小寺信良の週刊 Electric Zooma!
第1169回

ライカ×4? “ほぼほぼカメラ”を達成した「Xiaomi 15 Ultra」
2025年4月2日 08:00
カメラの新ジャンルを築いたスマートフォン
異論はあるとは思うが、スマートフォンはもはやカメラの新ジャンルとなったのではないだろうか。センサーは1つでレンズ交換していく一般のカメラの考え方ではなく、レンズとセンサーが一体化した単焦点カメラを複数台積むという、言うなれば「セットカメラ」的な考え方だ。ディスプレイは共通化し、強力なプロセッサで画像処理を行ない、通信機能でSNSにアップする。そういう新ジャンルのカメラと考えたほうが座りがいいようにも思う。
「Xiaomi 15 Ultra」は、ライカSummilux光学レンズ搭載カメラを4タイプ搭載したスマートフォンだ。公式サイト価格は、ストレージ512GBモデルが179,800円、1TBモデルが199,800円となっている。スマートフォンとしてはかなり高額だが、オリジナルLeicaのカメラなら1台も買えない。いやレンズ1本すら買えない価格である。それが4つも付いていると考えれば、破格に安い。いや安くはないのだが、そういう気がしてくる。
2月末にはハッセルブラッドと協業した「OPPO Find X8」をレビューしたところだが、こうした有名レンズ搭載のデジタルカメラが、スマートフォンという商品群になった途端に廉価で買えるというのは、悪くない話だ。
Xiaomi 15 Ultraに関する静止画カメラとしての性能は、僚誌ケータイWatchや筆者と西田宗千佳氏のメルマガでも触れられているところである。そこで本稿は、動画カメラとしての性能について検証してみる。
最新チップセットやAIも搭載したフラッグシップモデルのカメラは、一体どんな絵を出してくるのだろうか。さっそくチェックしてみよう。
背面にドーンとレンズ群が並ぶ
Xiaomi 15 Ultraは、シルバークローム、ブラック、ホワイトの3色展開。レトロなカメラスタイルに近い配色ということで、シルバークロームが人気のようだ。今回お借りしたのは、ホワイトモデルである。
ホワイトといっても単色ではなく、パール地のようなオフホワイトに大きなラインが入るという、エレガントな外観だ。そこにブラックの大きな丸い「島」があり、カメラが4つ埋め込まれている。上からメイン、望遠、超広角、そして横にあるのがウルトラ望遠である。
各カメラのスペックは以下のとおり。
カメラ | 焦点距離 | 倍率表記 | F値 | 画素数 | 光学手ブレ補正 |
超広角カメラ | 14mm | 0.6 | 2.2 | 5,000万画素 | × |
メインカメラ | 23mm | 1 | 1.63 | 5,000万画素 | ○ |
望遠カメラ | 70mm | 3 | 1.8 | 5,000万画素 | ○ |
ウルトラ 望遠カメラ | 100mm | 4.3 | 2.6 | 2億画素 | ○ |
センサーの型番が公開されているのはメインカメラだけで、ソニー製1インチセンサーの「LYT-900」を採用している。
ウルトラ望遠カメラの2億画素センサーが何なのか気になるところだが、スペックからするとSamsungの「ISOCELL HP3」ではないかと予想する。こちらは0.56μmの画素サイズだが、常に全画素で動くわけではなく、16画素を束ねて1画素として扱う場合は2.24μmの1,250万画素センサーとして動作するモードがある。
実際にウルトラ望遠カメラで静止画を撮影すると4,080×3,072であり、1,258,2976画素、すなわち約1,250万画素となるので、計算は合う。画素を束ねることでSNを稼ぐことができるので、100mm超望遠レンズとの組み合わせとして採用されたのだろう。
ただ撮影される画素数が2億画素ではないので、勘違いして「2億画素もあるならそこからトリミングすれば400mmぐらいになるのではウヒヒ」と思っている人もいるかもしれない。
一方動画においては8K解像度での撮影が可能だが、8Kには約3,300万画素必要になる。この時は4画素をまとめて1.12μmピッチの5,000万画素センサーにするというわけだろう。その辺の仕組みについては、メーカーから消費者に対してもう少し詳しく説明がされるべきではないかと思う。
動画撮影は、「ビデオ」と「プロ」モードの中にもう一つ「ビデオ」モードがある。プロモードの方は、露出やホワイトバランスがマニュアルで決められるほか、LOG撮影もできる。
撮影可能な動画タイプは以下のようになっている。
モード | 解像度 | フレームレート |
8K | 7,680×4,320 | 30fps |
4K | 3,840×2,160 | 30,60,120fps |
1080p | 1,920×1,080 | 30,60fps |
720p | 1,280×720 | 30fps |
30fpsとはいえ8Kが撮れるのは大したものだが、実際には制限も多い。被写体を追ってAFするモーショントラッキングフォーカスは4K/30fpsまでしかサポートしないし、後述するDolby Visionも4K/60fpsまでしかサポートしない。また電子手ブレ補正を入れると、2.8K/30pに固定される。よって一番使いやすいのは、手ブレ補正なしの4K/30pだろう。今回のサンプルは、夜間撮影を除いて4K/30pで撮影している。
そのほか特殊動画撮影としては、スローモーション、タイムラプス、デュアルビデオをサポートする。
ディスプレイは6.73インチWQHD + 有機ELで、解像度は3,200×1,440、リフレッシュレートは1~120Hzの可変となっている。色域はDCI-P3をサポートし、輝度は3,200nits(ピーク)でHDR10+とDolby Vision対応となっている。
バッテリーは5,410mAhで、充電は90Wハイパーチャージをサポート。それだけ電力を食うというわけではなく、急速充電が可能ということである。背面にマグネットはないが、ワイヤレス充電にも対応する。NFCはあるので、銀行系カードのVISAタッチ決済には対応するものと思われる。前モデルの14Ultraではできたという情報があるので、15も同じだろう。FeLiCaには対応していないので、Suicaなどの交通系タッチ決済はできない。
多彩な画角が楽しめる動画撮影
ではまず各カメラの画角からチェックしてみたい。4カメラはそれぞれ14、23、70、100mmとなっているが、写真と動画でも画角が違う上に、電子手ブレ補正を有無でもさらに画角が変わる。以下に整理してみた。
スマートフォンカメラとしては念願の100mm超望遠が可能になったのは喜ばしいところだが、焦点距離のバランスとしては、メイン23mmと望遠70mmの間がかなり空いている。
また70mmと100mmでは、印象としてそれほど大きく変わらない。バランスを取るなら望遠は45〜50mmぐらいになるべきだが、ポートレート撮影なら70~80mmぐらいが一番美味しいところなので、望遠の焦点距離をそこに据えたのだろう。50mmぐらいが欲しければ、メインカメラを2倍のデジタルズームで使って埋めるということになる。
メインカメラは1インチセンサーなので、背景はかなりボケる。それで気になるのは、AF精度だ。
カメラごとにAFの動きを調べてみたが、超広角、メイン、望遠の3カメラは人体認識および顔認識が可能なので、近寄ってくる被写体に対しても自動でフォーカスが追える。一方ウルトラ望遠では認識機能がないため、フォーカスのフォローができなかった。ただ画面タッチによるフォーカシングはできるので、距離が変わらない被写体なら問題ない。
手ブレ補正は、超広角以外は光学手ブレ補正が搭載されているので、通常の撮影はこれで間に合うだろう。電子補正を加えても、効果はそれほど変わらない。逆に電子補正を入れると解像度が2.8Kに固定されるという制限があるのに加え、撮影中にカメラを変更できなくなるため、使い勝手が落ちる。三脚を併用すると機動性が下がるので、フィックスを撮影するならスマホ用ジンバルを併用するというのがいいだろう。
今回のサンプルは、すべて光学手ブレ補正のみの手持ちで撮影している。1台のスマートフォンで撮影したとは思えない画角のバリエーションがあり、編集コンテンツにも十分対応できる。
多彩なエフェクト、HDR撮影も
続いて音声収録をテストしてみる。本機はプロモードでの撮影のみ、マイク特性が選択できる。全方向、前、後ろ、軌跡(前後)の4タイプだ。それぞれテストしてみたが、前、後ろ、軌跡のいずれもかなり強い指向性を示した。
しかもモノラルではなく、ステレオで指向性を持たせている。一般のマイクでは、指向性が強くなるほどモノラル化する傾向があるが、ステレオマイクでありながら指向性が高いというのは珍しい。これだけ強い特性があれば、よほどうるさい場所でない限り、スマホだけで音声収録が可能だろう。
一方ビデオモードでは、2種類のフィルターが使用できる。1つはカラーエフェクト系のフィルターで、一部Leicaブランドのフィルターもある。
ビューティフィルターは、美肌、輪郭、小顔など、6つのパラメータを操作して美顔効果を得るというものだ。ここではオリジナルと、すべてのパラメータをMaxで付加したものを掲載しておく。全部をONにすると、韓国風メイクみたいな感じになるが、これがいいという人もいるだろう。
また本機では、HDRでの撮影も2通りの方法が使える。1つはDolby Visionで撮影する方法で、これはビデオモードでもプロモードでもどちらでも撮影できる。ディスプレイがDolby Vision対応なので、撮影中からHDRの映像を確認しながら撮影できるのはメリットがある。ただしこの撮影中は、モーショントラッキングモードが使えなくなるという排他仕様になっている。
もう一つ、プロモードではLOG撮影もできる。この時はディスプレイもLOG特有の低コントラスト画面になるので、日中の撮影では被写体が確認しづらいという難点がある。またLUTが提供されているわけでもないので、HDR作品化するためには自分でカラーグレーディングする知識が必要となる。
今回は前半がDolby Vision、後半がLOGで撮影して派手目にカラーグレーディングしたものでまとめてみた。
ビデオモードでは、夜景モードもある。これを選択するとメインカメラのみの4K/24Pに固定されるのが難点ではあるが、かなりノイズリダクションが効く。ノイズがない代わりにディテールも潰れる傾向にあるが、ぱっと見は高コントラストで発色も良いので、満足度は高いだろう。
カメラ画面を下から上にスワイプすると、特殊撮影モードにアクセスできる。
スローモーションは、720pと1080pで最高1,920fps撮影するという、超スローモードだ。ただしこれはメモリー内にバッファできる秒数しか撮影できないようで、自動的に前半ノーマルスピード、後半スローになる。
1080p/1,920fpsで撮影してみたが、室内でもそこそこ明るく撮れる。ただスローになるタイミングが読めないのと、スローがあまりにも遅すぎて、動いているのか止まっているのかよくわからない。水滴がはじけるところなど、一瞬で終わってしまうようなシーンでは役に立つかもしれない。
それよりは、4Kでも120fpsで撮影できるので、これで撮影して30pで再生したほうが、スロー映像としては使い道が多いのではないだろうか。
総論
スペックとしては8K撮影を期待する向きもあるだろうが、8Kで撮ってもそれが見られるディスプレイがなく、使い道が限られる。またAFなどに制限が出ることを考えれば、4K撮影がメインと考えたほうがよさそうだ。
SDRでの画質や発色もよく、各カメラでセンサーも違うのだろうが、切り替えても同じ色味になるようにきちんと調整されている。このあたりがLeica監修の強みでもある。またHDRもLOGで撮影できることから、マルチカメラの一つとして使っても十分なクオリティがある。通常のカメラが設置できない狭いところに設置するなど、プロでも使い道がありそうだ。
集音に関しても、マイク特性が変えられるのは大きなメリットだ。スマホ一つで結構やれるなという印象を持った。電子手ブレ補正は、使用すると4K解像度が出せないのが残念だった。光学手ブレ補正のみを使って、あとは三脚やジンバルでブレ補正を行うというのがいいだろう。
多くの評価は写真に集まるだろうが、動画カメラとしてもかなり高いポテンシャルを持っている。スマートフォンとしても使えるカメラセット、という位置づけなのではないだろうか。