、なるべく通信量を少なくするビットレートを選択・制御する「動画品質制御技術」を確立した。

 通常の動画配信では、ユーザーが使う動画プレーヤーがサーバーに対して、視聴したい動画とその時のビットレート(画質)を指定して映像データをリクエストし、受信したデータを再生する。今回の実験システムでは、動画プレーヤーが映像データを受信する前にQoE制御エンジンに対して問い合わせ、それまでに受信した映像のビットレートや、視聴中に発生した再生停止時間などの情報を通知。QoE制御エンジンはそれらの情報とあらかじめ設定されたQoE目標値を用いて、次に受信するべき最適なビットレートを算出する。この流れを繰り返すことで、最適なビットレートの選択を可能にし、設定されたQoE目標値での動画視聴ができる。

 NTTぷららの「ひかりTV」のスマートフォンアプリ「ひかりTVどこでも」に、同技術を適用し、ユーザーのQoEを制御する実験を実施。QoEは1.0~5.0で数値化し、「最大QoE(5.0)を目標とする場合」と、「目標QoEを中程度(3.0~4.0等)に設定する場合」の2種類の配信設定で、300秒の動画を繰り返し視聴して測定。効果を確認した。

動画視聴時のQoEが決まる主な要素として、ビットレートと再生停止時間に着目

 QoE(5.0)に設定した際には、平均ビットレートが、2.0Mbpsから3.8Mbpsへ90%向上し、再生停止時間は12.4秒から9.0秒に38%削減できた。通常、ビットレートを向上させると、動画の再生停止時間は伸びるが、提案技術はユーザの通信品質を適切に予測し、QoEを最大化する制御を行なうことで、再生停止の発生を回避しながらビットレートを向上できたという。

 QoE目標値を中程度(3.0~4.0等)に設定した際には、平均ビットレートは1.85Mbpsから1.24Mbpsへ33%削減、平均再生停止時間も20.5秒から6.4秒へ68%削減した。「過剰な品質で配信される視聴を減らし、通信品質を適切に予測し再生停止の発生を回避することで、通信量を削減する最適な映像配信が実現できた」としている。

 NTTでは、2つの配信設定それぞれにおいて、目標とした配信技術の効果を確認。今後は対象ユーザーの拡大など、サービス展開に向けた検討を進める。同技術は配信サーバーやスマートフォンアプリへの軽微な修正で組み込めるため、各事業者と連携してユーザーの視聴体験向上や、サービス事業者のネットワーク利用効率化、コスト削減に貢献していくという。