東芝、2008年度業績は全セグメントで減収減益

-テレビ事業は念願の黒字化を達成


東芝本社ビル

5月7日発表


 株式会社東芝は、2008年度連結業績を発表した。売上高は前年比13.2%減の6兆 6,545億円、営業損益は前年の2,464億円から赤字転落し、マイナス2,502億円、税引前損益は前年の650億円の黒字から、マイナス2,793 億円の赤字に、当期純損益は1,274億円の黒字から、マイナス3,436億円の赤字となった。赤字決算は2001年度以来、7年ぶりのこととなる。

 セグメント別では、デジタルプロダクツの売上高は前年比16.4%減の2兆4,675億円、営業損益は前年の150億円の黒字から、マイナス142億円の赤字。電子デバイスは売上高が23.8%減の1兆3,249億円、営業損益は741億円の黒字から、マイナス3,232億円の赤字。社会インフラでは、売上高が0.9%減の2兆3,962億円、営業利益は13.8%減の1,132億円。家庭電器は売上高が12.9%減の6,743億円、営業損益は39億円からマイナス271億円の赤字。その他セグメントでは、売上高が12.5%減の3,343億円、営業利益は97.8%減の5億円と、すべてのセグメントで減収減益となった。

 デジタルプロダクツおよび電子デバイスが、世界的な経済環境の急激な悪化に伴う需要の減少と、予想を大きく上回る大幅な価格下落の影響を受けたという。売価ダウンだけで、1兆7,350億円の影響があったとしている。

 とくに、デジタルプロダクツでは、テレビ、ハードディスク装置、光ディスク装置が減収したほか、携帯電話事業も国内における販売制度の変更により販売台数の減少が減収に直結した。また、パソコン事業や流通・事務用機器事業も、世界的な景気後退の影響を受けたという。

 だが、その一方で、テレビ事業における製造原価の低減および固定費の削減、HD DVD事業の終息の影響もあり、利益面での改善が一部見られたという。

 「テレビ事業はコスト削減効果があり、念願の黒字化を達成した」(村岡富美雄代表執行役専務)としている。

 パソコン事業の売上高は前年比8%減の9,553億円、営業利益は65%減となったものの、145億円の黒字。売価ダウンやネットブック中心とした低価格化、欧州向け製品においてはユーロ安が影響した。

 「販売台数は増加しているが、米国、欧州を中心に減収となっている。下期だけをみれば、パソコン事業は92億円の赤字になっている」とした。パソコン事業が下期に入ってから悪化していることを示した。

 なお、半導体事業では、ディスクリート、システムLSI、メモリの3部門ともに赤字となっているほか、液晶もパソコン向けおよび、車載向け需要の大幅な減少により赤字となった。

 また、2009年3月で終了したモバイル放送(モバHO!)の事業終息に関わる損失として138億円を計上した。

 一方、2009年度の業績見通しは、売上高が前年比2.2%増の6兆8,000億円、営業損益は黒字転換し1,000億円を計画。税引前利益はゼロ、当期純損失はマイナス100億円の最終赤字になるとした。

 「売上高に関しては景気が急速には回復しないという前提に立っている。売上高が伸びないなかでの営業利益の回復要因は3,000億円の固定費削減効果があるため。また、税引前利益では600億円の事業構造改革費用などの影響がある」とした。

 セグメント別では、デジタルプロダクツの売上高は前年比0.7%減の2兆4,500億円、営業利益は250億円。電子デバイスは売上高が1.9%増の1兆3,500億円、営業損益はマイナス600億円の赤字。社会インフラでは、売上高が7.3%増の2兆5,700億円、営業利益は32.5%増の1,500億円。家庭電器は売上高が1.0%増の6,800億円、営業利益はゼロ。その他セグメントでは、売上高が4.7%減の3,200億円、営業損益はマイナス 150億円の赤字とした。

 「セグメント別では、デジタルプロダクツ、電子デバイス、家庭電器はほぼ横ばいの想定。成長は社会インフラにおいており、とくに電力・産業システムの増収を見込んでいる。これらは、受注が確定しているものといえる」として、社会インフラ部門における成長が堅い見通しであることを強調した。

 また、3,000億円の固定費削減の内訳は、デジタルプロダクツが500億円、電子デバイスが1,600億円(半導体が約1,000億円、液晶は約600億円)、社会インフラが400億円、家庭電器が300億円、その他で200億円。

 「固定費削減を着実に実行することが大切。電子デバイスは、これに加えて1,000億円の削減効果を目指していく」とした。

 デジタルプロダクツ分野では、携帯電話事業、ハードディスク装置事業の改善などにより増益が見込めるとしているほか、「テレビ事業は継続して黒字化を見込む。テレビ事業の上期の利益水準はゼロだが、下期で利益を出す形になる」とした。

 パソコンは売上高が6%減の9,000億円、営業利益は3%増の150億円を目指す。内訳は、上期が売上高が4,200億円、営業利益が70億円。下期が売上高が4,800億円、営業利益が80億円と見ている。

 携帯電話では、生産の外部委託、固定費削減によって、2008年度の赤字から、2009年度は150億円規模の改善で、ブレイクイーブンを見込んでいるという。

 富士通から買収したハードディスク(HDD)事業の影響については、個別情報を開示していないために明確にしなかったが、「HDD事業全体では2008年度は赤字だったが、2009年度はトントンを計画している」との見通しを示した。


(2009年 5月 8日)

[ Reported by 大河原克行 ]